長野県手話言語条例

 

 

記事

 

阿部長野県知事、中嶋恵理副知事、西沢県議会議長、荒井・中川県議会議員(長野県聴覚障害者協会顧問)、小林健康福祉部長も入っての記念撮影(全日本ろうあ連盟hp

 

 長野県議会は2016年3月14日、長野県手話言語条例案を全会一致で可決、即日施行した(条例全文)

 

 議員の会派別構成は、自由民主党県議団(22人)信州・新風・みらい(15人)新ながの・公明(10人)日本共産党県議団(8人)、無所属(3人)

 

2013年10月8日の鳥取県、2014年12月25日の神奈川県、2015年3月12日の群馬県についで県で4番目。全国で34番目。北信越ブロックでは初。

 

 議会傍聴には全日本ろうあ連盟・小中栄一副理事長、北信越ブロック連盟・藤平淳一事務局長(石川県協会)、長野県聴覚障害者協会・井出萬成理事長他、長野県及び北信越ブロック各県協会会員、関係者他、計105名が参加(県議会傍聴者としては史上最高の人数)

 

 午後1時45分頃、中川まさひろ県議会議員(新ながの・公明)の賛成答弁のあと採決。中川議員は冒頭、自己紹介と長野県手話言語条例に賛成意見を述べる旨を手話で行った。条例成立後同議員は、「今後、この条例を契機として、『聴覚障害者に対する理解の促進』、さらに、『長野県の障害福祉施策』が充実されるよう、『手話』の普及や『手話』に関する教育、学習の振興策などの環境整備、災害時及び緊急時の情報の対応等、今後、関係者と一層の連携を図りながら、必要な財源を確保し、具体的な県の施策の推進を強く望むとともに、尽力していく」との決意を表明した。

 

中川まさひろ県議会議員の賛成討論

 

 県は、2016年度当初予算案に手話への理解を深める取り組みに6,364万円を盛っている予算書概要 pdf

 

 

2016年度は、県民向けの手話講座開設やガイドブックの作成、県内プロスポーツ団体の試合を手話で応援するといった新事業を展開する。

 

 

県は、手話が言語であることを県民が理解し、手話がコミュニケーション手段として広く普及することにより、「ろう者」の社会参加を促進するとともに、障がいのある人もない人もお互いを尊重し、共に生きる社会の実現を図るため、長野県手話言語条例(仮称)の制定に向け、検討を進め、その骨子(案)について、広く県民から意見(パブックコメント)を募集した(2015年11月13日〈金曜日〉から12月13日〈日曜日〉まで)

 

長野県の聴覚障害者約8000人のうち、手話を第一言語としている者は約600人程度であるといわれる。

 

長野県手話言語条例が施行されたのを受け、県は4月4日の部局長会議で、ミニ手話講座を始めた。手話通訳ができる県障がい者支援課の職員が講師を務め、阿部守一知事や太田寛、中島恵理両副知事、部局長ら20人余が「こんにちは」「ありがとう」といった基本の手話を学んだ。

 

部局長会議で始まったミニ手話講座=4日、県庁

 

講座終了後、知事は「片言でもいいから手話を使うという姿勢が大事。教わったことを復習し、県民にあいさつする場合にできるだけ使ってほしい」と部局長らに求めた。

部局長会議で月1回10分程度、行政業務で必要な単語や人物名、地名の表現などを学ぶ。部局長の1人は「まずは『こんにちは』と『ごめんなさい』をできるようにする」と話した。

知事は会議後の定例記者会見で「皆さん、こんにちは」と早速手話を披露。「しっかりマスターして使えるようにしていきたい」と述べた。

 

 

障害者の権利条約(2006〈平成18〉年国連採択)及び障害者基本法(2011〈平成23〉年改正)において、手話が 言語として位置づけられたものの、手話の普及が進まず、「ろう者」が「ろう者」以外の者と手話を使って日常的にコミュニケーションできる環境が整っていないという指摘があります。

・手話が言語であることを県民が理解し、手話がコミュニケーション手段として広く普及することにより、「ろう者」の社会参加を促進するとともに、障がいのある人もない人もお互いに個性を尊重し、支え合いながら、共に生きる社会の実現を図るため、県として手話言語条例(仮称)の制定に取り組みます。

 

条例のポイント

 

1 理解促進及び手話の普及

(1)目的

県民の手話やろう者に対する理解促進及び手話の普及

(2)取組方針

・県は、県民が手話に親しみをもてる機会(手話に出会う機会、ろう者と交流する機会等)を増やす取組を支援することにより、県民の手話やろう者に対する関心を深め、理解促進につなげます。

・県民が手話を学ぶ機会を増やし、手話の普及を進めます。

骨子

12(1)

県は、手話に関する学習会その他の方法により、県民が手話を学ぶ機会の確保等を行うものとする。

取組

○県民向け手話講座の開催

・手話により、あいさつや自己紹介の仕方、簡単な会話を学ぶ講座を開催する。

○あいサポーター研修の充実

・「信州あいサポート運動」で実施する「あいサポーター研修」において、「手話が言語であること」や「ろう者への理解」について学ぶ。

 

12(2)

県は、手話に親しみをもてる取組を推進する者に対し、必要な支援を行うものとする。

取組

○観光、スポーツ等において、ろう者も共に楽しめる環境を整備する取組を支援する。

(例)ろう者も参加する応援団と観客が一体となり、県内プロスポーツ団体を手話で応援。

(例)「信州 山の日」にろう者とろう者以外の者が登山を通じて交流。

(例)手話による観光ガイド(ボランティア)等の活動。

 

2 手話を使いやすい環境の整備

(1)目的

災害時におけるろう者への支援

(2)取組方針

県は、災害時にろう者の安全を確保するため、手話で安否確認や避難誘導のできる住民を増やし、地域の防災力を高めます。

骨子

14(2)

県は、市町村と協力して、災害時に互いに支え合う地域づくりに資するため、その地域に手話のできる人材の養成に努めるものとする。

取組

○「災害時に役立つ手話」講座の開催・「逃げてください」、「○○に避難してください」など、災害時に必要となる手話を学ぶ講座を開催する。

・修了者には認定証を交付し、「災害時住民支え合いマップ」等に活用する。 等

 

3 手話を用いた情報発信

(1)目的

日本語の理解に困難を感じているろう者に対する情報保障

(2)取組方針

災害情報や県政情報について、手話動画により情報提供します。

骨子

15

県は、ろう者が災害に関する情報を迅やかに得られ、また県政に関する情報を容易に得られるよう、手話を用いた情報発信に努めるものとする。

取組

○大規模災害発生時に、災害情報や避難情報を、県公式ホームページにおいて、手話動画により発信する。 等

 

4 学校における手話の普及・啓発

(1)目的

ろう者が通う学校における手話の普及、小中高等学校における手話の理解の増進(2)取組方針ろう学校における教職員の手話の技術の向上に向けた取組、小中高等学校において活用できる資料の作成等により、教育面における手話に関する学習環境の充実に努めます。

骨子

9(1)

ろう者が通う学校の設置者は、ろう者が、手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

取組

○「手話に係る教職員の研修の充実」・ろう学校教職員の手話に関する技術を向上できるよう、手話に係る研修を充実する。 等

13

県は、学校教育において、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、資料の作成その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

取組

○「手話学習のための資料の作成」・児童生徒が基本的な手話に関する学習を行えるような資料を作成する。 等

 

5 手話の普及等に係る施策の計画的な推進

(1)目的

県民の理解促進・手話の普及等に係る施策の策定及び計画的な推進(2)取組方針手話の普及等のために必要な施策を「長野県障害者計画」に位置付け、計画的に推進します。

5 手話の普及等に係る施策の計画的な推進

(1)目的

県民の理解促進・手話の普及等に係る施策の策定及び計画的な推進(2)取組方針手話の普及等のために必要な施策を「長野県障害者計画」に位置付け、計画的に推進します。

取組

○「長野県障害者計画」の策定及び進捗管理・障がい者施策推進協議会の意見を踏まえ、手話の普及等のために必要な施策を「長野県障害者計画」に定め、計画的に推進する。等

 

 

長野県手話言語条例の骨子

 

1 目 的

 この条例は、手話の普及等に関し、基本理念を定め、並びに県の責務及び県民等の役割を明らかにするとともに、手話の普及等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県民の手話及びろう者に対する理解の促進を図り、もってろう者とろう者以外の者が相互にその人格と個性を尊重し合いながら共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

2 定 義

(1)ろう者

 この条例において「ろう者」とは、聴覚障害者のうち手話を使い日常生活又は社会生活を営むものをいう。

(2)手話の普及等

 この条例において「手話の普及等」とは、手話の普及その他の手話を使いやすい環境の整備をいう。

 

3 基本理念

(1)手話の普及等は、手話が独自の体系を持つ言語であり、ろう者が受け継いできた文化的所産であることについての県民の理解の下に、行わなければならない。

(2)手話の普及等は、手話が、意思疎通のための手段として選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段として選択の機会の拡大が図られることを旨として行わなければならない。

 

4 県の責務

県は、基本理念にのっとり、ろう者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮を行い、手話の普及等を推進するものとする。

 

5 市町村等との連携及び協力

県は、手話の普及等の施策の実施に当たっては、市町村その他の関係機関及び関係団体と連携するとともに、その関係機関等が行う手話の普及等のための取組に協力するものとする。

 

6 県民の役割

県民は、基本理念にのっとり、手話の普及等に対する関心と理解を深めるとともに、その施策に協力するよう努めるものとする。

 

7 ろう者の役割

ろう者は、手話の普及等に関する施策に協力するとともに、主体的かつ自主的に手話の普及に努めるものとする。

 

8 手話通訳者の役割

手話通訳者は、手話の普及等に関する施策に協力するとともに、手話に関する技術の向上に努めるものとする。

 

9 ろう者が通う学校の設置者の役割

(1)ろう者が通う学校の設置者は、ろう者が手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(2)ろう者が通う学校の設置者は、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、通学するろう者及びその保護者に対する学習の機会の提供並びに教育に関する相談及び支援に努めるものとする。

 

10 事業者の役割

事業者は、ろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときは、手話の使用に関して配慮するよう努めるものとする。

 

11 計画の策定及び推進

(1)県は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項に規定する長野県障害者計画において、手話の普及等のために必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

(2)知事は、前項に規定する施策について定めようとするときは、あらかじめ、障がい者施策推進協議会の意見を聴かなければならない。

(3)知事は、第1項に規定する施策について、実施状況を公表しなければならない。

 

12 手話を学ぶ機会の確保等

(1)県は、手話に関する学習会その他の方法により、県民が手話を学ぶ機会の確保等を行うものとする。

(2)県は、手話に親しみをもてる取組を推進する者に対し、必要な支援を行うものとする。

 

13 学校における理解の増進

県は、学校教育において、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、資料の作成その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

14 手話通訳者等の養成等

(1)県は、市町村と協力して、手話通訳者その他のろう者が地域において生活しやすい環境に資するため、手話を使うことができる者及びその指導者の確保、養成及び手話の技術の向上を図るものとする。

(2)県は、市町村と協力して、災害時に互いに支え合う地域づくりに資するため、その地域に手話のできる人材の養成に努めるものとする。

 

15 手話を用いた情報発信

 県は、ろう者が災害に関する情報を速やかに得られ、また県政に関する情報を容易に得られるよう、手話を用いた情報発信に努めるものとする。

 

16 手話通訳者の派遣体制整備

県は、ろう者が手話による正確な意思疎通を図ることができる環境の整備に資するため、手話通訳者の派遣その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

17 事業者への支援

県は、事業者がろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するとき、手話を使いやすい環境を整備するために事業者が行う取組に対して、必要な支援を行うものとする。

 

18 財政上の措置

 県は、手話の普及等に関する取組を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(その他)

障がい者施策推進協議会に、手話の普及等に関する事項を専門的に審議する部会を置くこととする。(長野県障がい者施策推進協議会条例の一部改正)

 

 

長野県手話言語条例pdf

 

手話は言語である。

私たちは、手話が、音声言語とは異なる語彙や文法体系を有し、手や指、体の動きや表情などにより視覚的に表現される言語であり、我が国においては、明治時代に始まり、手話を使う、ろう者をはじめとする関係する多くの人々の間で大切に受け継がれ発展してきたものであることを、まず認識しなければならない。

しかしながら、手話は、今日に至るまで決して順調な発展を続けてきたわけではない。意思の伝達手段として尊重されることもあったが、ろう学校での読唇と発声の訓練を基本とする口話法の導入により、手話が自由に使用できないことや、手話を習得し、手話で学ぶなどの機会を十分に得られないことで、これまで、ろう者が数々の困難に直面した歴史があることにも思いを至らせなければならない。

ようやく手話が、国際的に言語として位置付けられたのは、国際連合総会において、平成18年に障害者の権利に関する条約が採択されたことによるものである。これにより、我が国においても、平成23年の障害者基本法の改正や平成26年の障害者の権利に関する条約の批准が行われ、制度的には前進したものの、手話への理解やその普及は、まだ大きな広がりを得ていない状況にある。

言語は、人と人とをつなぐ絆きずなである。

長野県には、先人によって守り育てられてきた豊かな自然とともに、人と人との絆を大切にする心が息づいている。そして手話には、これまで手話により、周囲の世界を知り、考え、意思を伝えてきた人々の魂が宿っている。

私たちは、手話が、障害のある人もない人も、互いに支え合いながら共に生きる地域社会の象徴となり、誰もが手話に親しみ、手話に対する理解を深め、手話が広く日常生活で利用される長野県を目指すためにこの条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及等に関し、基本理念を定め、並びに県の責務及び県民等の役割を明らかにするとともに、手話の普及等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県民の手話及びろう者に対する理解の促進を図り、もってろう者とろう者以外の者が相互にその人格と個性を尊重し合いながら共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において「ろう者」とは、聴覚障害者のうち手話を使い日常生活又は社会生活を営むものをいう。

2 この条例において「手話の普及等」とは、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話の普及等は、手話が独自の体系を持つ言語であり、ろう者が受け継いできた文化的所産であることについての県民の理解の下に、行われなければならない。

2 手話の普及等は、手話が、意思疎通のための手段として選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段として選択の機会の拡大が図られることを旨として行われなければならない。

 

(県の責務)

第4条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ろう者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮を行うとともに、手話の普及等を推進するものとする。

 

(県民の役割)

第5条 県民は、基本理念にのっとり、手話に対する関心と理解を深めるとともに、手話の普及等に関する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(ろう者の役割)

第6条 ろう者は、基本理念にのっとり、手話の普及等に関する施策に協力するとともに、主体的かつ自主的に手話の普及に努めるものとする。

 

(手話通訳者の役割)

第7条 手話通訳者(知事が別に定める試験に合格した者その他知事が別に定める者をいう。第14条及び第16条において同じ。)は、基本理念にのっとり、手話の普及等に関する施策に協力するとともに、手話に関する技術の向上に努めるものとする。

 

(ろう者が通う学校の設置者の役割)

第8条 ろう者が通う学校の設置者は、基本理念にのっとり、ろう者が手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 ろう者が通う学校の設置者は、基本理念にのっとり、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、通学するろう者及びその保護者に対する学習の機会の提供並びに教育に関する相談及び支援に努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第9条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときは、手話の使用に関して配慮するよう努めるものとする。

 

(市町村との連携協力)

第10条 県は、手話の普及等に関する施策の実施に当たっては、市町村と連携するとともに、市町村が行う手話の普及等に関する施策に協力するものとする。

 

(施策の策定及び推進)

第11条 県は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項の規定による障害者計画において、手話の普及等に関する必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 知事は、前項に規定する施策について定めようとするときは、あらかじめ、長野県障がい者施策推進協議会の意見を聴かなければならない。

3 知事は、第1項に規定する施策について、実施状況を公表しなければならない。

4 第2項の規定は、第1項に規定する施策の変更について準用する。

 

(手話を学ぶ機会の確保等)

第12条 県は、県民が手話を学ぶ機会の確保をするため、手話に関する講座の開設その他必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、県民が手話に親しみを覚える取組を行う者に対し、必要な支援を行うものとする。

 

(学校における理解の増進)

第13条 県は、学校教育において、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、資料の作成その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(手話通訳者等の養成等)

第14条 県は、市町村と協力して、手話通訳者その他の手話を使うことができる者及びその指導者の確保、養成及び手話に関する技術の向上を図るものとする。

2 前項に定めるもののほか、県は、市町村と協力して、災害時において互いに支え合うための地域づくりに資するよう、手話を使うことができる者の養成を行うものとする。

 

(手話による情報発信)

第15条 県は、ろう者が災害に関する情報を迅速に得られ、及び県政に関する情報を容易に得られるよう、手話による情報発信を行うものとする。

 

(手話通訳者の派遣体制の整備等)

第16条 県は、ろう者が手話による意思疎通を図ることができる環境の整備に資するよう、手話通訳者の派遣その他必要な措置を講ずるものとする。

 

(事業者への支援)

第17条 県は、事業者がろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときに手話を使用しやすい環境の整備のために行う取組に対して、必要な支援を行うものとする。

 

(財政上の措置)

第18条 県は、手話の普及等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

 附 則

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(特別職の職員の給与に関する条例の一部改正)

2 特別職の職員の給与に関する条例(昭和27年長野県条例第10号)の一部を次のように改正する。

 別表第3の3中「|障がい者施策推進協議会の委員 |」を「|障がい者施策推進協議会の委員及び専門委員|」に改める。

(長野県障がい者施策推進協議会条例の一部改正)

3 長野県障がい者施策推進協議会条例(昭和46年長野県条例第29号)の一部を次のように改正する。

 第7条を第9条とし、第6条を第8条とし、第5条の次に次の2条を加える。

 (専門委員)

第6条 専門の事項を調査するため、必要があるときは、協議会に専門委員を置くことができる。

2 専門委員は、学識経験者等のうちから知事が任命する。

3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査を終了したときは、解任されるものとする。

 (部会)

第7条 協議会に、部会を置くことができる。

2 部会に属すべき委員及び専門委員は、会長が指名する。

3 部会に部会長を置き、部会に属する委員が互選する。

4 部会長は、部会の事務を掌理する。

5 第4条第3項及び第5条の規定は、部会長及び部会について準用する。

この場合において、これらの規定中「会長」とあるのは、「部会長」と読み替えるものとする。

 

 

 

山の日 手話ガイドと八島湿原散策(2017年8月12日配信『長野日報』)

 

キャプチャ
 手話に親しみながら夏の八島湿原の魅力を味わった参加者たち

 長野県が主催する「手話に親しみながら信州の山を歩くイベント」が11日、下諏訪町郊外の八島ケ原湿原であった。聴覚に障がいがある人もない人も、子どもから熟年層まで約20人が参加。深緑に夏の花が映える湿原で、手話通訳を介してガイドツアーを楽しみ、交流を広げた。
 昨年3月の県手話言語条例施行を機に、「信州山の日」とのコラボレーションで始まったイベント。2年目の今年は、「信州山の日」の7月23日に上田市の美ケ原高原、「山の日」の8月11日に八島湿原でそれぞれ行った。
 参加者は3グループに分かれて、大きなハート型をした八島湿原を1周した。各グループに地元の霧ケ峰インタープリター(自然解説者)と県の手話通訳者がつき、手話や小型のホワイトボードの筆談で、湿原の歴史や構造、今が見頃の草花などを解説。参加者同士も、積極的に手話を使って質問したり感想を話した。
 男性参加者は「声によるガイドだと内容が分からないので、きょうのツアーを楽しみにしていました」と、楽しそうに湿原の自然に目を凝らしていた。

 

須坂図書館が聴覚障がい者の利用向上へ福祉サービス係を配置(2017年6月3日配信『須崎新聞』)

 

長野県手話言語条例が昨年3月に施行され、手話やろうあ者に対する理解の促進、手話の普及などが地域社会の課題となっている。こうした中、須坂図書館は本年度、これまでの障がい者サービス係を改め、福祉サービス係として職員2人を配置し、幅広い福祉の観点から利用環境の向上を図る。

先月25日には、聴覚障がいのある人たちが須坂手話サークルのメンバーと一緒に須坂図書館を利用した。この日参加したろうあ者7人のうち、ほとんどが図書館利用の初心者で、まずは希望者のみ、個人の利用者カードを作った。また福祉サービス係の職員から利用方法について説明を受けた。

須坂手話サークルは今年に入って間もなく、須坂図書館の団体利用者カードを作り、最大30冊を1ケ月間借りることができるサービスを数回利用。毎週行っているろうあ者との交流例会で出張図書館を設けた。その中で「自分で本を選びたい」という要望が出たことから、例会活動の一環で図書館を訪れた。

市内に住む60代の男性は「図書館が広くて驚いた。本もたくさんあって、読みたい本が借りられるのはうれしい」と館内を見渡し、さっそく料理のDVD2枚とノンフィクションの本2冊を選んだ。DVDで材料や作り方を確認しながら、妻のために料理を作りたい―と笑顔を見せた。

また団体カードで手話うたのDVDを3枚借りた市外の70代男性は「前から見たいと思っていたDVDを見つけた。楽しみです」と嬉しそうに話した。カウンターでは図書館職員が筆談器を使い、借りる意志などを確認した。

須坂手話サークル会長の長坂三由紀さんは「聴覚障がいのある人たちにとって、図書館を利用するきっかけが今まであまりなかったというのが実情かもしれない。今日を機に、利用してみようという人もいると思います」と話していた。

同館は以前から、音訳ボランティア「須坂あかりの会」の協力で、新聞などを音訳し、目の不自由な人たちに利用してもらうサービスを行ってきたが、文平玲子館長は「耳の不自由な方々へのサービスが行き届いていなかったと改めて気づかされた。今後、福祉について理解をさらに深め、すべての方が利用しやすい図書館環境を整えていきたい」と話している。

 

(2016年3月14日配信『信濃毎日新聞』−「斜面」)

 

ウクライナの映画「ザ・トライブ」は、暴力に支配された寄宿制のろう学校を舞台に、若者たちの鬱屈(うっくつ)した思いと抑えがたい激情を描く鮮烈な作品だ。声のせりふや音楽は一切ない。交わされる言葉はすべて手話である

   ◆

字幕での説明もない。理解できるか心配しつつ見たが、杞憂(きゆう)だった。声や文字にも増して、手話は感情を生き生きと伝える。声を荒らげる代わりに腕を激しく振り、早口でまくしたてるかのように指先が素早く動く。表現力の豊かさに引き込まれる思いがした

   ◆

「手話は言語である」。県の手話言語条例案は前文の冒頭にうたう。その文言を目にして、映画の記憶がよみがえった。条例案は今日、県会で可決、成立する見通しだ。手話を明確に言語と位置づけて普及を促す条例は、鳥取などに続いて4県目だという

   ◆

手話を“手まね”のようにみる意識はまだ根強い。読唇や発声訓練による口話法の教育が偏重され、当事者が苦しんできた歴史もある。目を向けるべきことは多い。耳の聞こえない人が不自由な思いをせずに暮らせるよう、病院で、街中で、働く場で、手話を当たり前の光景にしたい

   ◆

全日本ろうあ連盟などは「手話言語法」の制定を訴えている。既に国内すべての地方議会が国に法制定を求める意見書を可決したという。政府にも国会にも積極的な動きは見えないが、その声をないがしろにしてはなるまい。

 

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