松山市議会6月議会第2回定例会 2016年6月22日(木) 聴覚障害に関する質問

 

質問全文と答弁全文

 

7月6日に、デフリンピックの懸垂幕が市役所のかかる

 

7月11日17:30に、2人の市長表敬訪問決まる

 

 2017年6月22日(木)の松山市議会6月議会第2回定例会で、太田幸伸(ゆきのぶ)議員が、聴覚障がいに関する以下の質問を行い、市長や市当局から前向きな答弁を引き出しました。

 

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 このような聴覚障害に関する市長や当局の答弁(回答)はこれまでになかったことで、東京オリンピック・パラリンピック、愛媛国体の開催、障害者差別解消法の施行、各自治体の手話言語条例の制定、手話言語法の制定に対する全地方議会での意見書採択等の諸条件に加えて、太田議員の手話等聴覚障がいに対する継続的な取り組みの成果と言えます。

太田氏の聴覚障がいに関する質問項目は、以下の通り。
(1)本市在住のデフリンピック出場者の顕彰について
(2)全国手話言語市区長会の入会及び手話言語条例制定について
(3)手話の普及の取り組みにっいて
(4)新生児聴覚スクリーニング検査について

 太田氏は冒頭、「『障害は不便です。でも不幸ではありません』とのヘレン・ケラーの言葉を引用し、質問に入りました。

(1)松山市在住のデフリンピック出場者の顕彰について
 太田氏は、デフリンピックが7月にトルコで開かれ、愛媛からやり投げの佐藤将光さん(松山聾学校教諭)と短距離走の谷岡真帆さん(松山市城西中3年)の2人が出場することを紹介したうえで、松山市においても垂れ幕や広報誌での紹介や支援を積極的行うことを提案しました。
 これに対して、市当局は、今後積極的に紹介や支援を行っていきたと答弁しました。

 

(2)全国手話言語市区長会の入会及び手話言語条例制定について
 太田氏は、手話を広める知事の会全国手話言語市区長会を紹介し、中村愛媛県知事も知事の会に参加しているが、市区長会に野志市長も参加すべきでないかと質しました。また、手話言語条例が、13県75市9町の計97自治体で制定されていることを指摘、松山市での条例制定について質問しました。
 これに対して、市当局は、趣旨に賛同し市区長会への野志市町の参加手続きを取っていること、手話言語条例の制定につても検討していると答弁しました。

(3)手話の普及の取り組みにっいて
 太田氏は、市長の入学式や卒業式でのビデオメッセージに手話通訳や字幕が付いていないので聴覚に障害のある生徒等がリアルタイムに理解できない問題点を挙げ、手話や字幕をつけるよう質しました。
 これに対して野志市長は、手話通訳や字幕の大切さは十分理解している。社協等のイベントの挨拶等では、自分でも手話つけていると述べたうえで、今後前向きに検討すると答弁しました。

(4)新生児聴覚スクリーニング検査について
 太田氏は、聴覚障害は早期に適切な援助を開始することによって、コミュニケーションの形成や言語発達の面で大きな効果が得られるので、早期発見が重要であると指摘したうえで、費用がすべて自己負担となるため、検査を受けられない人たちもいる。自治体によっては、検査費用の一部を補助金で負担しているところもある。松山市でも検討すべきでないかと質しました。
 これに対して市当局は、検討すると答弁しました。

 

 

 

 

 

太田議員の質問全文

 

「耳が聞こえないことは不便である。しかし、不幸ではない。」 これは有名な偉人ヘレン・ケラーの言葉です。この言葉通り、聴覚障がいは情報の障がいとも言われ、私たち耳が聞こえるものには当たり前のことでも、大変ご苦労されながら、日々明るく頑張っておられます。昨年は障害者差別解消法が施行され、また、本年は全国障害者スポーツ大会が開催されます。これを機に、本市の障がい者の皆さまの取り巻く環境が、少しでも改善されることを願い、以下質問いたします。

 

はじめに、聴覚障がいに関することについてお伺いいたします。

えひめ国体・えひめ大会の開催が迫ってまいりましたが、毎日準備に奔走されている関係各位に心から感謝を申し上げます。私も大成功に向け自分にできる精一杯の努力をしてまいる決意です。先月28日には、全国障がい者スポーツ大会「えひめ大会」のリハーサル大会が県内各地で開催され、私も情報コミュニケーションボランティアとして、砥部町で開催されたグランドソフトボールの大会に参加させていただきました。白熱した試合に興奮し大変熱くなりました。本番の更なる素晴らしい戦いを期待しています。

障害者スポーツの普及促進は、障害のない人の障害者への理解を促進し、障がい者と障がいのない人との交流を推進します。そのためにも、障がい者スポーツの更なる理解を広げていかなければいけません。

障がい者スポーツの淵源は、イギリスにおいて戦争で障がいを負った軍人たちのリハビリテーションの補助的な方法としてスポーツを取り入れたことが始まりだそうですが、今や障がい者スポーツは、身体面や精神面のリハビリの枠を超え、本格的なアスリートによるスポーツとして発展しています。4年に1度のオリンピックと共に開催されるパラリンピックをはじめ、大きな大会も国内外で数々開催されていますが、その中で「デフリンピック」というスポーツ大会をご存知でしょうか。

身体障害者のオリンピックである「パラリンピック」に対して、「デフリンピック」は、聴覚障がい者のオリンピックです。4年に一度行われる国際スポーツ大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されています。夏季大会は1924年にフランスで、冬季大は1949年にオーストリアで初めて開催されました。現在104の国が加盟している、国際ろう者スポーツ委員会が運営しています。

 こうした、歴史も長く、大きな大会にも関わらず、日本ではまだまだ認知度が非常に低い状況であります。パラリンピックの認知度98.2%に比べデフリンピックは11.2%しかありません。

こうした認知度の低さにより、勤務先の理解が得られず、遠征に行くときの休暇がとれないなどの課題もあるそうです。そうした中、国会でも障がい者スポーツ・パラリンピック議員連盟がデフレンピックワーキングチームを立ち上げ、デフリンピックへの支援の動きが出てきました。

次のデフリンピックは、来月7月18日〜30日の期間、トルコ共和国のサムソンで73か国地域が参加して開催されます。日本の代表選手団は、選手・役員あわせて177名が参加します。

その中に、本市在住の2名の日本代表選手がいらっしゃいます。愛媛県聴覚障がい者所属の佐藤將光(さとうまさみつ)さんが陸上競技のやり投げで、同じく谷岡真帆(たにおかまほ)さんが100m走と走り幅跳びで出場します。本市在住の2名のアスリートが、4年に1度の世界の舞台に日本代表選手として参加されることに、松山市民の一人として大変うれしく誇りに思います。ご活躍を心から祈っています。

 

そこで1点目の質問ですが、本市の宝である2名のデフリンピックの日本代表選手を、もっと市民に応援していただけるよう、懸垂幕や広報などの活用をはじめ、様々な形で本市が顕彰すべきと思いますが、ご所見をお聞かせください。

 

2013年に初めて手話に関する条例が、鳥取県や北海道石狩市で制定され以降、全国で手話に関する条例制定の動き活発になり、2017年4月20日現在、13県、75市、9町合計97の自治体で手話言語条例が制定されています。

また、国に「手話言語法」の制定を求める意見書も、本市を含め、日本国内の全1,788地方議会で採択されました。都道府県では、鳥取県知事が代表発起人となり、「手話を広める知事の会」が設立され、2017年6月16日現在、42都道府県過去が入会し、我が愛媛県知事も入会されています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、聴覚障がい者に対する情報保障の環境整備が大きな課題となる中、かつてないほど全国で手話言語法制定への機運が高まっています。

昨年6月、国に「手話言語法」「情報・コミュニケーション法」制定を求め、全国に手話に関する条例の制定を拡大するための取り組みを進めるとともに、各自治体における手話等に関する施策展開の情報交換等を行うために、「全国手話言語市区長会」が設立されました。2017年6月13日現在304の自治体が入会し、本県では、宇和島市、 幡浜市、西条市、伊予市、東温市の市長が入会しています。本市の聴覚障がいの皆さまの、社会環境、生活環境の向上のため、何より聴覚障がいがある皆様の笑顔のために、野志市長の全国手話言語市区長会への参加を望むものであります。

 

答弁 

河合洋二総合政策部長

4年に一度開催される「デフリンピック」は、聴覚障害のある方を対象とした、世界規模のスポーツ大会で、来月、トルコで開催される大会には、日本から、陸上、バトミントン、テニスなど、11競技への参加が予定されており、本市からも2名の代表選手が出場することとなっています。

「デフリンピック」に出場する方々への顕彰についてですが、これまでも、スポーツ大会で顕著な成績を挙げられた場合には、「松山スポーツ笑顔大賞」や「スポーツ優秀選手賞」など成績に応じた表彰も行っていますので、今大会でのお二人の活躍を大いに期待しております。

加えて「デフリンピック」は聴覚に障がいのある方の「オリンピック」と言われる大会であり、懸垂幕の提出など、様々な機会を捉え、積極的な情報発信に取り組むことで、障がい者スポーツへの理解や見識を更に、深めていきたいと考えていきます。

 以上です。

 

2点目の質問ですが、全国手話言語市区長会の入会について市長のお考え、また、手話言語条例制定に対する市長の現在のお考えをお聞かせください

 

昨年、3月定例会の手話の理解・普及の取り組みについての一般質問の中で、市職員や防災士等への手話の普及にについて提案させていただき、以後、本市職員への手話の研修、また本年には、防災士への手話研修を実施していただいたとお聞きしています。少しでも努力していただいていることに心から感謝申し上げます。

また、先日、聴覚障がいのある子どもの保護者の皆様よりご相談を受けました。小中学校の入学式や卒業式で、市長のメッセージが上映されるが、字幕や手話が無いため、内容が全く分からず大変悲しい思いをした児童生徒が多くいたそうです。保護者数名に聞いたところ、児童生徒にとっては市の一番偉い人のお話に興味があるとのこと、また、友人とリアルタイムに話題を共有できないことに、寂しい思いをしたと言っていたそうです。すべての児童生徒たちが、笑顔でいられるように是非配慮ある対応をお願いしたいとのことでした。

聴覚障がいがある子供には、字幕とともに手話をつけることがより理解しやすくなるとのことです。昨年施行された、障害者差別解消法の合理的配慮の趣旨にのっとり、せっかくの市長の子どもたちへの思いが、全ての子どもたちに確実に伝わるためにも、入学式卒業式のメッセージビデオ等に手話つけてはどうでしょうか。

 

答弁

西市裕二社会福祉担当部長

「全国手話言語市区長会」への入会については、平成29年5月30日付けで案内があり、同会趣旨には大いに賛同することから、すでに手続きを行っています。

また、他の自治体ですでに制定されている手話言語条例では、おおむね個性と人格を互いに尊重することを基本理念とし、県、市町村、住民、事業者がそれぞれの立場で手話の普及や環境整備に努めることを定めており、手話言語条例の制定についは、国の手話言語法制定の動向や愛媛県ならびに他市の状況を見ながら、調査研究をしていきたいと考えています。

以上です。

 

3点目の質問として、実施された手話の研修の具体的な内容や参加者の反応等の分析について、また、メッセージビデオ等への手話の設置など、今後の手話の普及の取り組みについてのご所見をお聞かせください。

 

答弁

野志市長

平成23年に改正された「障害者基本法」で、手話は「言語」と定義され、その重要性は認識しています。

私自身、これまで福祉関係者が一堂に集まり例年開催している松山市福祉大会で、少しでも多くの方に私の思いを伝えたいと手話を交えたあいさつをさせていただき、意思疎通としての手話の大切さを実感しています。

そこで、平成28年度の市職員への手話研修では、聴覚障がい者とのコミュニケーション能力を高めるため、手話通訳者を招いて、実際に手話を使った実践練習などを5回開催し、延べ183人が受講しました。

研修を受けた職員へのアンケート調査では、もう一度、研修を受けたいとの積極的な意見もあり、手話に関心をもった職員が多くいることが分かりました。

また、平成29年2月に「松山市自主防災組織ネットワーク会議」主催で開催された防災士の手話研修では、聴覚障がい者への理解を深めるために、184人を対象に、災害時の聴覚障がい者の状況などを、手話通訳者が講義しました。

この研修をきっかけに、地域での手話研修も予定されており、手話への関心がますます高まり、広がりも期待されます。

次に、市長のメッセージビデオに手話を取り入れることは、聴覚に障がいがある方に私の思いをさらに理解していただくため、字幕や手話通訳を取り入れることを検討します。

最後に、今後の手話の普及に向けての取組は、本市では、現在、手話通訳者の養成や派遣、福祉総合窓口への配置など手話の普及や理解を積極的に進めています。

平成13年から手話のボランティア養成講座を実施し、平成28年度までにおよそ12OO人の方が受講しています。

引きは続き、市職員などへの手話研修を実施するとともに、今年、平成29年に開催される全国障害者スポーツ大会に向けても、主催の愛媛県と連携し、手話や要約筆記のボランティアを養成するなど、今後も、手話を普及し、理解を深めるため積極的に取り組んでいきたいと考えています。

以上です。

 

新生児の聴覚障がいの頻度は1,000人に1人から2人と言われておりますが、聴覚障がいは早期に適切な援助を開始することによって、コミュニケーションの形成や言語発達の面で大きな効果が得られるとのことです。そのためにも早期発見が重要です。障がいが気づかれない場合、耳からの情報に制約があるため、コミュニケーションに支障を来し、言語の発達がおくれ、情緒や社会性の発達に影響があると言われております。重度の聴覚障がいの場合は、1歳ぐらいに気づかれますが、中程度の場合は言葉のおくれによって2歳以降に発見され、支援開始が3歳以降になることもあるそうです。聴覚障がいを早期に発見し、適切な支援を行えば、コミュニケーションや言語の発達等、聴覚障がいの影響を最小限に抑えることができるとのことです。そのためにも新生児の聴覚スクリーニング検査が重要であると指摘されております。検査を受けた子どもは、早期療育に至る確率が20倍も高くなり、コミュニケーション能力が3倍以上上昇するとの研究結果もあります。岡山市では、新生児聴覚スクリーニングで重度の難聴が発見され、療育施設で早期療育を受けた6歳のお子さんが、健聴児と同じ位の言語力を獲得できたそうです。国では検査に対する公費補助を一般財源化しており、昨年3月には厚労省が公費助成の導入など受診を促す対応を、各自治体に求める通知を出して、地方単位での取り組みを推奨しております。1回あたり5000円程度かかる検査費用がネックとなって、検査を受けない保護者も少なくないそうです。公的な支援がある地域とない地域では、スクリーニング検査の実施率においても大きな差が出ております。岡山県では、全市町村が、独自事業として公費助成をしており、県内の聴覚スクリーニング検査の実施率はほぼ100%に近くなったとのことです。市民の障がいの克服の機会を保障するためにも、新生児聴覚スクリーニング検査を本市としても強く推進していくべきと考えます。

 

4点目の質問として、本市の新生児聴覚スクリーニング検査の受診状況、また検査の受診に対して公費助成をすべきと考えますが、御所見をお聞かせください。

 

答弁

松原ゆき保健福祉部長

新生児聴覚スクリーニング検査は、聴覚障がいの早期発見・早期支援に有効な方法のーつであり、母子健康手帳などを活用して出産前から、検査の必要性の周知に努めてきたところです。

こうした中、平成28年3月の国の改正通知に伴い、県内20市町、愛媛県、愛媛県医師会等で構成する「愛媛県母子保健健康診査連絡協議会」で分娩取扱医療機関を対象に、検査の実施状況等を調査した結果、本市でも検査をしていない場合や希望者のみに検査をしている場合もあり、全ての新生児が受診できている状況ではありませんでした。

また、検査方法や費用も一律ではないため、今後は、連絡協議会で県内統一の検査体制と費用助成及び精密検査が必要になった場合の母子への支援のあり方について、具体的な検討を進めていくことにしており、本市では、連絡協議会での協議や他の中核市等の状況も踏まえ、財政支援のあり方について検討していきたいと考えています。

以上です。

 

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