大阪市こころを結ぶ手話言語条例

 

 

 

2016年1月15日、手話を、「音声ではなく手や指、体などの動きや顔の表情を使う独自の語彙や文法体系を持つ言語である。ろう者にとって、手話は大切なアイデンティティーであり、聞こえる人たちの音声言語と同様に、大切な情報の獲得とコミュニケーションの手段として重要な役割を担っている」と位置づけ、手話への理解促進や普及を進める「大阪市こころを結ぶ手話言語条例」案が、大阪市(議)会に議員提案され、全会一致で可決された。1月18日に公布され、即日施行される。

 

同様の手話言語条例は2013年10月に鳥取県が全国で初めて制定、大阪市が全国では33番目、大阪府内の自治体では大東市に続いて2番目。大東市の「こころふれあう」と同じくこころ≠ェ付いた。

 

 条例では、市が手話に関する施策を実施することを規定。手話ができる職員を増やしたり、学校教育の場においての手話に接する機会の提供その他の手話に親しむための取組を通じて、手話への理解の促進に努めることなどを定めている。

 

事業者に対しても、手話をコミュニケーションの手段として活用するよう努めるとともに、手話を必要とする人が働きやすい環境の整備や利用しやすいサービスの提供などの努力義務を課した。

 

 また市民には、基本理念に対する理解を深め、手話に関する本市の施策に協力するよう努めるよう求めた。

 

 市(議)会には、市内の聴覚障害者でつくる大阪市聴言障害者協会の関係者ら約40人が駆けつけ、条例制定を喜んだ。同協会の西滝憲彦会長は以下のコメントを発表、条例制定を喜び、そのうえで、「市は手話通訳を養成して役所の窓口に設置するなどの施策を進めてほしい」などと話した。

 

西滝憲彦 大阪市聴言障害者協会 会長のコメント

 

本日の大阪市会本会議において私たちの永年の夢である「大阪市手話言語条例」が制定されたことはまことに喜ばしいことであり、努力いただいた議員の皆さま方に心からお礼申し上げます。

障害者基本法第3条において『言語(手話を含む)』と規定されていることからも、大阪市会が手話を必要とする市民の命・安全・暮らしを守るために条例を制定したことは、歴史的に評価されることです。

時代は障害者差別の禁止に向かっている今、大阪市政が速やかに言語面での『音声言語と手話』の差別・格差をなくし、手話の普及・啓発・理解や手話通訳者の養成・設置、また全ての子供たちに手話教育の実施を強く求めるものです。

 

 大阪市では、「大阪市こころを結ぶ手話言語条例」で定める基本理念を実現するために、「大阪市手話に関する施策の推進方針(案)」を策定し、パブリック・コメント手続に関する指針に基づき、2017年01月26日から2017年02月24日まで、市民の皆様から広く意見を募集した。

 

 

 

大阪市こころを結ぶ手話言語条例

 

手話は、音声ではなく手や指、体などの動きや顔の表情を使う独自の語彙や文法体系を持つ言語である。ろう者にとって、手話は大切なアイデンティティーであり、聞こえる人たちの音声言語と同様に、大切な情報の獲得とコミュニケーションの手段として重要な役割を担っている。

平成18年12月に国連総会で採択され、我が国も批准している「障害者の権利に関する条約」において、言語は「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語」と定義され、手話は言語として国際的に認知された。

「障害者基本法」は手話を言語として位置づけるとともに、すべての障がい者が、可能な限り、意思疎通のための手段について選択の機会が確保され、情報の取得又は利用のための手段について選択の機会の拡大が図られることを通じて、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指している。

手話を必要とするすべての人が、日常生活及び社会生活において、手話を通じて容易に必要な情報を取得し、十分なコミュニケーションを図ることのできる社会を実現するためには、市民一人ひとりが、手話がかけがえのない言語であることについて理解を深めるとともに、手話を普及し手話を使用できる環境を整備していくことが重要である。

大阪市は、手話が言語であるという認識に基づき施策を推進し、手話を必要とするすべての人の社会参加の促進と安心して暮らせる地域社会の実現を目指して、この条例を制定する。

 

(目 的)

第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念を定め、本市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、手話に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もってすべての市民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(基本理念)

第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であること及びろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者とろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。

 

(本市の責務)

第3条 本市は、前条の基本理念(以下、「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を行うとともに、日常生活及び社会生活において手話が使用できる環境の整備に努め、手話に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。

2 本市は、手話に関する施策を内部組織が連携して推進するための体制を整備するものとする。

 

(市民の役割)

第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する本市の施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第5条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する本市の施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、手話をコミュニケーションの手段として活用するよう努めるとともに、手話を必要とする人が利用しやすいサービスを提供し、手話を必要とする人が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

 

 

(施策の推進方針)

第6条 本市は手話に関する施策を推進するための方針(以下、「施策の推進方針」という。)を策定するものとする。

2 施策の推進方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 手話への理解の促進及び手話の普及に関する事項

 手話による情報取得に関する事項

 手話による意思疎通の支援に関する事項

 手話を必要とする人への相談支援に関する事項

 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な事項

3 施策の推進方針は、本市が定める障がい者のための施策に関する基本的な計画と調和が保たれたものでなければならない。

4 施策の推進方針は、これを公表するものとする。

 

(協議の場)

第7条 施策の推進方針を策定若しくは変更する場合、又は施策の推進方針に基づく施策の実施において必要がある場合、市長は、ろう者、手話通訳者及びその他関係者から意見を聴くため、協議の場を設置しなければならない。

 

(手話を使用できる職員の増員)

第8条 本市は、手話を使用することができる職員を増やすよう努めるものとする。

 

(公共施設等に対する啓発)

第9条 本市は、病院及び広く市民に公共サービスを提供する施設その他関係機関における手話への理解の促進及び手話の普及を図るため、これらに対する積極的な啓発に努めるものとする。

 

(学校における理解の促進)

第10条 本市は、学校教育の場において、基本理念にのっとり、手話に接する機会の提供その他の手話に親しむための取組を通じて、手話への理解の促進に努めるものとする。

 

(財政上の措置)

第11条 本市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委 任)

第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市規則で定める。

 

附 則

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 市長は、この条例の施行の日から起算して3年を経過するごとに、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 

説 明

手話が言語であるという認識に基づき施策を推進し、手話を必要とするすべての人の社会参加の促進と安心して暮らせる地域社会の実現を目指して、条例を制定する必要があるので、この案を提出する。

 

 

 

手話に関する施策の充実に取り組みます(2017年2月16日)障がい者施策部 障がい福祉課(06−6208−8070)

 

 大阪市では、2016年1月に施行した「こころを結ぶ手話言語条例」及び2017年3月策定の「手話に関する施策の推進方針(概要(PDF形式, 220.27KB))」を踏まえて、手話に関する施策を拡充する。

 

手話に関する理解促進及び環境整備事業

 

 手話への理解の促進及び手話の普及をより一層積極的に実施し、市民一人ひとりが手話についての理解を深めるとともに、日常生活や社会生活の様々な場面で、手話を必要とする人が手話を利用しやすい環境づくりに取り組んでいくために、手話に関する施策を拡充します。

 

Ø  手話への関心を高めるため、気軽に参加できる出前形式の手話講習会を実施

Ø  区役所窓口等における手話対応のため、タブレット端末を用いた遠隔手話通訳の環境整備

Ø  病気や事故などの夜間・休日の緊急時に、医療機関等からの手話通訳派遣依頼にかかる受付対応も実施

【平成29年度予算額 500万円】拡充

 

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