小野市手話、要約筆記、点字等意思疎通手段利用促進条例

 

 

2006年12月の国連総会において、「障害者権利条約」が採択され、日本でも2011年8月に障害者基本法が改正さ、法的に手話が「言語」として認められた。

 

2016年4月1日からは者差別解消法が施行される。

 

兵庫県小野市議会でも、2014年12月定例会において「手話言語法制定の意見書」を採択した。

 

そうしたなか市議会は、2016年3月25日、聴覚障害者のみならず障害者が必要とする手話、要約筆記、点字等の意思疎通手段の利用促進を広く図ることにより、障害のある人もない人も分け隔てられることなく理解し合い支えあいながら暮らしていくことができる地域社会を実現することを目的として、「小野市手話、要約筆記、点字等意思疎通手段利用促進条例」を可決した。施行は4月1日。

 

手話言語のみならず、要約筆記や点字など、広く意志疎通手段を網羅する内容の条例制定は、2015年3月の兵庫県明石市の「手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者のコミュニケーション手段を促進する条例」、2015年12月の千葉県習志野市「手話、点字等の利用を進めて、障がいのある人もない人も絆(きずな)を深め、互いに心を通わせるまちづくり条例」に次いで全国で3例目。

 

小野市では、2015年4月から社会福祉課に手話通訳者を配置した。

 

今後この手話、点字等の意思疎通手段が広く市民へと浸透することが期待される。そのための具体的方策の早急なる策定が必要となる。

 

また、手話等意思疎通手段への理解及びその普及のための施策等の推進に当たっては「障害者、意思疎通支援従事者その他関係者の意見を聴くための協議の場を設けなければならない」ことになっているが、市民がより広く理解するためにもこういった協議の場が有効活用されることが重要な課題となる。

 

小野市の身体障害者(聴覚・平衡)手帳所持者は、2014年3月31日現在、162(内児童8)(「小野市の保健と福祉」35p)

                                     

なお小野市は、2014年11月に「加東市手話言語条例」を、2015年3月に「三木市共に生きる手話言語条例」を制定した両市に隣接している。

 

 

 

小野市は、東播磨地域のほぼ中央に位置。古くからそろばん(全国シェア70%)と家庭用刃物の生産地として発展を遂げてきた兵庫県で有数の伝統工芸都市。播州鎌は兵庫県の伝統的工芸品に指定されている。

播州鎌は、明治維新ごろ、一柳藩のお抱え刀鍛冶であった藤原伊助が剃刀の製法を応用して打ち始めたのが起こりで、一名剃刀鎌ともいわれる。切れ味がよく、軽く、研ぎやすいのが特徴。

そろばんと播州鎌は、現在も小野市を中心として東播磨地域の多くの事業所が生産を行っており、主要な地場産業となっています。

小野市は兵庫県内の市で唯一警察署がなかったが、2015年11月に小野警察署が設置された。

人口  49,263人、19,301世帯数(2016年2月末現在)

 

おの桜づつみ回廊の江戸彼岸

「そろばんのまち小野市」のオブジェ、世界最大の算盤

 

 

 

 

小野市手話、要約筆記、点字等意思疎通手段利用促進条例pdf

 

 言語は、人々がお互いの意思疎通を図り、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。手話もまた、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語として、ろう者にとってお互いの気持ちを理解し合い、豊かな社会生活を営むために大切に受け継がれてきたものです。

しかし、これまで言語として手話を使用する環境が整えられてこなかったことから、ろう者は、多くの不便や不安を抱えながら生活してきました。

こうした中、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法(昭和45年法律第84号)において、手話が言語として位置付けられ、ろう者が安心した生活を送るためにも、手話をいつでもどこでも自由に使用できる環境を整備していくことが求められています。

また、ろう者に限らず全ての障害者にとって分け隔てなく容易に情報を得ることができ、意思疎通を十分に図ることのできる環境を整備することは日常生活や社会生活を送るうえで不可欠であります。

ここに私たちは手話を言語として確立するとともに、障害者が必要とする手話、要約筆記、点字等の意思疎通手段の普及を促進することにより、全ての市民が互いに人格と個性を尊重し、支え合いながら自分らしく豊かに暮らすことができる地域社会を構築するため、この条例を制定します。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話等意思疎通手段についての基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が実施する施策の基本的事項を定めることにより、障害者の意思疎通の促進を図り、障害のある人もない人も分け隔てられることなく理解し合い、市民がお互いに一人ひとりの尊厳を大切にして安心して暮らすことのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。

(2) 手話等意思疎通手段 手話、要約筆記、点字、音訳、代筆及び代読、触手話その他障害者が日 常生 活又は社会生 活を 行ううえで必要とされる補助的及び代替的に利用できる情報と意思の伝達手段をいう。

(3) 意思疎通支援従事者 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)等障害者の意思伝達を支援又は補助する者をいう。

(4) 事業者 市内に事業所又は事務所を有し、事業を行う法人その他の団体又は個人をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話等意思疎通手段の普及及び利用機会の確保は、障害のある人とない人とが相互の違いを理解し、その個性と人格とを互いに尊重することを基本として行わなければならない。

手話の普及等は、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が心豊かな日常生活や社会生活を営むために大切に受け継がれてきたものであることを理解するとともに、手話が言語であるとの認識のもとに推進されなければならない。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、障害者が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるよう必要な配慮を行い、手話等意思疎通手段の普及及び利用の促進に関する施策を推進するものとする。

 

(市民の役割)

第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話等意思疎通手段の普及及び利用の促進に関して市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話等意思疎通手段の普及及び利用の促進に関して市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、手話等意思疎通手段の活用によって障害者が利用しやすいサービスの提供や働きやすい環境を整備するように努めるものとする。

 

(施策の推進方針)

第7条 市は、第4条の規定に基づき、次の各号に掲げる施策を小野市障害者計画(障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき策定された計画をいう。)の中の施策として位置付け、総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 手話等意思疎通手段への理解及びその普及のための施策

(2) 障害者が手話等意思疎通手段を容易に利用できるようにするための環境整備に関する施策

(3) 意思疎通支援従事者の確保及び養成のための施策

(4) 前3号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

市は、前項各号に規定する施策の推進に当たっては、障害者、意思疎通支援従事者その他関係者の意見を聴くための協議の場を設けなければならない。

市長は、第1項各号に規定する施策について、毎年実施状況を公表するものとする。

 

(手話等意思疎通手段を学ぶ機会の提供等)

第8条 市は、障害者、意思疎通支援従事者、公的機関、事業者等と協力して市民に手話等意思疎通手段を学ぶ機会を提供するものとする。

市は、公的機関及び事業者等が手話等意思疎通手段に関する学習会等を開催する場合において、その支援を行うものとする。

 

(手話等意思疎通手段を用いた情報発信)

第9条 市は、障害者が市政に関する情報を速やかに得ることができるよう、手話等意思疎通手段を用いた情報発信を推進するものとする。

 

(学校における理解等の啓発)

第10条 市は、学校教育における手話等意思疎通手段への理解及びその普及啓発並びに市内の小学校、中学校及び特別支援学校に在籍する聴覚障害等の児童生徒に対し、手話等意思疎通手段による学習支援に努めるものとする。

 

(財政上の措置)

第11条 市は、第7条第1項各号に規定する手話等意思疎通手段に関する施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委任)

第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

 

この条例は、平成28年4月1日から施行する。

 

 

 

 

 

 

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