大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例

 

 

東京都大田区議会は、2020923日、「手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関し、基本理念を定め、大田区(以下「区」という。)の責務並びに区民及び事業者の役割を明らかにすることにより、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする」大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例案を可決した。区は9月30日施行した。

 

「大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例」を制定しました(大田区)

 

手話が言語であることの区民及び事業者への理解を促進するとともに、それぞれの障害の特性に応じた意思疎通手段の利用を促進することにより、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現を目指し、「大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例」を令和2930日に公布し、同日施行しました。

 

制定理由

 

 手話は、聴覚に障がいのある方にとっては、日常生活や社会生活を営むために大切に受け継がれてきた言語である。また、障がい者の意思疎通を図る手段には、手話以外にも、その障がいの特性に応じて、音声言語をはじめ、文字、点字、触覚、平易な表現による意思疎通など多様な手段がある。この条例を制定することにより、手話が言語であることの理解の促進及び障がいの特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進と、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現に寄与する。

 

条例の概要

 

(目的)

手話への理解と多様な意思疎通手段の利用促進に関し、基本理念、区の責務、区民、事業者の役割を定める。

(基本理念)

手話が言語であると認識すること、相互理解、人格、個性の尊重を掲げる。

(区の責務)

基本理念に基づく施策を推進すること、施策は計画との整合性を図ること掲げる。

(区民の役割)

意思疎通に関する理解を深めること、施策に協力することを掲げる。

(事業者の役割)

意思疎通に関する理解を深めること、施策に協力すること、合理的配慮に努めることを掲げる。

 

同種の条例は、都内では、東京都江戸川区荒川区豊島区足立区墨田区葛飾区板橋港区江東区中野区台東区北区新宿区に次いで15例目。全国では366例目

 

区は2020年316(月曜日)から年43(金曜日)まで(仮称)大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例(素案)に対する大田区区民意見公募手続(パブリックコメント)の実施し、17名(持参3名・FAX 6名・電子メール8名)から96件の意見が出された。(意見と区の考え方)。

 

1947(昭和22)年315日に、当時の「大森区」と「蒲田区」が一緒になって誕生した大田区は、面積60.83平方キロメートル(23区内第1位)で、東京都の東南部に位置し、東は東京湾、西・南は多摩川に面し、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、神奈川県川崎市とそれぞれ隣接している。

 

江戸期は農漁村で、特に海岸の大森・糀谷・羽田地区では海苔(のり)の養殖(1963年まで存続)が盛んに行われていた。また、東海道の街道筋にあたっていたため、人馬の往来でにぎわい、大正期以降、中小工場が進出し、低地部は住宅や工場が密集する商業・工業地域を形成し、京浜工業地帯の一部となっている。

 

台地部は、関東大震災後住宅化が進み、田園調布、雪谷、久が原など比較的緑の多い住宅地、臨海部は埋め立て地からなっており、空港をはじめトラックターミナルやコンテナふ頭、市場など物流施設のほか、工場団地、野鳥公園など都市機能施設が整備されている。

 

人口は、711,253(男性;353,111/女性;358,142)人、399,824世帯(202011月1日現在)。  

 

身体障害者数の状況は以下の通り。

 

 

おおた障がい施策推進プラン - 大田区

 

 

大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例を公布する。

令和2年9月 30

大田区長 松 原 忠 義

大田区条例第 52

 

大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例

 

手話は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法により、非音声の言語として位置付けられています。手話は、手や指、体の動き、顔の表情を組み合わせて、視覚的に表現される独自の文法体系をもつ言語であり、ろう者及び手話を必要としている人にとっては、文化を創造し、日常生活や社会生活を営むために大切に受け継がれてきた言語です。

また、障害者基本法において、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」が求められています。

大田区は、手話が言語であることの区民及び事業者への理解を促進するとともに、それぞれの障害の特性に応じた意思疎通手段の利用を促進することにより、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現を目指して、この条例を制定します。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関し、基本理念を定め、大田区(以下「区」という。)の責務並びに区民及び事業者の役割を明らかにすることにより、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

() 障害者 障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号。以下「法」という。)に規定する身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

() ろう者 手話を言語として、日常生活又は社会生活を営む者をいう。

() 手話を必要としている人 中途失聴者、難聴者及び手話を意思疎通のための手段として利用している者をいう。

() 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

() 区民 区内に在住し、在勤し、又は在学する者をいう。

() 事業者 区内で事業を行う個人、法人及びこれらの者で構成する団体をいう。

() 意思疎通手段 音声(読上げを含む。)及び手話、触手話、空書、要約筆記、手話通訳、筆談、点字、口話、拡大文字、平易な表現、サイン、絵図及び記号、意思伝達装置、その他の障害者が日常生活及び社会生活において情報を取得し、及びコミュニケーションを行う際に障害の特性に応じて必要な手段として利用されるものをいう。

() 合理的配慮 障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

 

(基本理念)

第3条 手話が言語であることの理解の促進及び手話の普及並びに障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進は、次に掲げる事項を基本理念として行う。

() 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であって、言語であると認識すること。

() 障害の有無にかかわらず、互いを理解し、その人格及び個性を尊重すること。

() 障害の特性に応じた意思疎通手段の選択の機会の確保は、障害者が意思疎通を円滑に図ることができるようにすることを基本として行うこと。

 

(区の責務)

第4条 区は、前条に定める基本理念に基づき、次に掲げる施策を推進するものとする。

() 手話が言語であることの理解の促進及び手話の普及に関する施策

() 障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関する施策

() 前2号に掲げるもののほか、区長が必要と認める施策

2 区は、前項の施策の推進に当たっては、法第 11 条第3項の規定により区が策定する計画との整合性を図るものとする。

 

(区民の役割)

第5条 区民は、手話が言語であること及び障害者の意思疎通に関する理解を深めるとともに、前条の規定により区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第6条 事業者は、手話が言語であること及び障害者の意思疎通に関する理解を深め、第4条の規定により区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、事業を行うに当たり、障害者が障害の特性に応じた意思疎通手段を利用するための合理的配慮をするよう努めるものとする。

 

(委任)

第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が別に定める。

 

付 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

 

 

 

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