津山市言語としての手話の理解の促進及び手話等の普及に関する条例

 

条例成立を喜ぶ谷口圭三市長と関係者

 

新型コロナウイルスの流行に配慮し、傍聴席には関係団体の責任者らだけが集まり「採択」を静かに喜んだ

 

 岡山県津山市議会は2020年3月17日の定例会で、手話を独立した言語と認め、ろう者が手話を使って自由に暮らせる社会の実現を目指す、「津山市言語としての手話の理解の促進及び手話等の普及に関する条例」(案)を全会一致で可決した。

 

 岡山の県北では初めてで、地元の当事者は「ろう者への理解を広げるきっかけにしたい」と意気込んでいる。

 

各地で制定が進む「手話言語条例」は二つに大別される。県内の自治体の多くは条例名を「手話言語条例」とするが、岡山市と津山市は正式名で手話「等」とうたう。

 

 両市の条例は、手話だけでなく、点字や要約筆記など意思疎通手段の全てを対象にしているのが、「手話言語条例」との違いで、「手話だけを特別扱いすると不公平になる」という考えからだ。

 

 より広がりがある扱いのように見えるが、ろう者の受け止めは違ったという。津山市の条例案作成に向けた行政とろう者らの話し合いでは当初、「すれ違い」が起きた。「よりよい福祉サービスを広く公平に届けるため、全ての意思疎通手段を対象に」という市側に、ろう者たちは「求めているのは手話を言語として認めることで、単なる福祉サービスではない」と反発した。

 

 こうしたろう者の思いの根底には、母語である手話が長くさえ使用を禁じられて、人間の尊厳(人権)が侵害されてきた苦難の歴史があり、手話を言語として法律で認めさせることでは、差別されてきたろう者の人権回復を求める思いがあったのである。

 

 議論を重ね、最終的に津山市の条例名に「等」は残ったが、「手話の理解促進」を前面に打ち出す内容になった。市の担当者は「最初は困惑したが、話し合い、互いに理解しあえた。勉強になった」と話す。

 

続いて3月19日には美作市、3月25日は美咲町でも成立し、すでに成立・施行されている高梁市玉野市岡山市瀬戸内笠岡市井原市里庄町浅口市でのそれとあわせて、条例を設けた自治体は岡山県内市町村の4割にあたる11市町に広がった。

 

 これまで自治体の多くは条例名を「手話言語条例」とするが、津山市は岡山市と同様に、「手話だけを特別扱いすると不公平になる」と視点から、正式名で手話「等」とうたい、手話だけでなく、点字や要約筆記など意思疎通手段の全てを対象にしている。

 

また、理念だけでなく、実効性を担保しようとの狙いから条例は、施策の実施状況について、学識経験者らでつくる津山市障害者施策推進審議会が点検・評価する、とし、チェック役の団体を明示している。

 

 市は、2019年12月23日から2020年1月20日まで「条例」(案)要綱に対するパブリックコメントを行い、9名(持参:7名、メール:2名)から11件の意見が出された意見と市の考え方

 

 越前(岐阜県北西部含む福井県嶺北地方)松平家10万石の津山藩の城下町から発達した津山市は岡山県北東部に位置し、北は中国山地で鳥取県との県境をなす標高1,000〜1,200メートルの中国山地南面傾斜地であり、南は中部吉備(きび)高原に接する、標高100〜200メートルの「津山盆地」が位置する、県北の美作地方および津山都市圏の中心都市である。同時に人口面と経済面における県北最大の都市でもある。東経134度0分25秒、北緯35度3分58秒に位置し、面積は506.33平方キロメートルあり岡山県全面積7,113.07平方キロメートルの約7.1パーセントを占める。

 

 

姫路城、松山城とともに日本3大平山城かつての津山城

1873(明治6)年の廃城令により天守・櫓などの建物が破却され、現在は遺構の石垣や建物の礎石が残り、2002年から2006年までに再建された二重櫓と土塀がある。

現在は鶴山公園(かくざんこうえん)として桜の名所となっており、日本さくら名所100選にも選ばれている

 

 

国の名勝に指定されている池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)の旧津山藩別邸庭園。

 

市の人口は、100,513人(男性;48,273人/女性;52,240人)、45,331世帯(2020年3月1日現在)

 

市の身体障害者の状況は以下の通り。

 

 

 

津山市「言語としての手話の理解の促進及び手話等の普及に関する条例」(案)要綱

 

(1)前文

 言語は互いをわかり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で重要なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。

 言語には発話により表現する音声言語以外に、身振り、文字等により表現する非音声言語があり、障害者の権利に関する条約では、手話その他の形態の非音声言語が言語であることが明確に定められました。

 非音声言語の中でも特に手話は、文法、単語表現等他の言語とは全く異なる体系をなしています。言語としての手話を理解するためには、そのような違いを認識し、日常的に手話を必要とする人、主にろう者が健聴者とは異なる言語活動を行っていること、手話により意思疎通を図る権利は尊重されなければならないことについての理解が深まることが求められています。

 また、障害には、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由等の身体障害、知的障害、精神障害その他多様な障害があります。これらの障害がある人が使用する、障害の特性に応じた多様な意思疎通の手段の普及には、その手段を使用する人が自ら選択する機会を十分に確保されることが必要となります。

 本市では、言語としての手話の理解の促進に努めるとともに、多様な意思疎通の手段を普及させることで、障害の有無にかかわらず、全ての市民の意思疎通が円滑に行われ、お互いを理解し合い、自分らしく安心して暮らすことのできる共生社会を実現するため、この条例を制定します。

 

(2)目的

 この条例は、手話が言語であるという認識に基づき、手話の理解の促進及び手話等の普及に関して基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、全ての市民がお互いを理解し合い、自分らしく安心して暮らすことのできる共生社会 を実現することを目的とします。

 

(3)定義

 この条例において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次のとおりとします。

 @手話等 手話、要約筆記、点字等の障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段をいいます。

 A障害者 障害者基本法(昭和45年法律第84号)第2条第1号に規定する者をいいます。

 B合理的配慮 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第6 5号)第5条に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮をいいます。

 

(4)基本理念

 ・手話の理解の促進は、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であるとの理解を基本として行わなければならないものとします。

 ・手話の理解の促進及び手話等の普及は、次に掲げる事項を基本として行われなければならないものとします。

 ア 障害者がその障害の特性に応じた意思疎通の手段を自ら選択する機会が確保されること。

 イ 全ての人が障害者の手話等により意思疎通を行う権利並びに相互の人格及び個性 を尊重すること。

 

(5)市の責務

 市は、(4)の基本理念に基づき、市民の手話への理解を深め、手話等の普及に関する施策を推進することとします。

 

(6)市民の役割

 市民は、 (4)の基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとします。

 

(7)事業者の役割

 事業者は、(4)の基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、手話等による意思疎通の手段が円滑に行われるよう合理的配慮の提供に努めるものとします。

 

(8)施策の策定方針

 ・市は、(5)の責務を果たすため、次に掲げる施策を障害者基本法第11条第3項の規定による津山市障害者計画において定め、総合的かつ計画的に推進するものとします。

 @手話が言語であることの理解の促進及び手話等の普及に関する施策

 A手話等を学ぶ機会の提供等に関する施策

 B手話等による情報の発信及び取得に関する施策

 C手話等による意思疎通の支援に関する施策

 D手話等による意思疎通の支援者の確保及び養成、資質向上に関する施策

 Eその他この条例の目的を達成するために必要な施策

 ・市は、@からEの施策を推進するに当たっては、障害者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めるものとします。

 

(9)施策の点検及び評価

 市長は、手話が言語であることの理解の促進及び手話等の普及に関する施策の実施状について、津山市障害者施策推進審議会(津山市障害者施策推進審議会条例(昭和55年津山市条例第6号)第1条に規定する「審議会」をいう。)の点検及び評価受けるものとします。

 

(10)施行期日

 この条例は、令和2年4月1日から施行することとします。

 

 

 

 

 

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