「港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例」

 

 

 

 東京都港区議会は、2019年10月11日、障害者が自分らしくいきいきと暮らすことができる地域共生社会の実現をめざす「港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例」案を可決し、同年12月1日に施行した。

 

同種の条例は、東京都では東京都江戸川区荒川区豊島区足立区墨田区葛飾区板橋に次いで9例目。全国では288例目

 

この条例では、基本理念、区の責務、区民や事業者の役割、施策の基本方針等を定めている。

 

条例の特徴、

1.区は区民や事業者の皆さんに、手話が言語であることの理解を促進。

.障害者のそれぞれの障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進。

3.区は施策を実施する際、区民や事業者の皆さんと協働の下、参画を得て行う。

4.緊急時および災害発生時は、共助の理念の下、障害のある方が情報を円滑に得られるよう、区は、区民や事業者の皆さんと、多様な意思疎通手段を利用し、情報を提供する取り組みを行う。

5.事業者の皆さんが行う自主的な取り組みを促進するため、区は情報の提供および助言を行う等々である。

 

 条例制定にともって区は、12月7日(土)に開催する第38回障害者週間記念事業で、手話に関する啓発冊子の配布や基調講演を行った。また、「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン(仮称)」や障害特性に応じたコミュニケーションハンドブックの作成と2020(令和2年)度の配布するともに、港区ホームページにも掲載した。

 さらに、障害者団体や公募の区民等が、障害者に関連する区の施策等について、区長等と意見交換を11月7日に行った。

 

パブリックコメントの意見募集結果は、69件だった意見と区の見解)。

 

 

港区域の東側は海岸・港南地区で東京港(東京湾)に面し、ベイエリアの一部である台場を含む。東側は江東区と向き合い、北側は中央区、千代田区、新宿区と、西側は渋谷区と接する。南隣は品川区である。

1947(昭和22)年3月15日、それまでの芝区・麻布区・赤坂区の旧3区が統合され、港区が誕生した。

江戸時代は広大な武家屋敷と、町人町が混在していた区内には、新聞社や放送局などのマスコミやIT企業が多数立地していて企業本社が多く、虎ノ門や新橋、芝などはオフィス街となっている。青山、赤坂、六本木などは商業エリアという面も強く、麻布や白金台などには住宅街もあり、様々な表情を持つ。赤坂御用地、迎賓館(赤坂離宮)をはじめとして芝公園、白金台の自然教育園など緑地も多い。駐日大使館や外資系企業も数多く立地しており、外国人居住者が人口の約1割を占める。

 

区の人口は、257,426(男;121,326/女;136,100)人、145,865世帯(2019年1月1日現在)。

 

区の身体障害者手帳の所持者は2009(平成21)年度末の4,692人から2016(平成28)年度末の5,143人に、愛の手帳の所持者は584人から803人に、精神障害者保健福祉手帳の所持者は648人から1,372人へとそれぞれ増加している。

 

 

港区障害者計画・第5期港区障害福祉計画

 

 

港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例

 

 手話は、音声言語ではなく、手や指、体の動き、顔の表情を組み合わせて、視覚的に表現される独自の文法体系を持つ言語であり、特にろう者にとっては、文化を創造し、生きるために不可欠なものとして大切に受け継がれてきた言語である。

 かつては、手話を習得し、使用することが制限されていた時代があった。近年では、障害者の権利に関する条約や障害者基本法の改正により手話が言語として位置付けられたが、手話が言語であることの普及をはじめとしたより一層の理解の促進が必要である。

 また、障害には様々な特性があり、話した内容を要約し文字で表示する手段や文字を音声で読み上げる手段など、障害の特性に応じた意思疎通のための手段がある。障害者が安心して暮らすことができるようにするためには、障害者が自由に情報の取得や意思疎通のための手段を選択することができる環境の整備を更に進めることが重要である。

 港区は、全ての人々に対し、手話が言語であることの理解を促進し、及び身体障害、知的障害、精神障害その他の障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進することにより、障害者が住み慣れた地域で、自分らしくいきいきと安心して暮らすことができる地域共生社会を実現する固い決意を込めて、この条例を制定する。

 

(目的)

第一条 この条例は、手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関し、基本理念を定めるとともに、区の責務並びに区民等及び事業者の役割を明らかにすることにより、障害者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる地域共生社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 二 意思疎通手段 手話、要約筆記、筆談、点字、拡大文字、平易な表現その他の障害者が日常生活及び社会生活において使用する意思疎通の手段をいう。

 三 区民等 区内に居住し、勤務し、在学し、又は滞在する者をいう。

 四 事業者 営利又は非営利の別にかかわらず、区内において事業活動を行う個人、法人又は団体をいう。

 五 学校等 区内の学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。)、保育所(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所をいう。)その他これらに準ずる施設をいう。

 

(基本理念)

第三条 障害者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる地域共生社会を実現するため

次に掲げる事項を基本理念として定める。

 一 手話が言語であることの理解の促進は、手話が独自の文法体系を持つ言語であるという認識の下に行うこと。

 二 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進は、障害者の多様な意見及び要望に合わせたものを、障害者が自ら選択する機会を保障することを基本として行うこと。

 

(区の責務)

第四条 区は、手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する施策を総合的かつ効果的に実施するものとする。

2 区は、前項に規定する施策の実施に当たり、関係機関との連携を図るとともに、区民等及び事業者が参画し、及び協働する取組を推進するものとする。

3 区は、緊急時及び災害発生時においても、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段が利用される地域共生社会の実現に向けた取組を行うものとする。

4 区は、第一項に規定する施策に関し、区の職員が自ら模範となり行動することができるよう当該職員の育成を図るものとする。

 

(区民等の役割)

第五条 区民等は、基本理念に対する理解を深め、区が実施する施策に参画し、及び協働するよう努めるものとする。

2 区民等は、日常生活において、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するよう努めるとともに、緊急時及び災害発生時においても、共助の理念に基づき、当該意思疎通手段を利用するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第六条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、区が実施する施策に参画し、及び協働するよう努めるものとする。

2 事業者は、その事業活動に関し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用により、障害者が利用しやすいサービスを提供し、及び事業を行うよう努めるものとする。

3 事業者は、緊急時及び災害発生時においても、共助の理念に基づき、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するよう努めるものとする。

 

(施策の基本方針)

第七条 区は、第四条に定める区の責務を果たすため、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第三項に規定する市町村障害者計画において、次に掲げる施策について定め、これらを総合的かつ計画的に推進し、その進捗を管理するものとする。

 一 手話が言語であることの理解の促進に関する施策

 二 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する施策

 三 前二号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

 

(手話が言語であることの理解の促進)

第八条 区は、区民等又は事業者が手話が言語であることの理解の促進に関する学習会等を開催する場合は、必要な支援を行うものとする。

2 区は、学校等において幼児、児童、生徒等に対し、手話が言語であることの理解の促進に関する教育等が実施される場合には、必要な支援を行うものとする。

3 区は、区民等及び事業者に対し、手話が言語であることの理解の促進に関する情報の発信を行うものとする。

4 区は、手話が言語であることの理解の促進に関する事業者の自主的な取組を促進するため

必要な情報の提供及び助言を行うものとする。

5 区は、区民等が手話が言語であることの理解の促進をすることができるよう、区民等及び事業者と協働して、手話通訳者等(手話通訳者及び手話通訳士をいう。)及びその指導者の確保及び養成を行うものとする。

 

(障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進)

第九条 区は、区民等又は事業者が障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する学習会等を開催する場合は、必要な支援を行うものとする。

2 区は、学校等において幼児、児童、生徒等に対し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する教育等が実施される場合には、必要な支援を行うものとする。

3 区は、障害者が日常生活及び社会生活において容易に情報を取得し、及び円滑に意思疎通を図ることができるよう、区民等及び事業者に対し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する情報の発信を行うものとする。

4 区は、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する事業者の自主的な取組を促進するため、必要な情報の提供及び助言を行うものとする。

5 区は、障害者が地域社会において安心して日常生活及び社会生活を営むことができるよう

区民等及び事業者に対し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を学ぶ機会を提供するものとする。

6 区は、緊急時及び災害発生時に障害者が感じる不安を解消するため、障害者が情報を円滑に取得することができるよう、区民等及び事業者とともに、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段により情報を提供できる体制づくりに努めるものとする。

 

 付 則

 

 

 

平成30年第3回定例会  平成三十年 港区議会議事速記録 第十号(第三回定例会)平成三十年九月十一日(火曜日)午後一時開会

 

○議長(池田こうじ君) 次に、二番榎本あゆみ議員。
  〔二番(榎本あゆみ君)登壇、拍手〕

次に、ノーマライゼーションについて伺います。

 まず、音声データのテキスト化についてです。ノーマライゼーションとは、障がい者や高齢者がほかの人々と等しく生きる社会、福祉環境の整備、実現を目指す考え方のことを指します。障がいがある人もない人も、高齢者も若者も同じように快適に過ごすことができる社会をつくるべきです。

 港区の聴覚・平衡機能障害の身体障害者手帳所持者は二〇一七年度では三百七十七人おり、五年間この数字に大きな変化はありません。区では手話通訳者等による意思疎通の円滑化を図るなどの支援を行っており、二〇一七年度本事業の利用者数は延べ四十四人、これは先ほどの身体障害者手帳保持者全体の約一一・六%にとどまっています。

 厚生労働省による実態調査でも、聴覚障害者のうち補聴器や人工内耳等の補聴器を使用している方が約七〇%、手話をコミュニケーション手段として使用している方は約一九%となっています。そのほかにも身体障害者手帳は持っていないものの、中途失聴や加齢に伴う機能の低下により音が聞き取りにくくなる老人性難聴など、聞き取りにくさにはさまざまな症状があります。

 区は、AIやICTの活用に力を入れており、窓口では音声認識を行い、文字情報を共有できるUDトークなどが導入されていますが、二〇一七年には十四件しか利用されておらず、活用し切れていないのも現状です。行政サービスの細かい説明を正確に伝えるためにも、区職員にさらに活用していただきたいと考えます。AIによる音声のテキスト化は一対一の場面だけでなく、式典や会議など多くの人が集まる場でも大きな力を発揮します。話をする講演者の隣にスクリーンを置き、音声がすぐにテキスト化されれば、聴覚障害者も難聴の人も、また健常者でも壇上から遠い席に座ったことで聞こえづらかった人、誰もが文字を見ることで講演の内容を把握することができます。

 障がい者と健常者を区別して支援を行うよりも、どちらにも便利で合理的な方法をとることが真のノーマライゼーションと言えるのではないでしょうか。既に区の窓口に導入されているUDトークの利用を促進するとともに、さらに広く公共の場でも音声認識技術の活用を検討すべきだと考えますが、区の見解を伺います。

 最後に、パートナーシップ条例の制定について伺います。ある国会議員がLGBTのカップルは子どもをつくらないので生産性がないという人権を著しく侵害する差別発言をして話題となりました。人種、性別、年齢、障がいの有無などに一切関係なく、全ての人々が自分の能力を生かして暮らすことができる多様性、ダイバーシティを受容できる社会をつくっていくべきです。

 港区では二〇一七年第四回定例会で、同性カップルの「パートナーシップの公的認証」に関する請願が賛成多数で採択されました。昨年度実施された港区の性的マイノリティの方々への支援に関する調査における当事者へのインターネットアンケートでは、「行政に望むこと」の項目で、戸籍上、同性同士のパートナーやその家族も法律上のパートナー、家族であると認めてほしいが三〇・八%、法律や条例で、LGBTに対する差別を禁じてほしいが二四・八%となりました。

 自分たちの個性が偏見にさらされ差別を受けることなく、社会に受け入れられることを願っていますが、当事者の中には、パートナーシップ制度の申請自体がカミングアウトにつながり、そのリスクが制度によって受けられるサービスよりも高いと感じる人も多くいるようです。多様性を受け入れることのできる、誰もが暮らしやすい港区を目指すには、性的マイノリティに対する理解者(アライ)を増やすための啓発を行う必要があり、教育においても性差にとらわれない教育を行うことで、マイノリティに限らず、性規範に苦しむ人たちを減らすことができるのではないでしょうか。現在も啓発などの活動が行われていますが、現状のままでは同性のパートナーが区営住宅への入居申し込みができないことや、パートナーが病気になった際に医療機関で家族と同様の扱いを受けることができない、死後パートナーに財産を残すことができないなど制約が多くあります。

 全国では、渋谷区、世田谷区、中野区、伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市、大阪市が既にパートナーシップ制度を導入していますが、自治体により拘束力や承認を受けることで得られるサービスの範囲が異なります。来年四月に導入が予定されている千葉市では、パートナーシップ制度に異性のパートナーにも制度の申請が認められており、熊谷市長は、事実婚のカップルも対象とした理由について、同性のパートナーに限定すると性的少数者を浮き彫りにしてしまう。性別で差を設けないことが本来の趣旨であると説明しています。これは性の多様性を受容する社会を目指すにあたって画期的な制度であると考えます。

 自治体ごとの制度によって利用者数や満足度に大きく差が出ることがわかっており、パートナーシップ制度を導入するにあたって、これらの例を加味しつつ、よりよく港区に合った制度にするための議論が必要であるとともに、制度の導入に並行して区民の理解を得ることも大切です。当事者に対するアンケートが行われ実態調査が進んでいますが、その後の検討状況について伺います。

 最後に、私の出産にあたり、多大なご配慮をいただいた皆様に大変大きな感謝を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

 

  〔区長(武井雅昭君)登壇〕

○区長(武井雅昭君) ただいまのみなと政策会議を代表しての榎本あゆみ議員のご質問に順次お答えいたします。

次に、ノーマライゼーションについてのお尋ねです。

 まず、音声の文字化についてです。区は、区民との円滑なコミュニケーションを図るために、音声を文字に変換するタブレット端末を各地区総合支所等に配備しております。タブレット端末を活用した区民への丁寧な案内に向けて、障害者差別解消法の職員研修に加え、今年度から新たに窓口職員に対して職場での操作研修を実施しております。今後も、タブレット端末のさらなる利用促進に努めるとともに、式典などでの音声の文字化の活用について幅広く情報収集するなど、障害の有無にかかわらず、必要な情報を必要な人に確実に届ける情報バリアフリーを推進してまいります。

 

港区議会 2018−01−17 平成30年1月17日総務常任委員会01月17日

 

○情報政策課長(若杉健次君) 前回、当常任委員会においてご質問いただきました、タブレット型端末による遠隔手話通訳サービスの状況について、所管課に確認いたしましたので、ご報告いたします。

 利用状況といたしましては、平成28年度で30件、遠隔手話通訳をご利用いただいています。そのほか、区民の方の個別の状況に応じまして、月曜日に人を配置いたしました手話通訳者設置事業や手話通訳の派遣事業、またはタブレット型端末に文字変換・手書き機能がございますので、こちらを利用者が選んだ上でご利用いただいているとのことでした。

 簡単ですが、ご説明は以上です

 

 

 

 

 

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