岡山市手話言語等の普及及び理解の促進に関する条例

 

相次ぐ手話言語条例制定(2018年4月28日配信『朝日新聞』−「岡山版」)

 

 

 

議場で当事者と握手を交わす大森雅夫・岡山市長=岡山市役所(2018年3月17日配信『朝日新聞』)

 

 2018年2月21日開会の岡山市議会に上程されていた静岡県内初の「岡山市手話言語等の普及及び理解の促進に関する条例」案が3月16日の2月定例議会で、全会一致で可決された。施行は、2018年4月1日。

 

岡山市長の提案理由は、「障害の有無にかかわりなく,誰もが住みよい共生のまち岡山の実現を目指して、今議会に岡山市手話言語等の普及及び理解の促進に関する条例をお諮りしているほか、2019年度には、ユニバーサルデザイン実行計画を策定する予定としております」としていた。

 

傍聴席を埋めた当事者や関係団体の人々は、議場で大森雅夫市長や市議会議員らと一緒に記念撮影をし、条例制定への感謝を伝えた。

 

同条例は、手話を「言語」として認め、また、手話に加え要約筆記や点字など、障害がある人たちが必要とするコミュニケーション手段の理解促進と普及について市の基本理念を定めている。

 

市議会での可決を受け、県聴覚障害者福祉協会の中西厚美会長は「岡山市の条例が、県の動きにつながると思う」と期待を寄せた。

 

同条例は、手話にとどまらず、要約筆記や点字など他のコミュニケーション手段についても定める点が他市の手話言語条例と異なる。「情報・コミュニケーション条例」と呼ばれる体裁で、全日本ろうあ連盟によると、同様の条例は兵庫県明石市が2015年に初めて制定。2017年12月26日現在、全国18の自治体で成立しており、岡山市lが19例目。なお、中国地方では鳥取県が2017年制定している。

 

 手話を言語と認める「手話言語条例」としては、岡山県内で2017年に高梁市玉野市が制定。2018年3月20日に「瀬戸内市手話言語条例」が3月23日に「笠岡市手話言語条例が可決成立している。

 

 

岡山市は、旭川と吉井川が瀬戸内海に注ぐ岡山平野の中央に位置し、南部は地味豊かな沃野、北部は吉備高原の山並みがひろがっている。冬は厳しい季節風を中国山地がさえぎって積雪をみることはまれである。温暖な瀬戸内海特有の風土により春や秋は快晴の日が多く、また、台風や地震などの自然災害も少なく、非常に恵まれた環境にある。

 

岡山市の人口は、721,608人、324,245世帯(2018年1月1日現在)

 

岡山市障害者の状況

 

 

岡山市手話言語等の普及及び理解の促進に関する条例

 

手話は,音声言語である日本語と異なる言語であり,手指や体の動き,表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は,物事を考え,コミュニケーションを図り,互いの気持ちを理解し合うために,また,知識を蓄え,文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。

しかしながら,これまで手話が言語として認められてこなかったことや,手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから,ろう者は,必要な情報を得ることもコミュニケーションをとることもできず,多くの不便や不安を感じながら生活してきた。

こうした中,障害者基本法の改正により手話は言語であると規定されるなど障害者に関する様々な国内法が整備され,障害者を取り巻く状況は大きく変わってきている。このような状況に鑑み,手話は言語であるとの認識に基づき,手話の理解と広がりをもって地域で互いに支え合い,手話を使って安心して暮らすことができる市を目指すとともに,手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進を図るため,この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は,手話は言語であるという認識に立ち,手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進並びに手話等のコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保について基本理念を定め,市,市民及び事業者の責務を明らかにし,並びに障害者がその障害特性に応じて情報を取得し,及び手話等のコミュニケーション手段を利用しやすい環境を整備するための施策を総合的かつ計画的に推進し,もって一人ひとりの尊厳を大切にして安心して暮らすことができる地域社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。

(1) 障害者 身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) ろう者 手話を言語として利用して日常生活又は社会生活を営む者をいう。

(3) 社会的障壁 障害者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。

(4) 手話等のコミュニケーション手段 手話,要約筆記,点字その他の障害者が日常生活又は社会生活を営むに当たり必要とされるコミュニケーションの手段をいう。

(5) 合理的な配慮 障害者が日常生活又は社会生活において,障害のない人と同等の権利を行使するため,必要かつ適切な現状の変更,調整等を行うことをいう。

(6) コミュニケーション支援者 手話通訳者,要約筆記者,点訳者その他の障害者への伝達補助等を行う支援者をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進は,手話等のコミュニケーション手段が,障害者が生活をする上で必要不可欠であるという理解の下に,ろう者,中途失聴者,難聴者,視覚障害者その他の手話等のコミュニケーション手段を必要とする障害者とそれ以外の人とが相互に人格及び個性を尊重することを基本として行われなければならない。

2 手話等のコミュニケーション手段を利用する人が有している,障害の特性に応じてコミュニケーションを円滑に図る権利は,最大限尊重されなければならない。

3 手話の普及は,手話が独自の言語体系を有する文化的所産であるとの理解を基本として行われなければならない。

 

(市の責務)

第4条 市は,手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進のための施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

 

(市民の責務)

第5条 市民は,社会において手話は言語であると認識されていること並びに障害者が情報を取得し,及び手話等のコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保が,障害者の日常生活及び社会生活にとって必要不可欠であることを理解し,手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進に係る市の施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の責務)

第6条 事業者は,社会において手話は言語であると認識されていること並びに障害者が情報を取得し,及び手話等のコミュニケーション手段を選択して利用する機会の確保が,障害者の日常生活及び社会生活にとって必要不可欠であることを理解し,手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進に係る市の施策に協力するよう努めるとともに,障害者が手話等のコミュニケーション手段を利用できるようにするための合理的な配慮を行うよう努めるものとする。

 

(施策の推進方針)

第7条 市は,第4条の規定に基づき,手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進を図るため,障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に規定する市町村障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項に規定する市町村障害福祉計画において,次に掲げる事項に係る施策を推進するための方針を定め,これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 市民に対する手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進

(2) 障害者が情報を取得し,及び手話等のコミュニケーション手段を選択して利用しやすい環境の整備

(3) コミュニケーション支援者の育成,確保等

2 市は,前項の方針を推進するために,予算の範囲内において,必要な措置を講ずるものとする。

3 市は,第4条の施策の実施状況を確認する必要がある場合は,障害者,コミュニケーション支援者その他の関係者の意見を聴くものとする。

 

(手話等を学ぶ機会の提供等)

第8条 市は,障害者,コミュニケーション支援者及び関係団体と協力して,市民の手話等のコミュニケーション手段を学ぶ機会の確保に努め,支援するものとする。

 

(手話等を用いた情報発信等)

第9条 市は,障害者が市政に関する情報を速やかに得ることができるよう,手話等のコミュニケーション手段を用いた情報発信を推進するものとする。

 

(公共施設における理解促進及び啓発)

第10条 市は,公共施設において,市民の手話等のコミュニケーション手段の普及及び理解の促進を図るための啓発を行うものとする。

 

附 則

この条例は,平成30年4月1日から施行する。

 

提案理由

  障害者が手話等のコミュニケーション手段を利用しやすい環境を整備するための施策を総合的かつ計画的に推進し,もって一人ひとりの尊厳を大切にして安心して暮らすことができる地域社会を実現するため,本条例を制定しようとするものである。

 

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