大阪府手話言語条例
大阪府言語としての手話の認識の普及及び習得の機会の確保に関する条例
大阪府は、2017年2月24日開会予定の府議会2月定例会に、言語としての手話への認識を普及させることや、聴覚障害者やその家族、学校、職場での手話習得の機会を確保することを定める「大阪府言語としての手話の認識の普及及び習得の機会の確保に関する条例(案)」(府手話言語条例案)を提出した。
条例案は2017年3月24日の本会議で可決された。3月29日公布・即日施行。
これまで97の自治体で条例が制定されている(2016年3月24日現在)が、乳幼児期から手話を習得する機会の確保を盛り込んでいるのは全国初である。
大阪府内では大東市、大阪市、熊取町、堺市についで5例目。府県としては、鳥取県、神奈川県、群馬県、長野県、埼玉県、沖縄県、千葉県、三重県、愛知県、秋田県、山形県に次いで12例目となる。
乳幼児期に自然に習得できる日本語と比べ、聴覚に障害のある乳幼児は家族が手話を使えないと自然に言語を覚えることは容易でなく、言語能力の発達に支障が出る可能性があることと、府が2016年7月に実施したアンケートでは言語としての手話への認識がある府民は39・8%にとどまったことから、府は普及啓発と習得の機会の確保が必要だと判断したという。 2014年3月24日には、「手話言語法(仮称)」制定を求める意見書が府議会で採択されており、同条例案を巡っては公明党府議団が府に制定を求めていた。
府では、2016年4月に大阪府障がい者施策推進協議会に手話言語条例検討部会(部会長・河ア佳子神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授➡手話とろう者 〜家族・教育〈抜粋。pdf〉)を設置し、府における手話言語に係る条例や取組みの方向性について検討してきた。
府は、部会の提言を踏まえ、「大阪府言語としての手話の認識の普及及び習得の機会の確保に関する条例(案)」をとりまとめ、「大阪府パブリックコメント手続実施要綱」に基づき、2016年12月5日から2017年1月4日まで府民からの意見・提言等を聞いた。
募集結果(pdf)は、15名から、15件(うち、意見の公表を望まないもの3件)だった。
府は条例に基づき聴覚障害者団体と連携した乳幼児手話教室を展開するほか、中途失聴者を対象とした手話講座の開催を想定。このほか、主に特別支援学校や難聴児学級のある小中学校などが習得の機会を設ける場合は講師をあっせんするなどの支援を行う。
大阪府における障がい者数(2014年3月末現在)は、以下の通り。 なお、大阪府の推計人口(2017年1月1日現在)は、総数8,835,598人(男;4,250,938人/女;4,584,660人)、3,966,489世帯。
大阪府では、2017年8月30日、同条例に基づく施策の推進にあたって、株式会社サイレントボイスと事業連携協定を締結した。 今回の協定締結に先立ち、同社は日常会話で使える手話表現を学べる動画を制作し公開している。 【協定概要】 1.名称 大阪府と株式会社サイレントボイスとの手話言語条例に基づく施策の推進に関する協定書 2.内容 (1)手話言語条例第3条から第5条に基づく手話の習得の機会の確保に係る取組みに関すること (2)その他必要と認められる事項
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手話言語条例検討部会資料(pdf) |
手話言語条例検討部会資料(pdf) 手話言語条例検討部会資料(pdf)
大阪府議会傍聴者に対する手話通訳の実施に関する要領 (趣旨) 第1条 この要領は、公開されている会議傍聴者に対する手話通訳の実施に関し、必要な事項を定めるものとする。 (条件) 第2条 手話通訳は、公開されている本会議又は委員会を傍聴しようとする聴覚などに障がいがある者で手話通訳を必要とする者(以下「聴覚障がい者」という。)による大阪府議会議長(以下「議長」という。)への申込みに基づき行うものとする。 2 前項の手話通訳は、申込みをした聴覚障がい者の傍聴時に限り行うものとする。 (場所) 第3条 手話通訳は、傍聴席の所定の場所で行うものとする。 (申込み手続き) 第4条 手話通訳の実施を希望する聴覚障がい者は、様式第1号による手話通訳実施申込書(以下「実施申込書」という。)に必要事項を記入し、大阪府議会事務局議事課(以下「議事課」という。)を経由して議長へ提出しなければならない。 2 議長は、前項の申込みについて、 ファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターを用いて実施申込書の内容を議長が指定するファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターに送信する方法により、行わせることができる。 3 前2項による申込みは、 傍聴しようとする会議が開かれる日(以下「傍聴予定日」という。)の3日前(大阪府の休日に関する条例第2条第1項に規定する府の休日は算入しない。)の日の午後5時までに行わなければならない。 4 第2項の規定により行われた申込みは、同項の議長が指定するファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターにより 受信した時に議長に到達したものとみなす。 5 議長は、第2項の規定による申込みが行われた場合、 当該申込みをした者に対し、 送信に利用した実施申込書を提出させることができる。 (申込み内容の変更) 第5条 手話通訳の申込みの内容を変更する場合は、様式第2号による手話通訳実施変更申込書(以下「変更申込書」という。)に必要事項を記入し、議事課を経由して議長に提出しなければならない。 2 議長は、前項の申込みについて、ファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターを用いて変更申込書の内容を議長が指定するファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターに送信する方法により、行わせることができる。 3 前2項による申込みは、できる限り速やかに行わなければならない。 4 前条第4項及び同条第5項の規定は、第2項の規定により行われた申込みについて準用する。 (申込みの取下げ) 第6条 手話通訳の申込みを取り下げる場合は、様式第3号による手話通訳実施申込取下書(以下「取下書」という。)に必要事項を記入し、議事課を経由して議長へ提出しなければならない。 2 議長は、前項の取下げについて、 ファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターを用いて取下書の内容を議長が指定するファクシミリ装置又はパーソナルコンピューターに送信する方法により、行わせることができる。 3 前2項による取下げは、できる限り速やかに行わなければならない。 4 第4条第4項及び同条第5項の規定は、第2項の規定により行われた取下げについて準用する。 附 則 1 この規定は、平成24年4月27日から施行する。
全日本ろうあ連盟『手話言語ニュースNo54(2018年7月30日)号➡拡大画像 乳幼児の手話教室が盛況 大阪府の条例が後押し(2017年10月20日配信『福祉新聞」) 大阪聴力障害者協会(大竹浩司会長)が6月から大阪市内で始めた乳幼児手話教室「こめっこ」が盛況だ。日本財団の助成を得て月2回土曜日に開き、手話による絵本の読み聞かせや手遊びなどを行う。聴覚障害児が乳幼児期に手話と触れ合う機会は制度的に保障されていないため、近隣の府県から参加する親子もいる。 9月中旬、生後3カ月の子を連れて初めて参加した夫婦は「『こめっこ』のことはインターネットで知った。これまでは途方に暮れていたが、ここで元気に遊んでいるお子さんを見ていると希望が持てる」と話す。 言葉は自然に覚えるのに手話はそうなっていない現状への強い問題意識が根底にある。それが条例第1条(目的)の「言語としての手話の認識の普及及び習得の機会の確保」の文言につながり、「こめっこ」につながった。 手話でふれあい大はしゃぎ 大阪府条例に基づいた集い初開催(2017年6月18日配信『産経新聞』) 聴覚障害のある乳幼児とその保護者らを対象にした集い「こめっこ」が17日、TKP大阪堺筋本町カンファレンスセンター(大阪市中央区)で初めて開かれ、約70人の親子連れらが、絵本の読み聞かせなどを通して手話でのコミュニケーションを楽しんだ。 3月施行の府手話言語条例に基づくもので、大阪聴力障害者協会が実施した。手話は独自の文法を持つ言語であり聴覚障害者の母語となるが、家族が手話を使えない場合は乳幼児期の自然な獲得が困難なうえ、法的にも習得の機会が保障されていない。条例は全国で初めて行政が習得機会を確保するもので、府と協定を結んだ同協会がこめっこや中途失聴者を対象にした手話講座などを開く予定。 初日のこの日は聴覚障害のあるスタッフが手話で子供たちに語りかけ、別のスタッフが日本語に通訳しながら進行。手話とジェスチャーを交えた絵本の読み聞かせなどが行われ、子供たちは大はしゃぎで一緒に体を動かしたり、手話をまねしたりしていた。 その後の交流会では、手話がなかなか覚えられないという保護者にスタッフが「同じ英語の授業を受けていても個人差があるのと同じ。グーとパーだけでもいろんなお話ができるので、楽しんで使って。あと表情も大切」とアドバイス。2歳の息子と参加した東大阪市の柳川江里乃さん(31)は「こんなに難聴児がたくさんいることに驚き、1人じゃないと安心した。スタッフの方が楽しそうに手話をしているのを見て、未来が少し明るくなった」と話していた。 7月以降は第1・3土曜日に開催。7・8月はドーンセンター(大阪市中央区)が会場となる予定で、子育てや障害に関する相談にも応じる。問い合わせは同協会(電)06・6761・1394、メールosaka_roua@daicyokyo.jp。 聴力障害者協と連携し手話教室 府、条例施行受け(2017年5月18日配信『大阪日日新聞』) 3月に施行された大阪府手話言語条例を受け、府は17日、大阪聴力障害者協会(大阪市中央区)と連携協定を結び、聴覚に障害のある乳幼児と保護者を対象にした手話教室を6月から開催することを決めた。 同条例は聴覚障害者やその家族などの手話習得の機会の確保を盛り込んでおり、学校や職場で習得の機会を確保することを定めている。乳幼児期からの習得機会の確保も盛り込んでおり、府は全国の同様の条例では例がないとしている。 新たに立ち上げる手話教室「こめっこ」では、同協会のスタッフが絵本の読み聞かせや遊びを通して手話を教える。条例の制定に携わった神戸大大学院の河崎佳子教授が保護者の不安を聞くカウンセリングも行う。 6月17日に大阪市中央区のTKP大阪堺筋本町カンファレンスセンターで1回目を行い、その後は毎月第1、3土曜日に同市内で開催する。 府庁で締結式が行われ、新井純副知事は「協会のネットワークを活用して施策を推進したい」と話し、同協会の大竹浩司会長は「聞こえる人と対等に、のびのび語り合える環境をつくりたい」と語った。 ろうの女性教員「手話で世界が広がった」大阪府の手話言語条例に期待(2017年5月14日配信『産経新聞』−「WEST」) 乳幼児期の手話習得の機会を行政が確保するという全国初の取り組みを盛り込んで3月に施行された大阪府の手話言語条例に関係者らの期待も高まる。 大阪府立中央聴覚支援学校の教諭で、自身も聴覚に障害がある堀谷留美さん(46)も口話訓練を受けた経験を持つが、「手話を知ることで世界が広がった。百パーセント分かり合える言語は手話」と話す。 堀谷さんが手話に出合ったのは大学生のとき。友人たちと自由にコミュニケーションをとれることが楽しく、「自分が皆の仲間の一人なんだと初めて実感できた」と当時を振り返る。 手話を全く使わない口話教育を受けた支援学校の幼稚部では、友人と満足に会話できず、遊びはほとんどかけっこだった。 当時、手話は言語ではなく「身振り手振り」とされ、手話を使った高校生に先生が『あかん!』と怒ったのを覚えている。「小さい子にまねしてほしくなかったんだと思う」と振り返る。 当時は支援学校を“卒業”して地域の学校に行くのがブームだったといい、堀谷さん自身も両親からも口話訓練を受け、地域の幼稚園に転入。しかし大勢での会話にはついていけず、「今の子供たちにはつらい思いをさせたくない」と、教師を志した。 補聴器や人工内耳の発達など聴覚障害者を補助する機能は向上しているが、それでも「百パーセント分かり合える言語は手話」と話す堀谷さんは、こう訴える。 「子供に必要なのは家族や友達の仲間だという実感。生まれた子供に聴覚障害があると分かったら、まずは家族が手話を覚え、子供と話をしてほしい」 手話条例で大阪府が全国初の取り組み 6月から「手話教室」開催へ(2017年5月14日配信『産経新聞』−「WEST」)
聴覚障害のある子供ら。「にじっこ」でスタッフや保護者と手話での交流を楽しむ=22日、京都市上京区 全国の自治体で「手話言語条例」の制定が広まる中、乳幼児期の手話習得の機会を行政が確保するという全国初の取り組みを盛り込んで3月に施行された大阪府の条例に注目が集まっている。手話は独自の文法を持つ言語だが、使用が禁じられた歴史を背景に、習得に関する法的な規定はなく、民間任せなのが現状だ。府は民間のノウハウを活用し、来月から乳幼児と保護者を対象にした「手話教室」を始める予定で、当事者団体からは「画期的な条例。全国に広がってほしい」と期待が寄せられている。 ■民間と連携 子供たちが一心に見つめるのは絵本と手話。無音の読み聞かせが終わると、手を動かしながらうれしそうに笑った。 京都市の社会福祉法人が2年前に始めた聴覚障害のある乳幼児と保護者らの集いの場「にじっこ」での1シーン。「子供たちは手話での会話を楽しむようになり、保護者もどんどん明るくなっていく」と自身も聴覚障害のあるスタッフの男性(25)は手応えを語る。 大阪府は大阪聴力障害者協会と連携。にじっこのスタッフも交えた同様の「教室」の開催を準備中で、費用は日本財団の助成でまかなわれる。 ■「言語」認定 日本で初めて手話が言語として認定されたのは改正障害者基本法が施行された平成23年と歴史は浅い。一方で、家族が手話を使えなければ習得できず、さらに国の学習指導要領では、視覚障害者への点字指導について記す一方、手話には一切触れていない。そのため民間サークルや支援学校が任意で教えているが、地域格差が生じているという。 府は「手話も言語なら他の言語と同様に習得機会を確保すべきだ」と判断。「大阪版にじっこ」の開催を決めた。 ■禁じた過去 にじっこ設立と府条例の制定に関わった神戸大の河崎佳子教授は「聞こえない人の母語は手話。幼い頃に習得しないと思考力の発達に支障が生じる可能性がある」と訴える。にもかかわらず手話が軽視されるのは、「使用を禁じた過去を引きずっているから」と指摘する。 聴覚障害者への教育をめぐっては、1880年の国際会議が相手の唇を読み自らも声を出す「口話」を教えるよう決議。日本も昭和初期から一気に口話主義に傾き手話は使用を禁じられた。河崎教授によると学校は手話のいらない子に育てると絶賛され、その陰で口話も手話も十分にできない人が大勢生まれたという。 決議は2010年の国際会議で撤廃され、手話は言語として国際的に認められるようになったが、日本の教育はまだまだ追いついていないのが現状だ。 府条例の制定について全日本ろうあ連盟は「成果が出て実効性のある施策が全国に広まれば。国が習得を保障する『手話言語法』の制定も目指したい」としている。 ■手話言語条例…手話を言語として認める条例。2013年に鳥取県で成立したのをはじめに、2017年4月20日現在で97の自治体が制定。規定内容は自治体によって異なり、大阪府は中途失聴者や支援学校の教員らを対象にした手話講座にも取り組む。 |