200人参加「あいさつ覚えた」 手話条例制定記念、釧路で催し 講演や寸劇で理解深める(2017年5月15日配信『北海道新聞』) 手話への理解深め、釧路市言語条例制定記念(2017年5月15日配信『釧路新聞』)
2017年3月17日、意思疎通の手段として手話を言語として認め、その普及に努めることなどを定めた釧路市手話言語条例案が市議会2月定例会で全会一致で可決された。 北海道では、石狩市、新得町、鹿追町、名寄市、登別市、室蘭市、帯広市、旭川市、洞爺湖町、伊達市、苫小牧市、についで、12例目(その後3月22日に赤平市が制定)。釧路、根室管内13市町村での制定は初めて。全国の自治体としては、83例目。 成立の瞬間を議場で見届けた関係者は「感無量」と喜びながらも「ここからが本当のスタート」と決意を新たにしている。 2015年6月に、釧路聴力障害者協会と2つの手話の関係団体から「手話言語条例」の制定を求める要望書の提出を受け、今後より一層、ろう者と手話に対する市民の理解を深め、手話を広く普及していくために、翌7月から、手話言語条例の制定に向けて「手話を使って豊かに暮らせる街の実現を目指す協議会」のほか、意見交換会、作業部会を開催し、検討。2016年11月29日には、第6回の協議会を開催し、手話の普及啓発に関する事業について釧路聴力障害者協会や釧路手話の会、学識経験者等の方々と協議を重ねてきた。
釧路市は、北海道東部、太平洋沿岸にある市。道東地方を管轄する国や道の出先機関のほか、日本銀行支店が設置され、道東の政治経済の中心として役割を担っている。 国際バルク戦略港湾(穀物)に選定された釧路港を持ち、製紙工場や食料品工場、医薬品製造工場、発電所などを擁する臨海工業都市で、全国唯一の石炭鉱業所が操業しており、地域の主力産業として地域経済の核となっている。 また、酪農を主力とする豊かな農業生産、豊富な森林資源を有する林業、そして国内有数の水揚げ量を誇る水産業など、日本の食料基地といえる地域でもある。 道東で唯一の定期国際便が就航する釧路空港と、釧路湿原国立公園及び阿寒国立公園の2つの国立公園を市域に有する。市内を釧路川、阿寒川が流れる。 さらに、特別天然記念物「タンチョウ」や阿寒湖の「マリモ」をはじめとする世界的にも貴重で魅力あふれる地域資源が豊富にあり、夏でも最高気温が20度前後と涼しく、移住・長期滞在にも適した地域である。 人口は、174,151(男;81,972/女;92,179)人、94,670世帯(2017年2月末現在。道東では最大であり道内でも第4位)。
釧路市手話言語条例 言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で必要不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。 手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、ろう者のコミュニケーションや、思考、論理、感性、情緒等の基盤となるものとして、ろう者の間で大切に育まれてきた。 しかしながら、我が国においては、長年にわたり、手話は言語として認知されず、手話を使う権利を保障する必要性が認識されない状態が続き、ろう者は、多くの不便や不安を感じながら生活してきた中で、ようやく平成23年の障害者基本法の一部改正において、言語に手話が含まれることが規定され、さらに、言語に手話その他の非音声言語が含まれることが明記されている障害者の権利に関する条約が、平成26年に批准された。 このような状況の下、ろう者が安心して暮らすことができるよう、手話により表現及び意見の自由についての権利を行使することができることを確保するためには、市民一人一人の手話に対する理解を深め、手話を使用しやすい環境を整備していくことが必要となっている。 ここに、ろう者が意思疎通等の手段として言語たる手話を使用することができる機会を確保するための手話の普及についての施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、ろう者(手話を言語として日常使用する聴覚障がい者をいう。以下同じ。)が意思疎通及び情報の取得のための手段として手話を使用することができる機会が可能な限り確保されなければならないものであることに鑑み、手話の普及に関し、基本理念を定め、並びに市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話の普及に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全ての市民が、ろう者であるかないかによって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に住み慣れた地域で心豊かに暮らすことができるまちづくりの実現を図ることを目的とする。 (基本理念) 第2条 手話の普及は、手話が言語であること並びにろう者が意思疎通及び情報の取得のための手段として手話を使用することを保障される権利を有することを前提とし、全ての市民が、相互に人格と個性を尊重し合うことを基本として行われなければならない。 (市の責務) 第3条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。 (市民及び事業者の役割) 第4条 市民は、基本理念にのっとり、手話に対する関心と理解を深めるとともに、市が推進する手話の普及に関する施策に協力するよう努めるものとする。 2 事業者(市内で事業活動その他の活動を行う者又は団体をいう。以下同じ。)は、基本理念にのっとり、市が推進する手話の普及に関する施策に協力するよう努めるとともに、提供するサービスをろう者が円滑に利用することができるよう、及びろう者が働きやすい職場環境となるよう、手話の使用に関して配慮するよう努めるものとする。 (基本方針) 第5条 市は、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、手話の普及に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。 2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。 (1)
手話に対する市民及び事業者の理解の促進に関すること。 (2)
手話通訳者の派遣又は設置及び養成その他のろう者とろう者以外の者が手話により意思疎通を図ることができる環境の整備に関すること。 (3)
ろう者が手話により情報の取得を行うことができる環境の整備に関すること。 (4)
前3号に掲げるもののほか、手話の普及に関する基本的な事項に関すること。 3 市は、基本方針及びこれに基づく施策にろう者、手話通訳者その他の関係者の意見を適切に反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。 (財政上の措置) 第6条 市は、手話の普及に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 この条例は、平成29年4月1日から施行する。 釧路市手話言語条例(素案) 〔前文〕 言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で必要不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。 手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、ろう者のコミュニケーションや、思考、論理、感性、情緒等の基盤となるものとして、ろう者の間で大切に育まれてきた。 しかしながら、我が国においては、長年にわたり、手話は言語として認知されず、手話を使う権利を保障する必要性が認識されない状態が続き、ろう者は、多くの不便や不安を感じながら生活してきた中で、ようやく平成23年の障害者基本法の一部改正において、言語に手話が含まれることが規定され、さらに、言語に手話その他の非音声言語が含まれることが明記されている障害者の権利に関する条約が、平成26年に批准された。 このような状況の下、ろう者が安心して暮らすことができるよう、手話により表現及び意見の自由についての権利を行使することができることを確保するためには、市民一人一人の手話に対する理解を深め、手話を使用しやすい環境を整備していくことが必要となっている。 ここに、ろう者が意思疎通等の手段として言語たる手話を使用することができる機会を確保するための手話の普及についての施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。 ○ 前文は、法令の条項の前に置かれる文章で、法令の趣旨・目的・基本原則などを宣言するものです。 ○ この条例の前文では、次のことを宣明しています。 @ 手話は言語であり、ろう者の間で大切に育まれてきたこと。 A 近年、ようやく国内法でも手話が言語であることが規定されたこと。 B ろう者が安心して暮らすことができるよう、市民一人一人の手話に対する理解を深め、手話を使用しやすい環境を整備していくことが必要となっていること。 C 手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために、この条例を制定すること。 (目的) 第1条 この条例は、ろう者(手話を言語として日常使用する聴覚障がい者をいう。以下同じ。)が意思疎通及び情報の取得のための手段として手話を使用することができる機会が可能な限り確保されなければならないものであることに鑑み、手話の普及に関し、基本理念を定め、並びに市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話の普及に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全ての市民が、ろう者であるかないかによって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に住み慣れた地域で心豊かに暮らすことができるまちづくりの実現を図ることを目的とする。 ○ この条例の目的を規定するものです。 ○ この条例の目的は、手話の普及に関し、「基本理念」を定めて「市の責務」と「市民及び事業者の役割」を明らかにするとともに、「手話の普及に関する施策の基本となる事項」を定めることにより、「手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進すること」であり、それによって、全ての市民が、ろう者であるかないかによって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に住み慣れた地域で心豊かに暮らすことができるまちづくりの実現を目指すものです。 (基本理念) 第2条 手話の普及は、手話が言語であること並びにろう者が意思疎通及び情報の取得のための手段として手話を使用することを保障される権利を有することを前提とし、全ての市民が、相互に人格と個性を尊重し合うことを基本として行われなければならない。 ○ 手話の普及に関する「基本理念」として、手話の普及は、「手話が言語であること」及び「ろう者が意思疎通等の手段に手話を使用することを保障される権利を有すること」を前提として、全ての市民が、相互に人格と個性を尊重し合うことを基本として行われなければならないことを規定するものです。 (市の責務) 第3条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。 ○ 市の責務として、基本理念にのっとり、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを規定するものです。 (市民及び事業者の役割) 第4条 市民は、基本理念にのっとり、手話に対する関心と理解を深めるとともに、市が推進する手話の普及に関する施策に協力するよう努めるものとする。 2 事業者(市内で事業活動その他の活動を行う者又は団体をいう。以下同じ。)は、基本理念にのっとり、市が推進する手話の普及に関する施策に協力するよう努めるとともに、提供するサービスをろう者が円滑に利用することができるよう、及びろう者が働きやすい職場環境となるよう、手話の使用に関して配慮するよう努めるものとする。 ○ 市民の役割として、基本理念にのっとり、手話に対する関心と理解を深めるとともに、市が推進する手話の普及に関する施策に協力するよう努めることを規定するものです。具体的には、市が実施する市民向け手話講座などの手話の普及に関する各種事業に参加することなどが考えられます。 ○ また、事業者の役割として、基本理念にのっとり、市が推進する手話の普及に関する施策に協力するよう努めるとともに、サービスの提供や、ろう者が働く職場環境において、手話の使用に関して配慮するよう努めることを規定するものです。具体的には、手話通訳者を配置することや、従業員の手話研修の機会を設けることなどが考えられます。 (基本方針) 第5条 市は、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、手話の普及に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。 2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。 (1) 手話に対する市民及び事業者の理解の促進に関すること。 (2) 手話通訳者の派遣又は設置及び養成その他のろう者とろう者以外の者が手話により意思疎通を図ることができる環境の整備に関すること。 (3) ろう者が手話により情報の取得を行うことができる環境の整備に関すること。 (4) 前3号に掲げるもののほか、手話の普及に関する基本的な事項に関すること。 3 市は、基本方針及びこれに基づく施策にろう者、手話通訳者その他の関係者の意見を適切に反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。 ○ 市は、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本方針を定めることを規定するものです。 ○ 市は、基本方針及び基本方針に基づく施策に、ろう者や手話通訳者などの関係者の意見を適切に反映することができるよう、関係者との協議の場を設けるなど、必要な措置を講ずるものとします。 (財政上の措置) 第6条 市は、手話の普及に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 ○ 市は、手話の普及に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めることを規定するものです。 (委任) 第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 この条例は、平成29年4月1日から施行する。 条例制定の背景、目的 手話は、日本語と異なる文法構造を持つ言語(非音声言語)であり、ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造する上で必要不可欠なものとして、手話を大切に育んできました。 しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることもコミュニケーシヨンをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきました。 そうした中、平成23年に改正された「障害者基本法」や、平成18年に国際連合総会で採択され、平成26年に我が国が批准した「障害者の権利に関する条約」において、手話は言語であることが明記され、ろう者が意思疎通等の手段として手話を使用することができる環境の整備が求められるようになっています。 釧路市では、平成27年6月に、釧路聴力障害者協会と2つの手話の関係団体から「手話言語条例」の制定を求める要望書の提出を受け、今後より一層、ろう者と手話に対する市民の理解を深め、手話を広く普及していくために、これらの団体との意見交換を行い、「釧路市手話言語条例」の制定に向けた検討を進めてきました。 条例案の検討に当たっては、同年11月に、聴覚障がい者の団体や、手話及び要約筆記の関係団体、学識経験者などで構成する「釧路市手話を使って豊かに暮らせる街の実現を目指す協議会」を立ち上げ、以後、条例制定に向けた具体的論議を行う作業部会を含め、14回にわたる会議を重ねていただき、そこでの意見等を踏まえて、このたび、市において、釧路市手話言語条例素案を作成いたしました。 |
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