共生社会 県民の手で 鳥取県「あいサポート条例」施行

 

 

 

 

 共生社会の実現を目指して、障害者支援に対する理念をまとめた「鳥取県民みんなで進める障がい者が暮らしやすい社会づくり条例」(愛称・あいサポート条例)が鳥取県議会2017年7月26日(6月定例会)で可決され、同年9月1日に施行された。

 

条例では、障害の特性に応じたコミュニケーション手段を具体的に例示し、行政や民間企業が積極的に実践するよう求めた。また、2016年10月の地震や今冬の大雪を踏まえ、災害時に地域住民で助け合う「支え愛」を進めることなども盛り込んだ。

 

さらに、2016年4月施行の障害者差別解消法を受け、「県障がい者差別解消相談支援センター」の設置を明記。共生社会を実現するため、啓発や相談体制の充実を図ることを目的に、障害を理由とする差別の相談に応じる拠点を県内3カ所に開設した。また、「県視覚障がい者センター」を新たに設けて、相談体制を充実させる。

 

 条例にかなった支援を実現するため、県は約3800万円の費用を用意。筆談ボードや点字メニューなどを置く民間企業に補助金を出したり、支援が必要な人が身につける「ヘルプマーク」を広めたりする。

 

 制定のきっかけは、2013年に施行された手話言語条例。全国に先駆けた取り組みで注目を集めたものの、さまざまな障害を抱える人たちからは種別や程度に限らず、円滑にコミュニケーションが取れる地域にしてほしいとの声が上がり、県が2009年、独自に始めた「あいサポート運動」にも法的な根拠がなかったことから、障害者支援全般の指標となる新たな条例をつくることにしたという。

 

 

 

1 条例の新設理由

 本県がこれまで取り組んできたあいサポート運動、障がい福祉サービスの充実、手話言語の普及等の取組を更に発展させるとともに、新たな課題の解決に向けて取り組むことで、障がい者が、その人格と個性を尊重され、障がいの特性に応じた必要な配慮や支援を受けながら、地域社会の中で自分らしく安心して生活することができる社会の実現を目指すものである。

 

2 条例の概要

(1)目的

 障がい者が暮らしやすい社会づくりのための取組に関する基本的な考え方を明らかにし、県及び市町村の責務並びに県民及び事業者の役割を定めるとともに、これらの者が相互に連携し協力して、障がい者に対する理解を促進させ、その支援に取り組むために必要な事項を定めることにより、障がい者が地域社会の中で自分らしく安心して生活することができる社会の実現に資する。

 

(2)基本的な考え方

 障がい者が暮らしやすい社会づくりに向けた取組は次に掲げる事項を基本としなければならない。

ア 全ての県民が障がい及び障がい者に対する理解を深めること。

イ 障がいを理由とする差別の解消を図ること。

ウ 障がい者本人が望む適切なコミュニケーション手段その他情報を取得する手段を選択することができるよう支援を充実させることにより障がい者情報アクセシビリティを保障すること。

エ 災害時であっても障がい者が安全かつ安心な生活を営むことができるようにすること。

オ 地域社会において、障がい者が自分らしく安心して生活することができるようにすること。

 

(3)県の責務等

ア 県は、(2)の基本的な考え方にのっとり、障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策を総合的かつ計画的に推進する。

 

イ その他市町村の責務並びに県民及び事業者の役割について定める。

 

(4)市町村の責務

 市町村は、基本的な考え方にのっとり、障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策に取り組むよう努める。

 

(5)県民の役割

 県民は、基本的な考え方にのっとり、障がい及び障がい者に対する理解を深めるとともに、障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策に協力するよう努める。 

 

(6)事業者の役割

 事業者は、基本的な考え方にのっとり、障がい者が利用しやすいサービスを提供し、障がい者が働きやすい環境を整備するとともに、県及び市町村が実施する障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策に協力するよう努める。

 

(7)障がい者への理解の促進及び県民運動の推進

ア 県は、あいサポート運動を県民全体で取り組む運動として推進する。

イ 県民及び事業者は、配慮又は支援を必要としている意思を表す記章等を着用する障がい者に対し、当該障がい者の求めに応じて、必要な配慮又は支援を行うよう努める。

 

(8)障がいを理由とする差別の解消

ア 県は、障がいを理由とする差別の解消を図るため、障がいを理由とする差別につき相談に応じるとともに、相談者への支援を行うための窓口(障がい者差別解消相談支援センター)を設置する。

イ 県は、障がいを理由とする差別の解消について県民の関心と理解を深めるため、必要な啓発活動を行う。

 

(9)障がい者情報アクセシビリティの保障及びコミュニケーション手段の充実

ア 県は、障がい者との意思疎通に当たっては、その実施に伴う負担が過重でない限り、障がい者の特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いる。

イ 市町村は、障がい者情報アクセシビリティ及びコミュニケーション手段の充実に努める。

ウ 県民及び事業者は、障がい者と意思疎通を図るときは、障がいの特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いるよう努める。

 

(10)災害時における障がい者の支援

ア 県及び市町村は、自助に加え、地域住民が災害時における避難に当たり支援を要する障がい者に対して、声掛け、避難所への同行その他の共助を行うことができる関係を地域社会において築く取組(支え愛の地域づくり)の推進及び地域住民が主体となって作成する支援を必要とする者の情報等を盛り込んだ地図(支え愛マップ)の作成の支援に努める。

イ 市町村は、災害発生時、避難所での生活等について、障がい者に対して障がいの特性に応じた対応を行うよう努める。

 

(11)障がい者の自立及び社会参加の推進

 県、市町村等は、障がい者に係る福祉サービスの充実等、虐待防止の促進、医療を要する障がい者への支援、教育環境の整備等、就労の促進等並びに芸術文化及びスポーツの推進に取り組む。

 

 

鳥取県民みんなで進める障がい者が暮らしやすい社会づくり条例pdf

 

目次

前文

第1章 総則(第1条〜第8条)

第2章 障がい者に対する理解の促進及び県民運動の推進(第9条〜第12条)

第3章 障がいを理由とする差別の解消(第13条・第1条)

第4章 障がい者情報アクセシビリティの保障及びコミュニケーション手段の充実(第15条〜第18条)

第5章 災害時における障がい者の支援(第19条〜第23条)

第6章 障がい者の自立及び社会参加の推進(第24条〜第31条)

附則

 

「この子らを世の光に」は、本県出身で、滋賀県において知的障がい児施設である近江学園を創設したことをはじめとして、日本の障がい福祉の礎をつくりあげ、障がい福祉の父と呼ばれた糸賀一雄の語った言葉である。

この言葉は、知的障がいのある子どもたちを同情や哀れみの目で見るのではなく、一人一人がかけがえのない存在であり、それぞれが個性を持った人間であることを認め合える社会をつくろうという思想を表したものと捉えられる。

 本県では、このような糸賀一雄の思いを受け止め、人々が互いを尊重し合う社会づくりを進める中で、様々な障がいの特性を理解し、その特性に応じた必要な配慮をするとともに、障がい者が困っているときに手助けを行うこと等により障がい者に温かく接するあいサポート運動の創設、障がい福祉サービス等の充実、鳥取県手話言語条例(平成25年鳥取県条例第54号)の制定により言語であることを改めて確認した手話言語の普及等様々な取組を積み重ねてきた。

 全ての県民がこれまでの取組を更に進展させるとともに、新たな課題の解決に向けて取り組むことで、障がい者が、その人格と個性を尊重され、障がいの特性に応じた必要な配慮や支援を受けながら、地域社会の中で自分らしく安心して生活することができる社会の実現を目指して、この条例を制定する。

 

 第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、障がい者が暮らしやすい社会づくりのための取組に関する基本的な考え方を明らかにし、県及び市町村の責務並びに県民及び事業者の役割を定めるとともに、これらの者が相互に連携し、及び協力して、障がい者に対する理解を促進させ、その支援に取り組むために必要な事項を定めることにより、障がい者が地域社会の中で自分らしく安心して生活することができる社会の実現に資することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 障がい 障害者基本法(昭和45年法律第84号)第2条第1号に規定する障害をいう。

(2) 障がい者 障害者基本法第2条第1号に規定する障害者をいう。

(3) 障がい者情報アクセシビリティ 障がいの特性に応じたコミュニケーション手段その他情報を取得する手段により、障がい者が円滑に情報を取得し、及び利用できることをいう。

(4) コミュニケーション手段 点字、手話言語、音声、文字、触手話、指点字、障がい者の意思疎通の仲介、情報通信機器を使用した文字の表示その他の障がい者が他人との意思疎通を円滑に図ることができるようにするための手段をいう。

 

(基本的な考え方)

第3条 障がい者が暮らしやすい社会づくりに向けた取組は、次に掲げる事項を基本としなければならない。

(1) 全ての県民が障がい及び障がい者に対する理解を深めること。

(2) 障がいを理由とする差別の解消を図ること。

(3) 障がい者本人が望む適切なコミュニケーション手段その他情報を取得する手段を選択することができるよう支援を充実させることにより障がい者情報アクセシビリティを保障すること。

(4) 災害時であっても障がい者が安全かつ安心な生活を営むことができるようにすること。

(5) 地域社会において、障がい者が自分らしく安心して生活することができるようにすること。

 

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本的な考え方(以下「基本方針」という。)にのっとり、障害者基本法第11条第2項に規定する都道府県障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「障害者総合支援法」という。)第89条第1項に規定する都道府県障害福祉計画において、障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 県は、市町村の障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する取組について、必要に応じて関係機関と連携して支援するものとする。

 

(市町村の責務)

第5条 市町村は、基本方針にのっとり、第4章、第5章及び第6章に定めるもののほか、障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策に取り組むよう努めるものとする。

 

(県民の役割)

第6条 県民は、基本方針にのっとり、障がい及び障がい者に対する理解を深めるとともに、県及び市町村が実施する障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第7条 事業者は、基本方針にのっとり、障がい者が利用しやすいサービスを提供し、障がい者が働きやすい環境を整備するとともに、県及び市町村が実施する障がい者が暮らしやすい社会づくりを推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(財政上の措置)

第8条 県は、障がい者が暮らしやすい社会づくりに関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

 第2章 障がい者に対する理解の促進及び県民運動の推進

(あいサポート運動の推進)

第9条 県は、県民が、障がいの特性についての理解を深めるとともに、障がい者が配慮又は支援を必要としている場面において、各々が可能な範囲で障がいの特性に応じた必要な配慮又は支援を行うことにより、障がいの有無にかかわらず、全ての人が互いに人格及び個性を尊重し支え合いながら暮らすことのできる社会を目指す運動(以下「あいサポート運動」という。)を県民全体で取り組む運動として推進するものとする。

2 この条例に定めるもののほか、あいサポート運動の推進に関し必要な事項は、知事が別に定める。

 

(あいサポーター)

第10条 県は、あいサポート運動を実践しようとする者からの申出に基づき、あいサポート運動に参加していることを示す記章(以下「あいサポートバッジ」という。)を交付する。

2 あいサポーター(あいサポートバッジの交付を受けた者をいう。)は、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。

(1) 障がいの特性及びそれに応じて必要とされる配慮並びに障がい者への支援に必要となる事項についての理解をより一層深めること。

(2) 支援を必要とする障がい者に対し、自ら率先して支援を行うこと。

(3) あいサポートバッジを着用し、障がい者が支援を求めやすいよう配慮すること。

(4) あいサポート運動の普及及び啓発を行うこと。

 

(あいサポート企業等)

第11条 県は、あいサポート運動を実践しようとする企業又は団体からの申請に基づき、当該企業又は団体をあいサポート運動を実践する企業又は団体として適当と認めたときは、これを証する書面を交付する。

2 あいサポート企業等(前項の書面の交付を受けた企業又は団体をいう。)は、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。

(1) 従業員があいサポート運動を理解するための研修に取り組むとともに、当該研修の修了者にあいサポートバッジを配布し、その着用を推奨すること。

(2) 事務所、店舗、自動車その他の見やすい箇所にあいサポート運動への参加を啓発するステッカー又は印刷物を掲示すること。

(3) 前2号に掲げるもののほか、あいサポート運動の普及を促進する取組を実施すること。

 

(記章等を着用する障がい者への対応)

第12条 県民及び事業者は、配慮又は支援を必要としている意思を表す記章等を着用する障がい者に対し、当該障がい者の求めに応じて必要な配慮又は支援を行うよう努めるものとする。

2 県は、前項の取組を県民全体で取り組む運動として推進するものとする。

 

 第3章 障がいを理由とする差別の解消

(障がい者差別解消相談支援センターの設置)

第13条 県は、障がいを理由とする差別の解消を図るため、障がいを理由とする差別につき相談に応じるとともに、相談をした者(以下「相談者」という。)への支援を行うための窓口(以下「障がい者差別解消相談支援センター」という。)を設置する。

2 県は、障がい者差別解消相談支援センターにおいて障がいを理由とする差別に関する相談を受けたときは、その当事者の相互理解と自主的な取組による解決を促進するため、次に掲げる支援を行うものとする。

(1) 専門的知見を活用した相談者への助言

(2) 国、県、市町村等が設置する障がいを理由とする差別に関する相談に応じ、助言、苦情処理等を専門的に行う機関その他の関係機関の紹介

(3) その他相談者及び関係機関に対する必要な支援

3 県は、前項の支援を円滑に行うため、関係機関との緊密な連携の確保に努めるものとする。

4 前3項に定めるもののほか、障がい者差別解消相談支援センターの運営に関し必要な事項は、知事が別に定める。

 

(差別の解消に向けた啓発活動等)

第14条 県は、障がいを理由とする差別の解消について県民の関心と理解を深めるため、必要な啓発活動を行う

とともに、事業者が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第8条第2項に規定する社会的障壁の除去への取組を促進するものとする。

 

 第4章 障がい者情報アクセシビリティの保障及びコミュニケーション手段の充実

(県の取組)

第15条 県は、障がい者との意思疎通に当たっては、その実施に伴う負担が過重でない限り、次に掲げるとおり行うものとする。

(1) 視覚に障がいがある者(第3号に掲げる者を除く。以下「視覚障がい者」という。)に対しては、音声、点字、手書き文字(相手の手のひらに指先等で文字を書いて意思疎通を行うことをいう。以下同じ。)、拡大文字(視覚障がい者に見えるように拡大して表示した文字をいう。以下同じ。)、文字情報を音声に変換する装置その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(2) 聴覚に障がいがある者(次号に掲げる者を除く。以下「聴覚障がい者」という。)に対しては、文字、手話言語、筆談、身振り、要約筆記その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(3) 視覚及び聴覚に障がいがある者(以下「盲ろう者」という。)に対しては、音声、点字、文字、手話言語、指文字(手の指の形を用いて文字を表現することをいう。)、触手話、筆談、手書き文字、指点字その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(4) 言語機能又は音声機能に障がいがある者に対しては、発声内容を聞き取りにくい場合は繰り返し聞き、筆談その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(5) 知的障がいがある者(以下「知的障がい者」という。)に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、平易な表現を用いた短い文章でゆっくりと伝えること、漢字にふりがなを付すこと、身振りその他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(6) 精神障がい者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第5条に規定する精神障害者をいう。以下同じ。)に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、平易な表現でゆっくりと伝えることその他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(7) 発達障がい者(発達障害者支援法(平成16年法律第167号)第2条第2項に規定する発達障害者をいう。以下同じ。)に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、具体的な表現を用いた短い文章で順を追って伝えること、絵又は写真の提示その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(8) 前各号に掲げるもののほか、障がい者と意思疎通を図るときは、障がいの特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いること。

2 県は、県政等に関する主要な情報の発信に当たっては、障がい者情報アクセシビリティが保障されたものとする。

3 県は、障がい者の意思疎通の円滑化を図るため、その実施に伴う負担が過重でない限り、次に掲げる取組を行うものとする。

(1) 視覚障がい者がコミュニケ−ション手段を円滑に用いるための訓練、音声機能に障がいがある者に対する発声訓練その他の障がい者が適切に意思疎通を行うために必要な訓練の実施

(2) 手話通訳者、要約筆記を行う者、盲ろう者向けに通訳又は介助を行う者その他の障がい者の意思疎通を支援する者の養成及び派遣並びに情報通信機器の整備その他のコミュニケーション手段の確保及び充実

(3) 障がい者情報アクセシビリティの保障に資する拠点の設置及び運営

(4) 障がい者福祉団体又は事業者が行う障がい者情報アクセシビリティを保障するための取組に対する支援

 

(市町村の取組)

第16条 市町村は、基本方針にのっとり、前条の規定に準じて障がい者情報アクセシビリティの保障及びコミュニケーション手段の充実に努めるものとする。

 

(県民の取組)

第17条 県民は、障がい者との意思疎通に当たっては、次に掲げるとおり行うよう努めるものとする。

(1) 視覚障がい者に対しては、音声、点字、手書き文字その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(2) 聴覚障がい者に対しては、手話言語、筆談、身振りその他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(3) 盲ろう者に対しては、音声、点字、文字、手話言語、触手話、筆談、手書き文字、指点字その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(4) 言語機能又は音声機能に障がいがある者に対しては、発声内容を聞き取りにくい場合は繰り返し聞き、筆談その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(5) 知的障がい者に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、平易な表現を用いた短い文章でゆっくりと伝えること、漢字にふりがなを付すこと、身振りその他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(6) 精神障がい者に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、平易な表現でゆっくりと伝えることその他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(7) 発達障がい者に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、具体的な表現を用いた短い文章で順を追って伝えること、絵又は写真の提示その他の適切なコミュニケーション手段を用いること。

(8) 前各号に掲げるもののほか、障がい者と意思疎通を図るときは、障がいの特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いること。

 

(事業者の取組)

第18条 事業者は、従業員が障がい者と意思疎通を図るときは、前条の規定に準じて、障がいの特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いさせるよう努めるものとする。

 

 第5章 災害時における障がい者の支援

(防災対策に係る支援)

第19条 県は、市町村が行う障がい者に係る防災対策が障がいの特性に応じたものとなるよう、必要な助言その他の支援を行うものとする。

 

(災害に備えた支え愛の地域づくり)

第20条 県及び市町村は、自助(自己の生命、身体及び財産を自ら守ることをいう。)に加え、地域住民が災害時における避難に当たり支援を要する障がい者に対して、声掛け、避難所への同行その他の共助(住民が互いに助け合ってその生命、身体及び財産を守ることをいう。)を行うことができる関係を地域社会において築く取組(以下「支え愛の地域づくり」という。)を推進するよう努めるものとする。

2 県及び市町村は、災害時における避難に当たり支援を要する障がい者に対し適切に支援が行われるよう、地域住民が主体となって取り組む支え愛マップ(平常時の見守り及び災害時の避難支援を目的として、支援を必要とする者及びその支援者の情報並びに避難所及び避難経路を盛り込んだ地図をいう。)の作成への支援に努めるものとする。

3 県及び市町村は、支え愛の地域づくりを推進するため、障がい者を交えた地域住民同士の交流を促進する活動の支援に努めるものとする。

 

(災害発生時の対応)

第21条 市町村は、災害が発生した場合において、障がい者に避難を始める判断の参考となる情報、避難所に関する情報その他の災害から身を守るために必要な情報(以下「災害関連情報」という。)を伝えるときは、次に掲げるとおり行うよう努めるものとする。

(1) 視覚障がい者に対しては、音声、点字その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いること。

(2) 聴覚障がい者に対しては、文字、手話言語、筆談その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いること。

(3) 盲ろう者に対しては、音声、点字、文字、手話言語、触手話、筆談、手書き文字、指点字その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いること。

(4) 知的障がい者に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、平易な表現でゆっくりと伝えること、漢字にふりがなを付すことその他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いること。

(5) 精神障がい者に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、平易な表現でゆっくりと伝えることその他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いること。

(6) 発達障がい者に対しては、落ち着かせて不安を取り除き、障がいの程度に応じて、具体的な表現を用いた短い文章で順を追って伝えることその他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いること。

(7) 前各号に掲げるもののほか、障がい者に災害関連情報を伝えるときは、障がいの特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いること。

2 前項に定めるもののほか、市町村は、災害が発生した場合における障がい者の安全の確保に当たっては、次に掲げるとおり行うよう努めるものとする。

(1) 自力での避難が困難な障がい者が、安全に避難できるようにすること。

(2) 言語機能又は音声機能に障がいがあって自ら助けを求められない障がい者に対し、速やかに安否の確認を行い、安全に避難できるようにすること。

(3) 障がい者の安否の確認を行うときは、障がい者に対する支援を行う団体(以下「障がい者支援団体」という。)その他の関係者と必要に応じて連携し、速やかに行うこと。

(4) 人工透析その他の医療を要する状態にある障がい者が、人工透析の実施その他の必要な支援を受けられるよう、必要に応じて医療機関その他の関係者と連携すること。

(5) 障がい者が自ら災害関連情報を取得することが可能となるよう障がい者情報アクセシビリティを保障すること。

 

(避難所での生活)

第22条 市町村は、避難所における障がい者への対応に当たっては、個々の避難所において利用できる設備等の状況に応じて、次に掲げるとおり行うよう努めるものとする。

(1) 視覚障がい者に対しては、点字、拡大文字、音声その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いて情報を提供するとともに、避難所内での移動に不自由が生じないよう配慮すること。

(2) 聴覚障がい者に対しては、手話言語、筆談、掲示板への掲示その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いて情報を提供すること。

(3) 盲ろう者に対しては、音声、点字、文字、手話言語、触手話、筆談、手書き文字、指点字その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いて情報を提供するとともに、避難所内での移動に不自由が生じないよう配慮すること。

(4) 知的障がい者に対しては、必要に応じて静かな場所に誘導し、落ち着かせて不安を取り除くとともに、障がいの程度に応じて、平易な表現を用いること、漢字にふりがなを付すこと、身振りその他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いて情報を提供すること。

(5) 精神障がい者に対しては、必要に応じて静かな場所に誘導し、落ち着かせて不安を取り除くとともに、障がいの程度に応じて、平易な表現でゆっくりと伝えることその他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いて情報を提供すること。

(6) 発達障がい者に対しては、必要に応じて静かな場所に誘導し、落ち着かせて不安を取り除くとともに、障がいの程度に応じて、具体的な表現を用いた短い文章で順を追って伝えること、絵又は写真の提示その他の伝達可能なコミュニケーション手段を用いて情報を提供すること。

(7) 人工透析が必要な障がい者に対しては、障がいに応じた適切な食事を提供できるよう配慮すること。

2 市町村は、避難所において障がい者が安全かつ円滑に施設内を移動し、及び施設を利用することができるよう、必要に応じて関係機関と連携を図り、施設の充実に努めるものとする。

3 第1項に定めるもののほか、市町村は、障がい者が自ら避難所において必要な情報を取得することが可能となるよう障がい者情報アクセシビリティの保障に努めるものとする。

4 前3項に定めるもののほか、市町村は、避難所において障がい者が安全かつ安心な生活を営むことができるよう、障がい者支援団体、避難所の運営を支援する社会福祉法人その他の関係者と連携し、障がいの特性に応じた必要な配慮に努めるものとする。

 

(被災後の支援)

第23条 市町村は、被災した障がい者の生活の安定を図るため、障がい者支援団体その他の関係者と連携して、障がい者の心のケア、生活に係る相談その他の必要な支援に努めるものとする。

 

 第6章 障がい者の自立及び社会参加の推進

(福祉サービスの充実等)

第24条 県及び市町村は、障がい者福祉に係る施策の拡充その他障がい者に対する福祉サービスの充実に努めるものとする。

2 県及び市町村は、障がい者がその希望に応じて地域での生活を営むことができるよう、相談支援の充実その他必要な支援に努めるものとする。

3 障がい者に対する福祉サービスの提供又は相談支援を行う事業者は、市町村と連携し、障がい者と地域住民との交流の促進その他事業者同士の連携等によるサービスの充実に資する取組に努めるものとする。

4 県及び市町村は、自ら意思決定をすることが困難な障がい者に対し、関係機関と連携して、成年後見制度の利用の促進に努めるものとする。

 

(障がい者虐待防止の促進)

第25条 県は、市町村その他の関係機関と連携して、障がい者に対する虐待を防止するため、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」という。)第2条第4項に規定する障害者支援施設及び障害福祉サービス事業等に係る業務に従事する者に対する啓発及び研修を行うものとする。

2 前項に規定する障害者支援施設及び障害福祉サービス事業等に係る事業者は、障害者虐待防止法第15条の規定による研修の実施に加え、障がい者の虐待の防止に関する従業員への啓発に努めなければならない。

 

(医療を要する障がい者への支援)

第26条 県は、医療を要する障がい者が、地域で安全かつ安心な生活を営むことができるよう、医師、歯科医師、相談員その他の医療を要する障がい者を支援する者の確保、支援制度の拡充その他障がい者の年齢に応じた切れ目のない支援を行うものとする。

2 前項の支援の実施に当たっては、医療、福祉、保健、教育その他の関係分野に従事する者は、一層の連携に努めるものとする。

 

(教育環境の整備)

第27条 県及び市町村は、障がい者が年齢、能力及び障がいの特性に応じた十分な教育を受けられるよう、点字図書、拡大図書、字幕又は手話言語を用いた映像その他の教材の提供、適切なコミュニケーション手段の確保その他の支援に努めるものとする。

2 県及び市町村は、障がい者及びその家族その他の関係者が、当該障がい者に係る障がいの特性に応じた適切なコミュニケーション手段その他障がいに関する知識について適切な時期に学ぶ機会を設けることその他のそれらを習得するための環境の整備に努めるものとする。

3 県は、教育に従事する者が、障がい者と適切に意思疎通を図ることができるよう、当該従事者に対して研修を実施するものとする。

4 教育に従事する者は、障がい者への教育に当たっては、障がい者と適切に意思疎通を図ることができるよう努めるものとする。

 

(福祉教育の機会の確保)

第28条 県及び市町村は、県民が年少期から障がい及び障がい者について学ぶ機会を設けるよう努めるものとする。

2 県民は、年少期からの教育を通じて、障がい及び障がい者について学び、理解を深めるよう努めるものとする。

 

(障がい者の就労の促進等)

第29条 県及び市町村は、障がい者の就労を促進するため、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。

(1) 企業、行政機関その他の関係機関と連携し、及び協力して、障がい者の希望及び適性に応じた雇用契約に基づく就労を一層促進すること。

(2) 就労移行支援事業所(障害者総合支援法第5条第 13 項に規定する就労移行支援の事業を実施する事業者をいう。)及び就労継続支援事業所(障害者総合支援法第5条第14項に規定する就労継続支援の事業を実施する事業者をいう。以下同じ。)における賃金及び工賃の水準の向上その他障がい者の就労の促進に必要な環境の整備を図ること。

2 事業者は、前項第1号の規定による県及び市町村の施策に協力し、障がい者の就労の促進を図るよう努めるものとする。

3 就労継続支援事業所は、第1項第2号の規定による県及び市町村の施策に協力するとともに、賃金及び工賃の水準を高めるよう努めるものとする。

 

(障がい者文化芸術の推進)

第30条 県は、障がい者が文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造する活動に主体的に取り組み、その能力を十分に発揮できる環境を整備するとともに、その活動の成果を発表する機会を確保するものとする。

2 県及び市町村は、障がい者の行う文化芸術活動を促進するため、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。

(1) 県民の幅広い理解及び支援が得られるよう、障がい者の文化芸術活動の普及及び啓発を行うこと。

(2) 障がい者が文化芸術活動において能力を発揮しやすいよう、障がい者の文化芸術活動の知識及び経験を有する者であってこれを支援するものの確保及び育成を図ること。

(3) 障がい者の文化芸術活動を担う個人及び団体の取組を促進し、その育成を図るため、情報提供その他の必要な支援を行うとともに、当該個人及び団体並びに文化芸術に関する関係者と緊密な連携を図ること。

3 県民は、障がい者の文化芸術活動について理解し、必要に応じてこれに協力するよう努めるものとする。

 

(障がい者スポーツの推進)

第31条 県は、障がい者が生涯にわたり自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、年少期から高齢期を通じ、障がいの特性及び程度に応じたスポーツを行う機会の確保その他の必要な環境の整備を行うものとする。

2 県及び市町村は、障がい者の行うスポーツ(以下「障がい者スポーツ」という。)を促進するため、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。

(1) 県民の幅広い理解及び支援が得られるよう、障がい者スポーツの普及及び啓発を行うこと。

(2) 本県の障がい者スポーツの選手が国際的な又は全国的な規模のスポーツの競技会において優秀な成績を収めることができるよう、障がい者スポーツに関する競技水準の向上を図ること。

(3) 障がい者が安全かつ安心にスポーツを行うことができるよう、障がい者スポーツの知識及び経験を有する指導者の確保及び育成を図ること。

(4) 障がい者スポーツの振興団体が行う活動に対して必要な支援を行うとともに、当該団体その他のスポーツ関係団体との緊密な連携を図ること。

3 県民は、障がい者スポーツについて理解し、必要に応じてこれに協力するよう努めるものとする。

 

 附 則

この条例は、平成29年9月1日から施行する。

 

 

あいサポート条例;社会変えよう 鳥取で記念フォーラム(2017年9月17日配信『毎日新聞』−「鳥取版」)

 

フォーラムの最後に、障害者が暮らしやすい社会に向けて宣言をする登壇者ら=鳥取市尚徳町のとりぎん文化会館で

 

 2017年9月1日に施行された「鳥取県民みんなで進める障がい者が暮らしやすい社会づくり条例」(愛称・あいサポート条例)の制定を記念したフォーラムが9月16日、鳥取市尚徳町のとりぎん文化会館であった。県民ら約350人が参加し共生社会の実現に向けた新たな一歩を喜ぶとともに、障害者の参加を阻んでいる社会の課題について学んだ。

NHK・Eテレの情報バラエティー番組「バリバラ」の司会者、山本シュウさんが進行役を務め、脳性まひがある番組出演者の玉木幸則さん、放送作家の鈴木おさむさんが登壇。平井伸治知事らが、5本の柱を基にしたあいサポート条例の理念などを説明した。

 玉木さんは、柱の一つである差別解消について、障害者からの悩みに応じる相談員としての経験を紹介した。障害者差別解消法の施行に伴い各地にできた相談支援センターの利用が少ない現状を示し、「(障害)当事者も周囲も差別だと気付かないことが多い。相談に来ても『困りましたね』で終わってしまう」と指摘。センターが機能するための具体的な施策が必要だと述べた。鈴木さんはセンターの名称に「差別」という言葉が含まれていることが利用をためらわせるとして、気軽に話ができる雰囲気に改称することを提案した。

 あいサポート運動や全国初の手話言語条例制定などに取り組んできた鳥取県。山本さんは「今、時代が変わろうとしている。鳥取がそのリーダーになってほしい」と力を込めた。玉木さんは、これまでの積み重ねが今回の条例施行につながったと語り、「県民がきちんと趣旨を理解した上で実践していくことが大事だ」と呼びかけた。

 県聴覚障害者協会事務局長の石橋大吾さんと全国脊髄(せきずい)損傷者連合会山陰支部長の福永幸男さんも加わり、県の取り組みに対する意見交換もあった。石橋さんは手話を教える学校が県内で増えている現状を歓迎しつつ、「手話の普及だけでなく、聞こえない人への理解を深めることも大切」と強調。県車椅子バスケットボール協会の理事長も務める福永さんは「設備の整った宿泊施設がなく、障害者スポーツの全国大会ができない」と窮状を訴えた。

 最後には全員で、「障害の有無に関わらずお互いを尊重し支え合い、障害者が暮らしやすい社会を作ります」などと宣言。介護関係の仕事に就く鳥取市の田中香織さん(35)は「町の中には(社会参加をしづらくしている)障害が、まだまだあると知った。まずは気付くことから始め、周囲の人とも解消策について意見を言い合いたい」と話した。

 

 

 

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