浜松市手話言語の推進に関する条例

 

手話条例周知へ親子教室やタブレット

 

全日本ろうあ連盟hp

 

 静岡県浜松市は、静岡県内では初めて障害の有無にかかわらず誰もが住みやすい地域づくりを目指して、手話を言語と認めて理解の促進を図るため「手話言語条例」2016年3月24日に制定、4月1日施行した。

 

同市では条例制定に向けた委員会を設け、聴覚障害者や手話通訳者らを交えて検討を重ね、2015年10月13日から11月11日まで市民から意見(パブリックコメント)を募った。

 

意見募集の結果、市民等9人から21件のご意見が寄せられ、それらのご意見とご意見に対する市の考え方を公表した。

 

 条例の目的は「手話は、独自の言語体系を有するものであり、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、言語として位置づけられました。手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及について、基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話への理解の促進及び手話の普及のための施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、ろう者及びろう者以外の者が共生することができる地域社会を目指す」としている。

 

そのため条例案では、「手話の理解促進と普及に向けた取り組みを「市の責務」と位置づけたうえで、事業者には聴覚障害者が利用しやすいサービスと働きやすい職場環境の整備を求めていく」ことを規定している。

 

同市は、具体的取り組みとして、手話奉仕員要請講座、手話通訳者養成講座、小中学生対象の手話体験講座のほか、手話通訳者派遣事業や浜松市手話言語の推進に関する条例についての手話動画などを掲げている(動画;手話でつながる〜浜松市手話言語の推進に関する条例

 

 手話言語条例は2013年10月に鳥取県が全国の自治体で初めて制定。同県は「手話ハンドブック」を作成して小中学生に配布したり、手話の表現力を競う「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」を企画したりしている。政令市では神戸市が2015年4月に初めて制定し、市議会中継に手話通訳を導入している。

 

 

浜松市手話言語の推進に関する条例の概要

 

条例の目的

Ø  手話を言語として認め、手話への理解促進と普及を図り、ろう者とろう者以外のすべての者が共生することができる地域社会を目指す。

 

基本理念

Ø  手話が言語であること。

Ø  ろう者が手話によりコミュニケーションを図る権利を持つこと。

Ø  ろう者とろう者以外のすべての者が、互いに人格と個性を尊重する。

 

市の責務

Ø  手話への理解の促進及び手話の普及のための施策を総合的かつ計画的に推進する。

 

市民の役割

Ø  手話への理解を深めるよう努める。

Ø  手話への理解の促進、手話の普及のための市の施策に協力するよう努める。

 

「市民」とは

Ø  浜松市民や市内へ通勤、通学している者だけではなく、現に浜松市内を通過している者(滞在者)を含む。

 

ろう者の役割

Ø  手話への理解の促進、手話の普及のための手話通訳者の育成やその他の市の施策に協力する。

Ø  手話への理解の促進、手話の普及に努める。

 

事業者の役割

Ø  手話への理解の促進、手話の普及のための市の施策に協力するよう努めます。

Ø  ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努める。

 

 

 

浜松市手話言語の推進に関する条例

2016(平成28)年3月24日

浜松市条例第45号

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及について、基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話への理解の促進及び手話の普及のための施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、もってろう者及びろう者以外の者が共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において「ろう者」とは、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であることを認識し、かつ、ろう者が手話によりコミュニケーションを図る権利を有することを前提とした上で、ろう者及びろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重することを基本として行われなければならない。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及のための施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。

 

(市民等の役割)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、手話への理解を深めるとともに、手話への理解の促進及び手話の普及のための市の施策に協力するよう努めるものとする。

2 ろう者は、基本理念にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及のための手話通訳者の育成その他の市の施策に協力するとともに、手話への理解の促進及び手話の普及に努めるものとする。

3 事業者は、基本理念にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及のための市の施策に協力するとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、及びろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

 

(計画の策定及び実施)

第6条 市は、手話への理解の促進及び手話の普及のための施策を総合的かつ計画的に推進するため、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に規定する市町村障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項に規定する市町村障害福祉計画において、手話への理解の促進及び手話の普及のための手話を使用しやすい環境の整備その他の施策について定め、これを実施するものとする。

 

(委任)

第7条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

 

附 則

この条例は、平成28年4月1日から施行する。

 

 

手話条例周知へ親子教室やタブレット 浜松市(2016年8月19日配信『静岡新聞』)

s-キャプチャ2

タブレット端末を使って遠隔地の通訳と会話する利用者(左)と市職員(右)=18日午後、浜松市中区

 

 浜松市は4月に施行した手話言語条例を普及啓発する活動を本格化させている。18日には市役所で親子手話教室を初開催したほか、各区役所に配備したタブレット端末のテレビ電話機能を使った手話通訳も実施している。
 同条例は手話を言語と認め、理解と普及を図る目的で、静岡県内では浜松と富士宮の2市で施行されている。
 18日の親子手話教室は幼い時期に手話と触れる機会を設けるとともに、親世代への波及を狙った。小学生以下の子どもや保護者計65人が参加し、浜松ろうあ協会会員の指導で聴覚障害について理解を深めた。クイズや歌を楽しみながら手話を覚え、表情や身ぶりの大切さも学んだ。
 市の全職員を対象にした講習会も6月に実施した。9月から5週連続の初心者向け講習会も開始し、現在、38人にとどまる市内の手話通訳者の育成につなげる。
 手話通訳用タブレット端末は市内の各区役所7カ所に配備した。手話通訳者が不在の時、本庁や他の区役所などの遠隔地と映像をつないで窓口対応を可能にした。4月から4カ月余りで利用は9件。映像の見づらさなど課題もあるが、利用者も緊急時の道具として理解を示している。対応する手話通訳者は「筆談も可能だが、顔を見て会話できるのは利用者の安心感につながるはず」と話す。

 

 

 

inserted by FC2 system