東京オリンピック・パラリンピック アクセシビリティ サポートガイド基礎編

 

 

 

アクセシビリティ(accessibility)=「近づきやすさ」「接近容易性」といった意味の英単語。年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できることをいう。近づきやすさやアクセスのしやすさのことであり、利用しやすさ、交通の便などの意味を含む。

 

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、東京2020大会が、障がいの有無に関わらず、すべての人々にとってアクセシブル(近寄りやすいさま。利用しやすいさま)でインクルーシブ(包含しているさま。含んでいるさま。包括的)な大会となるよう様々な取組みを推進しており、その一環として、大会スタッフ・ボランティア等によるサポートの基礎的な内容について、障がい当事者団体を含む幅広い関係者の参画のもと、「アクセシビリティ サポートガイド基礎編」を作成した。 

 

委員会は、サポートガイドを大会スタッフ・ボランティア向けの学習ツールとして組織委員会内での活用を進め、「心のバリアフリー」の拡充に向け、幅広い業界で指針として自主的に活用されることを期待している。

 

 

アクセシビリティ サポートガイド基礎編(Ver.1)(抜粋)(全文pdf

接遇の基本

各クライアントの多様な特性に配慮する

大会のクライアントには、選手と各国役員、競技団体、マーケティングパートナー、オリンピック・パラリンピックファミリー、観客などの様々な立場で大会に関わる方が含まれます。それぞれのニーズ・要望を十分に把握して、未来に語り継がれるサービスやおもてなしを提供しましょう。

 

クライアントの人格を尊重する

障がいのあるなしに関わらず、一人の人間としてごく普通に接することが、人格の尊重につながります。さまざまな身体的特性や程度に応じたコミュニケーションに配慮する必要があります。

クライアントを理解しようという気持ちをもつより良いコミュニケ―ションには、相手を理解しようという気持ちが大切です。

 

クライアントに話しかける

クライアントに手話通訳者や同伴者がいる場合でも、クライアントの人格を尊重し、お手伝いが必要かクライアントに確認します。また、会話を始めるときには、自分の担当業務と名前を名乗るようにしましょう。

 

クライアントの意思や希望を確認する

さまざまな身体的特性や程度によって希望するサポート内容は異なります。できるだけ自分のことは自分で行いたいという気持ちの方もいます。まずは積極的に声をかけて、クライアントの意思を確認し、希望する方法で接するようにします。

 

個人情報の取扱いには注意する

クライアントと接する中で知りえた個人的な情報は、他言してはいけません。また、こちらからも個人的な情報について質問したり、立ち入ることのないようにします。

 

柔軟な対応を心がけ、スタッフで協力する

さまざまな場面を想定し、基本的なサポートの方法を身につけると共に、予期せぬ事態に備えた応用力を磨くようにします。また、自分だけでは対応が難しいようなサポートを求められた場合は、無理せず他のスタッフと協力して応対します。

 

身体障害者補助犬について理解し、協力する

補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の受け入れは法律で義務付けられています。補助犬を受け入れる際は、周りの人がペットと誤解しないよう、必要に応じて他の人にも理解と協力をお願いしましょう。

 

音声による情報が得にくい方に対するサポート

サポートのための基本ポイント

耳が聞こえない、聞こえにくい方のほとんどの場合は、視覚情報も活用しています。

まずは、笑顔であいさつから

たとえ、あなたの言葉が聞こえない方でも、あなたに出会って、あなたの笑顔からあなたの気持ちを受け取ることはできます。目と目があったら、微笑みながら

あいさつをすることが基本です。

 

障がいに早く気づくことも、配慮のひとつです

耳が聞こえない、聞こえにくいという障がいは、外見からでは気づきにくいものです。話せても聞こえないという方もいますので、対話がうまくいかないようであれば、もしかして耳が不自由なのでは?と早めに察することが大切です。

 

手話通訳者ではなく、クライアントに

手話通訳者や介助者が同伴している場合でも、応対は、クライアントに対して、目線を合わせて行うようにします。

 

申し出があったときに、要望のあった方法で接します

外見からは判断しにくいので、クライアントから申し出があったとき、応対に配慮することとし、まず、どのようなコミュニケーション手段をクライアントが希望するかを確認します。ゆっくり話してください、筆談でお願いします、手話通訳者と一緒に来ました、など、クライアントが希望を申し出ることがあります。

 

必要以上の大声や、幼児に話すような言い方はNG

聴覚に障がいがあることをできれば気づかれたくないという方もいます。こちらが大声で話すと決まりの悪い思いをしたり、かえって声が割れて聞こえたり、頭に響いたりして聞き取りにくいという方もいます。また、成人に対して、幼児に対して話すような言い方は失礼です。クライアントの人格を尊重した応対を心がけましょう。

 

コミュニケーション手段について

聞こえない、聞こえにくい方のコミュニケーション手段は、音を増幅し聴力を補う補聴器や人工内耳、それらを装用している方の聞こえをより明瞭にする補聴援助システムなどの、保有する聴覚を活用する方法や、唇の動きを読む読話、身振り手振り、筆談、手話などの視覚を活用する方法があります。聴覚に障がいのある方たちは、自分に最適な方法を選択したり、組み合わせてコミュニケーションをとっています。それぞれのポイントを学んで、スムーズなコミュニケーションを図ってください。

 

コミュニケーションの基本

(1)クライアントの正面に立ちます

いずれの方法でコミュニケーションをする場合でも、お互いの表情や口元、身振り、手振りがよく見えるよう、クライアントの正面に立つことから始めます。表情が見えるように相手から見て逆光にならないよう、また、複数の人が同時に話しかけるような状況を作らないようにします。

 

(2)理解しよう、伝えようという気持ちをもって接します

コミュニケーションに時間がかかることもありますが、表情や身振り手振りに注目して、クライアントが伝えたいことを理解しようという気持ちをもって接してください。また、クライアントは聞こえないからとあきらめないで、伝えたいことをきちんと伝えようという気持ちを持って接してください。

 

(3)まずは、ゆっくりめに話しかけ、身振り手振りで応対します

普通の大きさの声で、口をはっきりと開けて、話しましょう。必要に応じて、身振り手振りも加えてください。

 

(4)聞き取りにくいときには、繰り返し聞いてください

クライアントの言葉が不明瞭で聞き取りにくい場合には、わかったふりをせずに、聞き返して確認するようにしましょう。

 

(5)通じにくいようであれば、筆談をお願いします

聞き返してもわからない場合は、筆談に切り替えます。その際は、筆談をお願いします、と伝えましょう。

 

困った顔やイライラした顔は見せないように

コミュニケーションがうまくとれないとき、あなたが困った顔やイライラした顔を見せてしまうと、クライアントはそれ以上に困ったり、気持ちが落ち込んだりします。つねに、笑顔を忘れずに、落ち着いて応対しましょう。

 

口話のポイント

(1)普通の声で、ゆっくり、はっきり、文節を区切って

必要以上に大きな声を出すことはありません。一気に話さずに、少しゆっくりと、言葉を区切りながら話してください。

(良い話し方の例)

待ち時間は ここから約20分待ちです。

(悪い話し方の例)

待ち時間はここからだと約20分です。

(通じなければ、別の言い方を試してみて)

ここで待ちます、約20分です。

(2)言葉は異なっていても口の動きが同じになる単語もあります

例) (いす)と(いぬ)

 (おじいさん)と(おにいさん)

 (たまご)と(タバコ)

 七(しち)と一(いち)

こういう場合には、ジェスチャ―をつけたり、指で自身の手のひらに単語をなぞって示したり、単語を携帯しているメモ帳に書きながら説明しましょう。

また、伝えた後は、伝わったかどうか確認するようにしましょう。

補聴器や人工内耳さえあれば、万全というわけではありません

補聴器や人工内耳は会話と同時に、周囲の音もひろって耳に送り込みます。そのため、騒がしい場所での会話は聞き取りにくくなります。補聴器を使っている方とも、必要に応じて筆談での会話をお願いしましょう。

 

筆談のポイント

(1)携帯している筆談器やメモ帳を活用して

読話や身振り手振りで通じないときは、筆談をしてください。手のひらや紙、専用の筆談器を用いて会話する方法です。携帯しているメモ帳を活用してください。

(2)要旨だけを、簡単にまとめて

一字一句ていねいに手紙のように書くより、必要なことだけを簡潔に書くようにした方が、スムーズにコミュニケーションできます。

(良い書き方の例)

約20分 待ちです。

(悪い書き方の例)

只今、混み合っておりまして、ここから約20分、お待ちいただいております。

(3)漢字を適切に使って、意味がわかるように

聴覚に障がいがある方の中には日本語文法の習得が不十分な方もいます。難しい言葉は避けるようにしますが、ひらがなばかりでもかえって意味がわかりにくくなります。表意文字である漢字を適切に使うと、読めなくても意味が通じやすくなります。

(良い書き方の例)

ここから、約20分待ちです。

(悪い書き方の例)

ここから、やく20ぷんまちです。

すべての方が筆談できるわけでは、ありません

聴覚や音声に障がいのある方の中には、手話言語は習得しているが、音声言語としての日本語文法や文字習得が不十分なため、筆談ができないという方もいま

す。そのために、筆談でよいかどうかを事前に確かめる必要があります。

 

手話について

聞こえない方、聞こえにくい方たちの間で自然に生まれ、独特の言語として発展してきたコミュニケーション方法です。手話について、あいさつ程度でも知っておくと、手話を活用される方とのコミュニケーションが取りやすくなります。

中途失聴者の多くは、手話言語を習得していません

聴覚や音声に障がいのある方はすべて手話ができると思われがちですが、人生の途中で聴力を低下させた中途失聴者や難聴者の多くは、音声言語としての日本語を話し、考えるときや書くときも日本語を使っています。聞くことに障がいがあるだけです。それぞれの方が望まれる方法でコミュニケーションすることが大切です。

 

指文字について

五十音を手指で表す方法です。手話と併せて使ったり、手話を補うために用います。

 

聴導犬を連れている方への応対

聴導犬は、聴覚に障がいがある方の耳代わりとして活躍する身体障害者補助犬です。

聴導犬は、音が聞こえない方、聞こえにくい方に、生活に必要な音を知らせます。

玄関チャイムの音・メールの着信音・警報器の音などを教えます。

基本ポイント

聴導犬の犬種は様々で、犬の大きさが2kg程度の小型犬も含まれています。小型の聴導犬が交通機関や人の多い施設を利用する場合、犬の安全を確保する為に聴導犬を連れている方が聴導犬を抱いている事があります。小型の聴導犬に限っては、乗り物や飲食店での待機場所も、聴導犬を連れている方の膝の上の場合があります。盲導犬のイメージにとらわれて、聴導犬の待機場所を決めつけないようにしましょう。

注意事項

聴導犬を連れている方は外見からその障がいが分かりづらいので、ペットと間違えられる事があります。誘導を担当する大会スタッフ等の中では聴導犬が会場等に来ている情報が共有されても、施設内の販売店や飲食店には伝わっていないことがあります。そのため、繰り返し聴導犬を連れている方に確認したり、受け入れ拒否が生じないよう、聴導犬を含む補助犬の情報共有に努めましょう。

 

コミュニケーションボード

コミュニケーションボードが用意されている場合には、ボードを使ってコミュニケーションを図ってみましょう。相手のペースに合わせて、あなたが会話をリードしながら状況を尋ねてください。絵や字がたくさん並んでいるボードを見て、どうしてよいかわからなくなってしまう方もいます。ゆっくり、ていねい、くり返しを心がけてください。伝わったかどうかの確認も必要です。

 

臨時放送があった場合の対応

聴覚に障がいがある方は会場内等の臨時放送が聴き取りにくいことが多いです。

状況が分からずに困っている方を見かけたら、筆談用のメモ帳に内容を書いてから、声をかけましょう。

 

 

 

 

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