秩父市手話言語条例
2017年12月20日、秩父市議会は、議員提案の秩父手話言語条例案を可決した。施行は、2018年4月1日。
条例は、「手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の整備に関し、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務又は役割を明らかにするとともに、施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、もってろう者とろう者以外の者とが共生することのできる地域社会の実現に寄与する」ことを目的としている。
同様の条例は、埼玉県では、埼玉県、朝霞市、三芳町、富士見市、三郷市、桶川市、ふじみ野市、久喜市、熊谷市、川口市、蓮田市、行田市がすでに制定している。
ちちぶ定住自立圏構想など広域的な取り組みを行っている秩父地域(秩父市・横瀬町・長瀞町・小鹿野町・皆野町)の若手の議員が勉強会を開き原案を作成し、各市
提案したのである。
埼玉県の北西部にあり、面積は577.83平方キロメートルで、埼玉県全体の約15%を占めている秩父市は、都心まで約60〜80km圏、さいたま市までは50〜70km圏に位置し、周囲に山岳丘陵を眺める盆地を形成している。
市域のほとんどは秩父多摩甲斐国立公園や武甲・西秩父などの県立自然公園の区域に指定されており、自然環境に恵まれた地域である。また、市の中央を流れる荒川は、秩父湖、秩父さくら湖などのダム湖を形成しており、この川によって市の中心部は東西に区分され、東部の平坦部分は市街地を形成し、商店街、住宅地などが集中。西部丘陵地帯にある平坦地は、水田など農業用地が多くなっている。
京都の祇園祭、飛騨の高山祭と並んで日本三大美祭及び日本三大曳山祭の一つに数えられる秩父神社の例祭・秩父夜祭(ちちぶよまつり)は、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。
秩父市の人口は、63,747人(男;31,132人/女;32,615人)、26,359世帯(2017年12月1日現在)。
秩父市の聴覚・平衡障害者は、185人(2014年4月1日現在)。
第四期秩父市障がい者福祉計画秩父市障がい福祉計画(2015年度〜2017年度)
秩父市手話言語条例
公布;2017年12月20日
施行;2018年4月1日
手話は、日本語や英語などの音声言語と異なり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語であり、主にろう者の思考や意思疎通に用いられている。我が国において、手話は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として、ろう者によって大切に育まれてきた。
しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることやコミュニケーションを図ることに困難があり、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられたが、手話に対する理解の広がりを十分に感じられる状況には至っていない。手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解を広げることにより、市民や観光客など全ての人が安心して暮らし、また、訪れることができる秩父市を目指すとともに、広域連携により、手話普及の先進地としての秩父地域をつくるため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の整備に関し、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務又は役割を明らかにするとともに、施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、もってろう者とろう者以外の者とが共生することのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話の理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の整備は、次に掲げる事項を基本として行うものとする。
(1) 手話が、ろう者が自ら生活を営むために使用している独自の体系を持つ言語であって、豊かな人間性を涵養し、及び知的かつ心豊かな生活を送るための言
語活動の文化的所産であることを理解すること。
(2) ろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生すること。
(3) ろう者とろう者以外の者が手話により意思疎通を行う権利を尊重すること。
(市の責務)
第3条 市は、前条に定める基本理念にのっとり、手話の理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の整備を推進するため、次に掲げる施策を実施するものとする。
(1) 市民が手話を学ぶ機会を確保するための施策
(2) 市民が手話を使用する機会を拡充するための施策
(3) 市民が意思疎通の手段として手話を容易に選択し、使用することができる環境の整備のための施策
(4) 手話通訳者その他の手話による意思疎通支援者の配置拡充及び処遇改善のための施策
(5) 前各号に掲げるもののほか、手話の理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の整備を推進するために市長が必要と認める施策
(市民の役割)
第4条 市民は、基本理念を理解し、積極的に手話を使用するとともに、地域社会の一員として、手話を使用しやすい地域社会の実現に努めるものとする。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、基本理念を理解し、手話を使用する人が利用しやすいサービスを提供し、手話を使用する人が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(施策の推進方針)
第6条 市は、第3条各号に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針を策定するものとする。
2 前項の方針は、市が行う他の施策や計画との整合及び調和が図られたものでなければならない。
3 市は、第1項の方針の策定に当たっては、手話を使用する人その他関係者の意見を聴くものとする。
(財政上の措置)
第7条 市は、手話に関する施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成30年4月1日から施行する。
(検討)
2 市は、この条例の施行後3年を経過した場合において、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
提案理由
手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解や普及などに関し、基本理念を定め、市や市民などの責務、役割を明らかにするとともに、施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、もってろう者とろう者以外の者とが共生することのできる地域社会を実現するため。
地方自治法第112条及び秩父市議会会議規則第14条の規定により、次のように提出します。
平成29年12月20日
提出者 秩父市議会議員 浅 海 忠
賛成者 秩父市議会議員 小 櫃 市 郎
同 新 井 重一郎
同 斎 藤 捷 栄
同 福 井 貴 代
同 清 野 和 彦
秩父市議会議長 松 澤 一 雄 様