手話が障害者権利条約や障害者基本法において、言語として位置づけられたことに鑑み、北海道石狩市(人口27,005人=2014年5月末)は、耳が聞こえない、聞こえづらいろう者が、物事を考え会話をする時に使う手話を言語として認知した。そのうえで、市民の手話への理解の促進を図ることにより、地域における手話の使用しやすい環境を構築することで、手話を使用する市民が、自立した日常生活を営み、地域における社会参加をし、安心して暮らすことができる地域社会の実現を目指して2013年12月19日に手話言語条例を制定し、2014年4月1日より施行した。 手話条例の制定は、これまでの長きに渡る手話サークル、石狩聴力障害者協会、手話通訳者の方々による手話の普及活動や通訳支援の取組みの成果である。 なお、全国的には、鳥取県で「手話言語条例」を2013年10月に可決され施行、北海道内では新得町で町村レベルでは全国初の「手話に関する基本条例」が2014年3月5日可決され、2014年4月1日より、施行された。また、三重県松阪市でも2014年3月24日、東海地域では初めて、手話を言語と認め、聴覚障害者が暮らしやすい環境の創設を目指す「手と手でハートをつなぐ手話条例」を可決、2014年4月1日に施行している。 石狩市(いしかりし)は、北海道中央西部、石狩振興局管内にある市。札幌市の北に隣接している。 そこが知りたい石狩市 資料編➡拡大版
言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。 手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、耳が聞こえない、聞こえづらいろう者が、物事を考え会話をする時に使うものとして育まれてきた。 障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、言語として位置付けられた手話を、市民が使いやすい環境にしていくことは、市の責務であり、今こそ、その取組を進めていくことが必要である。 ここに、手話を言語として認知し、市民が手話の理解の広がりを実感できる石狩市を目指し、この条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、市民の手話への理解の促進を図ることにより、地域における手話の使いやすい環境を構築することで、手話を使用する市民が、手話により、自立した日常生活を営み、社会参加をし、及び心豊かに暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とする。 (手話により意思を伝え合う権利の尊重) 第2条 市民は、手話により相互に意思を伝え合う権利を有し、その権利は尊重されなければならない。 (市の責務) 第3条 市は、市民の手話に対する理解を広げ、手話を使いやすい環境にするための施策を推進するものとする。 (市民の役割) 第4条 市民は、手話の理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。 (施策の推進方針の策定) 第5条 市は、施策を推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)を策定するものとする。 2 施策の推進方針は、市が別に定める障害者に関する計画との調和が保たれたものでなければならない。 3 施策の推進方針においては、次の事項を定めるものとする。 (1) 手話の普及啓発に関する事項 (2) 手話による情報取得及び手話の使いやすい環境づくりに関する事項 (3) 手話による意思疎通支援の拡充に関する事項 (4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項 4 市は、施策の推進方針を定め、又はこれを変更する時は、あらかじめ、手話を使用する市民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。 5 施策の推進方針は、これを公表するものとする。 (財政上の措置) 第6条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう 努めるものとする。 (委任) 第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 (施行期日) 1 この条例は、平成26年4月1日から施行する。 (検討) 2 市は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて、必要な見直しを行うものとする。
<聴覚障害>バンダナで周知 耳、手話マークで 支援「できます」も表示 石狩市配布(2018年12月13日配信『毎日新聞』−「北海道版」) 「耳が聞こえません」「手話ができます」。石狩市は災害時の障害者支援の一環として、周囲に障害があることを知らせるバンダナの無料配布を進めている。道ろうあ連盟(札幌市中央区)によると、道内では初の試み。石狩市の担当者は「災害時に役立つよう広めていきたい」と話す。 バンダナは90センチ四方で300枚作製。支援の必要性を分かりやすく伝える「耳マーク」や「手話マーク」などのイラストもデザインされている。災害時は背中にかけ、周囲に支援の必要性を認識してもらう。また手話のできる人に身につけてもらい、聴覚障害者が支援を求めることも想定している。同様の取り組みは東京都稲城市や埼玉県浦和市などでも実施されているという。 授業科目に「手話語」 北海道の高校、「手話は言語」(2017年5月22日配信『朝日新聞』) 講師の杉本五郎・石狩聴力障害者協会長(右)から手話を学ぶ生徒=北海道石狩市の石狩翔陽高校 北海道石狩市の道立石狩翔陽高校(藤井勝弘校長)で、今年度から「手話語」の授業が始まった。手話を「言語」と位置づけ、その理論を学んだり、実際にやってみたりする全国でも珍しい試みだ。高校や市は、将来の「手話言語法」制定を見据えている。 広がる手話=三沢邦彦(2017年5月15日配信『毎日新聞』−「北海道版」) 石狩市は全国の市町村として初めて制定した「手話基本条例」の趣旨に沿い、手話を「言語」として広める試みを進めている。 手話を法律で「言語」と明記したのは2011年成立の改正障害者基本法だ。石狩市は13年の条例制定後、市民向け講義を開いたり、救急隊員が講習を受講したりしており、聴覚障害者が事故にあった現場で役立ったこともある。10月には全国手話言語市区長会(会長・田岡克介市長)による全国初の手話劇祭も市内で開催が予定され、市は「手話の文化的な理解や魅力を発信したい」と意気込む。 4月には石狩翔陽高で「手話語」の授業も始まった。手話そのものだけでなく「手話を使う人」にも関心を持ってもらうことで、「言語」として深い理解を促すのが狙いだ。 市の条例では、聴覚障害者が生活しやすい環境整備を掲げた。担当教諭は「聞こえない人と生活する中で、自分でどのように行動すべきか。その判断ができる人になってほしい」と期待する。 若い世代が「聞こえない世界」を学び、どのように意識が変化するのか。再び、教室を訪ねてみたい。 手話を言語として科目に 石狩翔陽高で授業開始(2017年4月21日配信『北海道新聞』) 生徒の前で手話を使いながら指導する佐藤英治さん(左) 北海道石狩市の石狩翔陽高(藤井勝弘校長、940人)は20日、手話を日本語などと同等の言語として学ぶ科目「手話語」の授業を始めた。2年生を対象とした選択科目で、ろうあ者を講師に招き、基礎的な手話やろうあ者の考え方などを学ぶ。道教委によると、全国でも先駆的な取り組みという。 石狩市は2014年、全国の市町村で初めて手話条例を施行した。条例は手話を言語として位置付けている。同校は「手話をコミュニケーションの手段としてだけではなく、語学の一つとして生徒に理解してもらおう」と取り入れた。本年度は生徒16人が選択した。 |
|