高梁市手話言語条例

 

 

 

(2017年3月22日配信『山陽新聞』)

 

岡山県高梁(たかはし)市;手話普及へ言語条例制定 岡山県内初制定

 

相次ぐ手話言語条例制定(2018年4月28日配信『朝日新聞』−「岡山版」)

 

 

 

 高梁市は2017年3月2日に開会した3月定例市議会の初日に、手話を言語として位置付け、理解や普及に向けて市や市民、事業者の役割を示した「手話言語条例(案(議案第5号 高梁市手話言語条例)を提案した。

 

条例案は3月21日の本会議において全会一致で可決、成立した。岡山県内で初めて手話言語条例を制定した自治体一覧。全国の自治体としては、81番目(20173月2月21日現在)

 

施行は2017年4月1日

 

岡山県内の聴覚障害者や市内で活動する手話サークルのメンバーら約20人が本会議場で傍聴し、条例制定を喜んだ。

 

条例は手話を「手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語」と明記。ろう者と共生できる地域社会の実現に向け、市民への理解を広げ、手話を使いやすい環境にする施策を推進することを市の責務と定めた。

 

 市民、事業者にはそれぞれ「ろう者が暮らしやすい地域社会の実現に寄与する」「ろう者が利用しやすいサービスを提供し、働きやすい環境を整備するよう努める」ことを求めている。

 

21日の本会議では、付託を受けた市民生活委員会の宮田好夫委員長が審議経過を報告。傍聴席では、聴覚障害者の要望を受けて市が配置した手話通訳士2人が議場での様子を伝えた。緊張した表情で見守っていた障害者らは、全会一致で可決されると一気に顔をほころばせた。

 

 

 

手話通訳士(左)による手話を通じて本会議を傍聴する聴覚障害者ら(2017年3月21日配信『山陽新聞』)

 

 耳が不自由な男性(71)は「病院や銀行などで困ることがあった。条例を通じて手話で気軽にやり取りできるようになれば」と期待。公益社団法人岡山県聴覚障害者福祉協会の佐藤浩行副会長(56)=岡山市=は「高梁がモデルとなり、障害者に優しいまちづくりを進めてほしい」と話した。

 

 閉会後、聴覚障害者や手話ボランティアらは近藤隆則市長らと懇談し、あらためて条例の普及推進を要望。近藤市長は「職員にも手話を勉強してもらい、コミュニケーションツールとして普及するよう努めたい」と述べた(2017年3月21日配信『山陽新聞』)

 

(2017年3月21日配信『山陽新聞』)

 

 近藤市長は「手話に関する講座開催や子どもへの教育普及を通じ、さまざまな場面で手話でコミュニケーションできる地域にしたい」としている。

 

なお、近藤市長は、全国手話言語市区長会のメンバー。

 

岡山県手話サークル一覧

 

 

高梁市は、岡山県の中西部に位置し、平成の大合併により広島県と境を接するようになるなど大幅に市域が広がった。岡山県下三大河川の一つ高梁川が中央部を南北に貫流し、その両側に吉備高原が東西に広がっている。地勢は総じて西に高く東に低く高梁川と成羽川、その支流に沿って帯状に曲折した低地部と高原部に至る傾斜部および高原部分とからなっている。

 

古来「備中の国(現在の岡山県西部。山陽道の一国。上国。古くは吉備〈きび〉国の一部であったが、7世紀後半の第40代天武〈てんむ〉天皇の頃〈674〜685年〉に備前、備中、備後に分割された。国府は総社市金井戸、国分寺は総社市上林)」として中核を占め、江戸時代には幕藩体制のもとに松山藩を中心として政治、経済、教育の中心地として栄え、今日に至っている。

 

かつては、四国の伊予松山藩に対し備中松山藩とよばれていたが、幕末に第7代藩主の板倉勝静(いたくら かつきよが)徳川慶喜の老中首座(筆頭)となっていたことから、戊辰(ぼしん)戦争では、幕府軍につき、箱館まで転戦、朝敵とされた。一方、徳川家ゆかりの伊予松山藩は新政府軍にくみした。その結果、明治維新後の廃藩置県では伊予松山藩を松山藩とし、備中松山藩は高梁藩と呼称を改められて、現在の高梁市の前身となった。

 

高梁城は、現存天守12のうちの一つ。

 

人口は、31,740人(男;15,225人/女;16,515人。うち外国人689人)、14,604世帯(2017年2月末現在)

 

 

高梁市手話言語条例

 

前文

手話は、ろう者が物事を考え、コミユニケーションを図り、社会活動に参加し、人問関係を育み、成長していくために使われてきました。手話は、音声言語とは異なる言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語であり、豊かな社会生活を営むためにろう者に大切に受け継がれてきたものです。

しかしながら、過去には手話が言語として認められず、手話を使用することができる環境が整えられてこなかった歴史があります。

このため、ろう者は、必要な情報を十分に得られず、多くの不便や不安を感じながら生活してきました。また、ろう者以外の者もろう者を理解する機会が少なく、お互いが十分に分かり合うことができませんでした。

このような状況の中、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話が音声言語と同様に言語であることが明記されました。

これを機に、高梁市では、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解促進及び普及を図り、もって手話が言語として日常的に使える地域社会の構築と、ろう者とろう者以外の者が共生できるまちづくりを推進することを決意し、この条例を制定します。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進、手話の普及及び手話を使いやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

(基本理念)

第2条 手話の理解促進及び普及は、手話が言語であること及びろう者が手話によりコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。

 

(市の責務)

第3条 市は、前条の基本理念に基づき、手話に対する市民の理解を広げ、手話を使いやすい環境にするための施策を推進するものとする。

 

(市民の役割)

第4条 市民は、手話への理解を深め、市が推進する施策に協カし、ろう者が暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第5条 事業者は、手話への理解を深め、市が推進する施策に協力し、ろう者が利用レやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

 

(施策の推進方針)

第6条 市長は、第3条に規定する施策を推進するための方針(以下「推進方針」という。)を策定するものとする。

2 前項の推進方針の策定においては、次の事項を定めるものとする。

(1) 手話の理解促進及び普及に関する事項

(2) 手話による情報取得及び手話を使いやすい環境づくりに関する事項

(3) 手話による意思疎通支援者の育成等に関する事項

(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項

3 市長は、推進方針の策定に際し、あらかじめろう者、意思疎通支援者その他関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

 

(委任)

算7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

附 則

この条例は、平成29年4月1日から施行する。

 

提案理由

 

ろう者とろう者以外の者が共生できるまちづくりを推進するため。

 

 

手話 救助につなげて(2017年6月3日配信『読売新聞』―「岡山版」)

 

 ◇高梁市、救急救命士や警官らに講座

 県内で初めて「手話言語条例」を制定した高梁市で、救急救命士や消防士、警察官らに手話をマスターしてもらう講座が始まった。急病や事故、火災などの要救助者の中には耳が不自由な人もいるため、手話の基本を学び、救命活動に生かしてもらおうと、市民の命を率先して守る職業を対象に市が実施。関係団体も期待を寄せている。(根本博行)

 条例は4月1日に施行され、講座は5月10日から同市横町の市消防本部でスタート。初回は、県聴覚障害者福祉協会の佐藤美恵子さん(ろう講師)と、井上宏美さん(手話通訳者)が講師を務め、事故や火事の現場にいち早く駆け付ける市消防署員32人と、高梁署員7人の計39人が受講した。

 署員らは、自分や家族の名前を伝える方法を教わった後、「高梁」「消防署」「警察署」「消防士」「警察官」などの表現を習得。数字の「1〜10」についても練習した。

 約10年前から救急救命士として活動している市消防署の坂本正直・消防司令補(45)は、「手話をしっかりと覚え、耳の不自由な方に寄り添った救急救命をしていきたい」と意欲。鈴木初治郎署長は「ろう者の方の訴えを的確に受け止め、適切な処置や搬送につなげたい」と語った。

 講座は約2時間で、9月1日まで計8回開かれ、今後はあいさつのほか、病気や症状、自動体外式除細動器(AED)、災害に関する手話などを学ぶ。最終回では、市内の聴覚障害者を交えて緊急時を想定した模擬体験も予定しており、近藤隆則市長は「救命救助を担う人に覚えてもらうとともに、市民にも広く手話を知ってもらい、聴覚障害者が安心して暮らせるまちをつくりたい」と話している。

 全日本ろうあ連盟の久松三二みつじ事務局長は、「救急救命士や警察官が手話をマスターする取り組みは、ろう者の安全と命を守るための大切な施策。全国のモデルとなるよう進めてほしい」とコメントしている。

 

 ◇手話言語条例

 手話を言語として位置づけ、聴覚障害の有無にかかわらず普及を促すのが目的で、2013年に鳥取県が全国で初めて制定。高梁市では、市には「手話を使いやすい環境にするための施策を行う」責務があり、市民や事業者には「市の施策に協力し、ろう者が働きやすい地域社会の実現や環境整備に努める」ことを求めている。全日本ろうあ連盟によると、同様の条例は13県、75市、9町の97自治体(4月20日現在)で制定されている。

 

手話講座;消防士や警察官、基礎学ぶ 高梁(2017年5月11日配信『毎日新聞』−「岡山版」)

 

手話講習を受ける高梁市消防本部の救急救命士や消防士ら=岡山県高梁市横町の市消防本部で

 

今年4月に県内で初めて手話言語条例が施行された高梁市で10日、救急救命士や消防士を対象にした手話講座が始まった。耳が不自由な人らを救急搬送する際、手話で簡単な会話ができるようにするのが狙い。高梁署の警察官らも参加し、手話の基礎を学んだ。

講座は同市横町の市消防本部で月2回のペースで開催。1課程2時間の計8課程で、各課程を2回実施する。講師は県聴覚障害者福祉協会の佐藤美恵子さん(ろう講師)と井上宏美さん(手話通訳者)。最終課程では、救急搬送の疑似体験も取り入れる。

初日は救急救命士と消防士計32人、高梁署員7人が受講。自己紹介に必要な名前や職名、数字や家族の表し方を学んだ。講師からは、聴覚障害者が相手の口の形を読む訓練をしているとして、「最初は声に出しながら手話をしましょう」と説明を受けていた。

 

 

 

 

 

 

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