手で輪を広げる城陽市手話言語条例 |
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京都府城陽市議会において京都府内で初めて「手話は言語」とし、広く普及させる「手で輪を広げる城陽市手話言語条例」が2015年3月30日に可決され、2015年4月1日から施行された。
条例は、市の責務や市民の役割を盛り込んでいる。
注;城陽市(じょうよう)=京都市と奈良市のほぼ中間、山城盆地の中央部に位置。市域は、東西9.0キロメートル、南北5.4キロメートル、総面積32.74平方キロメートル。主要交通機関は、「JR奈良線」と「近鉄京都線」で、JR、近鉄ともに京都駅から、約30分。人口は、77,689人(2015年2月1日現在)。発祥のスポーツとしてエコロベースボール(基本ルールはソフトボールと同じですが、バット・グローブ・ボール等が弱者に優しい)がある。
市は、手話は、障害者権利条約や障害者基本法において、言語として位置づけられました。手話が言語であるとの認識を広め、市民が手話をより身近に感じ、手話による意思疎通ができる社会を目指すために、市の責務及び市民の役割を定め、施策を総合的かつ計画的に推進するために、条例を制定します」としている。
2014年、市議会一般質問で議員が制定を勧め、市が検討してきた。条例の検討委員会は2014年7月に設置。福祉保健部長を会長とし、さまざまな施策に関連するため、市役所内の全部署から計10人ほどが参加。聴覚言語障害者の団体からの意見聴取を4回ほどおこなった。
出野一成副市長は「(制定後は)市民が手話を言語として使えるよう習ってもらう機会を設けたり、市職員を育成したりするなど政策にも踏み込んでいく」と述べた。
手話は言語として、ろう者が自らの意思や考えを表現し、伝えるとともに、他者の思いや考えを理解する意思疎通の手段として使用され、これまで育まれてきた。 障害者基本法(昭和45年法律第84号)及び障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)において、言語には手話を含むことが明記されたが、手話が言語であるという認識は未だ社会において浸透しておらず、手話を使用する環境が十分には整っていないことから、ろう者は必要な情報を得ることやコミュニケーションをとることに不便や不安を感じながら生活をしてきた。 このような状況に鑑み、城陽市(以下「市」という。)のまちづくりにおいては、手話が言語であるとの認識に基づき、これを広め、市民が手話をより身近に感じ、手話による意思疎通ができる社会を目指し、もって、ろう者の社会参加がより一層推進されるよう積極的に取り組むことが必要である。 ここに、手話による自由な意思疎通が保障される社会の形成についての基本理念を明らかにしてその方向性を示し、将来に向かって市及び市民が当該社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及を図り、地域において手話が使いやすい環境を構築するために、市の責務及び市民の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的な施策(以下「手話に関する施策」という。)の推進を図り、もって全ての市民が心豊かに暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とる。 (基本理念) 第2条 手話に対する理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話による意思疎通を円滑に図る権利が全ての市民に保障されることを基本として行わなければならない。 (市の責務) 第3条 市は、基本理念!このっとり、市民の手話についての理解を深めるとともに、手話による意思疎通ができる社会づくりを推進し、手話を用いての社会参加並びに手話の獲得及び習得の機会を保障するために必要となる手話に関する施策を実施するものとする。 (市民の役割) 第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する施策に協力し、手話についての理解を深めるよう努めるものとする。 2 市内の手話に関わる団体は、手話に関する施策に協力するとともに、手話の意義及び基本理念に対する理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。 (施策の推進) 第5条 市長は、手話に関する施策を推進するための方針(以下「施策の推進方」という。)を策定するものとする。 2 施策の推進方針は、市長が別に定める障がい者に係る計画との調和が保たれたものでなければならない。 3施策の推進方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。 (1) 手話に対する理解の促進及び手話の普及に関すること。 (2) 手話の獲得及び習得に関すること。 (3) 手話による情報取得に関すること。 (4) 手話による意思疎通支援の拡充に関すること。 (5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。 (財政上の措置) 第6条 市は、手話に関する施策を推進するために、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(城陽市手話施策推進会議) 第7条 次に掲げる事務を行うため、城陽市手話施策推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。 (1) 手話に関する施策についての評価 (2) この条例及び施策の推進方針の内容についての調査及び検討 (3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。 2 推進会議は、委員15人以内で組織する。 3 委員は、学識経験のある者その他市長が適当と認める者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。 4 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 5 委員は、再任されることができる。 6 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 (その他) 第8条 この条例の施行に関し、必要な事項は市長が別に定める。 附則 この条例は、平成27年(2015年)4月1日から施行する。
1.前文 手話は、音声言語である日本語とは異なる言語として、ろう者が自らの意思や考えを表現し、伝えるとともに、他者の思いや考えを理解する意思疎通の手段として使用され、これまで育まれてきました。 障害者基本法(昭和45年法律第84号)及び障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)において、言語には手話を含むことが明記されたが、手話が言語であるという認識は未だ社会において浸透しておらず、手話を使用する環境が十分には整っていないことから、ろう者は必要な情報を得ることやコミュニケーションをとることに不便や不安を感じながら生活をしてきました。 このような状況に鑑み、城陽市のまちづくりにおいては、手話が言語であるとの認識に基づき、これを広め、市民が手話をより身近に感じ、手話による意思疎通ができる社会を目指し、もって、 ろう者の社会参加がより一層推進されるよう積極的に取り組むことが必要です。 ここに、手話による自由な意思疎通が保障される社会の形成についての基本理念を明らかにし てその方向性を示し、将来に向かって市及び市民が当該社会の形成に関する施策を総合的かつ計 画的に推進するため、この条例を制定するものです。 2.目的 手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び、手話の普及を図り、地域において手話が使いやすい環境を構築するために、市の責務及び市民の役割を明らかにし、また、総合的かつ計画的な施策(以下「手話に関する施策」という。)の推進を図り、全ての市民が心豊かに暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とします。 3.基本理念 手話に対する理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話による意思疎通を円滑に図る権利が全ての市民に保障されることを基本として行うこととします。 4.市の責務 基本理念にのっとり、市民の手話についての理解を深めるとともに、手話による意思疎通ができる社会づくりを推進し、手話を用いての社会参加及び、手話の獲得、習得の機会を保障するために必要となる手話に関する施策を実施することとします。 5.市民の役割 (1)市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する施策に協力し、手話についての理解を深めるよう努めることとします。 (2)市内の手話に関わる団体は、手話に関する施策に協力するとともに、手話の意義及び基 本理念に対する理解の促進並びに手話の普及に努めることとします。 6.施策の策定及び推進 (1)市長は、手話に関する施策を推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)を策定することとします。 (2)施策の推進方針は、市長が別に定める障がい者に係る計画との調和が保たれたものでなければならないこととします。 (3)施策の推進方針においては、次の事項を定めることとします。 @ 手話に対する理解の促進及び手話の普及に関すること。 A 手話の獲得及び習得に関すること。 B 手話による情報取得に関すること。 C 手話による意思疎通支援の拡充に関すること。 D その他、市長が必要と認めること。 7.財政上の措置 手話に関する施策を推進するために、必要な財政上の措置を講ずるよう努めることとします。 8.城陽市手話施策推進会議 次の事務を行うため、城陽市手話施策推進会議を設置します。 @ 手話に関する施策についての評価 A この条例及び施策の推進方針の内容についての調査及び検討 B その他、市長が必要と認めること。 |
指文字・手話あいさつDVDで紹介 京都のサークル(2018年5月5日配信『京都新聞』)
指文字を紹介するDVDの一場面
京都府城陽市の手話サークル「てまり」が、市民向けに指文字や手話によるあいさつを紹介するDVDを作った。手話の普及に役立てるため、広く配布している。
てまりは1987年に活動を始め、会員同士の勉強会や、市内の幼稚園や保育園で手話教室を行っている。2015年4月に市手話言語条例が施行されたのを機に、DVDを企画した。
撮影や構成、出演者も全て会員らが手掛けた。約20分間の動画で、指を使った文字や数字の表し方、手話で行う日常のあいさつを紹介する。絵や図で分かりにくい動きが理解できる。
てまりの加藤勝会長は「まず手話に触れてもらいたい。コピーも自由にしてもらい、聴覚障害者を支える活動への入り口にしてくれればありがたい」と期待する。
市民優先で100人に無料配布する。市立図書館や幼稚園・保育園への寄贈も計画している。問い合わせは平日午前8時半〜午後5時に市社会福祉協議会地域福祉係0774(56)0909。
手話の普及へDVD制作 独自収録、市民100人に無料進呈(城陽の「てまり」)(2018年4月27日配信『城南新報』)
城陽市は2015年4月に府内市町村で初の「手話言語条例」を施行したが、市民への普及は進んでおらず、手話を学ぶきっかけにしてほしい―。そんな願いを込めて城陽手話サークル「てまり」(加藤勝会長、42人)は、手話の基礎『指文字(五十音)、数字、挨拶』を3部構成で伝えるDVDを制作。26日、市福祉センターで、会員らにお披露目上映を行った。
『手話は言語である』を基本理念に、城陽市は15年第1回定例会(3月議会)での可決を受け、府内に先駆けて市手話言語条例を華々しく施行。その後、丸3年が経過した。
市はこれまで消防を含む市職員やスーパーの従業員、金融・医療機関の職員らを対象にした「手話研修」、幼稚園・保育園に出向いた「手話教室」などを開き、その普及に取り組んでいるが、なかなか市民全体に関心を持ってもらえるところまでには至っていない。
手話マニュアル本や「クリアファイルを活用した指文字紹介」などもあるが、手の動きが重要視されるため、なかなか平面では分かりにくい。
そこで「てまり」は昨夏ごろ、府社協「京都ボランティアバンク補助金」に申請して費用を確保し、手話を分かりやすく紹介するDVD(約20分)を制作することを発案。
事業目的やDVDの内容などをまとめた書類を、府社協に提出して1次、2次審査をクリア。昨年12月に10万3000円の補助金が下りることが決まり、会の一部負担と合わせて「11万4000円」の制作費で事業を本格化させた。
会員のうち10人で実行委員会を作り、その中の一人、林長子さんが収録や編集を担当。しかし、活動拠点の福祉センター内では、手話の映像は撮影できても、ナレーターの音声にノイズが入るため、府聴覚言語センターのスタジオを借り受けて仕上げたという。
DVDは200枚制作。そのうち、先着100人に無料でプレゼントするほか、残りを会員や市内保育園、幼稚園や行政・報道関係などに配布することに。
加藤会長は「私も市手話政策推進委員のメンバーなので、次は市とタイアップして何か普及活動をしたい。駅で、ろうあ者の方と手話で会話していると、チラッと見て素通りする人が多い。まだまだ市民への普及は程遠いです」と課題を口にした。
林さんは「(全国市町村で初めて条例制定した)北海道の石狩市のように、いつでも、どこでも、簡単な手話で会話ができるまちになったらいいなあ、と思います」と切望した。
「てまり」は毎週第1、3、4木曜日の午後1時30分から3時30分まで市福祉センターで活動。手話の習熟度に応じて「初級・てんてんてまり」「中級・こてまり」「ベテラン・てまり」と3グループに分かれており、初心者の入会も大歓迎。
手話DVD(ダビング自由)の希望や入会に関する問い合わせは市社協рT6‐0909まで。
実行委員会のメンバー
手話条例と支援拠点、「聞こえ」へ連携 京都・城陽市(2015年6月8日配信『京都新聞』) |
府聴覚言語障害センターではすでに手話通訳者の講座が開かれている(城陽市寺田) |
京都府城陽市で4月、府内初の手話言語条例ができ、5月には聴覚言語障害者を支援する社会福祉法人の施設が開所した。相次いだのは偶然だが、両者は互いに「連携」を呼び掛け、「障害への理解を深めたい」としている。高齢化が進み、耳の聞こえづらさは身近な問題になっている。条例と施設の役割や意義を取材した。
■「市の責務」施策の受け皿に
「手で輪を広げる城陽市手話言語条例」は4月1日に施行した。手話を「言語」とし、手話習得の機会の保障を「市の責務」と掲げた。具体的には企業や保育園、幼稚園での手話指導、啓発チラシの作成などを行う。手話通訳者の養成につながるよう市が実施する簡単な手話を習う講座の充実も検討している。成田昌司福祉課長(43)は「手話を身近なものにしたい。英語の勉強のように知識を広め、人生を豊かにするものと捉えてほしい」と語る。
一方、京都聴覚言語障害者福祉協会(京都市中京区)が城陽市寺田のJR城陽駅近くに設置した府聴覚言語障害センターには、さまざまな機能がある。手話通訳者や要約筆記者などの養成と派遣▽難聴幼児のサポート▽聴覚障害者のデイサービス▽就労支援を兼ねたカフェ▽中途失聴者らの自立訓練−などで、柴田浩志所長(60)は「子どもからお年寄りまで1カ所で対応できる府南部の拠点ができた」と胸を張る。
5月17日の開所式では、協会の高田英一理事長が「手話言語条例を施行された時期に開所式を行うことは意義深い」とし、奥田敏晴市長も「本年度は聴覚障害への理解が進む年になるだろう。連携を深めたい」と応えた。
両者は「具体的な連携方法の検討はこれから」としながらも、手話言語条例の施策展開において「センターが人員、施設面で受け皿になれる」(柴田所長)と示唆する。
条例施行やセンター設置の背景には、高齢化が進む中、暮らしに切実な課題を抱える人が増加している状況がある。協会が2003年に行った山城地域の聴覚障害者へのアンケートで、聞こえにくくなった時期は40、50代が22・9%で最も多く、60歳以上が20・7%で続いた。困りごとを問う質問では、バス・電車の車内放送、病院の呼び出し、銀行や役所などでの会話の聞き取りづらさを多くの人が挙げ、いかに日常生活が不便かが明らかになっている。
柴田所長は、憲法で手話を言語として保障しているフィンランドでは聴覚障害者支援が充実していると指摘。城陽市がつくった条例の重要性を強調する。「誰もが耳が聞こえなくなるかもしれない。身近な問題と感じてもらいたい」と訴える。