北海道・千歳市手話言語条例
北海道・千歳市、手話言語条例制定 手話言語条例制定に喜びの輪広がる 市民理解の促進へ弾み−千歳市(2018年3月9日配信『苫小牧民報』) 千歳市手話言語条例の制定を喜ぶ関係者と山口市長ら理事者、市議会議員団 千歳市手話言語条例が市議会第1回定例会で可決された2018年3月8日、傍聴席には千歳聴力障害者協会や北海道ろうあ連盟の関係者などの約40人が詰め掛けていて、晴れの日を迎えた。手話を言語と位置付けることで、手話と聴覚障害への理解促進を図る同条例の制定は道内14番目、全国130番目。市は今後、専従手話通訳者の増員など、制定に伴う関連施策を展開していく。 条例は、同日公布され、即日施行された。
同様の条例は2013年10月に鳥取県が全国で初めて制定。道内では同年12月に石狩市が、全国の市としては初めて制定していた。千歳では昨年、市障がい者地域自立支援協議会に専門部会が設けられ、条例案づくりを進めてきた。この日午後、市議会には関係者が多数傍聴に訪れ、可決時には拍手を表す手話や満面の笑みで喜びを表した。 議場で千歳聴力障害者協会の佐藤義典会長、道ろうあ連盟の佐藤英治副理事長、山口幸太郎千歳市長のほか、市内手話団体の関係者が制定を祝して記念撮影を行った。佐藤会長は「今まで手話を理解されなかった苦労が少しずつ消えていく気がする」と感慨深い表情。「第一歩を踏み出した意義深い日。今後は市民に手話への理解を広めやすくなる」と喜んだ。 30、40年前のろう学校では、手話ではなく口の動きで言葉を読み取る「口話(こうわ)」が指導された。手話は「手まね」として禁じられることがあったという。 口話は正確な意思疎通が難しく、関係者は長年にわたって条例の理想に賛同する人の輪を広げ、制定を求める活動を続けてきた。 石狩市が条例を制定した際、検討会の委員を務めた道ろうあ連盟の佐藤副理事長は「社会を変えていく一歩になる。意義は大きく、今後も長い時間をかけて理解を広める活動をしたい」と千歳での制定を評価する。同市では小中学校への出前講座を推進中。「今後の千歳市の取り組みに注目したい」と期待した。 千歳市の条例は、手話の理解促進と普及について「ろう者とろう者以外の人がお互いを理解し尊重し合うことを基本とする」と理念に盛り込む。手話を使いやすい環境づくりを市の責務として位置付け、市民には手話への理解を深めること、事業者にはろう者が利用しやすいサービスの提供と意思疎通への配慮を、努力義務として期待する。 市は新年度、専従手話通訳者の増員や条例制定を記念したフォーラムの開催を予定している。市担当者は「手話を教える出前講座開催も検討したい」という。
千歳市は、北海道石狩振興局にある市。市域は東西に長く広がっており、面積は594.95km²。西部は山岳地帯で支笏洞爺国立公園になっている。 「北海道の空の玄関口」である新千歳空港があり、国際線と合わせた乗降客数は年間およそ21,312,287人に達する(2016年)。 また市内には、陸上自衛隊第7師団と航空自衛隊第2航空団の基地や演習場があり、自衛隊と共存した社会を築いている。 人口は、96,286人(男性;48,844人/女性;47,442人)、47,870世帯(2017年3月1日現在)。 聴覚障害者数は、182人(2013年度)。 この1年2018−千歳・恵庭 (1)手話言語条例を制定 聴覚障害者の念願叶う(2018年12月20日配信『苫小牧新報』) 「第一歩を踏み出した意義深い日」―。千歳聴力障害者協会の関係者はそう語った。3月8日、千歳市手話言語条例が市議会第1回定例会で可決され、即日施行された。手話を言語として位置付け、市民に聴覚障害への理解を深めてもらう狙いの条例。制定に際して今年度、市は専従手話通訳者を増員する取り組みを進めた。今後も手話への理解を広める施策を展開する。 障害者基本法と障害者の権利に関する条約は手話を言語として定めている。手話言語条例は2013年10月に都道府県としては鳥取県、市町村としては同年12月に石狩市の制定が端緒となった。千歳市の同条例制定は道内15番目、国内130番目。市障がい者地域自立支援協議会の専門部会が案を吟味してきた。 千歳市では、手話の理解促進と普及、手話に関する施策推進を通して「市民がお互いに支え合い、安心して共に生きることができる社会を実現する」ことを目的に掲げる。手話を使用しやすい環境づくりや施策の推進を、市の役割として明記。市民の理解を深めること、事業者には聴覚障害者が利用しやすいサービスの提供や働きやすい環境づくりに努めることを定める。 手話への社会的な理解が進んでいなかった30、40年前のろう学校では、口の動きを見て相手の話した内容を読み取り発語する「口話(こうわ)」が指導された。手話は「手まね」として禁じられた。だが口話では正確に読み取るのが難しく、意志疎通のほか学習や就職に影響することがあったという。こうした背景から手話を使いやすい環境整備を盛り込む手話言語条例は、聴覚障害を抱えた当事者の念願だった。 3月8日、市議会議場の傍聴席には道ろうあ連盟などの関係者が集い、可決を喜んだ。制定に立ち合った千歳聴力障害者協会の佐藤義典会長は「今まで手話を理解してもらえなかった苦労が消えていく気がする。今後は市民に理解を広めやすくなる」と感慨を語った。制定を機に、市はリーフレットの配布や市内催事での周知を行った。10月には制定記念イベントを開催した。 千歳市社会福祉協議会は、手話のできる人材や通訳者の育成を目的に、市からの委託事業として手話講座を開催。今年度も初級、中級、上級の各講座で計43人が修了した。社協専従手話通訳者の川北美由紀さんは「条例制定後、講座に関する問い合わせが増えています」と実感する。 市障がい者支援課の松田和也課長は「今後も要望があれば手話の出前講座を行い、必要な福祉サービスについても関係者と協議しながら検討していきたい」と話す。今後も関連施策の推進に努める方針だ。 2部会を新たに設置 千歳市障がい者地域自立支援協(2017年3月2日配信『苫小牧民報』) 北海道千歳市障がい者地域自立支援協議会の会合が1日、千歳市総合福祉センターで開かれ、同協議会内に新たに「手話言語条例専門部会」を設置した。市が2017年度内に手話言語条例を定める方針を決めており、同部会は他市の事例などを調査、研究し、条例制定に際して個々の委員が市に意見を述べる役割を担う。 障害者福祉施設や関係行政、教育機関などの関係者で組織し、障害者の自立支援に向けた情報共有が目的の協議会。委員、事務局、関係者ら約30人が出席した。 同条例は、手話を言語として位置付けることで差別の解消や、手話や聴覚障害への理解を促進し、聴覚障害者が住みやすい地域づくりを目的とする。同部会については、昨年11月の第3回協議会で設置を決めた。この日の会合では、千歳聴力障害者協会、千歳手話の会などからの委員11人を決定。部会長に市社会福祉協議会の小玉あけみ地域福祉課長を選任した。今後は手話言語条例の制定に必要な情報や資料の収集、調査、研究を行い、市に意見を述べていく。 併せて、在宅生活の諸問題について情報交換する「地域生活部会」も新設したほか、相談支援部会、こども部会、はたらく部会、進路連絡会議の各部会が活動を報告。 このうち進路連絡会議では、2月2日の会合で市内在住の高校3年生14人のうち、9人が障害福祉サービス事業所への通所、一般就労が1人、進学1人、未定3人であることが報告された、と発表した。はたらく部会は、2月21日に開催した企業向けのセミナーなどについて示した。 |