東京都江戸川区は都内の自治体で初めて、手話を言語と認める手話言語条例案を2018年2月20日開会の区議会に提案し、3月23日に可決された。荒川区と都も同様の条例案を議会に提案予定。

 

手話を言語と認めることで人々の理解が進み、防災や医療の分野などで手話による情報提供が充実するといった効果が期待できる。

 

 手話言語条例は2013年、鳥取県が初めて制定。2018年2月16日現在、16県112市町の128の自治体に広がっている。

 

23区では、千代田区が手話を含む障害者とのコミュニケーションに関する千代田区障害者の意思疎通に関する条例(条例の名称には「手話」使用していない)を2017年10月に施行しており、2020年パラリンピックを見据え、障害者も暮らしやすい共生社会を形成するための取り組みが広がりつつある(手話言語条例はゼロ)

 

 江戸川区の案では手話を言語と明記し、聴覚障害者らが手話で円滑に意思疎通を図る権利を尊重する。区内の事業者に対し、手話を必要とする人が利用しやすいサービスの提供や、働きやすい職場環境の整備に努めるよう促す理念条例。施行は、2018年4月1日を予定している。

 

 条例案概要に対するパブリックコメント(意見公募)には、「ろう文化の歴史など、手話をとりまく社会的背景を説明する前文を付記してほしい」「手話の普及のために(条例のパンフレットを作成、配布。区民ニュースに手話通訳をつける。学校教育における手話学習機会の提供)」「当事者が本当に必要としているのは手話に限らないことを理解した上で、手話およびその他の必要性について具体的に表してほしい」「口語、点字、触手話、代読など様々なコミュニケーション方法を取り入れて、具体的な内容を示し実効性の高いものにしてほしい」など延べ39件16名の意見が寄せられた。

 

 区の障害者福祉課は「手話への理解や普及啓発が進むことで、手話がどこででも使いやすくなる」と効果を期待する。

 

東京都は2018年6月制定を目指す障害者差別解消条例で、手話を言語と位置付ける方針。

 

 全日本ろうあ連盟の久松三二(みつじ)事務局長は、東京での条例制定の動きに「全国の自治体にも波及効果が期待できる」と指摘。「制定後は、地域の聴覚障害者団体などの意見を施策に十分に反映させていく必要がある」と注文している。

 

 

 東京都の特別区の東京23区の最東端部に位置する江戸川区は、23区内で最も区民の平均年齢が若く、合計特殊出生率も23区内で最も高い。

東端には江戸川が流れ、千葉県に接する。

 

 区の荒川両岸地域は海抜ゼロメートル地帯として有名。区の南部は大半の地域を埋立地が占め、埋立地の南部には葛西臨海公園、葛西臨海水族園があり、南端で東京湾と接している。

 

人口は、695,364人、338,274世帯(2018年2月1日現在)

 

身体障害者手帳所持者数の推移は以下の通り。

 

第4期江戸川区障害福祉計画 2015年度〜2017年度

 

江戸川区手話言語条例(案)概要

 

1 目的

 手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、全ての人が互いを尊重し合い共生する地域社会を実現するため、条例を制定します。

 

2 基本理念

ろう者及び難聴・中途失聴者(手話を必要とする人)は、手話により意思疎通を円滑に行う権利を有しており、その権利を尊重することを基本とします。

 

3 区の責務

区は基本理念にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策を実施します。

 

4 区民等の役割

区民は、基本理念の理解を深め、区の施策に協力するものとします。

事業者は、基本理念を尊重し、手話を必要とする人が利用しやすいサービスの提供や働きやすい環境の整備に努めるものとします。また、手話を必要とする人は、手話に関する施策に協力するとともに、主体的かつ自主的に手話の普及に努めるものとします。

 

5 施策の推進 

区は、次に掲げる施策の推進に努めるものとします。また、施策の推進に当たって別に定める障害者に関する計画との整合性を図るものとします。

(1) 手話の理解促進及びその普及に関する施策

(2) 手話による意思疎通支援のための施策

(3) その他、区長が必要と認める施策

 

6 施行期日

平成30年4月1日からとします。

 

 

第24号議案 江戸川区手話言語条例

右の議案を提出する。

平成30年2月20日

提出者江戸川区長多田正見

 

江戸川区手話言語条例

 

(目的)

第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、江戸川区(以下「区」という。)の責務及び江戸川区民(以下「区民」という。)等の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、全ての者が互いを尊重し合い共生する地域社会を実現する

ことを目的とする。

 

(基本理念)

第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であること並びにろう者、難聴者及び中途失聴者その他手話を必要とする区民(以下「手話を必要とする者」という。)が手話による意思疎通を円滑に図る権利を有することを前提として、全ての者が相互に人格と個性を尊重し合い共生する地域社会の実現に寄与するために行わなければならない。

 

(区の責務)

第3条 区は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策を総合的かつ計画的に実施するよう努めるものとする。

 

(区民等の役割)

第4条 区民は、基本理念にのっとり、手話に関する区の施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、基本理念にのっとり、手話を必要とする者が利用しやすいサービスの提供及び手話を必要とする者が働きやすい環境の整備に努めるものとする。

3 手話を必要とする者は、基本理念にのっとり、手話に関する区の施策に協力するとともに、主体的に手話の普及に努めるものとする。

 

(手話に関する施策)

第5条 区は、次に掲げる施策の推進に努めるものとする。

 手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策

二 手話による意思疎通の支援に関する施策

三 前2号に掲げるもののほか、江戸川区長(以下「区長」という。)が必要と認める施策

2 区は、前項の施策の推進に当たっては、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定により区が策定した江戸川区障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項の規定により区が定めた江戸川区障害福祉計画との整合性を図るものとする。

 

(委任)

第6条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が別に定める。

 

付則

この条例は、平成30年4月1日から施行する。

 

(説明)

全ての者が互いを尊重し合い共生する地域社会の実現を図るために、手話が言語であることを前提として、手話に関する施策の基本的事項を定める必要があるので、本案を提出いたします。

 

 

 

 

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