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富山県手話言語条例

 

富山県手話言語条例 制定記念フォーラム

 

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 手話を「言語」として普及させ、手話を使いやすい環境を整備していくための「手話言語条例」を制定する動きが全国の自治体で広がる中で、富山県の石井隆一知事は、2018年の県議会2月定例会に条例案を提出し、3月23日に全会一致で可決した。施行は、2018年4月1日。

 

 

富山県では、2014(平成26)年に「障害のある人の人権を尊重し県民皆が共にいきいきと輝く富山県づくり条例」を制定し、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会づくりを進めています。

 この条例と相まって、共生社会の実現を目指すものとして、聴覚障害のある方とない方をつなぐかけ橋となるよう、「富山県手話言語条例」を制定することとしました。

 手話が言語であるとの認識に基づき、基本理念、県の責務、県民等及び事業者の役割などを定め、手話の普及等に関する施策を進めることを目的としており、2018(平成30)年3月23日の富山県議会において全会一致で可決・成立し、同年4月1日から施行されています。

 「富山県手話言語条例」の制定を契機に、今後、市町村や関係団体、聴覚障害者や手話通訳者等と連携、協力しながら、手話の普及等に関する施策のさらなる充実に努めていきます(2018年4月10日富山県)。

 

(2018年3月23日配信『チューリップテレビ』)

 

提案理由

障害者福祉につきましては、「富山県手話言語条例」を今議会に提案するとともに、手話の普及啓発イベントの開催や手話通訳者の配置などに取り組むほか、 ヘルプマークを導入することとしております。

 

条例は、手話を1つの言語と位置づけて県が手話の普及に取り組む協議会を設置することや県民が手話を学ぶ機会を確保することなどを定めている。

 

議場の傍聴席には、念願の「手話言語条例」の可決を見届けるため、聴覚障害者や手話通訳者およそ80人が駆けつけ、条例案が可決されると、手話で拍手を表現するなどして喜びを分かち合っていた。

 

傍聴した県聴覚障害者協会の石倉義則理事長は手話を使って「うれしいですが、まだスタートラインに立ったばかりです。手話を理解してもらえるよう今後も活動していきたい」と話した。

 

 

(2018年3月23日配信『チューリップテレビ』)

 

 富山県内では、滑川市が2017年3月に制定している。

 

富山県は、2017年12月15日、「富山県手話言語条例(仮称)(案)を策定し、それに対する意見募集を2017年12月15日(金)〜2018年1月15日(月)まで行っている。

 

「富山県手話言語条例(仮称)(案)に対する意見募集について

 

本県では、県民の手話に対する理解や普及、聴覚障害のある方のコミュニケーション支援の充実等を図るため、これまでも、

1 手話に関する情報提供等を行う富山県聴覚障害者センターの運営への支援

 2 手話通訳者の養成

 3 県専任の手話通訳者の設置

 4 障害者団体の主催行事等への手話通訳者の派遣

などを行っています。

 手話については、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話が言語であることや使用の促進等について明記されたことに伴い、独自に手話の普及等に関する条例を制定する自治体が増えてきています。

 また、昨年4月の「障害のある人の人権を尊重し県民皆が共にいきいきと輝く富山県づくり条例」の施行を受け、障害及び障害のある人への理解の促進が図られるよう取り組んでいるところです。

 このため、本県では、共生社会の実現を目指すものとして、聴覚障害のある方とない方をつなぐかけ橋となる、「富山県手話言語条例(仮称)」を制定することを検討しています。

 今回、本条例の内容(案)について、広く県民の皆様からご意見をお伺いするためにパブリックコメントを実施しますので、次の要項によりご意見・ご提案をお寄せください。

 皆様から頂きましたご意見・ご提案につきましては、条例を制定するうえでの参考とさせていただきます。

 

 

富山県手話言語条例の内容

1 目的

 この条例を制定する目的を定めます。

・手話が言語であるとの認識に基づき、

 @基本理念

 A県の責務、県民等及び事業者の役割

 B手話の普及等に関する施策の基本となる事項

 を定めることにより、手話の普及等に関する施策を推進すること。

・全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することのできる社会の実現に寄与すること。

 

2 定義

 この条例で用いる基本用語の意義を定めます。

 ・ろう者

  聴覚障害者のうち、手話を使用して日常生活又は社会生活を営む者

 ・手話の普及等

  手話に対する理解の促進、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備

 

3 基本理念

 手話の普及等を推進するうえで基本となる考え方を定めます。

・手話が独自の体系を有する言語であること。

・手話が、ろう者が豊かな人間性を涵(かん)養し、知的かつ心豊かな生活を営むために受け継がれてきた言語活動の文化的所産であること。

・ろう者とろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本とすること。

 

4 県の責務

 手話の普及等に関する県の責務を定めます。

・基本理念にのっとり、手話の普及等に関する総合的な施策を策定、実施する責務を有すること。

・手話の普及等に関する施策の推進に当たって、市町村、関係機関及び関係団体と連携するとともに、ろう者及び手話通訳者等の協力を得るよう努めること。

・ろう者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものの除去について必要かつ合理的な配慮をすること。

 

5 県民等および事業者の役割

 手話の普及等に当たっての県民等及び事業者の役割について定めます。

・県民

 基本理念について理解を深めるよう努めること。

・ろう者

 手話の普及等に関する県の施策への協力、手話の普及等の促進に努めること。

・手話通訳者等

 手話の普及等に関する県の施策への協力、手話及び手話通訳に関する技術の向上、手話の普及等の促進に努めること。

・事業者

 ろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときは、手話の使用に関して合理的な配慮をするよう努めること。

 

6 施策の策定及び推進

 手話の普及等に関する施策の策定及び推進について定めます。

・知事は、障害者基本法に規定する障害者のための施策に関する基本的な計画においては、手話の普及等に関する施策を策定し、総合的かつ計画的に推進すること。

・施策の策定に当たって、あらかじめ、富山県手話施策推進協議会の意見を聴くこと。

 

7 基本的施策

 手話の普及等に関する施策の基本的な方向性を定めます。

(1)相談及び意思疎通の支援体制の整備

・手話通訳者の派遣、ろう者等からの相談対応や情報提供を行う拠点となる施設を支援すること。

・ろう者等が手話通訳者による意思疎通の支援を受けられる体制の整備を図ること。

(2)手話による情報発信等

・ろう者等が県政に関する情報を取得することができるよう、手話による情報発信を行うこと。

(3)災害時等への対応

・災害その他非常の事態において、ろう者が手話により必要な情報を取得し、及び意思疎通を図ることができるよう、必要な措置を講ずるよう努めること。

(4)観光旅行者等への対応

・ろう者である観光旅行者等が安心して県内に滞在することができるよう、手話の普及等に努めること。

(5)手話通訳者等の確保、養成等

・手話通訳者等及びその指導者の確保及び養成並びに手話通訳に関する技術の向上を図ること。

(6)事業者への支援

・ろう者に対して手話の使用に関する合理的な配慮を行う事業者に必要な支援を行うこと。

(7)手話を学ぶ機会の確保等

・県民が手話を学ぶ機会の確保等を行うこと。

・県職員が手話に関し学習する機会の確保に努めること。

(8)学校における手話の普及

・聴覚障害者である幼児、児童又は生徒が通学する学校において、手話を学習し、手話により教育が受けられるよう、教職員の手話に関する技術の向上のために必要な措置を講ずるよう努めること。

・また、聴覚障害者である幼児、児童又は生徒及びその保護者に対する手話に関する学習の機会の提供、教育に関する相談その他の支援に関する措置を講ずるよう努めること。

 

8 手話に関する調査研究

 手話に関する調査研究を行うろう者等への県の協力について定めます。

 県は、ろう者等及び手話通訳者等が手話の発展に資するために行う手話に関する調査研究の推進及びその成果の普及に協力すること。

 

9 財政上の措置

 手話の普及等に関する施策推進のために必要な財政上の措置について定めます。

 県は、手話の普及等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めること。

 

10 富山県手話施策推進協議会の設置

 手話の普及等に関する施策推進のための協議会の設置について定めます。

・次の事務を行わせるため、富山県手話施策推進協議会を置くこと。

(1)手話の普及等に関する施策について知事に意見を述べること。

(2)条例の施行に関し必要な事項について知事に意見を述べること。

 

11 条例の施行日

 この条例は、平成30年4月1日から施行する。

 

 

富山県手話言語条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 手話の普及等(第7条―第16条)

第3章 富山県手話施策推進協議会(第17条)

附則

 

手話は、音声言語とは異なる語彙及び文法体系を有し、ろう者がその意思や感情等を手や指の動き、表情などにより視覚的に表現する言語である。

我が国の手話は、明治時代に始まり、ろう者の間で大切に受け継がれ、発展してきた。

大正時代以降、音声言語である日本語の使用がより重視されるようになり、発音発語と読話の訓練を中心とする口話法がろう教育に導入される一方、ろう学校における手話の使用は制約されることとなった。しかしながら、ろう者は、言語である手話に誇りを持ち、その理解と普及の促進に取り組んできた。

このような中、平成18年の国際連合総会において、障害者団体の参加の下に、障害者の権利に関する条約が採択され、手話は音声言語と同じく言語であることが国際的に認知されることとなった。我が国においても、平成23年に改正された障害者基本法において言語に手話を含むことが規定され、さらに、平成26年には障害者の権利に関する条約が批准された。

また、本県では、平成26年に、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共生する社会づくりを進めるため、障害者団体等の意見を踏まえた、障害のある人の人権を尊重し県民皆が共にいきいきと輝く富山県づくり条例を制定し、障害に対する知識や理解を深め、障害を理由とする差別の解消に取り組んできている。今後、法令やこの条例と相まって、手話に対する理解の促進、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備を図ることが必要である。

ここに、ろう者が手話により意思疎通を行う権利が尊重されるとともに、ろう者とろう者以外の者が相互に理解し共生する富山県づくりを目指して、この条例を制定する。

 

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及等に関し、基本理念を定め、並びに県の責務並びに県民等及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話の普及等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話の普及等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 ろう者 聴覚障害者のうち、手話を言語として使用して日常生活又は社会生活を営む者をいう。

 手話の普及等 手話に対する理解の促進、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話の普及等は、手話が独自の体系を有する言語であって、ろう者が豊かな人間性を涵(かん)養し、知的かつ心豊かな生活を営むために受け継がれてきた言語活動の文化的所産であることについての県民の認識の下に、行われなければならない。

2 手話の普及等は、ろう者とろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本として、行われなければならない。

 

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める手話の普及等に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話の普及等に関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、市町村、関係機関及び関係団体(以下「市町村等」という。)と連携し、及び協力して、手話の普及等の促進に努めるものとする。

3 県は、市町村が手話の普及等に関する施策を実施する場合は、当該市町村に対して情報の提供、技術的な助言その他必要な支援を行うものとする。

4 県は、手話の普及等に関する施策の推進に当たっては、ろう者及び手話通訳者等(手話通訳者及び手話の普及等に関係する者をいう。以下同じ。)の協力を得るよう努めるものとする。

5 県は、手話の普及等に関する施策の推進に当たっては、ろう者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮をするものとする。

 

(県民等の役割)

第5条 県民は、基本理念について理解を深めるよう努めるものとする。

2 ろう者及びろう者の団体(以下「ろう者等」という。)は、基本理念にのっとり、県が実施する手話の普及等に関する施策に協力するとともに、手話の普及等の促進に努めるものとする。

3 手話通訳者は、基本理念にのっとり、その職務に係る倫理と知識を保持し、県が実施する手話の普及等に関する施策に協力するとともに、手話通訳に関する技術の向上及び手話の普及等の促進に努めるものとする。

4 手話の普及等に関係する者は、基本理念にのっとり、県が実施する手話の普及等に関する施策に協力するとともに、手話の普及等の促進に努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときは、手話の使用に関して合理的な配慮をするよう努めるものとする。

 

第2章 手話の普及等

(施策の策定、推進等)

第7条 知事は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項に規定する障害者のための施策に関する基本的な計画において、手話の普及等に関する施策を策定し、及びこれを総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 知事は、前項の規定により手話の普及等に関する施策を策定しようとするときは、あらかじめ、第17条の富山県手話施策推進協議会の意見を聴かなければならない。

3 前項の規定は、第1項に規定する施策の変更について準用する。

4 知事は、第1項に規定する施策の実施状況を公表するものとする。

 

(相談及び意思疎通の支援体制の整備)

第8条 県は、市町村等と連携して、手話通訳者を派遣し、ろう者、その家族その他の関係者からの相談に応じ、及びろう者等への情報提供を行う拠点施設に対する支援を行うとともに、手話通訳者による意思疎通の支援を受けられる体制の整備を図るものとする。

2 県は、聴覚障害者である乳児又は幼児及びその保護者に対して、手話に関する情報の提供、相談、訓練その他必要な支援を行う体制の整備を図るものとする。

 

(手話による情報発信等)

第9条 県は、ろう者等が円滑に県政に関する情報を取得することができるよう、手話による情報発信を行うものとする。

2 県は、災害その他非常の事態において、ろう者が手話により安全を確保するため必要な情報を迅速かつ的確に取得し、及び円滑に意思疎通を図ることができるよう、市町村等との連携その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(観光旅行者等への対応)

第10条 県は、ろう者である観光旅行者その他の滞在者が安心して県内に滞在することができるよう、手話の普及等に努めるものとする。

 

(手話通訳者の確保、養成等)

第11条 県は、市町村等と連携し、手話通訳者及びその指導者の確保及び養成並びに手話通訳に関する技術の向上を図るものとする。

 

(事業者への支援)

第12条 県は、第6条の規定により手話の使用に関して合理的な配慮を行う事業者に対して、情報の提供、助言その他必要な支援を行うものとする。

 

(手話を学ぶ機会の確保等)

第13条 県は、市町村等、ろう者等及び手話通訳者等と協力して、県民が手話を学ぶ機会の確保等を図るものとする。

2 県は、基本理念について理解を深め、手話に関する技術の向上のための取組を推進するため、その職員が手話に関し学習する機会の確保に努めるものとする。

 

(学校における手話の普及)

第14条 県は、聴覚障害者である幼児、児童又は生徒(以下この条において「ろう児」という。)が通学する学校において、当該ろう児が手話を学習し、手話により教育が受けられるよう、当該学校の教職員の手話に関する技術の向上のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 県は、ろう児及びその保護者に対する手話に関する学習の機会の提供、手話を使用した教育に関する相談その他必要な支援に関する措置を講ずるよう努めるものとする。

3 県は、市町村等、ろう者等及び手話通訳者等と協力して、学校において、基本理念及び手話に対する理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めるものと

する。

(手話に関する調査研究)

第15条 県は、ろう者等及び手話通訳者等が手話の発展に資するために行う手話に関する調査研究の推進及びその成果の普及に協力するものとする。

 

(財政上の措置)

第16条 県は、手話の普及等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

第3章 富山県手話施策推進協議会

第17条 次に掲げる事務を行わせるため、富山県手話施策推進協議会を置く。

 第7条第2項の規定により知事に意見を述べること。

 この条例の施行に関し必要な事項について知事に意見を述べること。

2 富山県手話施策推進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、知事が定める。

 

附 則

この条例は、平成30年4月1日から施行する。

 

 

2018年手話普及等施策総合推進事業

 

1 趣 旨

「富山県手話言語条例」(2018年2月議会に上程)の制定を機に、手話に対する県民の理解や普及の促進、手話を使用しやすい環境の整備を図るもの。

 

2 事業概要

(1)富山県手話言語条例の制定記念イベントの開催

条例の理念や手話の普及等を図るため、手話に関する講演やパネルディスカッション等を実施するとともに、普及啓発パンフレットを作成し、広く県民や関係機関等に配布する。

(2)手話通訳者の県庁内への設置

県主催行事や聴覚障害者の来庁時の手話通訳、民間団体・企業等への手話の普及等を行うため、新たに県庁内に手話通訳者を設置する。

(3)遠隔手話通訳サービスの開始聴覚障害者が気軽にコミュニケーションをとることができるよう、新たに、インターネットを介して手話通訳サービスを提供する体制を構築する。

 

 

(4)手話サークル等の活動支援

県民が気軽に手話について理解したり体験する機会を増やすため、新たに県内の手話サークル等が手話の普及活動を行う際の費用の一部を補助する。

(5)手話通訳試験受験料等の助成

県内の手話通訳者が増加するよう、新たに手話通訳士試験や手話通訳者全国統一試験の受験者に対して、受験料等の半額を助成する。

(6)富山県手話施策推進協議会の開催

条例の規定に基づき、新たに当事者団体等からなる協議会を設置し、手話施策の現状や方向性等に係る意見聴取や協議等を行う。

 

3 予算額

7,200千円

 

 

 石井隆一知事は2017年9月21日の県議会予算特別委員会で、「聴覚障害のある方とない方が活発にコミュニケーションを行える環境を整備し、共生社会の実現に寄与する」と説明した。

 

 同月26日には、聴覚障害者や支援者、医療関係者らでつくる推進会議を初めて開き、今後の施策を協議した。

 

 県聴覚障害者協会の小中栄一理事(63)は、条例によって、手話による行政情報の伝達や手話通訳者の充実、聴覚総合支援学校などで手話を学ぶための環境整備が進むことが期待されると指摘。「条例づくりを働き掛けてきたので、決断してくれてうれしい。制定後にどのような施策がなされるかが大事で、当事者と協力して施策を決めてほしい」と話している。 

 

 2017年11月30日には、富山県聴覚障害者協会の石倉義則理事長たちが石井知事を訪ね、速やかに条例を制定するよう要望しました。

 

 手話は「日本語の習得を妨げる」と誤解されてきた歴史があるが、石倉理事長は、「聞こえない人にとって体全体を使って伝える手話は、自然に生まれた言語」と説明。 条例の制定によって手話という言語への理解が一層すすむよう求めました。

 

 県聴覚障害者協会は2017年11月19日、富山市の富山国際会議場で「手話言語フォーラムinとやま」(北日本新聞社協賛)を開いた。参加者の行政・議員関係32名含む約360名がパネルディスカッションなどを通して、手話を言語として位置づけて普及を促す「手話言語条例」に理解を深めた。

 

フォーラムでは、石井知事(布野厚生部次長代読)が「手話に関する条例を、できれば2018年春を目途に制定する方向で具体的な検討を進める」と富山県の挨拶を述べた後、全日本ろうあ連盟の久松三二(みつじ)事務局長が手話言語法・条例の運動の目的、意義、成果等について講演した。

 

その後、富山県内で初の手話言語条例を制定した滑川市の上田昌孝市長が報告。明石市の泉房穂市長からは、手話市長会と明石市の取り組みについての講和があった。

 

泉市長は、「障害者が暮らしやすい社会を作るのは行政の責任」であると強調し、「障害者に優しい町づくりは、子供や高齢者らにも優しい町づくりにつながった」とことを強調した。

 

パネルディスカッションでは、上田滑川市長と齊木志郎富山県障害福祉課長、県聴覚障害者協会の橘勇一氏がパネラーとなり、手話言語条例の制定に向けた取り組みや今後の展望などを話し合った。

 

齊木氏は、富山県手話言語条例制定検討委員会の主な論点・意見等の報告、橘氏からは、「手話への理解が進み、環境を変 えてほしい」と訴えがあった。

 

 

手話言語条例などについて話し合ったフォーラム=富山国際会議場

 

 

パネルディスカッションの様子

左から滑川市市長の上田市、富山県厚生部福祉課長の齊木氏、富山県聴覚障害者協会の橘氏

 

 

富山県は、南北にのびる日本列島の中心、本州の中央北部に位置し、東は新潟県と長野県、南は岐阜県、西は石川県に隣接しており、三方を急峻な山々にかこまれ、深い湾を抱くように平野が広がっており、富山市を中心に半径50kmというまとまりのよい地形が特徴。

 

また、日本海側の中央に位置する本県では、アジア大陸や朝鮮半島など対岸諸国との古くからの交流の積み重ねを活かし、環日本海地域の中央拠点として活発な取組みを展開している。

 

古くから北前船で知られる日本海側貿易の中継拠点であった富山県は、日本海側最大の工業集積地であり、北陸工業地域の中核である。ライフラインや銀行の本店があり、北陸経済の重要な拠点となっている。伝統的に富山の売薬(「越中富山の薬売り」)やブリ街道(越中と飛騨、さらに信州を結ぶ旧越中飛騨街道の別名)・塩の道(千国街道(ちくにかいどう)の別名)が有名だが、現代ではさらに環日本海貿易の拠点として発達し、中古車などの取引拠点となっている。

 

 

 越中五箇山(えっちゅうごかやま)相倉合掌集落(あいのくらがっしょうづくりしゅうらく)は、世界遺産である(岐阜県の白川郷(荻町)と富山県の五箇山(相倉・菅沼(すがぬま)の40)の3集落で1つの世界文化遺産)

 

 

 富山県の人口は、1,064,009人(2015年10月1日現在)

 

身体障害者手帳所持者は20,444人であり、そのうち聴覚・言語障害は8.8%、1,710人(2014年3月末現在)

 

 

第4期 富山市障害福祉計画(2015度〜2017年度)

 

 

学校で手話禁止、見つかれば罰が 手話が言語になるまで(2019年5月28日配信『朝日新聞』)

 

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手話で会話する富山聴覚総合支援学校の生徒たち=2019年4月25日、富山市下奥井1丁目

 昨年、「手話は言語」と明記された富山県手話言語条例が制定された。だが、かつて聴覚障害者たちにとって、「手話は言語」とは言えない時代があった。県内の聴覚障害者や関係者を取材して、手話を巡る歴史をたどった。
学校での使用、禁じた時代
 聴覚に障害のある幼稚部から高等部までの18人と、知的障害のある高校生が学ぶ高岡聴覚総合支援学校(富山県高岡市西藤平蔵)。中学部の教室をのぞくと、生徒たちが手話で楽しそうに会話をしていた。幼稚部の教室では、3人の子どもたちが口の動きと聞き取れる音を頼りにしりとりをしていた。
 同校の児童や生徒らの聞き取れる音の程度は様々だ。デジタル補聴器や人工内耳など、聴覚をサポートする技術の発達もあり、同校に通う児童や生徒らの数は以前より減ったという。
 指の形で50音を示す「指文字」や口の動きを読む「口話」、そして手話。一人ひとりにあったコミュニケーションの取り方で言葉の習得や会話に励む。
 「手話は命です」
 いくつものコミュニケーションの方法がある中で、県聴覚障害者協会理事長の石倉義則さん(66)はそう話す。
 1952年、富山市で生まれた石倉さん。小学校入学を控えた冬に高熱が出て、聴力を失った。両親は小学校に通えないと考え、石 倉さんは小学校には通わず、1年間、家で過ごした。両親が県立聾(ろう)学校(現富山聴覚総合支援学校)の存在を知り、1年遅れで入学した。
 学校では、教師の口の動きを読み取る「口話」教育が行われていた。口の動きを読み取り、健聴者と同じように発話をする訓練が中心。口話の訓練に多くの時間がかけられたため、勉強の進度は3年遅れだったという。
 学校で手話は禁止。当時、石倉さんは正式に手話を習ってはいなかったが、友達同士で身ぶり手ぶりでコミュニケーションをとろうとして、独自の「手話」が生まれた。しかし、それが教師に見つかると、バケツを持って廊下に立たされるなど怒られたという。
口話教育は「差別の始まり」
 世界初のろう学校はパリで1760年ごろに設立されたという。日本では、1878年に京都で最初のろう学校ができた。

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富山ろう学校の文化祭の演劇「翼をください」で、通学のバスで耳の聞こえないことをからかわれたつらさが「忘れられない」と泣く生徒(左)=針山和雄さん提供

 1880年にイタリア・ミラノで開かれた、ろう教育国際会議で「口話法が手話より優れている」と決議された。口の動きから言葉を読み取ったり、発声を練習したりする「口話教育」が、手話より優先されることになった。富山県聴覚障害者協会理事長の石倉義則さん(66)は「ろう者への差別の始まりだった」と話す。
 日本は同会議に参加していなかったが、口話優先の流れが進む。手話は「劣ったもの」「思考力が育たない」などとされ、ろう者を口話教育で健聴者に近づけることが目指された。
 竹川秀夫さん(87)は1932年、富山市で傘やちょうちんを製造・販売する両親のもとに生まれた。両親は健聴者だったが、2歳上の姉と竹川さんは生まれつき耳が聞こえなかった。

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幼少期について手話で語る竹川秀夫さん=2019年3月28日、富山市長江新町1丁目

 両親は教育熱心だったといい、県立盲(もうあ)学校(現富山聴覚総合支援学校)の近くに引っ越して、学校へは徒歩3分ほどで通えた。同級生には3、4歳年上の人も多くいた。当時、ろう者のための学校があることを知らない保護者も少なくなかったと、後に知った。
 教師の口の動きを読もうとしたが、ゆっくりはっきりした動きでなく、ほとんど分からなかったといい、学校では「苦しい思いをした」。帰宅して、母から身ぶり手ぶりで教わる情報が勉強だった。
 45年8月の富山空襲で学校の校舎は焼失。翌月、仮校舎で授業は再開した。畳にはノミやシラミがいたが、書いた作文を添削してもらうなど、文章の練習ができたのがうれしかった。しかし、学校では相変わらず、口話が教育の中心だった。
差別当たり前の意識、変えた元教員
 県聴覚障害者協会理事の針山和雄さん(71)は元教員。1973年、魚津工業高から異動した富山ろう学校(現富山聴覚総合支援学校)で、ろう者の置かれた状況を初めて知った。

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針山和雄さん


 異動が決まった時、「手話ができないのに困ったな」と思った。だが、富山ろう学校の勤務初日、教頭が言った。「手話なんか必要ない」。校内では、口の動きを読み取る「口話」が中心だった。
 当時、幼稚部から高等部まで教員は40人ほどいた。勤務を始めて徐々にわかったのは、生徒たちを「自分の考えをもっていない」などと見下すような教員がいたこと。ショックだった。
 高等部の生徒を指導した針山さんも、コミュニケーションに戸惑った。授業や実習では、身ぶり手ぶりで指導。コミュニケーションを深めようと、授業の感想文を書かせた。しかし、文法を正しく理解できておらず、「僕は金属です。針山は勉強です」と書く生徒もいた。
 学校では口話中心だが、生徒たちは友達同士の会話では手話を使っていた。針山さんは74年冬から手話サークルに通う。生徒と手話で会話するようになり、学校外での暮らしを知った。親戚の葬式に出たある生徒は「変な声を出してみっともないからと自分だけ別室にいた」と話してくれた。
 ある土曜、寄宿舎から自宅に帰る生徒と一緒に電車に乗った。手話で話しかけると生徒の返事は「じろじろ見られて恥ずかしいからやめてください」。
 校内では徐々に、手話を意思疎通の補助として使うことが暗黙のうちに認められるようになったが、針山さんは「堂々と手話が使える社会にしないと」との思いを募らせた。
 同校で勤務して20年ほど経った頃、文化祭でろう者への差別をテーマにした演劇「翼をください」を作った。公立校と私立校の学力差による差別をテーマにしたジェームス三木脚本のドラマをヒントに、ろう学校の生徒たちへの差別をテーマにした。
 生徒の実体験を脚本に生かそうとしたが、生徒は当初、乗り気ではなかった。ろう者として差別されることを「当たり前」のように受け止めていたからだ。そんな生徒たちに、針山さんは根気強く向き合った。「自分も周りも『当たり前』と思っていることを変える意識を持ってほしい」と考えていた。
 次第に生徒たちが脚本への意見を出してくれるようになった。生徒の一人は、通学のバスで小学生から補聴器をからかわれ、「やめて」と言ったが、発音が変だと笑われたという。「どんな気持ちだった?」と聞くと、生徒は「悔しかったんだ」と本当の気持ちに気づいたという。
 「心に閉ざしていた出来事や感情を、表に出していいんだと思えたのではないか」と針山さん。そして「手話は豊かな感情を伝える大切な手段です」。教員を退いた今は、手話通訳士としてろう者を支える。
情報量の格差ない環境へ
 「口話」が中心だった県内のろう学校でも、明確な時期ははっきりしないが、次第に手話が使われるようになっていったという。

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生徒と手話で話す浪川元秀さん(左)=2019年4月25日、富山市下奥井1丁目

 

 富山聴覚総合支援学校の教員、浪川元秀さん(30)は、幼稚部から高等部まで、高岡聴覚総合支援学校で学んだ。幼稚部、小学部の頃は授業の中心は口話だったが、中学部から手話も使った授業が始まったと振り返る。
 浪川さんには2歳下の妹がいる。幼い頃、母親と一緒に妹の送り迎えで保育所に行き、補聴器をつけずに遊んでいる子どもを見た。補聴器をつけている自分は耳が聞こえないのだと、少しずつ理解していった。
 自分と同じ立場の子どもたちにも自分らしく生きてほしいと、特別支援学校の教員になることを視野に、富山大人間発達科学部に進学。入学当初は講義の要約筆記などの支援はなく、「何も分からなかった」。教科書だけでは講義を理解できず、同じ講義を受けている人にノートを見せてもらうなどして補った。
 聴覚総合支援学校とは違い、健聴者に囲まれた生活にさみしさも感じた。しかし、特別支援学校の教員養成のコースに進むと、周囲が障害に理解を示し、手話を覚えてくれた。手話サークルもできた。
 浪川さんは自身の経験から、聴覚障害のある子どもたちにも「必要な支援を理解し、自ら求める力を身につけてほしい」と思う。
 「手話は言語」と定義する「障害者権利条約」を国連が採択したのは2006年。障害者基本法が改正され「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保される」と明記されたのが11年。富山県手話言語条例が制定されたのが18年。ろう者たちの思いや、支える人たちの声を受けて少しずつ、ろう者を取り巻く環境は変わってきた。
 しかし、浪川さんによると、困ることはまだ多い。会議では手話のできる教員が通訳してくれるが、正式な手話通訳士ではないため、伝わる情報は「半分か3分の1程度」。意見を言おうとしても、既に別の話題に移ってしまっていることもあるという。
 音声情報がいつでも文字情報に置き換えられたり、手話通訳が日常的にいたりして「情報量の格差がない環境が理想」と浪川さん。「少しずつ自分の意見を伝えて、よくしていきたい」

 

富山県庁の通訳が画面越し仲介 病院で「遠隔手話」利用を(2019年5月25日配信『中日新聞』ー「富山版」)

 

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タブレット端末を使って聴覚障害者と病院職員のやりとりを手助けする手話通訳者の塩見七恵さん=県庁で

 聴覚障害のある人が病院を利用しやすくするため、富山県は「遠隔手話通訳サービス」を導入している。病院に置いたタブレット端末で県庁に常駐する手話通訳者と利用者、病院職員を結び、やりとりを仲介することで診療の円滑化を図る取り組み。県内の3つの公的病院でモデル事業として展開し、希望があれば他の病院への拡大も検討する。
 聴覚障害者が病院を訪れる際は家族が同行したり、筆談をしたりしているが、十分に意思疎通できないケースもある。県は昨年4月に県手話言語条例を施行し、手話でコミュニケーションが図れる環境の整備を進めており、その一環としてサービスを実施。
 県障害福祉課によると、病院など公的施設で遠隔手話サービスを導入している都道府県は富山を含めて8県ある。
 対象は県立中央病院、富山市民病院、県済生会高岡病院。総合案内や各診療科窓口などの病院窓口でタブレット端末やインターネット電話を活用し、手話通訳者が手話と音声を通訳し、利用者と病院職員に伝える。
 タブレット端末が持ち込めない診療時の同行を希望する場合は、県聴覚障害者センターの派遣事業を利用できる。
 サービスは7日から始まったが、現在まで利用者はいない。元看護師で対応に当たる手話通訳者の塩見七恵さんは「医療の専門用語を分かりやすく、具体的に伝えていきたい」と話した。
 受付時間は毎週月曜日−金曜日(祝日と年末年始を除く)の午前78時半〜午後5時。事前予約不要。

 

 

富山県では、聴覚障害のある方とない方をつなぐかけ橋となるよう、「富山県手話言語条例」を制定し、平成3041日から施行しました。

広く県民に手話と、手話でのコミュニケーションについて考える機会とします。

 

富山県手話言語条例 制定記念フォーラム

〜ハンド・トゥ・ハート 手話も心に笑顔と幸せを届ける笑顔〜

日時 平成30年9月1日(土)13:30〜16:00

会場 富山国際会議場 3階 メインホール

主催 富山県

 

【特別講演】講師 山本シュウ

「言語とコミュニケーションのバリアを打ち砕く手話のチカラ」

NHK Eテレ「バリバラ」の司会者として活躍中。

昨年、文部科学省から障害者の生涯教育の推進活動をするスペシャルサポート大使を任命された。

【アトラクション】

@手話パフォーマンス

Aミニ手話教室

Bシュワdeマジック(マジシャン コンプレッサー)

【パネルディスカッション】

演題「もっと分かり合える!聞こえない人、聞こえる人とのコミュニケーション」

<パネリスト>

鷹西 恒(富山福祉短期大学 教授)

金川 宏美((特非)大きな手小さな手)

蜷川 一美(滑川市ろうあ福祉協会 会長)

小中 栄一((福)富山県聴覚障害者協会 理事)

<コメンテーター> 山本シュウ

<司会>久和 恵実(フリーアナウンサー)

 

難聴者の生活知って 県内、きょうNPO設立(2018年6月16日配信『北国新聞』)

 

NPO法人「富山中途失聴者・難聴者友の会」を設立総会

 

 病気など後天的な理由で聴覚障害を持つ県内の中途失聴者や難聴者らが、新たにNPO法人「富山中途失聴者・難聴者友の会」を設立する。生活実態を発信し、偏見や差別の解消につなげるほか、会員の交流を図り、聴覚障害者の孤立を防ぐ。16日に設立大会を開き、今後は飲食会の開催や、会員の講演会への派遣などを行い、市民に理解を求める。

 県内ではこれまで、県聴覚障害者協会が中心となり聴覚障害者を支援してきた。県も今年4月に手話を言語の一つとして普及を促進する「手話言語条例」を施行した。

 ただ、日常のコミュニケーションで手話ではなく、筆談を使う中途失聴者や難聴者に対しての理解は進んでおらず、難聴者の多くが福祉支援の受け方が分からないなどの孤立化が問題となっていた。

 交流の場をつくろうと、5年前、西田勤さん(64)=富山市池多=を中心に県内の難聴者らでつくる「虹の会」を設立。日常生活での課題を話し合い、聴覚障害に関する講演会などで問題を発信してきた。

 同会は任意団体で、活動や影響力に限界があったため、法人格を取得し会員一丸となって啓発活動に取り組もうと、昨年10月から同会と、筆談などで聴覚障害者のコミュニケーションを助ける要約筆記者の学習会「イヤーサポートつむぎ」のメンバー12人がNPO法人化を準備してきた。

 16日の設立大会は同市障害者福祉プラザで開かれ、定款や活動計画などを定め、NPO法人申請する。

 今年度は難聴当事者として、介護・看護職員や民生委員らが参加する「聞こえのサポート講座」などで講義を行ったり、広報誌を作成し公共施設に配布したりして、潜在的な中途失聴者や難聴者の掘り起こしと住民の理解に向けた広報活動を進める予定だ。

 設立代表の西田さんは、難聴者は外見では判断できないので、自らが発信していかなければならないと強調し、「小さなことを積み重ね、難聴者が暮らしやすい環境をつくっていきたい」と意気込んだ。

 

中途失聴理解深めて 富山・西田さんらNPO「友の会」設立 16日、富山で大会(2018年6月13日配信『毎日新聞』−「富山版」)

 

西田勤さん

 

 大人になってから聴覚を失ったため、手話が分からないなどといった障害者への理解を深めてほしいと、NPO法人「富山中途失聴者・難聴者友の会」の設立大会が16日午前10時から、富山市障害者福祉プラザで開かれる。設立代表者で造形作家の西田勤さん(64)=同市池多=は「当事者の生の声を社会や行政に届けたい」と話している。

 西田さんは小学5年から難聴気味となり、約10年前から急激に悪化。3年前、右耳は完全に失聴し、左耳がわずかに聞こえる程度に。約8年前に障害者認定を受けた。

 加齢などによる伝音性難聴とは違い、聞こえる音がゆがんだり割れて聞こえる「感音性難聴」と呼ばれる症状で、補聴器を装着しても言葉が聞き分けられない。特に、声が響く広いホールや、大勢の人の会話の中にいるのが苦痛という。電車の中のアナウンスが聞き取れないため、急停車の理由が分からず不安になったり、「補聴器を付ければ聞こえるでしょう」「都合の悪い時だけ聞こえないふりをしているのでは」など、偏見や誤解を受けることもある。

 さらに、ろうあ教育を受けていないために手話が分からず、要約筆記通訳が重要なコミュニケーション手段だが、まだまだ浸透していないのが現実だ。

 そこで西田さんは5年前、難聴者の自助グループ「虹の会」を設立し、要約筆記での解説を受けながら美術鑑賞したり、問題点を話し合ったりしてきた。

 設立大会には西田さんら約15人が参加する予定。今後は会報の発行や勉強会を通して、将来的には兵庫県明石市と同様の、要約筆記の利用促進などを盛り込んだ総合・情報コミュニケーション条例の制定を県内で目指す。

 西田さんは「補聴器の耳元で大声で話さない、複数の人が同時に話さない、などといった難聴者からの希望を広く理解してもらうと同時に、手話だけでなく筆談の普及を求めていきたい」と訴えている。問い合わせはメール(nishizoukei.art@purple.plala.or.jp)で。

 

手話(2018年3月24日配信『中日新聞』−「富山版」―記者コラム:越中春秋


 「長年の悲願」。23日に成立した(富山)県手話言語条例を祝う当事者の笑顔が印象的だった。
 東京にいたころ、聴覚障害の男性を取材した。取材後、教わった手話で「ありがとうございました」と伝えた。男性は「伝えようという気持ちを持ってくれたことがうれしい」と答えてくれた。
 聴覚の障害は見た目では区別が付きにくい上、「動きが動物的だといわれのない差別を受けてきた」と漏らす関係者もいる。県聴覚障害者協会の石倉義則理事長は「すぐには変わらない。20年、30年かけて手話を理解してもらえれば共生社会に変えられる」。
 すぐに手話を覚えるのは難しくても、伝えようとする気持ちは持ち続けたい。

 

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