別府市手話言語条例

 

 

別府市議会は2020年6月29日の本会議で、手話言語条例案を可決し、7月1日公布・施行した。

 

提案理由

手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策を総合的及び計画的に推進するため、条例を制定しようとするものである。

 

 同種の条例は、全国で351例目。大分県内では、津久見市豊後大野市宇佐市中津市後高田市に次いで6例目。

 

市の人口は、県内では大分市につぎ2番目となる115,730(男;53,163/女;62,567)人、62,014世帯数。

 

市の直近の聴覚障害者数は469名(2020年6月30日現在)。

 

豊かな山々や高原と波静かな別府湾に囲まれた美しい景観を誇り、大地から立ちのぼる「湯けむり」は別府を象徴する風景として市民はもちろん観光客からも親しまれている。

 

市内には、それぞれ泉質が異なり、また歴史的背景も様々な、別府温泉、浜脇(はまわき)温泉、観海寺(かんかいじ)温泉、堀田(ほりた)温泉、明礬(みょうばん)温泉、鉄輪(かんなわ)温泉、柴石(しばせき)温泉、亀川(かめがわ)温泉の、いわゆる別府八湯と呼ばれる8つの温泉エリアが点在し、毎分8万7千リットルを越える日本一の湧出量と日本の源泉の約1割にあたる、約2300の源泉数を誇る、古くから日本を代表する温泉地として賑わい、歴史と文化あふれる国際観光温泉文化都市である。

 

明礬温泉の湯の花小屋

 

鉄輪付近の源泉

 

別府市内には多くの地獄が存在するが、その中でも地獄めぐりで有名ななのが、海地獄、鬼石坊主地獄、かまど地獄、鬼山地獄、白池地獄、血の池地獄、龍巻地獄の7つ。このうち血の池地獄、龍巻地獄はやや離れて柴石温泉にあるが、他の5つは鉄輪温泉に集中している。

 

地獄地帯は、千年以上も昔より噴気・熱泥・熱湯などが噴出していたことが、奈良時代初期に編纂された豊後国(現在の大分県)の風土記である「豊後風土記(ぶんごのくにふどき)」に記せられており、近寄ることもできない忌み嫌われた土地であったことから、「地獄」と称せられるようになったといい、今も鉄輪では温泉噴出口を「地獄」とよんでいる。

 

別府地獄めぐりの見どころ特集 | 特集 | たびらい

海地獄

 

立命館アジア太平洋大学を中心に、市内には約3,000人の留学生が勉学に励んでおり、日本でも有数の異文化あふれる国際交流都市としても成長を続けている。

 

市は、さらなる飛躍・発展のため、地域資源である別府の歴史・伝統・文化・産業を磨き別府の誇りを創生する取り組みを推進している。

      

別府市手話言語条例(条例第55号)

 

(前文)

言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造するうえで不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情を用いて意見や気持ちや考えを視覚的に表現する言語である。

ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。

しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることもコミュニケーションをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活 してきた。

こうした中で障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられたが、手話に対する社会的認知と普及 は進んでいない。

このような状況のもと、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進と手話の普及を地域で支え、手話を使って安心して暮らすことができる別府市を目指し、この条例を制定するものである。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念、市の責務、市民及び事業者の役割並びに総合的かつ計画的な施策の推進について定めることにより、全ての市民が相互に人格及び個性を尊

重し、心豊かに共に生きる地域社会を実現することを目的とする。

 

(基本理念)

第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であるとの認識に基づき、市民が手話による円滑な意思疎通を図る権利を有し、その権利が尊重されることを基本として行わなければならない。

 

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を図るため、必要な施策を推進するものとする。

 

(市民及び事業者の役割)

第4条 市民及び事業者は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(施策の推進)

第5条 市は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の規定により策定する障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律123号)の規定により策定する障害福

祉計画において、次に掲げる施策を定め、総合的かつ計画的に実施するものとする。

(1) 手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策

(2) 手話による円滑な意思疎通の支援に関する施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

 

(財政措置)

第6条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(委任)

第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

 附 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

平成30年第4回定例会(平成301214日)

厚生環境教育委員会委員長 (松川 章三 委員長)

 

最後に、『請願第3号 別府市手話言語条例制定に関する請願』についてであります。

はじめに、請願の主旨等を聞くため、請願者である「西村 務氏」および「柴田 悦子氏」を、並びに、市当局の取り組みなどを聞くため、「障害福祉課」を、それぞれ参考人として出席を求めました。

請願者からの、請願に関する主旨説明は次の通りであります。

「聴覚障がい者は、長い間、学校や生活の中で手話を使うことが禁じられていたため、社会の中においてもコミュニケーションが取れず、とても苦しい思いをしてきた。2006年に国連で「障害者権利条約」が採択され、国際的に手話が言語として認められ、また、日本では平成23年の障害者基本法の改正により、手話が言語として認められた。

しかしながら、聴覚障がい者は、他の障がいと比べ、見た目では分かりにくい特性があることから、社会の中で手話言語に対する理解は、十分に進んでいない。手話言語の理解を広め、かつ、言語としての手話を奪われた、ろう者の権利を回復するため、別府市手話言語条例の制定を求めるものである。」との、非常に切実な思いを、お聞きしました。

委員からは、当時の手話の学び方や、「ともに生きる条例」との考え方について、質疑がなされ、請願者からは、昔は手話が法律で認められていなかったため、ろう学校ではなく、先輩や友達から手話を教わってきたこと、また、「手話言語条例」は「ともに生きる条例」とは全く別であると考えて欲しい旨の説明がなされました。

引き続き、障害福祉課への質疑では、委員から、他市の状況や、本請願に対する当局の見解について質疑がなされ、当局からは、手話言語に関するこれまでの経過を鑑みて、条例の必要性は認められる、との答弁がなされました。

最後に議員間による自由討議では、各委員から様々な意見がなされ、最終的に委員会としては、手話言語条例の制定は、前向きに捉えるべきとし、請願者の願意に賛同できるとして、全会一致で「採択すべきもの」と決定した次第であります。

以上で、当委員会に付託を受けました議案に対する、審査の概要と、結果の報告を終わります。

何とぞ、議員各位のご賛同をよろしくお願いいたします。

 

 

 

inserted by FC2 system