「手話は独自の言語」

 

手話言語条例 個性と人格尊重へ大きな一歩

 

聴覚障害者にかかる政策に関する取り組み要望

 

第1回手話パーフォーマンス甲子園

 

「You Tube」の手話パフォーマンス甲子園チャンネル

 

第2回手話パーフォーマンス甲子園

 

 

手話を学校などで教え、手話(主として耳や口の不自由な人が手を使ってする話。手と腕の動きやその形・位置によって概念を表し、意思を伝達する言語)を必要とする人と互いに理解しあえる社会の実現を目指す鳥取県の「手話言語条例」案が2013年9月4日、県議会の常任委員会で可決され、10月8日の本会議で成立した(11日施行)

 

県民や市町村に手話普及への努力を求める条例は全国初。

 

条例は手話を「独自の言語体系を有する文化的所産で、ろう者が豊かな社会生活を営むため受け継いできたもの」と定義。「ろう者とろう者以外の者が個性と人格を互いに尊重する」ことを基本理念に、手話の普及や使いやすい環境整備を県や市町村に義務付け、県民の役割として「手話の意義や基本理念を理解するよう努める」ことを盛り込んだ。

 また県は今後、タブレット端末を用いて遠隔地でも通訳ができるサービスの提供に取り組むほか、全ての公立小中学校で手話を学ぶ機会を設ける。

 

 県は、学校での手話教育や、窓口業務にあたる市町村職員向けの手話講座開催などの予算2200万円も提案した。

 

 平井伸治知事が13年1月、全日本ろうあ連盟(東京)などの要望を受け、条例制定に向けた検討を開始。同連盟も加わって4月に研究会を発足させ、手話通訳者や有識者の意見を採り入れた。

 

同知事は大学(東京大学法学部)時代に手話通訳の経験があり、2008年にまとめた県の将来展望で手話を「言語」と明記していた。

 

2011年に施行され、裁判や選挙などで障害者の意思疎通手段を確保するよう求めた改正障害者基本法にも手話を「言語」とみなす記載があり、北海道石狩市も手話を言語と位置付ける条例の制定を目指している(障害者基本法の一部を改正する法律第3条=全て障害者は、可能な限り、言語〈手話を含む〉その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること)

 

また議場で可決の瞬間を見守った同連盟の西滝憲彦理事(65)は「私たちの言葉(手話)が普通ではないという周囲からの差別を感じたこともあったが、条例ができたことで言語的に平等が認められた。鳥取県民には、ぜひ手話に興味を持ってもらい、小中学校の現場でも積極的に手話を学習してほしい」と話した。

 

注;手話通訳=社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する手話通訳技能認定試験に合格し、手話通訳士の登録を行った者、およびその資格名称。厚生労働大臣認定資格。手話技術によって、聴覚障害者と健聴者(聴覚に障害のない人)が円滑にコミュニケーションをはかれるように支援する。

 

注;手話通訳士=社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する手話通訳技能認定試験に合格し、手話通訳士の登録を行った者、およびその資格名称。厚生労働大臣認定資格。手話技術によって、聴覚障害者と健聴者が円滑にコミュニケーションをはかれるように支援する。

 

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鳥取県手話言語条例提案理由(平井知事)

 

 ろう者とろう者以外の住民が共に生きる地域社会を実現することを目的に、手話は独自の言語体系を有する文化的所産であるとの認識に基づき、県・市町村・県民・事業者の責務等を明らかにするとともに、手話を使いやすい環境を整える施策を総合的かつ計画的に推進することとし、鳥取県から障がい者と共に生きる社会のモデルを築き上げようとするものであります。

 なお、併せて、この条例の趣旨に基づき、タブレット型端末を活用した遠隔手話通訳サービスのリーディング事業や、定例記者会見への手話通訳導入、地域や職場等での手話講座開催など、手話を使うことができる環境づくりを飛躍的に加速するほか、学校ですべての児童・生徒が手話を学ぶ機会をつくることとし、補正予算に計上することといたしました。

 

議案第 5号 鳥取県手話言語条例の設定について(鳥取県障がい福祉課)

 

 ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現するため、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及に関し基本理念を定め、県、市町村、県民及び事業者の責務及び役割を明らかにするとともに、手話の普及のための施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定めるものである。

(概 要)

@手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が知的で心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできたものであることを理解しなければならない。

A手話の普及は、ろう者とろう者以外の者が相互の違いを理解し、その個性と人格を互いに尊重することを基本として行わなければならない。

B県は、市町村等と連携して、ろう者が日常生活等を営む上で障壁となるような一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮を行うとともに、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備を推進するものとする。併せて、県民及び事業者の役割を定める。

C県は、鳥取県障害者計画において、手話が使いやすい環境を整備するために必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。また、手話を用いた情報発信に努めるものとする。

Dろう児が通学する学校の設置者は、手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

Eその他、手話を普及するための施策について定める。

F鳥取県障害者計画に定める施策について知事に意見を述べること等を行う鳥取県手話施策推進協議会を設置する。

 

鳥取県手話言語条例

 

目次

 前文

 第1章 総則(第1条〜第7条)

 第2章 手話の普及(第8条〜第16条)

 第3章 鳥取県手話施策推進協議会(第17条〜第23条)

 附則

 

前文

 ろう者は、物の名前、抽象的な概念等を手指の動きや表情を使って視覚的に表現する手話を音声の代わりに用いて、思考と意思疎通を行っている。

 わが国の手話は、明治時代に始まり、ろう者の間で大切に受け継がれ、発展してきた。ところが、明治13年にイタリアのミラノで開催された国際会議において、ろう教育では読唇と発声訓練を中心とする口話法を教えることが決議された。それを受けて、わが国でもろう教育では口話法が用いられるようになり、昭和8年にはろう学校での手話の使用が事実上禁止されるに至った。これにより、ろう者は口話法を押し付けられることになり、ろう者の尊厳は著しく傷付けられてしまった。

 その後、平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約では、言語には手話その他の非音声言語を含むことが明記され、憲法や法律に手話を規定する国が増えている。また、明治13年の決議も、平成22年にカナダのバンクーバーで開催された国際会議で撤廃されており、ろう者が手話を大切にしているとの認識は広まりつつある。

 しかし、わが国は、障害者の権利に関する条約を未だ批准しておらず、手話に対する理解も不十分である。そして、手話を理解する人が少なく、ろう者が情報を入手したり、ろう者以外の者と意思疎通を図ることが容易ではないことが、日常生活、社会生活を送る上での苦労やろう者に対する偏見の原因となっている。

 鳥取県は、障がい者への理解と共生を県民運動として推進するあいサポート運動の発祥の地である。あいサポート運動のスローガンは「障がいを知り、共に生きる」であり、ろう者とろう者以外の者とが意思疎通を活発にすることがその出発点である。

 手話がろう者とろう者以外の者とのかけ橋となり、ろう者の人権が尊重され、ろう者とろう者以外の者が互いを理解し共生する社会を築くため、この条例を制定する。

   

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及に関し基本理念を定め、県、市町村、県民及び事業者の責務及び役割を明らかにするとともに、手話の普及のための施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

(手話の意義)

第2条 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が知的で心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできたものであることを理解しなければならない。

(基本理念)

第3条 手話の普及は、ろう者とろう者以外の者が相互の違いを理解し、その個性と人格を互いに尊重することを基本として行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市町村その他の関係機関と連携して、ろう者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮を行い、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備を推進するものとする。

2 県は、ろう者及び手話通訳者の協力を得て、手話の意義及び基本理念に対する県民の理解を深めるものとする。

(市町村の責務)

第5条 市町村は、基本理念にのっとり、手話の意義及び基本理念に対する住民の理解の促進並びに手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備に努めるものとする。

(県民の役割)

第6条 県民は、手話の意義及び基本理念を理解するよう努めるものとする。

2 ろう者は、県の施策に協力するとともに、手話の意義及び基本理念に対する県民の理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。

3 手話通訳者は、県の施策に協力するとともに、手話に関する技術の向上、手話の意義及び基本理念に対する県民の理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

 

第2章 手話の普及

(計画の策定及び推進)

第8条 県は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項に規定する鳥取県障害者計画において、手話が使いやすい環境を整備するために必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 知事は、前項に規定する施策について定めようとするときは、あらかじめ、鳥取県手話施策推進協議会の意見を聴かなければならない。

3 知事は、第1項に規定する施策について、実施状況を公表するとともに、不断の見直しをしなければならない。

(手話を学ぶ機会の確保等)

第9条 県は、市町村その他の関係機関、ろう者、手話通訳者等と協力して、あいサポート運動の推進、手話サークルその他の県民が手話を学ぶ機会の確保等を行うものとする。

2 県は、手話に関する学習会を開催する等により、その職員が手話の意義及び基本理念を理解し、手話を学習する取組を推進するものとする。

(手話を用いた情報発信等)

第10条 県は、ろう者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう、手話を用いた情報発信に努めるものとする。

2 県は、ろう者が手話をいつでも使え、手話による情報を入手できる環境を整備するため、手話通訳者の派遣、ろう者等の相談を行う拠点の支援等を行うものとする。

(手話通訳者等の確保、養成等)

第11条 県は、市町村と協力して、手話通訳者その他のろう者が地域において生活しやすい環境に資するために手話を使うことができる者及びその指導者の確保、養成及び手話技術の向上を図るものとする。

(学校における手話の普及)

第12条 ろう児が通学する学校の設置者は、手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 ろう児が通学する学校の設置者は、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、ろう児及びその保護者に対する学習の機会の提供並びに教育に関する相談及び支援に努めるものとする。

3 県は、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、学校教育で利用できる手引書の作成その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

(事業者への支援)

第13条 県は、ろう者が利用しやすいサービスの提供及びろう者が働きやすい環境の整備のために事業者が行う取組に対して、必要な支援を行うものとする。

(ろう者等による普及啓発)

第14条 ろう者及びろう者の団体は、基本理念及び手話に対する理解を深めるため自主的に普及啓発活動を行うよう努めるものとする。

(手話に関する調査研究)

第15条 県は、ろう者、手話通訳者等が手話の発展に資するために行う手話に関する調査研究の推進及びその成果の普及に協力するものとする。

(財政上の措置)

第16条 県は、手話の普及に関する取組を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

第3章 鳥取県手話施策推進協議会

(設置)

第17条 次に掲げる事務を行わせるため、鳥取県手話施策推進協議会(以下「協議会」という。)を設置する。

 (1) 第8条第2項の規定により、知事に意見を述べること。

 (2) この条例の施行に関する重要事項について、知事に意見を述べること。

(組織)

第18条 協議会は、委員10人以内で組織する。

(委員)

第19条 委員は、ろう者、手話通訳者、行政機関の職員及び優れた識見を有する者のうちから知事が任命する。

2 委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 委員は、再任されることができる。

(会長)

第20条 協議会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。

2 会長は、会務を総理し、協議会を代表する。

3 会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、あらかじめ会長が指名する委員がその職務を代理する。

(会議)

第21条 協議会の会議は、会長が招集し、会長が議長となる。

2 協議会は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができない。

(庶務)

第22条 協議会の庶務は、福祉保健部において処理する。

(雑則)

第23条 この条例に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

 

附 則

 この条例は、公布の日から施行する。

 

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2013年9月26日(木)全日本ろうあ連盟は、「日本共産党国会議員団障害者の全面参加と平等推進委員会」による懇談会が連盟から長谷川副理事長が出席し、「聴覚障害者にかかる政策に関する取り組み要望」について、要望書を提出した。

 

連本第130406号

2013年9月26日

 

日本共産党国会議員団障害者の全面参加と平等推進委員会委員長 小 池 晃 様

 

一般財団法人全日本ろうあ連盟

理事長 石野 富志三郎

 

聴覚障害者にかかる政策に関する取り組み要望について

 

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。

 本年6月19日「障害者差別解消法案」(以下、障害者差別解消法)が国会で可決され、3年後に施行されることになりました。これは、2006年12月に採択された障害者権利条約の批准のために必要な制度改革の一つとして、長年私たちが待ち望んでいたものです。

 障害者の社会参加には、障害を理由としての排除をなくし、その障害による不利益をなくすための「合理的配慮」を取り入れることが必要な条件となります。

 私たち聴覚障害者の社会参加に必要な「情報アクセス・コミュニケーション」も含め、以下の意見を提出いたします。

 

 

  当事者主体の政策審議について

 差別解消法に基づき進められていく障害者施策や政策を審議する国・地方の審議会や委員会の選任の際には、「障害当事者の代表」ではなく、それぞれの分野で、まんべんなく障害当事者の声が反映されるようにすべきであり、情報・コミュニケーションに障害をもつ当事者を必ず含めてください。

    合理的配慮の不提供についての制約について

 障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法では、過度の負担がかかる場合、「合理的配慮の不提供」を認めていますが、その「過度の負担」がどのようなものであるかの基準がありません。

 合理的配慮の提供があって初めて障害者は自らの能力を活かすことができることを踏まえ、この「過度の負担」による「合理的配慮の不提供」を容易に認めることのないよう一定の制約を設けてください。

    既存の法律に点在する権利制限について

 相対的欠格条項や公務員採用における「自力での通勤・自力での業務遂行」条件等、障害を理由とする制限はまだまだ点在しています。

 これは障害を理由とする不均等待遇であり、再考すべき内容です。障害者差別解消法の施行と併せ、既存の法律に点在する権利制限についても見直しをしてください。

  

  言語及びコミュニケーション手段の自己選択について

 障害者基本法では「言語(手話を含む)」という記述があります。

 聴覚障害者は音声からの情報を得ることができないため、手話言語や文字情報といった視覚的手段から情報を入手することが必要です。しかし、残存聴力の程度も個々人によって異なるように、手話通訳を選択する人もいれば、要約筆記や文字通訳を選択する人もいます。盲ろう者も同様です。

 コミュニケーション手段は当事者自らが選択すべきであり、その選択によって不利な扱いがされないよう、情報アクセスやコミュニケーション手段を保障するための法律の制定を進めてください。 

 

以 上

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2010年にカナダのバンクーバーで開催された国際会議(バンクーバー2010)

 

国際聴覚障害教育国際会議(ICED=INTERNATIONAL CONGRESS ON EDUCATION OF THE DEAF)実行委員会および、ブリティッシュ・コロンビア州ろうコミュニティは、共同で次の事柄を基本方針として表明する。

 

「基本方針の表明」

世界的に、多くのろう市民は、「ろう」であることを障害の一種ととらえる一般人の理解に直面している。このような「障害観」は、ろう者をはじめ「異なるもの」としてみなされたすべての人の排除や軽視の一因となっている。

その結果、今も、多くの国々で、より広い社会へのろう市民の参加が妨げられ、排除されている。大勢のろう者が、意思決定、雇用機会、質の高い教育へ平等に参加することができないでいる。

このように「障害観」があるにもかかわらず、ろう市民は、多様性と創造性を受容する諸社会に積極的に貢献している。教育、経済活動、政治、芸術、文学の分野で、自国の価値を高めている。ろう者にとって、すべての社会に必要不可欠な、言語的・文化的少数派として認知されることは、不可譲の権利である。

したがって、すべての国家は、ろう者を含むすべての市民を認知し、参加を促進することが急務である。

 

1880年ミラノでのICED会議の決議

1880年、ミラノで国際会議が開かれ、ろう者の教育が討論された。当時の参加者は、世界中のろう者の教育や生活に影響を与えることになるいくつかの決議を行った。この決議によって、次の事項が生じた。

• 世界中のろう者のための教育プログラムで手話の使用が排除された。

• 世界中のろう市民の生活に不利益がもたらされた。

• 世界の多くの地域や国々の教育上の施策や立案における、ろう市民の排除につながった。

• 就業訓練、再教育などキャリア開発の分野で、政府の立案、政策決定、財政的援助にろう市民が参加できなくなった。

• ろう市民がさまざまなキャリアで成功する能力を阻み、多くのろう者が自分の夢を追いかけることができなくなった。

• 多くのろう市民が、自分の文化や芸術性を十分に発揮して各国の多様性に寄与する機会を阻んだ。

ゆえに、私たちは:

• ろうの児童生徒の教育プログラムにおける手話の使用を禁じた1880年ミラノ会議の決議をすべて退ける。

• ミラノ会議が及ぼした有害な諸影響を認め、心から遺憾に思う。

• 世界のすべての国家が、歴史を記憶し、すべての言語とあらゆるコミュニケーションの形式を教育プログラムが受け入れ、尊重することを要求する。

 

2010年7月19日、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの第21回聴覚障害教育国際会議にて発表

 

「未来への協定」

 

私たちはここに宣言し、署名します。

• 国際連合の諸原則にもとづいて、特に、教育は言語や学問的、実用的、社会的知識の獲得に重点を置いて実施されなければならないとした、国連の障害者権利条約で述べられている原則を批准し、それらに従うことを、世界のすべての国家に要求します。

• 世界ろう連盟が2007年の第15回マドリッド会議で採択した決議、特に、多言語的/多文化的教育への平等で適切な参加を促進し支持するとした決議を是認するよう、すべての国家に要求します。

• 国家が合法的に承認する言語に、自国のろう市民の手話を追加し、多数派である聴者の言語と平等に取り扱うことを、すべての国家に要求します。

• ろう市民のあらゆる生活に影響を与える政府のすべての政策決定プロセスに、ろう市民が参加することを促進、拡大、採用するよう、すべての国家に要求します。

• ろうの幼児、子ども、青年をもつ親たちがろうの文化や手話を理解するために、自国のろう市民を関わらせて援助するよう、すべての国家に要求します。

• 教育プログラムでは子ども中心アプローチを、家族を構成するろう者や聴者の両方のためのすべてのサポートサービスには家族中心アプローチを支援するよう、すべての国家に要求します。

• ろうであることが確認されたすべての幼児を、早期教育による支援のため、地域や全国のろう者組織、ろう者のための学校やプログラムに託すよう、すべての国家に要求します。

• 自国のろう市民が、自分たちの人権に関する情報を確実に得られるよう、あらゆる努力を行うことを、すべての国家に要求します。

• すべてのろう市民が、誇らしい、自信に満ちた、生産的で創造的な、特別の能力をもった自国の市民であると認め、また、それが可能になるよう、すべての国家に要求します。

 

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大阪市城東区役所「遠隔手話通訳サービス」

 

大阪市城東区役所(専任の手話通訳者を置けない自治体)では、「すべての人と共生するまちづくり」の一つとして、2013年年9月2日(月)より大阪市で初めて(政令指定都市では川崎市麻生区についで2番目)「遠隔手話通訳サービス」を始めた。

このサービスは、区役所窓口にタブレット型端末を設置し、その画面でテレビ電話を活用して、相談者・オペレーター・職員間で手話による会話を行う。

「遠隔手話通訳サービス」を利用することで、各課窓口において筆談よりも正確・スピーディーにお客さまと円滑な意思疎通を図り、今まで以上に誰もが気軽に城東区役所に来庁いただけるようめざす

なお、本サービスは、手話のほか英語・中国語・韓国語と日本語との遠隔通訳にも対応している。

また、手話通訳・外国語通訳を必要とされる方の訪問相談等を行う際などに利用する。

 

サービスの概要

タブレット型端末のテレビ電話機能を活用し、手話の遠隔通訳を行う。

 

窓口に手話でのコミュニケーションをご希望されるお客さまが来庁された際、窓口職員がタブレット型端末からコールセンターに接続する。(1)お客さまが画面に向かって手話で質問すると、(2)オペレーターが質問内容を窓口職員に説明する。(3)質問に対する回答を窓口職員が口頭で説明すると、(4)回答内容をオペレーターが手話でお客さまにご案内する。

 

 

2013年7月1日「日本聴力障害新聞」

 

手話言語条例 個性と人格尊重へ大きな一歩 (2013年10月8日配信『愛媛新聞』−「社説」)

 

 手話を言語として認め、聴覚障害者が暮らしやすい社会づくりに取り組む「手話言語条例」が、鳥取県で成立の見通しとなった。県によると、手話を言語と位置付ける条例の制定は全国で初めて。

 手話は、少なくとも8千以上の語彙(ごい)と独自の文法体系をもつ「ろう者の母語」。コミュニケーションをとったり、物事を考えたりするときに使う言葉という点で、日本語や英語と変わらない。

 しかし、音声を発しないことから、単なる身ぶり手ぶりと誤解を受けやすく、社会の十分な理解を得られているとは言い難い。

 自分たちの使う言葉が認められ、いつでもどこでも自由に使える―。生きる基本としてごく当たり前の権利だ。にもかかわらず、長い間かなえられてこなかった現実を、いまこそ変えたい。

 条例案は、手話の普及や使いやすい環境整備を県や市町村に義務付けた。誰もが個性と人格を尊重し合う社会に向けた大きな一歩である。意義の深さをかみしめ、生活に生かす具体的な施策と確実な実行につなぎたい。

 耳の不自由な人たちにとって、日常生活は不便なことであふれている。鳥取だけの話にとどまらない。社会全体が取り組むべき課題だ。

 厚生労働大臣認定の手話通訳士は全国に約3千人。愛媛には35人。ほかに全国統一試験を受けるなどした通訳者がいるが、生活への保証がないことから人材が育ちにくい。活動の場を広げ、予算を確保することで育成を支え、必要なときにはいつでも通訳派遣できる体制を構築しなければならない。

 派遣制度があっても制限に泣くようなことがあってはならない。現在は、夜間の派遣がかなわないため体調が悪くなっても救急車が呼べず、通訳者の善意に頼るか、我慢するしかない人たちがいる。病院での説明も専門用語が多く理解が難しい。命に関わることだけに、改善は急務だ。

 東日本大震災では防災無線の声に気付かず多くの命が奪われた。避難所では放送が聞けず、情報が入らないために必要な物資さえ配給されない人たちがいた。手話がわかる人がおらず、孤独と不安にも襲われた。つらい体験を二度と繰り返してはならない。

 鳥取では今後、全ての公立小中学校で手話を学ぶ機会を設ける。教育の場からの変革は重要だ。手話と共生の心を学んだ子どもたちが育ち、親も巻き込んで、職場や地域の意識改革につなぎたい。

 条例制定は北海道石狩市も目指している。大阪府でも一部自治体で議会に意見書が出されているという。各地への拡大を願う。とともに、国全体で確実に取り組むため、一刻も早い法整備を求めたい。

 

11月に手話甲子園、高校生らダンスや演劇(2014年4月10日配信『読売新聞』)

 

 全国初の手話言語条例を制定した鳥取県は、鳥取市扇町の県民ふれあい会館で2014年11月23日、全国の高校や特別支援学校の生徒が手話を使ったダンスや演劇、コントなどを発表するイベント「手話パフォーマンス甲子園」を開く。

手話への関心を高め、学んだ手話を楽しく発表する場をと、県や聴覚障害者団体などの実行委が企画。同様の全国規模のイベントは初めてという。

開催計画によると、演目は手話を使っていればダンス、演劇、コント、歌、漫才など自由。参加は8校程度を想定しており、それぞれ8分間で発表、審査員が優勝、準優勝などを決める。参加校は5月中旬から募集し、ビデオ審査で選ぶ。

9日には実行委の設立総会が県庁であり、委員10人と事務局の県障がい福祉課の担当者ら約20人が参加。実行委員長の松田佐恵子・県福祉保健部長は「全国各地から参加してもらえ、障害の有無に関係なく交流できる魅力あふれる大会にしたい」と話していた。

県は昨年10月、手話を一つの言語とし、学校で教えるなど普及への努力を県民や市町村に求める条例を制定。同様の条例制定の動きは、北海道石狩市や三重県松阪市などに広がっている。全日本ろうあ連盟(東京)の久松三二事務局長は「全国に先駆けて条例を定めた鳥取にふさわしい大会で、手話への関心がさらに高まることを期待したい」と話している。

 

共に生きる:手話付き、絵本楽しむ−−県立図書館(2014年5月12日配信『毎日新聞』−「鳥取」)

 

子供たちに手話に親しんでもらおうと2014年5月11日、手話通訳を付けた絵本の読み聞かせ会が鳥取市尚徳町の県立図書館で開かれた。図書館職員が絵本を朗読する傍ら、県聴覚障害者協会の手話通訳者がせりふを手話で表現。子供たちは内容を聞きながら、時折手話をまねたりして楽しんでいた。

昨年10月の「県手話言語条例」制定を受け、子供たちの手話に接する機会を増やそうと、同館が企画。7月からは毎月第4日曜日に定期的に開催する。

この日は童話「食わず女房」など3冊が読まれた。会の途中では、あいさつなどの簡単な手話も紹介され、家族連れなど約40人が表現を学んでいた。

鳥取市内から家族と訪れた吉田直王英(なおあき)君(5)は「絵本と手話を一緒に見るのは初めてで楽しかった」と笑顔を見せた。

 

参考資料

 

タブレット端末を利用した聴覚障害学生への情報保障(東京成徳大学応用心理学部福祉心理学科)

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