大阪府大東市『こころふれあう手話言語条例』 |
2015年9月30日、大阪府北河内地域に位置する大東市で、全国で21番目、大阪府内では初めて『こころふれあう手話言語条例』が市議会定例月議会において可決、制定された。施行は、2015年11月1日。
手話を、「ろう者が意思疎通を図るための視覚的言語として独自の言語体系を有する文化的財産であって、ろう者が知識を得て心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできたものである」と定義する条例は、聴覚障害者への理解を前提とした手話の理解、普及促進を図るとともに、すべての市民が安心して暮らし、つながりを深めることのできる地域社会の実現を目指し、制定された。
今後は手話の理解、普及促進を図るための施策を推進していくため、ろう者等から意見を聴取するため、ろう者、意思疎通支援者、公募市民等が参画する「大東市手話施策推進会議」を設置し、施策の推進方針を策定していく。
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同市は、大阪と奈良を結ぶ交通の要衝として栄え、江戸時代には、商都大阪の重要な後背地となった。地名の由来は「大阪市の東部に隣接する衛星都市として飛躍的発展が期待されるという明るい展望」を、「光は東方より」という古代ローマのことわざに託したことによる。
1956年4月1日、南郷村・住道町・四条町が合併して大阪府下22番目の市として発足。
人口は、127,534人(2010年の国勢調査)。
主要駅は、JR西日本の住道駅(すみのどうえき)。
2011年、市制施行55年を記念して「子どもから大人までさまざまな年齢の皆さんに親しみやすく、広く愛される」マスコットキャラクター(ゆるキャラ)「ダイトン」が制作された。
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2015年11月1日に施行した「大東市こころふれあう手話言語条例」に基づき、障害当事者・意思疎通支援者・学識経験者・公募市民などで構成する大東市手話施策推進会議にてご意見を聴取し、本市における聴覚障害者に対する理解および手話に関する施策を推進するための方針(大東市手話施策推進方針 (PDF:56.8KB))を策定した。
本方針は、市、市民および事業者がろう者をはじめとする聴覚障害者を理解し、手話にふれあうことで、すべての市民が安心して暮らし、つながりを深めることのできる地域社会の実現に向けて、施策を推進することを目的としている。
また、手話に関する各施策についてスケジュールを表した大東市手話施策推進方針アクションプラン (PDF:77.8KB)(実行計画)についても、あわせて公表した。(このアクションプランについては、今後施策を進めていく上で、内容が変更となる事もある)。
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大東市こころふれあう手話言語条例 平成27年9月30日 条例第25号(pdf) |
人が互いを理解し合い、手をたずさえて暮らしを築いていく上で、言語は欠かせないものです。そして、手話は手指や体、表情を使って視覚的に表現する言語です。
ろう者は、手話でコミュニケーションを図り、互いの気持ちを理解し合い、知識を蓄え、文化を創造してきました。ろう者にとって手話は生きる力です。そして、ろう者は、手話で日常的にコミュニケーションを図ること、手話通訳などの情報保障によってこころふれあう優しい社会となることを長年願ってきました。
しかしながら、手話が言語として位置づけられなかったため、ろう者はコミュニケーションや交流を図ることが難しく、また、十分な情報を得られないため、地域や職場などにおいて孤立しがちな生活を営んできました。また、健聴者も、ろう者のことを理解する機会が少なく、お互いを十分に分かり合う環境にありませんでした。
こうした中で、国際連合総会において採択された「障害者の権利に関する条約」や「障害者基本法」において「手話は言語である」と位置づけられました。今後、私たちは、ろう者と手話に対する理解を深め、手話を学び使用することで、誰もが地域社会に参加できる環境づくりを進めていく必要があります。
よってここに、大東市自治基本条例(平成17年条例第26号)の趣旨にのっとり、私たち一人ひとりがろう者を理解し、手話にふれあい、共に生きる大東市を目指し、この条
例を制定するものです。
(目的)
第1条 この条例は、手話は言語であるとの認識に基づき、手話の理解および普及ならびに手話を使用しやすい環境づくりに関する基本理念を定め、市、市民および事業者の責務および役割を明らかにするとともに、市が実施する施策の基本的事項を定めることにより、すべての市民が安心して暮らし、つながりを深めることのできる地域社会を実現することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「ろう者」とは、手話を主なコミュニケーションの手段として用いる聴覚障害者をいう。
(手話の意義)
第3条 手話は、ろう者が意思疎通を図るための視覚的言語として独自の言語体系を有する文化的財産であって、ろう者が知識を得て心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできたものである。
(基本理念)
第4条 手話への理解の促進および手話の普及は、ろう者が手話によりコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者およびろう者以外の者が、互いに人格および個性を尊重することを基本として行わなければならない。
(市の責務)
第5条 市は、手話への理解を促進し、手話を使用しやすい環境づくりを推進することにより、ろう者の自立した日常生活および地域における社会参加の促進に寄与できるよう努めなければならない。
2 市は、手話を使用することができる職員を増やすよう努めなければならない。
(市民の役割)
第6条 市民は、第4条に定める基本理念に対する理解を深め、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2 市民は、手話をコミュニケーションの手段として活用するよう努めるとともに、つながりのある地域社会の構築および障害者が安心して生活できるまちづくりに寄与するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第7条 事業者は、第4条に定める基本理念に対する理解を深め、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、手話をコミュニケーションの手段として活用するよう努めるとともに、つながりのある地域社会の構築および障害者が安心して生活できるまちづくりに寄与するよう努めるものとする。
3 事業者は、ろう者とコミュニケーションを図り、サービスを提供するよう努めるものとする。
4 事業者は、ろう者に配慮した職場環境を構築するよう努めるものとする。
(学校における手話の普及)
第8条 市は、学校において児童、生徒および教職員に対する手話を学ぶ機会を提供するよう努めるものとする。
2 市は、市民が手話に関する理解を深めるため、学校教育における手話への理解の促進および手話の普及に努めるものとする。
(施策の推進方針の策定)
第9条 市は、手話に関する施策を推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)を策定するものとする。
2 施策の推進方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 手話への理解の促進および手話の普及に関する事項
(2) 手話による情報取得に関する事項
(3) 手話による意思疎通の支援に関する事項
(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項
3 施策の推進方針は、市が別に定める障害者に関する計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 施策の推進方針は、これを公表するものとする。
(大東市手話施策推進会議)
第10条 施策の推進方針の策定または変更をする場合において、ろう者等から意見を聴取するため、ろう者、意思疎通支援者、公募市民等が参画する大東市手話施策推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。
2 推進会議の組織および運営については、市長が別に定める。
(財政上の措置)
第11条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
付 則
(施行期日)
1 この条例は、平成27年11月1日から施行する。
(検討)
2 市は、この条例の施行の日から起算して3年を経過するごとに、この条例の施行の状
況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
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聴覚障害者も3割弱…大東市手話条例、普及後押しなるか(2015年12月9日配信『読売新聞』―「大阪版」)
手話を言語と位置づけ、住民に理解や協力を求める「手話言語条例」を制定する自治体が全国で増えている。府内では大東市が初めて制定した。手話は災害時に欠かせない聴覚障害者への情報提供の手段として注目される一方、聴覚にハンデを持つ人でも使える人は全体の3割弱にとどまっているのが実情で、各自治体は、条例で普及を後押しし、誰もが安心して暮らせる地域社会を実現したいとしている。
♪きっと明日はいい天気 きっと明日はいい天気――
5日午前、大東市の商業施設前の広場。市内の合唱団の子供たちが、手話と歌声による「にじ」の合唱を披露した。
集まった聴覚障害者や家族連れらから、盛んな拍手を送られた小学5年の古庄華月さん(11)は「練習の時より、うまくできたよ」とにっこり。見守っていた市聴力障害者協会会長の西村令枝さん(67)は「子供から大人まで、すべての市民に手話が広がっていくことを願っています」と手話で述べた。
「手話への理解を促進し、手話を使用しやすい環境づくりを推進する」「手話を使用することができる職員を増やすよう努める」「事業者はろう者(手話を主なコミュニケーションの手段として用いる聴覚障害者)に配慮した職場環境を構築するよう努める」
大東市は「私たち一人ひとりがろう者を理解し、手話にふれあい、共に生きる市を目指す」とうたい、11月1日、これらの内容を盛り込んだ手話言語条例を施行した。広場での合唱は、制定にあわせて催した啓発イベントだ。今後は障害者や手話通訳、住民らでつくる推進会議を設置し、具体的にどう実現していくかを話し合って決める。
制定後、市障害福祉課にほかの自治体からの問い合わせが相次いで寄せられているという。同課の担当者は「手話ができる人はまだまだ少なく、学ぶにも一定の時間がかかる。また、教える側にも高度な技術が求められるので、今後どうやって学ぶ機会や必要な人材を増やしていくかが課題になる」と話す。
全日本ろうあ連盟(東京)によると、国内の聴覚障害者は約35万人で、うち約10万人が手話を使っている。東日本大震災後、手話による情報提供の必要性が改めて認識されるようになり、手話言語条例は、2013年10月に鳥取県が初めて制定し、今年11月末現在で22の自治体に広がっているという。
同連盟は東京・秋葉原で11日、国に手話言語法の制定を求める全国集会を開くほか、12、13日には手話言語法や手話言語条例をテーマにした展示を計画している。問い合わせは同連盟(03・3268・8847)へ。