東京都江東(こうとう)区議会は、2020年3月12日、定例会において、手話は言語であることを普及し、及び障害者の意思疎通を促進することについて、障害特性に配慮した意思疎通手段の利用環境を整備することにより、全ての区民が障害の有無にかかわらず、互いに分け隔てなく理解し合い共生する地域社会の実現を目指すことを目的とする、「江東区手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する条例」案を可決し、2020年年4月1日に施行した。

 

 同種の条例は、都内では、東京都江戸川区荒川区豊島区足立区墨田区葛飾区板橋区港区に次いで例目。全国では07例目。情報コミュニケーション条例としては、全国で55例目

 

 区は、2019年8月11日(日・祝日)から9月1日(日曜日)まで、条例案の概要に対するパブリックコメントを行い、66人から134件の意見が出された意見と区の考え方

 

 

「江東」の区名は、隅田川の東に位置するという地理的な意味から、辰巳区、東区、永代区などの候補の中から選ばれた。「江」は深川、「東」は城東の意味も含んでいる。江戸初期からの埋立てに始まった当時の江東という地域は、現在の本所地区または深川地区を指す意味と、広く隅田川の東部の城東地区を指す意味があったという。

 

区内を縦横に走る河川を利用しての木材・倉庫業、米・油問屋の町として栄えた深川地区は、富岡八幡宮をはじめとする社寺の祭礼、開帳(賭博(とばく)の座(場所)を開くこと)などの年中行事を中心に、江戸市民の遊興地としても賑わい、江戸文化の華を咲かせまた。一方、城東地区は、江戸近郊の農地として、スイカ、カボチャ、ナス、ネギなどの野菜類を江戸市民に供給することで栄えた。

 

 

明治時代になると、江東区は広い土地と水運を利用した、東京の工業地帯となり、現在の江東区は、区周辺部、特に臨海副都心や南砂地区などは大規模マンションや医療・福祉施設の建設が相次いでいる。また、豊洲地区や夢の島地区には子供向け施設が充実し、近年はマンション建設が相次ぎ人口が増加している。

 

元々低地であった区は、かつて南関東ガス田の開発に伴う地下水の汲み上げにより地盤沈下したことで、区の大部分がゼロメートル地帯、または海面より低い海抜マイナス地帯となっている。

 

区の臨海方面にあるかつてゴミ埋立地であった夢の島一帯は大規模な公園が作られ、市街開発にあたって並木や草木が大量に植えられ、東京23区内とは思えないほどの緑の多い地域となっている。

 

 

なお、2006年3月には、ゆりかもめの有明〜豊洲駅間が開業。2010年には、東京湾臨海道路が全線開通し、2012年には、中央防波堤外側埋立地と江東区若洲を結ぶ橋梁である東京ゲートブリッジ開通した。

 

 

 

区の人口は、525 062(男性;258 564/女性;266 498)(20204月1日現在)。

 

区の身体障害者の状況は、以下の通り。

 

 

江東区障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画

 

 

江東区手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する条例

 

令和2年3月12日 

江東区条例第20号 

 

全ての区民が障害の有無にかかわらず、社会活動に参加し、安心して心豊かに暮らすためには、互いの意思及び感情を伝え合う障害者の意思疎通を促進することが重要であり、日常生活及び災害時において、障害特性に配慮した意思疎通手段の利用環境を整備することが地域社会に求められている。 

手話は、障害者の権利に関する条約の採択及び障害者基本法の改正により、言語として位置づけられている。 

区は、区内に暮らす人及び働く人だけでなく、江東区を訪れる人たちも含めて円滑なコミュニケーションを図ることができるよう、手話を言語として普及するとともに、手話、要約筆記、点字などによる障害者の意思疎通を促進していく。 

ここに、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、全ての区民が障害の有無にかかわらず、互いにその人格及び個性を尊重しながら共生する地域社会を実現すべく、この条例を制定する。

 

(目的) 

第1条 この条例は、手話は言語であることを普及し、及び障害者の意思疎通を促進することについて、障害特性に配慮した意思疎通手段の利用環境を整備することにより、全ての区民が障害の有無にかかわらず、互いに分け隔てなく理解し合い共生する地域社会の実現を目指すことを目的とする。 

 

(定義)  

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。  

(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下これらを「障害」という。)のある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 

(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 

(3) 意思疎通手段 手話、要約筆記、点字、音訳、筆談、代筆及び代読、重度障害者用意思伝達装置の使用その他の障害者が意思疎通を図るために必要とする手段をいう。 

(4) 区民 区内に在住、在勤又は在学する者その他区内で活動する全ての者をいう。 

(5) 事業者 区内において事業活動を行う個人又は団体をいう。 

 

(基本理念)  

第3条 区は、次に掲げる事項を基本理念とする。 

(1) 手話は、言語であり、独自の言語体系を有する文化的所産であること。 

(2) 障害の有無にかかわらず互いに理解し、その人格及び個性を尊重すること。  

(3) 障害者の意思疎通を円滑に図る権利を最大限尊重すること。 

 

(区の責務)  

第4条 区は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話は言語であることを普及するとともに、障害者が意思疎通手段を円滑に利用し、必要な情報を取得することができるよう、施策を推進するものとする。  

 

(区民の役割)  

第5条 区民は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。 

 

(事業者の責務)  

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるとともに、手話は言語であることを普及し、障害者の意思疎通手段の利用環境の整備に努めるものとする。  

 

(施策の推進)  

第7条 区は、次に掲げる施策を推進するものとする。  

(1) 障害者の意思疎通手段の普及のための啓発 

(2) 障害者の意思疎通手段の利用に資する環境整備 

(3) 障害者の意思疎通手段を習得する機会の提供 

(4) 障害者の意思疎通手段による情報の発信等

 

 附 則 

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

 

 

 

 

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