静岡県手話言語条例

 

手話普及へ動画や講座 県民に啓発推進

 

静岡県手話言語施策推進協議会の開催

 

拍手の手話をして、県手話言語条例の成立を喜ぶ傍聴者=16日午後、県議会議場

 

聴覚障害者ら「歴史的な日」

 

 

 2018年2月の静岡県議会定例会に、議員提案で上程されていた静岡県手話言語条例(案)が2018年3月16日の2月定例会最終本会議において全会一致で可決・成立した。施行は、3月28日。条例制定は都道府県で18番目。静岡県議会では14件目の議員提案政策条例になった。

 

 閉会後、記者会見した杉山盛雄議長は「これから条例をしっかりと運用し、いかに活用していくかが大事だ」と語った。

 

県内の聴覚障害者団体や手話通訳の関係者らが傍聴席から見守り、「手話を言語」と認める共生社会の実現につながる大きな前進と歓迎した。

 

 条例は、手話を独自の体系の言語と定義し、理解促進と環境整備に向けた取り組みを県、県民、事業者の「責務」または「役割」と明文化した。

 

 聴覚障害者や手話通訳者は傍聴席で可決を見届けると、耳元で両手をひらひらさせる拍手の手話で喜びを表した。傍聴後の記者会見で、静岡盲ろう者友の会の斉藤正比己会長は「手話の存在を示す歴史的な日になった。人生に大きな勇気と希望を与えてくれる」と強調した。

 

 条例案は、2018年1月18日(木曜日)から2月9日(金曜日)までパブリックコメント(意見募集)が行われた。

 

 静岡県では、同様の条例は富士見市浜松市菊川市掛川市御前崎市がすでに制定済みである。なお、府県としては19例目。全国の自治体としては139例目

 

 

 静岡県議会は2017年10月12日の9月定例会最終本会議で、「手話を独自の体系を持つ言語と明確に位置付け、手話を学ぶ機会の充実などを通じ、ろう者とろう者以外の県民が共生する社会の実現」を目指して、手話言語条例の制定に向けた検討委員会の設置を決めた。

 

 県議会では最大会派の自民改革会議が聴覚障害者団体などの意見を聞くなど2016年から勉強会を重ねてきた。検討委員会は各会派から委員が参加している。

 

 手話は2006年の国連総会で採択された障害者権利条約で言語と定義され、国内では2011年の障害者基本法改正で言語に含むと明記されたが、社会的認知が進んでいない。

 

 条例案はこうした現状認識を踏まえた上で、手話を言語として明確に位置付けるとともに普及を促進し、「ろう者を含めた誰もが地域の一員として生活できる社会の実現」を掲げている。

 

 県聴覚障害者協会の小倉健太郎事務局長は条例制定に向けた県議会の対応を歓迎し「ろう者の活躍の場が増えてほしい」と期待している。

 

 静岡県の人口は、3,756,865人(2017年1月1日現在)

 

  静岡県の聴覚・平衡障害者は、9,020人(2010年3月31日現在)

 

 

静岡県手話言語条例

 

手話は、ろう者だけではなくろう者以外の者と意思疎通を図るための大切なことばです。

我が国の手話はろう者である子どもの集団の中から萌芽的な形態で表れ、明治時代に始まったろう者への教育は手話で行われてきました。しかし、明治13年ミラノで開催された国際会議は、ろう者のための教育プログラムから手話の排除を決議しました。これを受け、長年にわたり、手話は言語として認められてきませんでした。

平成18年に国際連合総会が採択した障害者の権利条約において手話が言語であることが定義され、我が国は平成26年にこれを批准しました。また、平成22年カナダのバンクーバーで開催された国際聴覚障害児教育会議では、ミラノ会議の決議を過ちと認め撤回しました。これらの手話に対する国際的な認知の広がりにより、手話を憲法や法律に言語として位置付ける国が増えつつあります。

国内でも平成23年の障害者基本法の改正において、言語に手話を含むことが明記されましたが、その社会的認知は進んでいません。

静岡県では、平成11年に全国で初めてユニバーサルデザインの理念を導入し、障がいのある人も含めた全ての人がお互いを尊重し合い、差別されることなく生涯にわたり自分らしくともに歩み続けられる社会の実現に取り組んでいます。

 また、障がいの有無にかかわらず相互に協力し、自然に生活できる社会の実現にも努めており、手話により障がいを超えた意思疎通ができることを目指しているところです。

このため、これまでの歴史的背景を踏まえ、手話を言語として明確に位置付けるとともに、手話の普及を促進することにより、ろう者を含む誰もが地域の一員として生活できる社会の実現を図るため、「静岡県手話言語条例案」を取りまとめました。

 

 

静岡県手話言語条例

 

言語は意思を伝え合う、思考する、感情を表すなどの役割を担う。手話は音声によらない目で見る視覚言語であり、ろう者が大切に守り続け、ろう者だけではなくろう者以外の者と意思疎通を図るための大切なことばである。

我が国の手話はろう者である子どもの集団の中から萌芽的な形態で表れ、明治時代に始まったろう者への教育は手話で行われてきた。しかし、明治13年ミラノで開催された国際会議は、ろう者のための教育プログラムから手話の排除を決議した。これを受け、長年にわたり、手話は言語として認められてこなかった。

平成18年に国際連合総会が採択した障害者の権利条約において手話が言語であることが定義され、我が国は平成 26 年にこれを批准した。また、平成22年カナダのバンクーバーで開催された国際聴覚障害児教育会議では、ミラノ会議の決議を過ちと認め撤回した。これらの手話に対する国際的な認知の広がりにより、手話を憲法や法律に言語として位置付ける国が増えつつある。

国内でも平成23年の障害者基本法の改正において、言語に手話を含むことが明記されたが、その社会的認知は進んでいない。

静岡県では、平成11年に全国で初めてユニバーサルデザインの理念を導入し、障がいのある人も含めた全ての人がお互いを尊重し合い、差別されることなく生涯にわたり自分らしくともに歩み続けられる社会の実現に取り組んでいる。

また、障がいの有無にかかわらず相互に協力し、自然に生活できる社会の実現にも努めており、手話により障がいを超えた意思疎通ができることを目指しているところである。

このため、これまでの歴史的背景を踏まえ、手話を言語として明確に位置付けるとともに、手話の普及を促進することにより、ろう者を含む誰もが地域の一員として生活できる社会の実現を図るため、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及に関する基本理念を定め、県、市町、県民及び事業者の責務及び役割を明らかにするとともに、手話の普及に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な基本的事項を定め、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会の実現を図ることを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) ろう者 聴覚に障がいがある者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。

(2) 手話通訳者 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第78条第1項の特に専門性の高い意思疎通支援を行う者のうち、手話通訳を行う者をいう。

(3) 手話通訳者等 手話通訳者その他の手話に関わる者をいう。

(4) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話の普及は、手話が独自の体系を持つ言語であることを理解するとともに、ろう者が手話により意思疎通を行う権利を尊重して行われなければならない。

2 手話の普及は、ろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重しながら共生することを基本として、県民の手話への理解の促進及び手話を使いやすい環境の整備により図られなければならない。

 

(県の責務)

第4条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話を使いやすい環境を整備するに当たり必要かつ合理的な配慮を行うものとする。

2 県は、ろう者及び手話通訳者等と連携し、基本理念に対する県民の理解の促進に努めるものとする。

 

(市町との連携及び協力)

第5条 県は、手話の普及に当たっては、市町との連携及び協力を図るものとする。

2 県は、手話の普及に当たっては、市町に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

 

(県民等の役割)

第6条 県民は、基本理念に対する理解を深めるよう努めるとともに、ろう者を含む誰もが地域の一員として生活できる社会の実現に努めるものとする。

2 ろう者は、県の手話に関する施策に協力し、基本理念に係る県民の理解の促進及び手話の普及の促進に協力するよう努めるものとする。

3 手話通訳者等は、手話に関する技術の向上及び支援並びに手話の普及に努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第7条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者に対してサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときは、手話の使用について配慮するよう努めるものとする。

 

(計画の策定及び推進)

第8条 県は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項に規定する都道府県障害者計画において、言語である手話への理解の促進、手話の普及及び手話を使いやすい環境の整備に関する施策を定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 県は、手話の普及に関する施策を推進するときは、ろう者及び手話通訳者等の意見を聴くため、これらの者との協議の場を設けるものとする。

3 知事は、第1項に規定する施策の実施状況を、毎年度、議会に報告するとともに、公表するものとする。

 

(手話を学ぶ機会の確保等)

第9条 県は、市町その他の関係機関、ろう者及び手話通訳者等と連携して、県民が手話を学ぶ機会の確保等に努めるものとする。

2 県は、手話に関する研修の実施等により、その職員が基本理念を理解し、手話を学習するための取組を推進するものとする。

 

(手話を用いた情報発信等)

第10条 県は、ろう者が県政に関する情報を発信及び受信できるよう、情報通信技術の活用に配慮しつつ、手話を用いた情報発信及び受信に努めるものとする。 

2 県は、県が主催する講演会、文化芸術活動等において手話通訳者を配置するよう努めるものとする。

3 県は、手話通訳者の派遣及びろう者からの相談に応じる拠点の支援を行うことにより、ろう者が手話を使用し、及び手話による情報を取得できる環境の整備をするよう努めるものとする。

 

(手話通訳者の養成と確保)

第11条 県は、市町その他の関係機関と協力して、手話通訳者及びその指導者を確保するとともに、手話通訳者及びその指導者の手話技術の向上を図り、ろう者が意思疎通に係る支援を受けられる体制を確保するよう努めるものとする。

 

(学校における手話の普及)

第12条 聴覚に障がいのある幼児、児童又は生徒(以下「ろう児等」という。)が通園し、又は通学する学校の設置者は、ろう児等がその年齢や特性に応じ手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話に関する知識及び技能を向上させるため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 ろう児等が通学する学校の設置者は、基本理念に対する理解を深めるため、ろう児等及びその保護者に対する学習の機会の提供、教育に関する相談及び支援に努めるものとする。

3 学校の設置者は、障がいの有無にかかわらず、児童及び生徒がお互いを理解することができるよう、手話について児童及び生徒への啓発に努めるものとする。

 

(事業者への支援)

第13条 県は、ろう者が利用しやすいサービスの提供及びろう者が働きやすい環境の整備等を行う事業者に対し、手話に関する必要な支援を行うよう努めるものとする。

 

(手話に関する調査研究)

第14条 県は、ろう者及び手話通訳者等が手話の発展に資するために行う手話に関する調査研究及びその成果の普及に協力するものとする。

 

(財政上の措置)

第15条 県は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

附 則

 

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

2010(平成22)年3月31日現在、静岡県内で身体障害者手帳所持者下記のとおり。

 

 

 

手話普及へ動画や講座 静岡県、県民に啓発推進(2018年9月7日配信『静岡新聞』)

 

 静岡県は6日までに、3月に施行した県手話言語条例に基づき、手話学習動画の作成や企業対象の啓発講座の開催を通じて県民への手話普及の取り組みを推進する方針を固めた。9月補正予算案に事業費500万円を計上する。

 「あいさつは手話で」を目標に、県民が手話に触れたり、学んだりできる機会の増加を図る。学習動画は、日常生活でよく使うあいさつや自己紹介などの手話を学べる内容にする。動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信するほか、民間の手話教室や学校の授業で活用してもらうことを想定している。

 企業向け講座では、聴覚障害者への適切な対応や手話での簡単なコミュニケーションを紹介する。交通機関やスーパーマーケットなどの企業を中心に啓発し、ろう者が暮らしやすい社会環境を整える。

 条例は、手話を独自の体系の言語と定義し、理解促進と環境整備に向けた取り組みを県、県民、事業者の責務または役割として明文化した。県庁内では健康福祉部の全職員約千人が8月までに手話講座を受講した。庁内LANを活用した研修も始め、全職員が閲覧できるインターネット上のページで毎月、手話を学べる画像を更新している。

 

手話言語推進へ協議会 静岡県庁で初会合(2018年7月10日配信『静岡新聞』)

 

 3月に施行された県手話言語条例に基づき、県手話言語施策推進協議会(会長・藤原基時県聴覚障害者協会長)が9日、発足した。県内の聴覚障害者や手話通訳者、教育関係者ら14人で構成する。「手話は言語」と認識する共生社会の実現に向けた提言を行い、県の施策に反映させる。

 条例は、手話が使いやすい環境整備は県の責務だとし、県が手話普及の施策を推進する際は、聴覚障害者らとの協議の場を設けるよう定めた。県庁で9日開かれた初会合で、藤原会長は「いつでも、どこでも、誰とでも、手話で通じ合える静岡県にしたい」とあいさつし、環境整備に意欲を見せた。

 協議会委員からは、条例の基本理念を県民に伝えるため、駅やスーパーで啓発活動をするよう求める声が上がった。学校現場で手話を学ぶ機会の創出や、災害時の情報伝達手段として手話を普及させることについても要望があった。

 県によると、県内で聴覚・平衡機能に障害がある人は9508人で、うち1800人が手話を必要としていると推計される。県は健康福祉部の全職員を対象にした手話講座を継続するとともに、2021年度までに県登録の手話通訳者を現状から46人増の230人にする目標を立てている。

 

静岡県手話言語施策推進協議会の開催

 

手話普及に向けた施策の検討を開始します!

(要旨)

本年3月に、議員政策提案条例として「静岡県手話言語条例」(以下「条例」という。)が制定、施行されました。

県では、条例を踏まえ、手話の普及を推進するに当たり、ろう者や手話通訳者等の意見を伺うための「静岡県手話言語施策推進協議会」を設置し、検討を進めていきます。

 

(静岡県手話言語施策推進協議会)

静岡県手話言語施策推進協議会は、条例第8条第2項の規定に基づき、県とろう者や手話通訳者等が協議する場として、設置しました。ろう者や手話通訳者、教育委員会、民間事業者等14名の委員により構成され、手話の普及に関する施策を推進するために、必要な事項について、協議を行います。

 

(概要)

1 日 時 平成30年7月9日(月)午前9時30分から午前1130分まで

2 場 所 静岡県庁別館8階第一会議室C

3 出席者 静岡県手話言語施策推進協議会委員

県担当部局職員

 

4 議 題

・聴覚障害者の状況について

・静岡県の取組状況について

・今後の手話普及施策の推進について 他

 

5 参 考

・手話は、平成18年に障害者権利条約で言語であることが定義され、国内では、平成23年の障害者基本法の改正において、手話が言語であることを定義しまし

たが、社会的認知は進んでいないのが、現状です。

・このため、全国の自治体※では、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及に関する基本理念等を定めた手話言語条例が制定されています。

・県内でも、富士宮市、浜松市、掛川市、菊川市、御前崎市及び焼津市の6市が条例を制定しています。

・本県では、県議会が、平成2910月に、手話言語条例案検討委員会を設置し、議員提案政策条例として、平成30年3月に制定、施行されました。

提供日 201873

担 当  健康福祉部 障害者支援局障害福祉課

連絡先 身体障害福祉班 TEL 054-221-3319

 

 

 

 

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