千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例 千葉県自民党は、2011(平成23)年障害者基本法の改正により、手話が言語として位置付けられたことを踏まえ、手話が独自の言語であることを明確に認識し、聴覚障害者が使用する手話等の意思疎通手段に対する県民の理解を深めるとともに、聴覚障害者が手話等の意思疎通手段を利用しやすい環境をつくるため、手話等の普及の促進に関する基本的な事項を定める条例の制定を行う必要があると考え、条例案を取りまとめた(手話言語等の普及の促進に関する条例の制定の必要性・PDF)。 手話や要約筆記が使いやすい環境を整えることを盛り込んだ千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例案は、パブリックコメントを経て修正し、6月16日に行われた県議会・健康福祉常任委員会で審議され、全会一致で承認され、議員発議案第1号として、6月定例千葉県議会最終日の6月21日に上程され、全会一致で可決した。 施行は6月28日(公布即日施行)。 日本共産党寺尾さとし議員は、「千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例」、いわゆる手話言語条例を制定しようとするものであり、これに異論をとなえるものではありません。ろう者のみなさんにとって、手話が言語として認められることは画期的なことであり、社会的に差別を受けることなく暮らせる環境をつくるうえで大きな役割を果たすものです。それだけに県の役割と責任はきわめて重要です。鳥取県ではろう者団体のみなさんも加わる『手話施策推進協議会』を設置し、手話等の普及・促進に向けた計画を推進するための手立てを講じています。また手話通訳者や要約筆記者などの養成と処遇の改善、それらを含む手話施策の推進のための財政上の措置など、県の責任を明確にすべきことを申し添え」、賛成した。 千葉県内では、習志野市手話、点字等の利用を進めて、障がいのある人もない人も絆(きずな)を深め、互いに心を通わせるまちづくり条例(2016年4月1日施行)についで2番目。県レベルでは沖縄県に次いで7番目。全自治体としては50番目。 条例で、手話に特化することなく、要約筆記、触手話、指点字、筆談その他の聴覚障害者が日常生活又は社会生活を営む上で使用する意思疎通のためのコミュニケーション手段を規定したのは、明石市条例が初めだが、千葉県や習志野市の他に兵庫県小野市の条例がある。 千葉県の聴覚・平衡機能障害者(障害手帳保持者)数は、12,661人(内重度4,241人。2015年度末)。 なお千葉県全人口は、6,238,589人(2016年6月1日現在)。
千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例(pdf) 2016年6月21日可決。6月28日施行 前文 手話は、物の名前、概念、文法等を手指や表情等により視覚的に表現する独自の言語の体系を有する非音声言語であり、ろう者が知的で心豊かな日常生活又は社会生活を営むために大切に受け継いできたものである。
しかし、明治十三年にイタリアのミラノにおけるろう教育に関する国際会議において口話法の優位が宣言されて以来、平成十八年の国際連合における障害者の権利に関する条約の採択まで、長年にわたり、手話は言語として認められてこなかった。 わが国においても、平成二十三年に障害者基本法が改正され、初めて言語として位置付け られ、平成二十六年に同条約の批准に至った。 障害の有無にかかわらず、各個人が相互に尊重し合える心豊かな生活を送るためには、お互いの意思疎通のため、必要な情報を発信及び受信できる環境が保障される必要がある。ろう者、中途失聴者及び難聴者、盲ろう者等のろう重複障害者等の聴覚障害者は、音声による情報の発信及び受信という日常生活又は社会生活の基礎となる意思疎通において困難を抱えており、個々の特性に応じた意思疎通のための手段を獲得し、それを用いることができるよう、障害に関する理解を広げるなどの環境づくりを進め、社会的障壁の除去を図ることが必要である。 本県においては、平成十八年に全国に先駆け、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例(平成十八年千葉県条例第五十二号)を制定し、障害のある人への情報提供等における不利益取扱いの禁止や合理的な配慮に基づく措置について定めるなど、障害のある者に対する理解を広げ、差別のない誰もが暮らしやすい地域
社会を目指し様々な取組を進めているが、聴覚障害者以外の者が聴覚障害者を理解し、互いに共生することができる地域社会を実現するためには、県民一人ひとりが聴覚障
害や手話等に対する理解を深めていくことが必要である。 そのため、これまでの歴史的背景を踏まえ、手話を言語として明確に位置付けるとともに、手話等の普及の促進を図り、さらには県民の聴覚障害者の意思疎通のための
手段に対する理解を深めるため、この条例を制定する。 (目的) 第一条 この条例は、手話が言語であることの明確な認識の下、手話等を活用した聴覚障害者の情報の発信及び受信の重要性に鑑み、手話等の普及の促進について、基本理念を定め、県の責務並びに市町村、県民及び事業者の役割を明らかにするとともに、県の施策を推進するための基本的な事項を定めることにより、聴覚障害者と聴覚障害者以外の者とが共生することのできる地域社会の実現並びに聴覚障害者の自立及び社会参加の促進に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
2 一 聴覚障害者 聴覚の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。以下同じ。)により継続
的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 ろう者 聴覚障害者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
三 盲ろう者 聴覚障害者のうち、視覚の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 四 手話等 手話、要約筆記、触手話、指点字、筆談その他の聴覚障害者が日常生活又は社会生活を営む上で使用する意思疎通のための手段をいう。 (基本理念) 第三条 聴覚障害者の特性に応じた意思疎通並びに情報の受信及び発信のための手段の確保は、全ての人が相互に意思を伝え、理解し、及び尊重し合うことを基本に行われなければならない。
2 手話の普及の促進は、手話が独自の言語の体系を有する文化的所産であって、ろう者が知的で心豊かな日常生活又は社会生活を営むために大切に受け継いできたものであるとの認識の下で、図られなければならない。 (県の責務) 第四条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、市町村
その他関係機関と連携し、聴覚障害者の社会的障壁の除去について、聴覚障害者が障害のない者と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために必要かつ合理的な配慮を行い、手話等の普及の促進に努めなければならない。 2 県は、手話等を使用する者と連携し、手話等に対する県民の理解の促進に努めなければならない。 (市町村の役割) 第五条 市町村は、基本理念にのっとり、県と連携し、聴覚障害者の社会的障壁の除 去について、聴覚障害者が障害のない者と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために必要かつ合理的な配慮を行い、手話等の普及の促進及び手話等を使いやすい環境の整備に努めるものとする。 (県民の役割) 第六条 県民は、基本理念にのっとり、手話等及び聴覚の障害に関する理解を深める よう努めるものとする。
2 手話等を使用する者は、基本理念にのっとり、手話等の普及の促進に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割) 第七条 事業者は、基本理念にのっとり、聴覚障害者に対してサービスを提供するとき又は聴覚障害者を雇用するときは、手話等の使用に関して配慮するよう努めるものとする。 (計画の策定及び推進) 第八条 県は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第二項に規定する都道府県障害者計画において、手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員の養成その他手話等の普及の促進に必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。 2 県は、前項の施策について定めようとするときは、あらかじめ、聴覚障害者の意見を聴くものとする。
3 県は、第一項の施策について、その実施状況を公表するとともに、必要に応じて
見直しを行うものとする。 (手話等を学習する機会の確保等) 第九条 県は、市町村その他関係機関及びろう者その他の手話等に関わる者と連携し、県民が手話等を学習する機会の確保等に努めるものとする。 2 県は、聴覚障害者の情報の提供に関する合理的な配慮を行うため、その職員が手
話等を学習する研修その他必要な環境の整備を図るものとする。 (手話等を用いた情報発信等) 第十条 県は、聴覚障害者が県政に関する情報を速やかに取得することができるよう、手話等を用いた情報の発信を推進するものとする。 2 県は、県が主催する講演会等に手話通訳者及び要約筆記者を配置するよう努めるものとする。 3 県は、手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員の派遣並びに聴覚
障害者からの相談に応じる拠点の支援を行うことにより、聴覚障害者が手話等を使用し、及び手話等による情報を取得できる環境を整備するよう努めるものとする。 (手話通訳者、要約筆記者等の派遣体制の整備)
第十一条 県は、手話通訳者、要約筆記者及びこれらの指導者並びに盲ろう者向け通訳・介助員の養成及び研修に努め、市町村と協力して、聴覚障害者が手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員の派遣による意思疎通支援(障害者の日
常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号) 第七十七条第一項第六号に規定する意思疎通支援をいう。)を県又は市町村から受けられる体制の整備及び充実に努めるものとする。
2 県は、前項の養成及び研修並びに体制の検討を行うに当たっては、市町村及び聴覚障害者から意見を聴くものとする。
(学校における手話等の普及) 第十二条 聴覚の障害のある幼児、児童又は生徒(以下「聴覚障害児」という。)が通園し、又は通学する学校の設置者は、聴覚障害児がその特性に応じた手話等を学び、又は手話等を用いて各教科若しくは各領域を学ぶことができるよう、教職員の手話等に関する技能を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 2 聴覚障害児が通園し、又は通学する学校の設置者は、聴覚障害児に対する手話等に関する学習の機会の提供並びに聴覚障害児の保護者に対する教育に関する相談へ
の対応及び支援に努めるものとする。 3 聴覚障害児が通園し、又は通学する学校の設置者は、教職員の手話等に関わる専門性の向上に関する研修等に努めるものとする。 4 学校の設置者は、手話等に関する児童及び生徒の理解の促進に努めるものとする。 (事業者への支援) 第十三条 県は、聴覚障害者が利用しやすいサービスの提供及び聴覚障害者が働きやすい環境の整備のために事業者が行う取組について、必要な支援を行うよう努めるものとする。 (聴覚障害者等による普及啓発) 第十四条 聴覚障害者及び聴覚障害者の団体は、自主的に手話等の普及及び啓発を行うよう努めるものとする。 (手話等に関する調査研究等への協力) 第十五条 県は、ろう者その他の手話等に関わる者が手話等の発展に資するために行う手話等に関する調査研究の推進及びその成果の普及に協力するものとする。 (財政上の措置) 第十六条 県は、手話等の普及の促進に関する取組を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。 |
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千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例案に対する主なご意見に対する対応について(pdf)
○意見要望を寄せた個人・団体 134件
○意見要望の総数 333件
・修正に関するもの 235件
・意見・要望に関するもの 98件
関係条文 |
ご意見の概要 |
回答 |
全般 |
全県民の理解を得られるやすくするため、また、条例の理念や制定の背景 などを明確にするため、前文を追加すべきである。 |
本来、条例においては、目的において 条例の目指すところを規定することから、前文は置かないことが通例ですが、条例制定の背景等をよりわかりやすくする場合には前文を置く場合もあります。こうしたことから、本条例の制定の背景等をより明確にするため、前文を置くこととします。 |
全般 |
各条文の文末が「〜努めなければならない」などと表現されているが、障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法など、同様な内容での条文は「〜しなければならない」「〜与えなければ
らない」と表現されていて、整合性や統合性が保たれるように文言の統一化を図るべきである。 |
法においては、「しなければならない」 等の表現がされていますが、その一方 で、「加重な負担となる場合はその限りではない」ということも付記されていることから、本条例において努力義務として規定していることは、法との
同一の方向性を規定していると考えております。 |
第2条 |
定義に、「盲ろう者」だけではなく、「中途失聴者」「難聴者」「ろう重複障 害者」を加えるべきである。 |
第2条は、条例の本文で使用される用語について定義する条項であり、条文にない文言についての定義を行いません。しかしながら、聴覚障害者のそれぞれの特性を例示することも必要であることから、前文において例示いたします。 |
第2条 |
聴覚障害者の定義の中に、「障害者手 帳の交付の基準に達していなくても、 難聴により日常生活に支障のある人を含む」を加えていただきたい。 |
本条例においては、聴覚障害者の定義 は、障害者基本法の定義を基にしており、障害者総合支援法の支給条件に適合しているか否かは問わず、広く聴覚
障害者を対象としています。 |
第2条 |
磁器ループ、FM機器、パソコン等を 利活用した機器についても「手話等」 定義の中で例示すべきである。 |
ご指摘については、環境整備という 面から、その重要性は十分認識しているところであり、逐条解説の中でそう した考えは示してまいります。 |
第2条 |
特に幼児から小学部にかけて正しい日本語を獲得するため、将来手話言語 を獲得するためにもキュードスピーキュードスピーチについては、聴覚障
害者が日本語を獲得するためなどに効果的なものであることから、その重は絶対に欠かせません。条例を制定するにあたりキュードスピーチの普及使用についての内容を取り入れていただきたい。
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必要性は十分認識しています。第2条4号手話等の定義については意思疎通手段の例示であり、例示以外のその他の意思疎通手段を否定するものではありません。条文の「その他の日常生
活又は社会生活を営む上で使用する意思疎通のための手段」の中に含まれていると考えています。逐条解説においてその点を示します。 |
第2条 |
「手話等」の定義の中に、「補聴援助システムその他の情報支援技術を利用した補助代替手段」を加えていただきたい。
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第2条4号手話等の定義については
意思疎通手段の例示であり、例示以外 のその他の意思疎通手段を否定する ものではありません。条文の「その他 の日常生活又は社会生活を営む上で 使用する意思疎通のための手段」の中
に含まれていると考えています。逐条 解説においてその点を示します。 |
第2条 |
第2条の定義で「合理的な配慮」について明記すべきと考えます。 |
「合理的な配慮」について、趣旨を明確にするため、第4条及び第5条において、「聴覚障害者が障害のない者と実質的に同等の日常生活又は社会活を営むために」という文言を追加しました。
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第3条 |
1項に、もっと細かな内容を書き記してほしい。「〜聞こえない者と聞こえる者がお互いの違いを理解し、すべての人が相互に意思を伝えあって、人格
を尊重しあうこと〜」を加えてほしい。(他具体的な意見あり) |
第3条は、本条例における基本理念を定めたものであり、情報保障の行われ方、手話の普及に当たっての認識について規定しており、ご指摘については、その中に含まれていると解しています。
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第4条 |
「災害時の情報、コミュニケーション 対策に関する項目」、「緊急時、夜間や日祭日などの対応」について加えていただきたい。
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個々の事例に関しては、条文の中の 「必要かつ合理的な配慮」の中に含まれているものと考えます。 |
第5条 |
「市町村」は政令指定都市や中核市も含まれているのであれば、その旨明記してほしい |
地方自治法において、市町村には政令指定都市、中核市も含まれており、特に明記する必要はないものと考えます。 |
第6条 |
「手話等を使用する者は」を「県民」に、手話等に「普及の促進」を「普及及び利用の促進」に修正してほしい。 |
手話等を使用する者の存在は、手話等の普及に欠かせない存在であることから、努力義務規定を設けたものです。また、利用の促進は普及の促進の中に含まれるものと考えます。 |
第7条 |
「雇用者全員が手話等の使用に関して配慮し、手話学習など必要な環境の整備を図るよう努めるものとする」を加える。 |
ご指摘の趣旨は、「手話等の使用に関 して配慮するよう努めるものとする」に含まれると考えます。 |
第7条 |
条例ができることで、広く事業者の方にも理解して、もらえると、会社としても人材を活かしていけると思います。
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条例制定後、条例の趣旨の啓発に努めてまいります。 |
第8条 |
「聴覚障害者の意見」ではなく、「当事者団体等の意見」としていただきたい。 |
条文では、意見聴取の範囲を聴覚障害者団体よりも広くしてあり、その中に含まれていると考えます。 |
第9条 |
障害がある本人が手話を学ぶ機会を 確保してほしい。中途の障害者が安心して手話等を学習できるよう整備してください。 |
具体的な事項については、施策、事業実施の中で個別に考慮されるものと考えます。 |
第10条 |
「説明会、会議、研修会等」を加える。「災害時にも聴覚障害者の情報コミ ニケーション支援として、手話通訳者と要約筆記者を配置しなければならない」を加えていただきたい。
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「説明会、会議、研修会等」については、講演会等の中に含まれていると考えます。ただし、具体的な事項については、施策、事業実施の中で個別に考慮されるものと考えます。 |
第10条 |
「災害に関する情報並びに」を追加していだきたい。 |
県政の情報の中に含まれるものと考えます。 |
第11条 |
「手話通訳者、要約筆記者の身分保障、健康維持、待遇改善に努めなければならない。」を加えていただきたい。 |
手話通訳者、要約筆記者の育成は急務の課題であると認識しており、ご指摘については、条文の体制の整備及び充実の中に含まれているものと考えます。 |
第11条 |
第11条の冒頭の例示部分に、盲ろう者向け通訳介助員を加えてほしい。 |
ご指摘を受け、よりわかりやすくするために、条文の見直しを行います。
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第12条 |
中学校1,2年生のホームルームや道徳の時間に手話語を英語と同じ単位として導入する。 |
具体的な事項については、施策、事業 実施の中で個別に考慮されるものと考えます。 |
第12条 |
「聴覚障害児教育の専門性を持つ学校」と「聴覚障害児が通うその他の学校及び大学、専門学校」の二つの文言に分けて、それぞれ必要とする内容の
述をするという組み立て方にしていただきたい。 |
この条項建てで問題はないと考えており、修正はいたしません。 |
第12条 |
「聴覚障害者が情報保障を必要としている旨の意思を表示した場合において、教育機関はその実施について必要かつ合理的配慮をするように努める。」を規定 |
学校については、県、市町村の機関であり、合理的な配慮についての努力義務を負っていることから、ご指摘を条文にする必要はないと考えます。
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第13条 |
事業者や市町村によって、情報格差が起こらない配慮した条例にしてください。 |
ご指摘の通りだと考えます。具体的な事項については、施策、事業実施の中で個別に考慮されるものと考えます。 |
第14条 |
「聴覚障害者および聴覚障害者の団体」の義務について「努めなければならない」と規定されており、他の私人と比べて義務水準が高いように受け取れる。こうした規定の差異が意図したものであるならばその趣旨を明記し、意図していないのであれば「努めるものとする」と修正することを提案する。
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ご指摘を踏まえ、他の条項と合わせる形で修正します。 |
その他 |
議場やテレビ放送などにも手話通訳等による聴覚障害者に対する情報保障の義務を明記していただきたい。 |
具体的事項について、条例に規定することは難しいものと考えます。なお県議会に関しての手話通訳、テレビ、インターネット放映における字幕表示
については、今後の検討課題と認識しています。 |
その他 |
子どもやろう重複障害者にも条例の内容が理解できるよう、パンフレットの漫画による解説、手話表現の動画作成、点字版作成などの配慮をお願いします。 |
条例の周知に関しては、わかりやすい 夫を検討していきます。 |
その他 |
聾学校の校名変更はしないでください。 |
県当局に申し入れします。 |
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条例原案(パブリックコメントにかけた案)
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であることの明確な認識の下、手話等を活用した聴覚障害者の情報の発信及び受信の重要性に鑑み、手話等の普及の促進について、基本理念を定め、県の責務並びに市町村、県民及び事業者の役割を明らかにするとともに、県の施策を推進するための基本的な事項を定めることにより、聴覚障害者と聴覚障害者以外の者とが共生することのできる地域社会の実現並びに聴覚障害者の 自立及び社会参加の促進に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 聴覚障害者 聴覚の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における 事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。以下同じ。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) ろう者 聴覚障害者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
(3) 盲ろう者 聴覚障害者のうち、視覚の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある
ものをいう。
(4) 手話等 手話、要約筆記、触手話、指点字、筆談その他の聴覚障害者が日常生活又は社会生活を営む上で使用する意思疎通のための手段をいう。
(基本理念)
第3条 聴覚障害者の特性に応じた意思疎通並びに情報の受信及び発信のための手段の確保は、全ての人が相互に意思を伝え、理解し、及び尊重し合うことを基本に行われなければならない。
2 手話の普及の促進は、手話が独自の言語の体系を有する文化的所産であって、ろう者が知的で心豊かな日常生活又は社会生活を営むために大切に受け継いできたものであるとの認識の下で、図られなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、市町村 その他関係機関と連携し、聴覚障害者の社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮を行い、手話等の普及の促進に努めなければならない。
2 県は、手話等を使用する者と連携し、手話等に対する県民の理解の促進に努めなければならない。
(市町村の役割)
第5条 市町村は、基本理念にのっとり、県と連携し、聴覚障害者の社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮を行い、手話等の普及の促進及び手話等を使いやすい環境の整備に努めるものとする。
(県民の役割)
第6条 県民は、基本理念にのっとり、手話等及び聴覚の障害に関する理解を深めるよう努めるものとする。
2 手話等を使用する者は、基本理念にのっとり、手話等の普及の促進に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第7条 事業者は、基本理念にのっとり、聴覚障害者に対してサービスを提供するとき又は聴覚障害者を雇用するときは、手話等の使用に関して配慮するよう努めるも
のとする。
(計画の策定及び推進)
第8条 県は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項に規定する都道府県障害者計画において、手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介
助員の養成その他手話等の普及の促進に必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 県は、前項の施策について定めようとするときは、あらかじめ、聴覚障害者の意見を聴くものとする。
3 県は、第1項の施策について、その実施状況を公表するとともに、必要に応じて見直しを行うものとする。
(手話等を学習する機会の確保等)
第9条 県は、市町村その他関係機関及びろう者その他の手話等に関わる者と連携し、県民が手話等を学習する機会の確保等に努めるものとする。
2 県は、聴覚障害者の情報の提供に関する合理的な配慮を行うため、その職員が手
話等を学習する研修その他必要な環境の整備を図るものとする。
(手話等を用いた情報発信等)
第10条 県は、聴覚障害者が県政に関する情報を速やかに取得することができるよう、手話等を用いた情報の発信を推進するものとする。
2 県は、県が主催する講演会等に手話通訳者、要約筆記者を配置するよう努めるものとする。
3 県は、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣及び聴覚障害者からの相談に応じる拠点の支援を行うことにより、聴覚障害者が手話等を使用し、及び手話等による情報を取得できる環境を整備するよう努めるものとする。
(手話通訳者、要約筆記者等の派遣体制の整備)
第11条 県は、手話通訳者、要約筆記者及びこれらの指導者等の養成及び研修に努め、市町村と協力して、聴覚障害者が手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員の派遣による意思疎通支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第1項第6号に規定する意思疎通支援をいう。)を県又は市町村から受けられる体制の整備及び充実に努めるものとする。
2 県は、前項の養成及び研修並びに体制の検討を行うに当たっては、市町村及び聴 覚障害者から意見を聴くものとする。
(学校における手話等の普及)
第12条 聴覚の障害のある幼児、児童又は生徒(以下「聴覚障害児」という。)が通園し、又は通学する学校の設置者は、聴覚障害児がその特性に応じた手話等を学び、又は手話等を用いて各教科又は各領域を学ぶことができるよう、教職員の手話等に関する技能を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 聴覚障害児が通園し、又は通学する学校の設置者は、聴覚障害児に対する手話等
に関する学習の機会の提供並びに聴覚障害児の保護者に対する教育に関する相談への対応及び支援に努めるものとする。
3 聴覚障害児が通園し、又は通学する学校の設置者は、教職員の手話等に関わる専門性の向上に関する研修等に努めるものとする。
4 学校の設置者は、手話等に関する児童及び生徒の理解の促進に努めるものとする。
(事業者への支援)
第13条 県は、聴覚障害者が利用しやすいサービスの提供及び聴覚障害者が働きやすい環境の整備のために事業者が行う取組について、必要な支援を行うよう努めるものとする。
(聴覚障害者等による普及啓発)
第14条 聴覚障害者及び聴覚障害者の団体は、自主的に手話等の普及及び啓発を行うよう努めなければならない。
(手話等に関する調査研究等への協力)
第15条 県は、聴覚障害者その他の手話等に関わる者が手話等の発展に資するために行う手話等に関する調査研究の推進及びその成果の普及に協力するものとする。
(財政上の措置)
第16条 県は、手話等の普及の促進に関する取組を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。
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知事会見を手話で発信 全国4番目、同時通訳スタート(2018年4月6日配信『東京新聞』ー「千葉版」)
県は5日、知事の定例記者会見で、手話の同時通訳をスタートさせた。議会中継では導入済みで、都道府県では鳥取など三県が行っているという。2016年6月に施行された手話言語条例に伴い、手話を言語として普及させる。
この日は千葉県聴覚障害者協会から派遣された女性が担当。千葉テレビで生放送された。知事に代わって県職員が質問に答える場面などで声が聞き取りにくく、訳すのに困る場面も。報道広報課の担当者は「スピーカーの位置などを改善したい」と話した。会見はインターネットでも配信される。
障害者にも情報を 知事会見に手話通訳(2018年4月6日配信『千葉日報』)
聴覚に障害がある人への情報発信を強化するため、県は、知事の定例記者会見に5日から手話通訳を導入した。同会見は、録画映像を県ホームページ(HP)で公開しており、千葉テレビで生中継も行っている。
県報道広報課によると、手話の浸透を図る県手話言語条例(2016年6月施行)を踏まえた措置。手話通訳は、県の広報番組では06年4月から、県議会中継は16年12月から導入済み。
この日の会見冒頭、森田知事は「障害のあるなしにかかわらず千葉県のことを知ってほしい」と語り、自らも手話で「よろしくお願いします」と呼び掛けた。
知事の定例会見、手話通訳を導入(2018年4月6日配信『日経新聞』)
千葉県は5日、森田健作知事の定例記者会見に手話通訳を導入した。県聴覚障害者協会から派遣された通訳士1人が、冒頭の発表事項と記者との質疑応答を通訳する。
同県は2016年に「手話言語等の普及の促進に関する条例」を施行している。聴覚障害者のコミュニケーション手段の普及促進に向け、知事会見で情報発信する。
県によると、手話による知事会見の同時通訳を導入したのは全国4例目。会見後に公開する動画で手話通訳の映像を合成している自治体もあるという。
学校での手話等の普及を推進
千葉県教委が研修資料(2017年5月19日配信『教育新聞』)
千葉県教委は5月18日、学校での手話等の普及を促進するための手話言語等推進研修で使用する資料を公表した。障害者差別解消法や県の条例など、障害のある人に関係のある法律などの基本理念や施策を説明した上で、聴覚障害者への配慮などをまとめている。
聴覚障害者の特性と配慮として、▽文字や図など視覚からの情報提供▽手話や要約筆記、筆談など、その人に応じた方法でコミュニケーションを行う▽内容が伝わっているか確認する▽口の形が見えやすい距離の確保――などを挙げた。
意思疎通等のための手段としては、手話や指文字、要約筆記、筆談や読話・口話を提示。手話を使うときの重要ポイントとして、▽見えるところで、はっきり伝える▽表情を大切に▽声も一緒に出す▽手話は表現が一つではないと認識する――と説明したほか、簡単な手話、指文字の説明も盛り込んでいる。
資料としては、スライドで使えるものと、受講者配布用、ノートとして使えるものの3種類。これらを使用して研修会を行える。
手話等とは、手話や要約筆記、筆談、指文字など、聴覚障害者が日常生活または社会生活で使用する意思疎通のための全手段を指す。
聴覚障害者に関しては、平成28年6月に「千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例」が施行。学校で手話等の普及に努めると示された。
教委では、同条例に基づき、全公立幼稚園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、特別支援学校や幼保連携型認定こども園で、聴覚障害者や手話等に関する理解の促進に努めていくとしている。
学校における手話等の普及について 平成28年6月に「千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例」が施行されました。この条例は、県民一人一人が聴覚障害者を理解し、コミュニケーション手段の手話等の普及促進を図ることを目的としており、その中で、学校における手話等の普及に努めることが示されています。 この条例に基づき、県教育委員会では、全ての公立幼稚園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、特別支援学校及び幼保連携型認定こども園における聴覚障害者及び手話等に関する理解の促進に努めていきます。 学校における手話言語等推進研修 |
目標達成へ取り組み検証を 県の障害者支援対策(2016年10月24日配信『千葉日報』−「社説」)
県が障害者の支援対策で掲げた数値目標(2015年度、86項目)のうち、4割以上に当たる38項目が達成できなかった。東京パラリンピックが4年後に迫り、障害者への理解を深める絶好の時期。県は目標達成に向け、これまでの取り組みを検証すべきだ。
未達成だった「手話通訳者の養成」は、実践を含む3種類の講座を3年かけて履修するが、途中でやめてしまう人も多い。差別などの相談に応じる「アドバイザー派遣」、本人や家族を訪問する「引きこもり支援」も目標を大幅に下回った。
一方で、ひきこもり地域支援センターが受けた相談件数(目標800)や、手話通訳者の派遣数(同236)はクリア。これらの実績が他の項目にも波及するよう、効果的な周知に加え、実態に即した制度へと見直しを進めてほしい。
本県は、障害者に対する差別の解消を目指した「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」を全国に先駆けて制定した。障害を理由に差別を受けず、地域で暮らせるよう県は率先して取り組む責務がある。
条例は「差別」を、福祉サービスや医療、雇用、教育などでの「不利益な取り扱い」、「合理的な配慮に基づく措置をとらない」の2種類と定義した。
こうした中、県内自治体の2割に当たる11市町は障害がある子どもに対応した保育施設がないことが分かった。市川、松戸、成田市などは多くの受け入れ実績があるが、県南部や郡部は対応施設が少ない傾向がある。
居住する地域によって子どもを預けることができなければ保護者の働く意欲は奪われる。県は実態把握を進めるとともに、人件費補助など市町村に対する障害児の保育受け入れ支援策を周知させる必要がある。
県が作成した啓発用の4コマ漫画には、盲導犬を連れた視覚障害者がレストランへの入店を拒まれたり、車いす利用者がバスに乗れなかったなど、当事者が実際の生活で受けた差別が描かれている。
また、視覚障害者が駅ホームからの転落を防ぐ「ホームドア」の県内設置率もまだまだ低い。「無理解」が生む悲劇を無くすため、日常に潜む“芽”をつむ努力を官民一体で推し進めたい。