豊島区手話言語の普及及び障害者の多様な意思疎通の促進に関する条例
公布;2018年12月11日
施行;2019年4月1日
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 手話言語の理解の促進及び普及(第9条)
第3章 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進(第10条―第12条)
第4章 施策の推進(第13条)
附則
手話は言語です。
ろう者にとって、これは、当然の事実であり、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法にも定められています。しかしながら、その普及は進んでおらず、手話を言語として日常生活を送る者は、未だ不自由な生活を強いられています。
また、障害者は、誰とでも、意思の疎通について、自ら選択する手段により、平等に情報及び考えを認識し合い、理解し合い、伝え合う自由を有しています。しかしながら、そのための環境づくりは、進んでいません。
ここに豊島区は、手話が言語であることの理解の促進及び普及並びに身体障害、知的障害、精神障害その他の障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進により、障害や障害者への区民の理解を深め、もって障害者の社会参加を推進するため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であることの理解の促進及び普及並びに障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関し必要な事項を定めることにより、障害の有無にかかわらず、分け隔てられることなく、理解し合い、互いに一人一人の尊厳を大切にし、安心して暮らすことができる共生社会を実現することを目的とする。
(定義)
第2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁(障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。
(2) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
(3) 言語 音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。
(4) 区民 豊島区(以下「区」という。)の区域内(以下「区内」という。)に居住する者、区内の事務所若しくは事業所に勤務する者又は区内の学校等に在学する者をいう。
(5) 事業者 営利又は非営利の別にかかわらず、区内において事業活動を行う個人又は団体をいう。
(6) 学校等 区内にある、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第7条第5項に規定する地域型保育事業を行う事業所をいう。
(7) 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段
手話、要約筆記、点字、音声、拡大文字、触手話、指点字、ひらがな表記、サイン、写真、絵図その他の障害者が日常生活及び社会生活において使用する意思疎通の手段をいう。
(8) 意思疎通支援者 手話通訳士及び手話通訳者(以下「手話通訳者」という。)、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、盲ろう者向け通訳・介助員その他の障害者の意思疎通の支援等を行う者をいう。
(基本理念)
第3条
手話が言語であることの理解の促進及び普及は、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が日常生活及び社会生活を営むために大切に受け継いできた言語であるという認識の下に行われなければならない。
2 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進は、障害者の多様な意見及び要望に適合したものを、障害者自らが選択する機会を保障されることを基本として行われなければならない。
(区の責務)
第4条 区は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話が言語であることの理解の促進及び普及並びに障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する施策を推進するものとする。
(区民の役割)
第5条 区民は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条
事業者は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、事業を行うに当たり、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用により、障害者が利用しやすいサービスを提供し、及び障害者が働きやすい環境づくりに努めるものとする。
(施策の基本方針)
第7条
区は、第4条の規定による責務を果たすため、次に掲げる施策を障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に規定する市町村障害者計画において定め、これらを総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1) 手話が言語であることの理解の促進及び普及に関する施策
(2) 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の理解の促進に関する施策
(3) 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を容易に利用できるための環境づくりに関する施策
(4) 意思疎通支援者及びその指導者の確保及び養成に関する施策
(5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策
(財政上の措置)
第8条 区は、前条各号に掲げる施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
第2章 手話言語の理解の促進及び普及
(手話言語の理解の促進及び普及)
第9条
区は、ろう者、手話通訳者、事業者及び関係機関と協力し、手話が言語であることの区民の理解を促進し、及び区民が手話言語を理解し、ろう者との円滑な会話を可能とするための施策を推進するものとする。
2 区は、事業者及び関係機関が手話言語に関する学習会等を開催する場合において、その支援を行うものとする。
3 区は、手話が言語であるという認識の下、手話対応ができる職員の育成など、公共施設における環境づくりに努めるものとする。
4 区は、学校等において、幼児、児童、生徒等に対し、手話は言語であることの理解の促進及び普及に努めるものとする。
第3章 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進
(障害の特性に応じた多様な意思疎通手段への理解の普及)
第10条
区は、障害者、意思疎通支援者、事業者及び関係機関と協力して、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段について、区民の理解を普及させるための施策を推進するものとする。
2 区は、学校等において、幼児、児童、生徒等が、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を学ぶことができるよう努めるものとする。
(障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を容易に利用できるための環境づくり)
第11条
区は、障害者が日常生活及び社会生活において容易に情報を取得し、円滑に意思疎通を図ることができるよう、次に掲げる事項の推進に努めるものとする。
(1) 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段による区政に関する情報の発信
(2) 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段による災害時における避難等に関する情報の発信及び支援
(3) 区が主催する講演会その他行事における手話通訳者及び要約筆記者の配置
(4) 聴覚に障害のある者への手話通訳者又は要約筆記者の派遣
(5) 区職員に対する障害の特性に応じた多様な意思疎通手段に関する研修の実施
(6) 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段のための支援機器に関する情報収集及び周知
(7) 前各号に掲げるもののほか、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するに当たっての環境づくり
(意思疎通支援者等の確保及び養成)
第12条 区は、障害者が障害の特性に応じた多様な意思疎通手段により地域社会において安心して日常生活及び社会生活を営むことができるよう、障害者、意思疎通支援者、事業者及び関係機関と協力して、意思疎通支援者及びその指導者の確保及び養成を行うものとする。
第4章 施策の推進
(施策の推進のための協議)
第13条
区は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第17条第1項に基づき設置されている豊島区障害者権利擁護協議会(以下「協議会」という。)に対し、第7条各号に掲げる施策を的確に推進するための協議を求めるものとする。
2 区長は、第7条各号に掲げる施策の推進について、協議会の意見を聴き、その意見を尊重するものとする。
附 則
1 この条例は、平成31年4月1日から施行する。
2 区は、社会環境の変化及びこの条例の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行うものとする。