「多可町手話言語条例」

 

兵庫県多可郡多可町は、2015年12月議会に「多可町手話言語条例」を上程、12月25日に可決・成立された。施行は2016年4月1日。全国で32番目。兵庫県では8番目。

 

現在多可町では、小学4年生を対象にした2時間だけの手話講座があり、数年毎に社会福祉協議会が主催の手話通訳者講座が開講されており、西脇市、加東市と共同で手話通訳者ステップアップ講座が持たれている。

 

注;多可町(たかちょう)=神戸市から北へ約45キロ。2005年11月1日に兵庫県多可郡の中町・加美町・八千代町の3町が合併して新設された町。兵庫県北播磨県民局に区分されている。面積の8割を山林が占め、和紙が特産(杉原紙の里=兵庫県の重要無形文化財・伝統的工芸品)。1990年4月1日迄は、JR西日本鍛冶屋線(兵庫県西脇市の野村駅(現在の西脇市駅)から兵庫県多可郡中町(現在の多可町中区)の鍛冶屋駅まで)が通り、終点の鍛冶屋駅も町内にあったが、現在は、鉄道路線は通っていない。廃線後の跡地は自転車道として整備されたり、市原駅や鍛冶屋駅が鉄道記念資料館として整備されるなど、有効的な活用が図られている。人口は22,026(男;10,673、女;11,353)、世帯数7,543(2015年12月1日現在)。

「敬老の日」は同町の前身の一つ、旧・野間谷村の門脇政夫さん(故人)が1947年に提唱したのが始まり。当時35歳の青年村長だった門脇氏は「戦争で一番えらい目におうとってんはお年寄りや。大切にしなあかん」と、9月15日に村中のお年寄りをオート三輪に乗せて公会堂に集め、祝ったという。近隣市町村にも働きかけた結果、1950年に兵庫県が「としよりの日」を制定し、1966年に晴れて国民の祝日の一つになった。

 

 

 

多可町手話言語条例pdf

 

 言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。

しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることもコミュニケーシヨンをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。

こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられたが、手話に対する理解の広がりを未だ感じる状況に至っていない。

私たち多可町民は、手話が言語であることを理解し、手話の広がりを実感することで、全ての町民がお互いの理解とつながりを深め、みんなが主役のまちをめざして、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進、手話の普及及び地域において手話を使用しやすい環境の構築に関し、基本車念を定め、町及び町民の責務を明らかにするとともに、町が実施する施策の基本的事項を定めることにより、手話を必要とする町民が、あらゆる場面で手話による意思疎通を行い、自立した日常生活を営み、及び地域における社会参加に務め、並びに全ての町民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しあいながら、共生することができる地域社会を実現することを目的とする。

 

(基本理念)

第2条 前条に規定する地域社会の実現を図るため、手話を必要とする町民が、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、手話に対する理解の促進及びその普及を図らなければならない。

 

(町の責務

第3条 町は、第1条に規定する地域社会の実現を図るため、前条で定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話の普及と、ろう者が自立した日常生活や地域における社会参加を行うことができるよう、必要な施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。

 

(町民の責務)

第4条 町民は、基本理念にのっとり、第1条に規定する地域社会の実現に寄与するよう努めなければならない。

2 町民は、手話の意義及び基本理念を理解するよう努めなければならない。

3 ろう者は、町の施策に協力するとともに、手話の意義及び基本思念に対する理解の促進並びに手話の普及に努めなければならない。

4 事業者は、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めなければならない。

 

(施策の推進方針)

第5条 町は、次の各号に規定する施策を推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)を策定するものとする。

(1) 手話に対する理解及び手話の普及を図るための施策

(2) 町民が手話による意思疎通を通じて情報を得る機会を拡大するための施策

(3) 手話通訳者の配置又は派遣等手話による意思疎通支援のための施策

(4) 前3号に掲げるもののほか、町長が必要と認める事項

 

(推進会議の設置)

第6条 町は、次の各号に掲げる事項について意見又は助言を求めるため、聴覚障害者及び意思疎通支援者等が参画する多可町手話施策推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。

(1) 施策の推進方針の策定のため必要な事項

(2) 実施状況の点検及び見直しのために必要な事項

2 前項の推進会議の運営に関し必要な事項は、町長が別に定める。 

 

(財政措置)

第7条 町は、手話に関する施策を積極的に推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委任)

第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。 

 

附 則

(施行期日)

1 この条例は、平成28年4月1日から施行する。

2 町は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて、必要な見直しを行うものとする。

 

 

○多可町手話言語条例検討委員会開催要綱(平成27年3月27日告示第19号;改正;平成27年6月23日告示第57号)

 

(趣旨)

第1条 手話が言語であることを町民に普及させ、町はさらなる支援に取り組み町民の理解を深め、あらゆる場面で手話による意思疎通を図ることができる地域社会の実現を目的とした多可町手話言語条例(以下「条例」という。)について外部の視点からの意見又は助言を求めるため、多可町手話言語条例検討委員会(以下「委員会」という。)を開催することに関し必要な事項を定めるものとする。

 

(意見等を求める事項)

第2条 委員会において意見又は助言を求める事項は、次のとおりとする。

(1) 手話言語条例制定に関する基本的な方針に関すること。

(2) その他、手話言語の推進に関すること。

 

(参加者)

第3条 町長は、次に掲げる者のうちから、委員会への参加を求めるものとする。

(1) 障害者福祉に優れた識見を有する者

(2) 地域住民の代表者

(3) 障害者団体の代表者

(4) 地域福祉団体の代表者

(5) その他町長が特に必要と認める者

2 前項の場合において、町長は、原則として、同一の者に継続して委員会への参加を求めるものとする。

全部改正〔平成27年告示57号〕

 

(運営)

第4条 委員会の参加者は、その互選により委員会を進行する座長を定めるものとする。

2 町長は、必要があると認めるときは、委員会に関係者の出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は資料の提出を求めることができる。

全部改正〔平成27年告示57号〕

 

(開催期間)

第5条 委員会の開催期間は、1年間を目途とする。

一部改正〔平成27年告示57号〕

 

(事務局)

第6条 委員会の庶務は、健康福祉課において処理する。

一部改正〔平成27年告示57号〕

 

(委任)

第7条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は、町長が別に定める。

一部改正〔平成27年告示57号〕

 

附 則

この告示は、平成27年4月1日から施行する。

附 則(平成27年6月23日告示第57号)

この告示は、公布の日から施行する。

 

 

○多可町手話通訳者及び要約筆記奉仕員派遣事業実施要綱(平成22年4月1日告示第36号)

 

(目的)

第1条 多可町手話通訳者及び要約筆記奉仕員派遣事業(以下「事業」という。)は、ノーマライゼーションの理念の下、手話通訳者や要約筆記奉仕員を派遣することにより、聴覚障害者又は音声若しくは言語機能障害者(以下「聴覚障害者等」という。)が社会生活の中でコミュニケーションを円滑に行い、意思伝達の手段を確保できることで、聴覚障害者等の社会参加と自立を促進し、生きがいのある生活を当たり前に送れるようにすることを目的とする。

 

(実施主体)

第2条 事業の実施主体は、多可町とする。ただし、事業の全部又は一部を多可町社会福祉協議会に委託することができる。

 

(事業内容)

第3条 この事業は、次に掲げる事項を実施する。

(1) 手話通訳者及び要約筆記奉仕員が必要な聴覚障害者等に手話通訳者及び要約筆記奉仕員を派遣すること。

(2) 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の登録を行うこと。

(3) 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の養成及び研修を行うこと。

 

(派遣対象者)

第4条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣を受けることのできる聴覚障害者等(以下「派遣対象者」という。)は、次の各号に掲げる条件を備える者とする。

(1) 町内に住所を有し、身体障害者手帳の交付を受けている聴覚障害者等

(2) 家庭等において、適当な通訳者を得ることが困難な聴覚障害者等

2 前項の規定にかかわらず、町長が特に必要と認めた者には手話通訳者及び要約筆記奉仕員を派遣することができる。

 

(派遣対象の事由)

第5条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣は、前条に規定する派遣対象者が、営利を目的とする行為を除く次の各号に掲げる行為をしようとする場合において、手話通訳者及び要約筆記奉仕員を必要と認めるときに行うものとする。

(1) 生命及び健康の維持増進に関する場合

(2) 財産・労働等権利義務に関する場合

(3) 官公庁、裁判所、警察、公共職業安定所、学校等公的機関と連絡調整を図る場合

(4) 社会参加を促進する学習活動等に関する場合

(5) 冠婚葬祭等地域生活及び家庭生活に関する場合

(6) 1号から5号以外のものであって、その行為に社会的一般性が認められ、聴覚障害者の権利保障の観点から必要と認められるもの

(7) その他、町長が特に必要と認める場合

 

(派遣の区域等)

第6条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣区域は原則多可町内とする。ただし、町長が特に必要と認めた場合はこの限りでない。

 

(派遣の申請)

第7条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣を受けようとする派遣対象者又はその家族(以下「申請者」という。)は、派遣を受けようとする日の7日前までに手話通訳者及び要約筆記奉仕員派遣申請書(様式第1号)を町長に提出しなければならない。ただし、緊急を要すると町長が認める場合はこの限りでない。

 

(派遣の決定又は却下)

第8条 町長は、前条の申請を受けたときは内容を審査し、速やかに派遣の可否を決定し、手話通訳者及び要約筆記奉仕員派遣決定(却下)通知書(様式第2号)により申請者に通知するものとする。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の要件)

第9条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の資格は、手話通訳及び要約筆記に必要な技術、人格、熱意を有する者で、次の各号に掲げる者とする。

(1) 手話通訳者においては、手話通訳者養成講座(基本編以上)を修了し、かつ、聴覚障害者等もしくは聴覚障害者等を構成員とする団体からの推薦を受けた者

(2) 要約筆記奉仕員については、町又は多可町社会福祉協議会の実施する要約筆記奉仕員養成講座を修了した者及びこれと同等の講座等を修了した者、もしくは現に要約筆記奉仕員として活動し、聴覚障害者等もしくは聴覚障害者等を構成員とする団体からの推薦を受けた者で、申請者の要請に応じる技能を有する者

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の登録)

第10条 前項に規定する要件を備える者で、手話通訳者及び要約筆記奉仕員の登録申込をしようとする者は、手話通訳者及び要約筆記奉仕員登録申込書(様式第3号)に手話通訳者及び要約筆記奉仕員調書(様式第4号)及び必要書類を添えて町長に申し込むこととする。

2 町長は、前項の申込があったときは、手話通訳者及び要約筆記奉仕員としての適否を審査し、登録する場合は「手話通訳者及び要約筆記奉仕員派遣事業登録者台帳」(以下「台帳」という。)(様式第5号)に登載するとともに、手話通訳者及び要約筆記奉仕員に対し「身分証明書」(様式第6号)を交付する。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣)

第11条 町長は、第7条に規定する派遣の申請があったときは、第8条の規定に基づき、前条の規定により登録された者(以下「登録者」という。)の中から派遣可能な者を選定し、派遣するものとする。ただし、登録者において対応することが困難な場合は、ひょうご手話通訳センターから手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣を受けることができる。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の研修及び養成)

第12条 町長は、手話通訳者及び要約筆記奉仕員の資質向上及び養成のために、研修を実施するとともに、積極的に研修に参加させるものとする。

2 町長は、手話通訳者及び要約筆記奉仕員又は手話通訳者及び要約筆記奉仕員の認定を受けようとする者が第9条に規定する研修に参加する場合は、予算の範囲内において、その参加にかかる費用の一部を負担することができる。

3 町長は、手話通訳者等の安全衛生の保持を図るため、手話通訳者及び要約筆記奉仕員にけいわん検診を受診させ、予算の範囲内において、その受診に要する費用の一部又は全部を負担することができる。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の業務)

第13条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員は、第5条各号の要件の趣旨を伝達するための仲介の任に当たるものとする。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の義務)

第14条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員は、業務を行うにあたって聴覚障害者等の人格を尊重し、擁護する立場で職務を遂行し、その身上に関する秘密を漏らしてはならない。また、手話通訳者及び要約筆記奉仕員でなくなった後も同様とする。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の身分証明の携行)

第15条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員は、業務を行うにあたっては、第10条第2項に規定する身分証明書を携行しなければならない。

 

(申請者の費用負担)

第16条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員の派遣に要する費用において申請者の負担は無料とする。ただし、第17条に規定する手当以外の経費が発生した場合は、全額申請者の負担とする。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の手当)

第17条 派遣された手話通訳者及び要約筆記奉仕員に、次に定める派遣手当等を支給する。

(1) 手話通訳及び要約筆記の業務のために自宅を出てから、業務を終了し自宅に帰るまでの時間(以下「従事時間」という。)に対して1時間当たり1,500円を支給する。ただし、従事時間に30分未満の端数がある場合は切り捨て、30分以上は切り上げて手当てを支給する。

(2) 自宅から派遣先までの交通費は、1km当たり15円を支給する。ただし、自宅と派遣先がともに町内である場合は、交通費を支給しない。

 

(手話通訳者及び要約筆記奉仕員の活動報告)

第18条 手話通訳者及び要約筆記奉仕員は、活動の内容を手話通訳者及び要約筆記奉仕員活動報告書(様式第7号)に記録し、請求書を添えて派遣を行った月の翌月10日までに町長に報告するものとする。

 

(手話通訳の登録の取消し)

第19条 町長は、次の各号のいずれかに該当した場合は、手話通訳者及び要約筆記奉仕員の登録を取り消すことができる。

(1) 本人から申出があった場合

(2) 第13条の規定に違反した場合

(3) その他この事業の目的に著しく反した行為をした場合

 

(その他)

第20条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は町長が別に定める。

 

附 則

(施行期日)

1 この要綱は、公布の日から施行する。

(多可町手話通訳者派遣事業実施要綱の廃止)

2 多可町手話通訳者派遣事業実施要綱(平成18年告示第95号)は廃止する。

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