言語道断 中央省庁、障害者雇用42年間水増し 

 

記事 / 論説

 

障害者雇用者数の虚偽報告問題に関する要望

 

無効な診断書で障害者認定

 

毎日新聞調査;障害者水増し省庁説明「納得できぬ」79%(2018年9月1日)

 

国などによる障害者雇用水増し問題についての申し入れ 日本障害フォーラム

 

 

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(以上、2018年8月17日配信『東京新聞』) 

 

国の雇用実態は公表している人数の半数を下回る。

 

◇手帳を持たない対象外の職員を算入する手法

 

 国土交通省や総務省などの中央省庁が義務付けられた障害者の雇用割合を42年間にわたり水増しし、定められた目標を大幅に下回っていた。

 

障害者手帳を持たない対象外の職員や指定していない医師が作成した診断書などの無効な文書を根拠とする職員を算入する手法が使われ、国の雇用実態は公表している人数の半数を下回る可能性がある。1976年に身体障害者の雇用が義務化された当初から恒常的に行われていた。

 

 政府は各省庁の水増しを長年放置。省庁と同様に雇用を義務付けられた企業が目標を達成できなければ、代わりに納付金などを徴収しており、1億総活躍社会の実現を掲げる中、障害者雇用の在り方が改めて問われる。

 

 問題が発覚したのは障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用率制度」で、企業や公的機関に一定割合以上の障害者を雇うよう義務付けている。原則として身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳を持つ人や児童相談所などで知的障害者と判定された人が対象となる。

 

 国や自治体は模範となるべく、非正規従業員を含む常時雇用者の中で法定雇用率を、企業より高い2.5%(2018年3月末まで2.3%)に設定。2017年6月1日時点で、国の33行政機関で合計約6900人の障害者を雇用し、平均雇用率は2.49%だった。省庁別でも個人情報保護委員会以外の32機関が当時の目標である2.3%を達成したことになっていた。

 

 だが国交省や総務省など10近い主要省庁で、手帳交付に至らない比較的障害の程度が軽い職員などを合算することが常態化していた。拘束時間の長さや国会対応など突発的な仕事が多い特性から採用が進まなかったのが理由とみられる。対象外の人数を除くと、実際の雇用率が1%未満になる省庁が多いとみられる。

 

<障害者雇用率制度> 障害者雇用促進法に基づき、企業や国・自治体などに一定割合以上の障害者を雇うよう義務付けた制度。差別を禁止し、障害者の就労機会を広げる目的がある。当初は身体障害者が対象で、知的障害、精神障害にも拡大された。非正規従業員を含む従業員全体に占める目標雇用割合を「法定雇用率」として掲げる。法定雇用率自体も段階的に上げてきており、2018年4月1日から、雇用率が従業員45.5人以上(短時間雇用者は0.5人と計算)の企業は2.2%、国や自治体は2.5%へ引き上げられた。また、2020年度末までに、さらにそれぞれ0・1%引き上げると決まっている。雇用率が低い企業は行政指導を受け、従業員100人超であれば、定められた目標より1人不足すると原則月5万円の納付金が課せられ、消極的な場合、企業名が公表されるケースもある。一方、達成した企業には補助金が支給される。

 

 

障害者雇用者数の虚偽報告問題に関する要望

 

公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)

認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)

NPO法人全国精神保健職親会(vfoster)

 

 8月28日、政府は関係閣僚会議を開催し、中央省庁の水増し状況を発表しましたが、障害者雇用数は6,867.5人から3,460.0人減少して3,407.5人、実雇用率は2.49%から1.19%と、半数近くが水増しだったことが明らかになりました。

今後、検証チームを設け再発防止策を検討するとのことです。

 この発表を受けて、みんなねっと・コンボ・全国職親会の三者連名で、「障害者雇用者数の虚偽報告問題に関する要望」を取りまとめ、総理大臣宛に提出しました。

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内閣総理大臣 殿

障害者雇用者数の虚偽報告問題に関する要望

 

 複数の中央省庁で障害者雇用者数を水増しして報告していたという問題が発覚して以降、都道府県など地方自治体にも広がっています。今回の問題については、再点検の結果、国の行政機関における障害者数は6,867.5人から3,460.0人減少して3,407.5人、実雇用率は2.49%から1.19%となっており、意図的な虚偽報告であり、障害者雇用率制度の根幹を揺るがす事態として憂慮しています。

 平成29年度の障害者雇用状況調査(6.1調査)によれば、民間企業は、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新し、法定雇用率達成企業の割合は 50.0%(対前年比1.2ポイント上昇)と、好成績を収めています。こうした勢いを形成しているのは、精神障害者や発達障害者等の就労に対する制度的バックアップと民間企業の努力の賜物であると考えます。

 私たちは、長く精神障害者とその家族の権利擁護や支援体制の整備、精神障害者雇用や就労定着に関わってきました。今回の調査結果は、私たちの予想を超えており、驚きと憤りを禁じえません。障害者雇用に真摯に取り組んできた民間企業としても到底容認できることではないでしょう。

 また、障害者の立場からすれば、人事担当者によって障害の有無を一方的に判断されてきたということでもあり、プライバシーや人権侵害行為として糾弾されなければならないと考えます。

 平成18年4月に精神障害者が雇用率の算定対象とされた際に、このようなプライバシー侵害の事案が予想されたため、厚労省では「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」を制定して、障害者を守る方策を示してきました。

 障害者手帳を所持していることは「原則」であると理解していたとか、理解が足りなかったとか、認識不足だったということでは到底納得できるものではありません。

 本年8月28日の障害者雇用に関する関係閣僚会議では、弁護士など第三者が加わる検証チームを設置して原因を究明するとともにすると共に、10月中に再発防止策をとりまとめるという方針が示されたとのことです。この検証チームに当事者である障害者・障害者団体を主要種別毎に複数構成員とすること、併せて障害者雇用実績を持つ一般民間企業とりわけ中小企業の経営者の参加を要請したいと思います。

 また、各省庁や地方自治体などにおける雇用率の未達成状況をどのように解消するかも合わせて計画を制定すべきですし、民間企業同様罰則規定も盛り込むべきと考えます。

 今回の事態は、民間企業に対する信用失墜行為であり、障害者に対する偏見や蔑視の表れともいえるでしょう。政府・行政機関は、虚偽報告の対象とされた職員をはじめ、民間企業や障害者、国民に謝罪し、早急に信頼回復と再発防止策を取りまとめて、改善策を講じるよう要望します。

 

1.今回の虚偽報告の原因と責任を明らかにしてください

2.原因究明検証チームには障害当事者・団体と雇用実績のある中小企業経営者が構成員の半数以上となるように配置してください

3.今後の再発防止策を制定してください

4.各省庁や地方自治体などの雇用率未達成状況の解消計画と罰則規定を講じてください

2018年8月29日

公益社団法人全国精神保健福祉会(みんなねっと)

〒170−0013 東京都豊島区東池袋1−46−13 ホリグチビル602

認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)

〒272−0031千葉県市川市平田3−5−1 トノックスビル2F

NPO法人全国精神保健職親会(vfoster)

〒532−0011 大阪市淀川区西中島5−3−4 

新大阪高光ビル801 JSN地域・企業連携事業部内

 

障害者雇用 国機関8割で水増し 3460人(2018年8月28日配信『東京新聞』−「夕刊」)

 

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関係閣僚会議で発言する菅官房長官(右手前から2人目)。右は加藤厚労相=28日午前、首相官邸で

 

中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、厚生労働省は28日、国の行政機関の約8割に当たる27機関で水増しがあったとの調査結果を公表した。昨年12月に国が発表した雇用障害者約6900人のうち、不正に水増ししたのは3460人に上り、国の雇用率は2・49%から1・19%に低下した。「共生社会」を推進するはずの国が、法定雇用率(昨年2・3%)に遠く及ばない実態が浮かび上がった。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で「障害者雇用の場の拡大を民間に率先する立場として重く受け止めており、深くおわびする」と謝罪。水増しが行われるようになった理由や詳しい経過は明らかになっておらず、国は弁護士を含む第三者検証チームを立ち上げ、実態調査を続ける。

 調査結果は、厚労省がこの日午前の関係閣僚会議で説明した。職員数が少ないため、障害者の雇用義務が生じない復興庁を除く国の33機関が調査対象。その結果、障害者雇用率が0%台に下落した機関は27に上った。水増し人数が最も多かったのは国税庁で1022人。国土交通省の603人、法務省の539人が続いた。

 水増しの判明は、財務省が今年5月11日、障害者の定義について厚労省に問い合わせたことがきっかけだったことも判明。国のガイドラインに合わない人が計算に含まれている可能性が浮上したため、厚労省が6月に他の省庁にも再調査を依頼したという。

 

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厚労省はガイドラインで雇用率に含められる障害者について原則、身障者手帳や知的障害者の療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人などとしているが、多くが従っていなかったとみられる。

 厚労省は障害者雇用促進法に基づき、毎年6月1日現在の障害者雇用率を報告するよう、公的機関や45・5人以上の従業員がいる民間企業に求めている。今年の法定雇用率は公的機関で2・5%、企業で2・2%。企業は法定雇用率を下回った場合、納付金を求められ、虚偽報告した場合の罰則もあるが、公的機関は対象になっていない。

 障害者雇用率を巡っては自治体でも厚労省ガイドラインに合わない集計が相次ぎ発覚しており、今後、全国的な再調査が行われる。

 

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◆共生社会の理念どこに

<解説> 障害者雇用の水増し問題で、政府に対する根深い不信感が広がっている。中央省庁ぐるみと受け取られかねない不正が長期間、放置されてきたからだ。「なぜ、気づかなかったのか」。障害者だけでなく、多くの国民が抱いている疑問だろう。

 身体障害者の雇用が義務化されたのは42年前。障害があるというだけで就職差別が平然と行われていた時代だ。雇用を確保するだけでなく、障害者の社会参加を促し、共生社会を実現することを目標にしている。その旗振り役である政府が、自らの不正でその機会を奪った責任は重い。

 「障害者はあてにならないことを前提にしているのではないか。差別があると思わざるを得ない」。視覚に障害のある日本障害者協議会の藤井克徳代表は今月21日の野党ヒアリングで、中央省庁の担当者に直接、指摘した。

 同じくヒアリングに出席した、下半身に障害のあるDPI(障害者インターナショナル)日本会議の佐藤聡事務局長は「障害者を含めて第三者委員会を設置して、実態解明を進めてほしい」と中央省庁の担当者に迫った。2人に共通しているのは、政府への不信だ。

 安倍晋三首相は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて「共生社会実現を、東京大会最大のレガシー(遺産)にしたい」と表明している。

 なぜ不正が放置されてきたのかを解明し障害者の不信を払拭(ふっしょく)できなければ共生社会どころではない。政府への不信が社会への不信となり、障害者の社会参加を妨げることになりかねない。 

 

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