神戸市、手話言語条例制定 政令市初 手話の普及目指す

 

 

2015年3月24日の本会議において、議員による政策提案条例(議員提出条例第55号議案 神戸市みんなの手話言語条例)を全会一致で可決した。

 

 この条例は、手話を「言語」として普及させ、耳の障害の有無にかかわらず誰もが十分にコミュニケーションを図れる地域社会を目指すため、手話への理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策に係る基本的事項を定めることにより、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もってろう者及びろう者以外の者が共生する地域社会を実現することを目的としている。

 

条例(全9条)では手話に関する総合的、計画的な施策の推進を市の「責務」と定め、実施状況を毎年議会に報告することも明記。神戸独自の取り組みとして、小中学校や高校にも「手話に接する機会の提供などに努める」ことを求め、関連施策への協力を市民、事業者の役割としている。

 

施行は、2015年4月1日。

 

 神戸市内で聴覚障害者の手帳を所持しているのは6477人(2014年3月末現在)で、このうち補聴器を使っても聞き取りが難しい人は約2000人という。 

 

 同条例の目的の実現に向け、神戸市会自らの率先した取り組みとして、インターネットで発信している本会議生中継・録画放映に手話通訳を政令指定都市として初めて2015年6月19日の本会議から導入した(その他、東京都議会、山梨県議会、熊本県議会、鳥取県議会、茨城県議会でも導入されており、広島市議会でも2016年6月議会から同様の措置がとられた)

 

 なお神戸市は2015年11月27日、児童への啓発のために、小学校4〜6年生を対象として、神戸市みんなの手話言語条例小学校高学年向け啓発リーフレットを配布した。

 

から

 

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神戸市議会基本条例(2012年7月施行)では、議会が積極的に政策立案等を行っていくことをうたっており、これに従い神戸市議会の与党4会派(民主こうべ、公明、自民神戸、自民)が2015年2月の市会定例会に「同市みんなの手話言語条例」を議員提案していて福祉環境委員会に審査が付託されていた。

 

会派は2014年8月、市民に理解を広げようと当事者団体や有識者らと条例化に向けた検討会を設置し、内容を協議してきた。

 

2月16日の本会議では、提出議員を代表して公明党の向井道尋議員が「世界で手話が言語であると位置づけられた今、神戸市は、市民みんなの手話への理解の促進に努め、手話を日常的に使用できる環境を整えることにより、ろう者もろう者以外の者も互いに心と心がふれ合い、通じ合うまちを目指して、この条例を定めます」と、手話を交えながらの提案説明が行われた。

 

 2014年12月22日会見した4会派の議員は、それぞれ手話で自己紹介。議会としても「本会議のインターネット中継に手話通訳を導入したい」とし、市側に予算措置を要望。また、「今回の条例をすべての障害者施策の推進につなげたい」とも強調していた。

 

手話言語条例の議員提案に向け、手話を交えて会見する神戸市会与党4会派の議員=神戸市役所

 

「神戸市みんなの手話言語条例」について

 

障害者権利条約が、2006年12月の国連総会で採択されました。条約では、障害に基づくあらゆる差別の禁止や障害者の権利・尊厳を守る事を謳っており、その中で、手話が法的に言語として認められたことから、多言語国家を中心に憲法で言語と認 知したり、手話言語法を制定したりする国が増加しました。

一方、日本では、2011年に障害者基本法が改正され「手話を言語に含む」と明記され、昨年1月20日にようやく同条約を締結しましたが、いまだ手話言語法の成立には至っておりません 。

そのような中、7月25日外務省から都道府県と政令指定都市に対し「同条約の趣旨を理解の上、適切な対応をお願いしたい」 との旨の通知が届いたところです。

神戸市においては、以前から神戸ろうあ協会や手話通訳者の方々が、ろう者からの相談、生活支援や会議等への手話通訳な どに取り組まれてこられました。

今後は、それをさらに進めるため、手話に関する施策の総合的・計画的な推進、教育・民間・行政など幅広い取り組みの推進 や、手話通訳者の地位向上に努めるなど、市をあげて“手話は言語であること”を広く普及させ、市民みんなで手話を日常的 に使用できる環境の向上に寄与していくことを目指して、「神戸市みんなの手話言語条例案」を提案するものです 。

 

神 戸 市 み ん な の 手 話 言 語 条 例pdf

 

平成27年3月31日

条例第36号

 

手話は、ろう者がコミュニケーションを図り、社会活動に参加し、人間関係を育み、成長していくために使われてきました。手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語として、ろう者にとって豊かな社会生活を営むために大切に受け継がれてきたものです。

しかし、手話は言語として認知されず、かつて多くのろう学校で手話が禁止されていました。そのため、様々な場面でろう者は多くの不便や不安を感じながら生活してきました。

手話の使用が制限される状況において、なお、手話が発展してきたのは、手話がろう者の「アイデンティティー」であり、「いのち」であったからです。

こうした中、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法において、手話は言語として位置付けられました。今後は、手話を必要とする全ての人が、いつでもどこでも容易に情報を得ることができ、コミュニケーションを十分に図ることができる社会を構築していかなければなりません。

神戸市は、昭和52年に全国に先駆けて神戸市民の福祉をまもる条例を制定し、市民及び事業者と共に誇り高い福祉都市の実現に向け取り組んできました。

世界で手話が言語であると位置付けられた今、神戸市は、市民みんなの手話への理解の促進に努め、手話を日常的に使用できる環境を整えることにより、ろう者もろう者以外の者も互いに心と心が触れ合い、通じ合うまちを目指して、この条例を定めます。

(目的)

第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策に係る基本的事項を定めることにより、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もってろう者及びろう者以外の者が共生する地域社会を実現することを目的とする。

(基本理念)

第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であること及びろう者が手話によりコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ろう者が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるよう必要な配慮を行い、手話に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。

(市民の役割)

第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第5条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。

(施策の推進方針)

第6条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)を定めるものとする。

(1) 手話への理解の促進及び手話の普及のための施策

(2) 手話により情報を取得する機会の拡大のための施策

(3) コミュニケーションの手段として手話を選択しやすい環境の整備のための施策

(4) 手話通訳者の確保及び養成のための施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

2 施策の推進方針は、障害者のための施策に関する市の基本的な計画と調和が保たれたものでなければならない。

3 市長は、施策の推進方針について、ろう者、手話通訳者その他関係者の意見を聴くため、これらの者との協議の場を設けなければならない。

(学校における理解の促進)

第7条 市は、学校教育の場において、基本理念にのっとり、手話に接する機会の提供その他の手話に親しむための取組を通じて、手話への理解の促進に努めるものとする。

(財政上の措置)

第8条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(議会への報告)

第9条 市長は、毎年度、本市の手話に関する施策の実施状況を議会に報告するものとする。

附 則

この条例は、平成27年4月1日から施行する。

 

 

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