観音寺市手話言語条例

 

 香川県観音寺(かんおんじ)市議会は、2020年3月25日、手話に対する理解の促進及び手話の普及について基本理念を定め、手話に係る施策を総合的に推進するための「観音寺市手話言語条例」案と障がいのある人の情報保障及びコミュニケーション手段の利用の促進に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、障がいのある人もない人も情報の取得及びコミュニケーションの困難の有無によって分け隔てられることがない共生社会を実現することを目的とする「観音寺市障がいのある人の情報保障及びコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」案を可決した。施行は、共に2020年4月1日。

 

 市は、障害者団体などから要望を受け、同県の三豊市と協力して条例制定の準備を進めてきた。両市の議案書によると、「手話言語条例」は手話を他の言語と同等に言語として位置付ける。教育現場で手話への理解や普及を促すほか、観光客など手話を必要とする人へのサービスの提供や働きやすい環境の整備を整備するため、必要な施策を推進するものとするとしている。 

 

 手話言語条例は、香川県では、高松市さぬき市についで3例目。3月27日には三豊(みとよ)でも制定された。全国では311例目

 

 市は、2019年12月6日から2020年1月7日までパブリックコメントを行ったが、市民からの意見の提出はなかった。

 

 観音寺市は、香川県の西南部に位置し、西は瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)に面し、沖合には伊吹島などの島嶼(しょ)を有しており、南は讃岐山脈の雲辺寺山(うんぺんじさん)、金見山(かなみやま)などを境に徳島県や愛媛県に接し、高知県にも近く、四国のほぼ中心に位置している。

市の中央部には三豊(みとよ)平野が広がり、東部から西部に向かって財田川(さいたがわ)、柞田川(くにたがわ)などの河川が流れ、豊かな田園地帯となっており、財田川河口には三豊広域圏の中心の観音寺市街が広がっている。東部から南部にかけては山間地が、北部には七宝山(しっぽうさん)などの丘陵地が連なっている。三豊平野にはため池や香川用水の灌漑(かんがい)による米作、畑作と畜産が行われる。

 

 市には、国道11号、377号が北東から南西に走っており、それに平行して四国横断自動車道があり、大野原インターチェンジを有している。また、特急列車の停車するJR観音寺駅ほか、豊浜駅、箕浦駅があり、通勤、通学等の要所になっており、高松、岡山までそれぞれ約1時間と交通の便に恵まれている。

 

703(大宝3)年3月、神宮寺(現・観音寺)住職法相宗(ほっそうしゅう、ほうそうしゅう)の僧の日証上人(にっしょうしょうにん)が、琴弾八幡宮(ことひきはちまんぐう)を鎮座(ちんざ)せられた当時に始まり、奈良朝以来の古い歴史を有し、807(大同2)年弘法大師(こうぼうだいし。空海の諡号〈しごう=おくりな〉)が神宮寺(じんぐうじ)に聖観音(しょうかんのん。別名、観音菩薩〈かんのんぼさつ〉)の像を安置して現在の観音寺を称するに至った。

 

 

 

 

 市の人口は、      59,811人(男;28,847人/女;30,964人)、25,253 世帯(2020年3月1日現在)

 

  市の身体障害者の状況は、以下の通り。

 

 

観音寺市障がい者計画・ 第5期障がい福祉計画

 

 

議案第13号 

 観音寺市手話言語条例の制定について 

 観音寺市手話言語条例を別紙のとおり定める。 

  令和2年3月2日提出 

                      観音寺市長  白 川 晴 司      

観音寺市手話言語条例

 

言語は、お互いの思いや感情を理解し合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。 

手話は、音声言語である日本語と異なる独自の言語体系を有する視覚言語であり、手や指、体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。 

しかし、これまでの長い歴史の中で、手話が言語として認識されてこなかったことや、手話を使用することのできる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者や手話を必要とする人は、必要な情報を得ることも他者とコミュニケーションを図ることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。

こうした中、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において手話が言語として認められ、ろう者や手話を必要とする人があらゆる場面で自由に手話を使える社会となるよう取り組むことが求められている。 

したがって、手話が言語であることを明確に位置づけ、手話に対する理解の広がりと社会的認知の拡大を図るとともに、誰もが相互に人格と個性を尊重し合いながら地域で支え合い、安心して生活できる社会を実現するため、この条例を制定する。 

 

(目的) 

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び手話の普及並びに地域における手話を使用しやすい環境の構築に関し基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務及び役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。 

 

(定義) 

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 

(1) 手話 手や指、体の動き、表情を使って概念や意見を視覚的に表現する視覚言語をいう。 

(2) 市民 市の区域内に在住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。 

(3) ろう者 聴覚障害者のうち、手話を使用して日常生活又は社会生活を営む者をいう。 

(4) 事業者 市の区域内において事業を行う個人又は団体若しくは法人をいう。 

 

(基本理念) 

第3条 手話に対する理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であるという認識のもと、手話に対する理解を深め、ろう者とろう者以外の者との手話による円滑な意思の疎通を図り、全ての人がお互いに人格及び個性を尊重し合うことを基本理念として行うものとする。 

 

(市の責務) 

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ろう者があらゆる場面で手話による円滑な意思疎通を図ることができ、自立した日常生活及び地域における社会参加がしやすい環境を整備するため、必要な施策を推進するものとする。 

 

(市民の役割) 

第5条 市民は、地域社会においてともに暮らす一員として、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。 

2 ろう者は、市の施策に協力するとともに、手話の意義及び基本理念に対する理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。 

 

(事業者の役割) 

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話を必要とする人が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境づくりに努めるとともに、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。 

 

(施策の推進) 

第7条 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。 

(1) 手話に対する理解を深めるための啓発に関する施策 

(2) 手話の普及並びに手話を普及するための人材の養成、研修及び確保に関する施策 

(3) 手話による情報取得の機会の拡充に関する施策 

(4) 手話通訳者の養成、研修及び確保に関する施策 

(5) 手話通訳者の派遣等によるろう者の社会参加の機会の拡大に関する施策 

(6) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策 

2 市は、前項の施策を推進するときは、ろう者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならない。 

 

(観光旅行者その他の滞在者への対応) 

第8条 市及び事業者は、もてなしの心を持ち、手話を必要とする観光旅行者その他の滞在者が安心して滞在することができるよう必要な施策を実施し、又は利用しやすいサービスの提供に努めるものとし、市民は、もてなしの心をもって手話に対する理解のある応対に努めるものとする。 

 

(学校における手話の普及) 

第9条 市は、学校教育の場において、手話に接する機会の提供その他手話に親しむための取組を実施することにより、手話に対する理解の促進及び手話の普及に努めるものとする。 

 

 (財政上の措置) 

第10条 市は、第7条の施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。 

 

 (委任) 

第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 

  

 附 則 

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

 

 

観音寺市障がいのある人の情報保障及びコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例

 

私たちが充実した生活を送る上で、周りの人とコミュニケーションを図ることは欠かすことのできないものである。

平成26年1月に国が批准した障害者の権利に関する条約において定義されたように、コミュニケーション手段は、音声言語、手話、文字表記、点字、拡大文字、平易な言葉など多様なものがある。しかしながら、本市においてはこのようなコミュニケーション手段に対する市民の理解が十分に進んでいるとは言えず、障がいのある人もない人もお 互いにコミュニケーションを図ることの困難さを経験している。

また、私たちは生活の様々な場面において、音声や文字などから情報を取得しているが、障がいのある人はその障がいの特性から情報の取得が十分にできないことがある。そこで、コミュニケーションを円滑に行うこと及び十分な情報を取得することの重要性を再認識し、障がいのある人もない人もお互いの理解を深め、誰もが安心して暮らすことのできる社会を実現するため、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、障がいのある人の情報保障及びコミュニケーション手段の利用の促進に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、障がいのある人もない人も情報の取得及びコミュニケーションの困難の有無によって分け隔てられることがない共生社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) 情報保障 障がいのある人もない人と同等の情報を得ることができ、自ら選択する言語その他のコミュニケーション手段により円滑に情報を取得し、又は利用できる環境を整えることをいう。

(3) コミュニケーション手段 手話、触手話、要約筆記、点字、音訳、平易な表現、代筆、代読、情報通信機器の使用その他障がいのある人が日常生活又は社会生活を営む上で必要とする情報の取得又はコミュニケーションを図るための手段をいう。

(4) コミュニケーション支援者 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、ガイドヘルパーその他障がいのある人のコミュニケーションを支援又は補助する者をいう。

(5) 社会的障壁 障がいのある人が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念等をいう。

(6) 合理的配慮 社会的障壁を取り除くことが必要とされる場合で、その実施に伴う負担が過重でないときに行われる適切な調整及び変更をいう。

(7) 市民 市の区域内に在住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。

(8) 事業者 市の区域内において事業を行う個人又は団体若しくは法人をいう。

 

(基本理念)

第3条 障がいのある人もない人も情報を取得し、及びコミュニケーションを円滑に行う権利は、最大限に尊重されなければならない。

2 情報保障並びにコミュニケーション手段の普及及び利用の促進は、障がいのある人とない人が互いの人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段に対する理解及び利用を促進するための施策並びに障がいのある人が安心して情報を取得し、コミュニケーション手段を利用できる環境の整備に関する施策を推進するものとする。

 

(市民の役割)

第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、その事業活動において、障がいのある人もない人も円滑に情報が取得でき、安心してコミュニケーション手段を選択し、かつ、利用できるようにするために合理的配慮を行うよう努めるとともに、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(施策の推進)

第7条 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 情報取得及びコミュニケーションの保障について市民及び事業者の理解を深めるための施策

(2) 障がいのある人もない人も安心してコミュニケーション手段を利用できる環境の整備に関する施策

(3) コミュニケーション支援者の養成、研修、派遣及び設置に関する施策

(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

2 市は、前項の施策を推進するときは、障がいのある人その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならない。

 

(財政上の措置)

第8条 市は、前条の施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委任)

第9条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。

 

附 則

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

 

 

 

 

 

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