埼玉県入間郡三芳町;手話言語条例

                                       

 

埼玉県入間郡三芳町(みよしまち)議会、2015年12月10日に開催されました12月定例本会議におい、「三芳町手話言語条例」を全会一致で可決し、即日(同日)公布・施行した。

 

埼玉県内の町村では初めての制定、市を含むと自治体では朝霞市に次いで2番目、全国では24番目となる。

 

条例制定の背景には、障害者の権利に関する条約(2006年採択)障害者基本法(2011年改正)において、手話が言語として位置付けられたことを受けて、手話を使う権利を具体的に保障する手話言語法の制定を求める動きが全国的に広まり、また、2016年4月により施行される「障害者差別解消法」においても障害を理由とした差別を解消するために「合理的配慮」を行うとしていることがある。

 

条例では、視覚的に表現する暮らしの中で大事な言語である「手話」を使う人と音声言語である「日本語」を使う人が、それぞれの言語を尊重し、意思疎通を図りともに生きる社会(共生社会)を目指すとして、条例の趣旨、基本理念、町の責務、住民の役割、施策の推進方針、財政措置などが定められている。

 

 

三芳町では、障がい者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話が言語と認められたことを受けて、手話は言語であるとの認識に基づき、手話を身近に感じ、みんながお互いに暮らしやすいまちにする目的で、手話への理解と普及を図ることを目的に意思疎通支援事業などを共同で実施している富士見市とともに、「手話言語条例」の制定に向けて協議を進めてきた。

 

そのため、聴覚障がい者団体などを含めた任意の検討委員会を富士見市と合同で設置し、2015年5月から8月にかけて4回の会議を行った。

 

10月6日には、手話言語条例の制定に向けて、条例の内容や必要性について考えるシンポジウムを開催。当日は手話通訳・要約筆記(その場で話されている内容を即時に要約して文字にする通訳方法)・磁気誘導ループ(聴覚障害者用の補聴器を補助する放送設備。磁気を受信し、音声信号に変えることで雑音の少ないクリアな音声を聴くことができる。国際的には「ヒヤリングループ」という)がついた。  

シンポジウムでは、久松三二(ひさまつ みつじ)(財)全日本ろうあ連盟事務局長が「手話言語条例の意義について」講演し、障がい当事者等の体験談から、手話言語条例制定後に目指す地域社会について話し合った。参加した市民は、実際に手話通訳や要約筆記等を体験することができた。

 

三芳町は、この条例案について、10月1日から10月30日まで町民の意見を募集(パブリックコメント)した。

 

 

三芳町手話言語条例(pdf) 2016(平成27)年12月10日 条例第26号

 

手話は、日本語と同様に一つの言語です。言語である手話が私たちの暮らしの中で日本語と共に使用できる環境、すなわち日本語を使う人と手話を使う人の相互の意思疎通が可能な社会を実現するためにこの条例を制定します。

そもそも言語とは、人間相互が意志や感情を伝えあい知識を得ることや文化を創造する上で不可欠なものであり、人類発展に大きな役割を果たしてきました。

言語の中で手話は、音声言語である日本語と異なり、手や指の動き、表情を使い視覚的に表現する言語です。聞こえる人が日本語を使い物事を考え、会話をしてきたように、日本の手話は、耳が聞こえない人、聞こえづらい人にとって物事を考え、会話する時に使われてきました。障害者の権利に関する条約や障害者基本法において手話が言語として位置付けられたことを受け、私たちの暮らしの中で日本語と手話が言語として共存することになりました。日々の暮らしの中で、日本語を使用する人にも手話が必要であり、手話を使用する人にも日本語が必要です。また、この町で推進する『あいサポート運動』の理念である「障がいを知り共に生きる」を実現するためにも、住民が互いの言語を尊重し、それぞれの言語を介して意思疎通を図り、共に生きる社会(共生社会)を構築することをこの条例により目指していきます。

 

(趣旨)

第1条 この条例は、手話は言語であるとの考えに基づき、地域の中で手話をコミュニケーションの手段として位置付け、住民相互の意思疎通を円滑にすることで住民の人格と個性が尊重されるこころ豊かなまちづくりを実現することを目的とし、手話への理解の促進及び手話の普及並びに手話を使いやすい環境を整備するため、基本的な事項を定めるものとする。

 

(基本理念)

第2条 言語である手話は、意思疎通の手段として一方的なものではなく、住民相互に必要な言語として尊重されなければならない。

 

(町の責務)

第3条 町は、前条の基本理念にのっとり手話に対する理解と手話の普及を図り、手話を使用できる環境整備を行うため必要な施策を推進するものとする。

 

(住民の役割)

第4条 住民は、第2条の基本理念に対する理解を深め、町が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(施策の推進方針)

第5条 町は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針(以下「推進方針」という。)を策定するものとする。

(1) 手話に対する理解及び手話の普及を図るための施策

(2) 住民が意思疎通又は情報の取得を手話により行うことができる機会の拡大のための施策

(3) 住民が意思疎通の手段として容易に手話を選択し、使用することができる環境の構築のための施策

(4) 学校教育の場における手話に対する理解及び手話の普及のための施策

(5) 手話通訳者の配置の拡充及び処遇改善など、手話による意思疎通支援者のための施策

(6) 前各号に掲げるもののほか、町長が必要と認める事項

2 町は、推進方針を、町の施策や別に定める障がい者に関する計画との調和を保ちながら策定するものとする。

3 町は、推進方針について、手話を使用する人その他の関係者の意見を聴くための場を設けなければならない。

 

(財政措置)

第6条 町は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(委任)

第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。

 

附 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

手話言語条例(案)

前文

手話は、日本語と同様に一つの言語です。言語である手話が私たちの暮らしの中で日本語と共に使用できる環境、すなわち日本語を使う人と手話を使う人の相互の意思疎通が可能な社会を実現するためにこの条例を制定します。

そもそも言語とは、人間相互が意志や感情を伝えあい知識を得ることや文化を創造する上で不可欠なものであり、人類発展に大きな役割を果たしてきました。

言語の中で手話は、音声言語である日本語と異なり、手や指の動き、表情を使い視覚的に表現する言語です。聞こえる人が日本語を使い物事を考え、会話をしてきたように、日本の手話は、耳が聞こえない人、聞こえづらい人にとって物事を考え、会話する時に使われてきました。障害者の権利に関する条約や障害者基本法において手話が言語として位置付けられたことを受け、私たちの暮らしの中で日本語と手話が言語として共存することになりました。日々の暮らしの中で日本語を使用する人にも手話が必要であり、手話を使用する人にも日本語が必要です。また、この町で推進する『あいサポート運動』の理念である「障がいを知り共に生きる」を実現するためにも、住民が互いの言語を尊重し、それぞれの言語を介して意思疎通を図り、共に生きる社会(共生社会)を構築することをこの条例により目指していきます。

 

(趣旨)

第1条 この条例は、手話は言語であるとの考えに基づき、地域の中で手話をコミュニケーションの手段として位置付け、住民相互の意思疎通を円滑にすることで住民の人格と個性が尊重されるこころ豊かなまちづくりを実現することを目的とし、手話への理解の促進及び手話の普及並びに手話を使いやすい環境を整備するため、基本的な事項を定めるものとする。

 

(基本理念)

第2条 言語である手話は、意思疎通の手段として一方的なものではなく、住民相互に必要な言語として尊重されなければならない。

 

(町の責務)

第3条 町は、基本理念にのっとり手話の理解と普及を図り、手話が使用できる環境整備を行うため必要な施策を推進するものとする。

 

(町民の役割)

第4条 町民は、基本理念に対する理解を深め、町が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(施策の推進方針)

第5条 町は、次の各号に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針(以下「推進方針」という。)を策定するものとする。

(1) 手話に対する理解及び手話の普及を図るための施策

(2) 住民が手話による意思疎通や情報を得る機会の拡大のための施策

(3) 住民が意志疎通の手段として手話を選択することが容易にでき、かつ、手話を使用しやすい環境の構築のための施策

(4) 学校教育の場における手話の理解及び普及のための施策

(5) 手話通訳者の配置の拡充及び処遇改善など、手話による意思疎通支援者のための施策

(6) 前各号に掲げるもののほか、町長が必要と認める事項

2 町は、推進方針を、町の施策や別に定める障がい者に関する計画との調和を保ちながら策定するものとする。

3 町は、推進方針について、手話を使用する人やその他関係者の意見を聴くための場を設けなければならない。

 

(財政措置)

第6条 町は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(委任)

第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。

 

附 則

この条例は、平成28年4月1日から施行する。

 

 

1 三芳町手話言語条例案の趣旨及び目的

 手話が言語であることの認識に基づき、手話の理解並びに普及及び地域において、手話を使用しやすい環境の構築に関し基本理念を定め、住民の責務及び役割を明らかにするとともに、ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的としている。

 

2 三芳町手話言語条例案作成の経緯

手話は、障害者の権利に関する条例や障害者基本法において、言語として位置付けられたことにより条例を制定するにあたる。

 

3 三芳町手話言語条例案に対する町の考え方及び論点

 障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として認められたが、手話に関する理解や普及が進んでいないのが現状である。したがって、手話の理解と広がりをもって地域で支え合い、手話を使って安心して暮らすことができる環境整備をするため条例を制定が必要と考える。

 

 

三芳町(みよしまち)は、埼玉県の南部にある東京に最も近い町で、東京への通勤率は25.5%(2000年国勢調査)である。東京ベッドタウンとしての開発発展も進みつつあるが、町内には柳沢吉保公ゆかりの三富(さんとめ)開発の地である「上富地区」もあり、川越芋(サツマイモ)の一大産地となっている。

富士見市等合併の計画もあったが、住民投票で合併反対が賛成を上回ったため、合併は中止になった。

町内を南北に川越街道(国道254号)・関越自動車道が通り、関越自動車道三芳PAにはスマートインターチェンジも併設されている。さらに町内を東西に浦所バイパス(国道463号)が通る交通の要所であるが、鉄道の駅は無い。

 人口は38,218(男19,156・女19,062)人/世帯数15,784(2015年9月末現在)。

 

 

 

 

 

 

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