東京都千代田区障害者の意思疎通で都内初の条例制定 

 

 東京都千代田区議会は2016年10月19日、手話や要約筆記、点字、音訳など、障害者が自身の特性に応じたコミュニケーション手段を取れるよう配慮する「障害者の意思疎通に関する条例案」を全会一致で可決した。区によると、障害者のコミュニケーション手段に関する条例の制定は都内の自治体で初めて。公布は2016年10月20日。即日施行。

 

 条例は、障害者が日常生活や社会生活を営む上で、円滑な意思の疎通を図れるようにするのが目的。区の責務として、災害時を含めてそうした環境を整えるよう定め、区民にも同様の配慮を要望している。また、企業の本社が集まる区の特性から、事業者には区外にある事業所を含めて合理的な配慮をするよう求めた。

 区は今後、職員向けの研修や、区民、事業者向けの講習会を開く。

 

 なお、素案に対する意見公募は、2016年7月5日(火曜日)〜7月20日(水曜日)に行われ、5名から9件の意見が寄せられた。

 

 東京23区のほぼ中央に位置する千代田区は、1947年3月15日に麹町(こうじまち)区と神田区が合併して誕生した東京都の特別区の一つ。首都機能を置く東京の中心。地区の中央に皇居があり、区全体の約15%を皇居の緑地が占める。区域は、「江戸城」の外濠の内側部分とほぼ一致している。

 

人口は、59,554人(男29,824人/女29,730人)、33,526世帯(2016年10月1日現在)

 

千代田区障害福祉計画(第4期)(2015年3月)

 

 

千代田区障害者の意思疎通に関する条例(2016年10月20日公布・即日施行)

 

私たちは、様々な情報を収集し、意思疎通を図りながら日常生活や社会生活を営んでいる。意思疎通を図ることは、他者との相互理解を深める上で欠かせないものである。

  障害者の意思疎通を図る手段には、その障害者の有する障害の特性に応じて、音声言語をはじめ、文字、点字、手話、触覚による意思伝達など多様な選択肢がある。しかし、これらの意思疎通の手段が適時適切に利用できない場合には、障害者の生活に多くの困難をもたらすおそれがある。このため、私たちには、行政活動のみならず民間サービスの提供や区民の地域活動などを含めたあらゆる場面で、障害者の意思疎通の手段について選択の機会の確保及び拡大を図るとともに、障害者が有する障害の特性に応じた意思疎通に関する合理的な配慮を行う責務がある。

千代田区に住み、働き、学び、集うすべての人々がこの責務を果たすことにより、障害のある人もない人も分け隔てなく意思疎通を行い相互に理解し暮らすことのできる地域社会を築き、もって多様な人々が交流し共に支え合う共生社会の実現を目指し、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、障害者の意思疎通について基本理念を定め、千代田区(以下「区」という。)、区民及び事業者の責務を明らかにすることにより、障害者が日常生活又は社会生活を営む上で円滑な意思疎通を図ることができる社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

() 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

() 意思疎通の手段 言語(手話を含む。)、要約筆記等の文字の表示、点字、音訳、平易な表現、代筆及び代読その他日常生活又は社会生活を営む上で必要とされる補助的及び代替的な手段としての意思疎通支援用具等をいう。

() 合理的な配慮 障害者が日常生活又は社会生活において、障害のない人と同等の権利を行使することを確保するための必要かつ適切な現状の変更又は調整をいう。

() 区民 区内に居住する者、在勤する者又は在学する者をいう。

() 事業者 区内で事業活動を行う法人その他の団体をいう。

 

(基本理念)

第3条 障害者の意思疎通を円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならない。

2 意思疎通に関する合理的な配慮は、障害者が有する障害の特性(以下「障害特性」という。)に応じ、障害者が真に必要とするものでなければならない。

3 障害のある人もない人も、相互にその違いを理解し、互いの個性と人格とを尊重しなければならない。

 

(区の責務)

第4条 区は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、次の各号に掲げる施策を推進する責務を有する。

() 障害特性に応じた意思疎通の手段について選択の機会の確保及び拡大を図ること。

() 区民、事業者等と連携を図り、災害時においても障害特性に応じた意思疎通の手段を利用することができる環境を整備すること。

() 区民、事業者等が障害特性に応じた意思疎通に関する合理的な配慮を行うことができるよう適切な支援をすること。

() 区民、事業者等が基本理念の理解を深めるよう必要な措置を講ずること。

2 区は、前項各号に掲げる施策について、必要に応じ障害者に意見を求めるものとする。

 

(区民の責務)

第5条 区民は、基本理念に対する理解を深め、地域社会を構成する一員として、日常生活又は社会生活を営む場において障害特性に応じた意思疎通に関する合理的な配慮を行うよう努めるものとする。

 

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、その事業活動において障害特性に応じた意思疎通に関する合理的な配慮を行うとともに、区の施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者が区外に事務所又は事業所を有する場合は、当該事務所又は事業所に対し、障害特性に応じた意思疎通に関する合理的な配慮を行うことについて

協力を求めるものとする。

 

(財政上の措置等)

第7条 区は、基本理念に基づく意思疎通に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

 附 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

千代田区障害者の意思疎通の手段に関する基本条例(素案/ルビ付き

 

(前文)

人は、様々な情報を収集発信し、他の人と意思疎通を図りながら、社会生活を送っていく。そのための手段には、音声言語をはじめ、文字、点字、手話、触覚など多様な選択肢があるが、障害によってその手段に制約を受けることは、障害者の生活に多くの困難をもたらすおそれがある。

千代田区において、行政のみならず民間サービスや区民の地域活動を含めたあらゆる場面で、障害者の意思疎通の手段について選択の機会を拡大し、すべての人が障害の有無や種別によって分け隔てられることなく、相互に理解し暮らすことのできる地域社会の実現をめざし、この条例を制定する。

 

(目的)

1 この条例は、意思疎通の手段に関する基本理念を定め、千代田区(以下「区」という。)、区民及び事業者の責務を明らかにするとともに、区が障害の特性に応じた意思疎通の手段に関する合理的配慮の提供の促進を図ることにより、障害がある人もない人も分け隔てなく安心して暮らすことのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

2 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) 意思疎通の手段 言語(手話を含む。)、要約筆記等の文字の表示、点字、音訳、平易な表現、代筆及び代読その他日常生活又は社会生活を行う場合に必要とされる補助的及び代替的な手段としての意思疎通支援用具等をいう。

(3) 合理的配慮 障害者が日常生活又は社会生活において、障害のない人と同等の権利を行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整をいう。

(4) 区民 区内に居住する者、在勤する者又は在学する者をいう。

(5) 事業者 区内で事業活動を行う法人その他の団体をいう。

 

(基本理念)

3 意思疎通の手段に関する合理的配慮の提供は、障害のある人とない人とが相互の違いを理解し、その個性と人格とを互いに尊重することを基本として行われなければならない。

3の2 障害者が有している障害の特性に応じて意思疎通を円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならない。

 

(区の責務)

4 区は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に則り、区民、事業者その他の関係者との連携を図りながら、障害者の立場に立って、障害の特性に応じた意思疎通の手段に関する合理的配慮を提供し、障害者の利益が実現されるよう、環境の整備を推進する責務を有する。

4の2 区は、障害者に対して災害時における緊急情報を当該障害者の障害の特性に応じた意思疎通の手段により迅速かつ適切に伝達する責務を有する。

 

(区民の責務)

5 区民は、基本理念に対する理解を深め、地域社会で共に暮らす一員として、障害者に対して障害の特性に応じた意思疎通の手段に関する合理的配慮を提供するよう努るものとする。

 

(事業者の責務)

6 事業者は、基本理念に対する理解を深め、意思疎通の手段に関する合理的配慮の提供の促進について区が推進する施策に協力するよう努めなければならない。

6の2 事業者は、障害者に対して障害の特性に応じた意思疎通の手段に関する合理的配慮を提供し、事業従事者に対しては、本条例の趣旨について研修を実施し、障害者の利益が実現される環境の整備に努めなければならない。

 

(障害者福祉事業の方針)

7 障害者福祉に係る事業(以下「障害者福祉事業」という。)は、その形態や実施主体の違いにかかわらず、障害の特性に応じた意思疎通の手段に関する合理的配慮を提供するものでなければならない。

7の2 区は、障害者福祉事業が実施されるにあたり、良好な意思疎通の手段に関する配慮が提供されるよう必要な支援を行うものとする。

 

(理解促進)

8 区は、区民及び事業者に対して、障害の特性に応じた意思疎通の手段について理解を深めるための取組を行う。

8の2 区は、障害者に対して障害の特性に応じた意思疎通の手段に関する配慮を提供した区民及び事業者を表彰することができる。

 

(財政上の措置等)

9 区は、意思疎通の手段に関する施策を推進するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(委任)

10 この条例の施行に関し必要な事項は、千代田区長が別に定める。

 

 

意見の内容および区の考え方

NO

方法

在住等

ご意見

区の回答

1

在住者1

基本条例に記載されている合理的配慮については内容を理解していない方が多くいらっしゃると思います。(障害者の家族でさえ理解していない方もいるのが現状です。)
条例制定の目的は、合理的配慮の促進を図り障害の有無に関わらず安心して暮らせる地域社会の実現ですから、区の責務として、区民、事業者、関係者との連携を図り周知していく事が必要だと思います。
また、就労支援センターなどが企業との橋渡しとなり推進していって頂きたいと思います。

条例に基づき、区の責務として、区民・事業者・関係者との連携を図り、条例の趣旨を周知するとともに、障害者の意思疎通に関する合理的な配慮を推進していきます。

2

在勤者

取り組みや素案の内容は、素晴らしいものだと思います。早期制定を願っております。制定後、日常生活において身近なところで多く活用されるよう運営していただきたく、お願い申し上げます。

平成2810月に条例を制定しました。今後は、区の責務として、区民・事業者・関係者との連携を図り、条例の趣旨を周知するとともに、障害者の意思疎通に関する合理的な配慮を推進していきます。

3

在住者

家族が聴覚障害者です。この条例が定められたら、区立小学校・中学校などで、数時間でも授業に手話をとり入れてほしいと思います。(希望者だけでも良い)手話に関心を持ってくれればと思います。よろしく御検討お願い致します。

条例に基づき、手話を含む、障害者の意思疎通に関する合理的な配慮を推進していきます。
また、小学校等での手話を取り入れた授業の実施については、所管である教育委員会に今回のご意見をお伝えしました。

4

在住者

千代田区はノーマライゼイションの理念のもと、共生社会の実現を目指していることと思います。
本来は、「意思疎通の手段に関する条例」は特に定めるものではなく、意思疎通ができて当たり前の社会になってほしいと願っていますが、現実的には厳しい面があることと思います。
区民の方々には「区民の責務」として取り上げられることに押し付けがましく感じられる方もいることと思いますが、日常の生活において、障害者を見守る中で意思疎通を心掛けてほしいと思います。また、地域社会の一員として、障害者自らの要望を伝えることも大事なことと思います。

条例の制定後は、区の責務として、区民・事業者・関係者との連携を図り、条例の趣旨を周知するとともに、区民等と協力し、障害者の意思疎通に関する合理的な配慮を推進していきます。

5

在住者

(前文)の文書中
「そのための手段には、音声言語をはじめ・・・・・手話、触覚など・・・・・」とあり、触覚の意味が理解しにくいと思いますので、触覚による意思伝達(東京都福祉保健局ハンドブックより)と補うことでわかりやすくなると思います。

ご意見を踏まえて、触覚による意思伝達と修正しました。

6

在住者

事業者の研修について、実習として、障害者の就学の場・就労の場・余暇活動の場で、障害者の特性・意思疎通の手段・合理的配慮ということを学んでほしいと思います。

事業者の研修については、障害者就労支援センター等関係団体とも連携し、障害者の意思疎通に関する合理的な配慮を推進していきます。また、かがやきプラザ研修センターと連携して事業者等への普及啓発を推進していきます。

7

在住者

(前文)・・・・・
千代田区において、行政のみならず民間サービスや区民の地域活動を含めたあらゆる場面で、障害者の意思疎通の手段について選択の機会を拡大し、すべての人が障害の有無や種別によって分け隔てられることなく、相互に理解し暮らすことのできる地域社会の実現をめざし、この条例を制定する。

⇒下線部を以下のとおり修正してほしい。
障害がある人もない人も分け隔てなく

前文については、ご意見も踏まえて、全体的に表現を修正しました。

8

在住者

(定義)
1)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)

⇒下線部を以下のとおり修正してほしい。
知的障害(発達障害を含む。)、精神障害

障害者基本法の定義が当初案と同様となっていることから当初案のままとしました。

9

在住者

(定義)
1)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

⇒下線部を削除してほしい。

障害者基本法の定義が当初案と同様となっていることから当初案のままとしました。

 

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