青森県;黒石市手話言語条例
2016年9月16日、青森県黒石市議会でまちぐるみで手話への理解に努め、耳の不自由な市民らが暮らしやすい地域づくりを目指して提案された「市手話言語条例」(議案第76号)が可決、成立した。 市は今後、聴覚障害者が手話通訳者を利用しやすい環境づくりや、小中学校での講習会開催など、手話の普及に取り組む方針だ。市によると、手話言語条例の制定は県内の自治体では初めて。 注;ユニバーサルデザイン(万人向け設計)=ユニバーサル=普遍的な、全体の、という言葉が示しているように、「すべての人のためのデザイン」を意味し、年齢や障害の有無などにかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインすること。1980年代にノースカロライナ州立大学(米)のロナルド・メイス氏によって明確にされた。 能力あるいは障害のレベルにかかわらず、最大限可能な限り、全ての人々に利用しやすい環境と製品のデザイン。 公布は、2016年9月20日。施行は、2016年10月1日。
(舟の帆柱に火をつけて川に流す)大川原の「火流し」は豊作、疫病退散を願う行事で、南北朝時代のころから行われていると伝える。このほか黒石ねぷた、黒石よされ踊の行事がある。
第1条 目的 第2条 定義 第3条 手話の意義 第4条 基本理念 第5条 市の責務 第6条 市民の役割 第7条 事業者の役割 第8条 施策の推進 第9条 財政措置 第10条 委任 附則 手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する独自の文法を持つ「言語」です。ろう者にとって手話は、聞こえる人たちの音声言語と同様に、情報獲得とコミュニケーションの手段として育み受け継がれてきました。 しかし、過去には手話がこのような言語として広く社会に認められなかったことや、手話によるコミュニケーションがしやすい環境が整えられなかったことから、ろう者は、必要な情報を十分に得られず、多くの不便や不安を感じながら生活してきました。 このような状況の中、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は、音声言語と同様に言語であることが明記されました。 手話が言語であるとの認識に基づき、まち全体で手話への理解を深め、普及していくことで、ろう者が手話を使用しやすい環境をつくり、誰もがお互いを尊重し合い、共に生きる地域社会を実現する黒石市を目指し、この条例を制定します。 (目的) 第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関し基本理念を定めるとともに、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし、もって、ろう者及びろう者以外の者がお互いを尊重し合い、共に生きる地域社会を実現することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において「ろう者」とは、手話を言語としてコミュニケーションを図り、日常生活又は社会生活を営む聴覚障害者をいう。 (手話の意義) 第3条 手話は、独自の文法を有する「言語」であり、ろう者が日常生活や社会生活を営むために大切に育み受け継いできた文化的遺産であることを理解しなければならない。 (基本理念) 第4条 手話への理解の促進及び手話の普及は、ろう者が手話による円滑な意思疎通を図る権利を有し、その権利を尊重することを基本として行わなければならない。 (市の責務) 第5条 市は、基本理念にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及と、ろう者があらゆる場面で手話による円滑な意思疎通ができ、自立した生活や地域における社会参加を保障するため、必要な施策を推進するものとする。 2 市は、公的機関及び事業者が、合理的配慮を行うことができるよう必要な支援を推進するものとする。 (市民の役割) 第6条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。 2 ろう者は、手話への理解の促進及び手話の普及のための施策に協力するものとする。 (事業者の役割) 第7条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、及びろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。 (施策の推進) 第8条 市は、第5条第1項の規定に基づき、次に掲げる施策を推進するものとする。 (1) 手話の普及啓発を図るための施策 (2) 手話による情報を得る機会の拡大のための施策 (3) 手話通訳者の設置、派遣、養成等意思疎通支援者のための施策 (4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項 2 市は、施策の策定、見直し等をするときは、必要に応じて、ろう者、手話通訳者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重するものとする。 (財政措置) 第9条 市は、手話に関する施策を積極的に推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第10条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 この条例は、平成28年10月1日から施行する。 手話条例制定の3市が“言語化”進める事業(2019年5月13日配信『東奥日報』)
青森県内で手話言語条例を制定している黒石、弘前、八戸の3市で、研修会など手話に理解を深める事業が進められている。 青森・黒石市と連携協定締結 みちのく銀、手話普及で(2017年8月10日配信『日経新聞』―「地域経済」) みちのく銀行は8月9日、青森県黒石市と手話の普及や手話への理解促進で連携する協定を結んだ。高田邦洋頭取と高樋憲市長が同日、黒石市役所で協定書に調印した。みちのく銀は同市が認定した「手話言語条例推進事業所」とその従業員が利用する各種ローンの適用金利を0.2〜0.5%優遇する。 また、同行黒石支店の社員が手話講座を受講し、支店内に手話の普及啓発ポスターなどを掲示する。
垣根のない社会への一歩/黒石・手話言語条例制定(2016年10月21日配信『東奥日報』−「社説」) 黒石市が「手話言語条例」を県内の自治体で初めて制定、10月に施行した。これまで配慮が行き届かなかった部分に市民全体で目を配りながら、垣根のない社会の構築に向けた一歩を踏み出したい。 条例はろう者とそれ以外の者が互いを尊重し合い、ともに生きる地域社会の実現を目指す−との内容。条例前文で「手話によるコミュニケーションがしやすい環境が整えられなかったことから、ろう者は、必要な情報を十分に得られず、多くの不便や不安を感じながら生活してきました」と制定に至った経緯に触れている。手話は日本語、英語などと同様、聞こえない人にとって、日常生活を送る上で欠かせない「言語」であるとの認識をわれわれは共有すべきだ。 かつては口の動きで言葉を読み取る「口話法」が優れているとみなされ、手話は口話法の習得の妨げになるとして、ろうあ教育の場から排除されるという時代もあった。 口話法の取得は並大抵ではない。実用的なコミュニケーション能力が育たず日常生活に支障を来すケースもあった。近年ようやく手話への理解が進み、特別支援学校での導入も進んだ。2013年に鳥取県議会で国内初の手話言語条例が成立。全国に広がり、黒石市での取り組みにつながった。市は条例制定に満足することなく、ろう者の住みよい環境づくりを目指したい。同市の事例が今後、県内他自治体の条例制定につながるよう期待する。 条例はろう者の自立した生活と社会参加を保障するための施策の推進を「市の責務」と明記した。黒石市役所には現在手話通訳者1人が常駐する。ほかに派遣要請が重なった際や市外でも対応できる通訳者10人が登録しているが、黒石ろうあ協会によると決して満足いく数ではないという。利用したいと思いながら、我慢するろう者もいる。さらには医療・看護、法律など各種専門分野にたけた通訳者も不足がちだ。1人でも多くの通訳者確保につながるよう、養成講座の充実、報酬のアップなどの手を打ちたい。 条例は市民の側も「手話に関する市の施策に協力するよう努める」とある。市は小中学校での手話通訳講習会を検討している。幼少時から手話に触れることでろう者への理解につなげてほしい。同時に聴覚だけにとどまらずさまざまな障がいがある者との共生を促す取り組みとなればいい。 |