東京都台東区手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する条例
東京都台東(たいとう)区議会、2020年3月23日、「台東区手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する条例」案を可決し、2020年4月1日に施行した。
同種の条例は、都内では、東京都、江戸川区、荒川区、豊島区、足立区、墨田区、葛飾区、板橋区、港区、江東区、中野区に次いで12例目。全国では326例目。情報コミュニケーション条例としては、全国で60例目。
区は、2019年10月1日(火)から10月25日(金)まで、条例骨子案に対するパブリックコメントを行い、37人(ファクシミリ11人 17件、ホームページ 3人 8件、持参23人 36件)から61件の意見が出された(意見と区の考え方)。
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条例の概要 ●目的 手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進について区の基本理念を定め、区の責務並びに区民等及び事業者の役割を明らかにすることにより、多様性が尊重される共生社会を実現する。 ●基本理念 (1)手話は言語であることはもとより、独自の言語体系を有する文化的所産であるという認識のもと、その理解と普及を行わなければならないこと。 (2)全て障害者は、可能な限り、意思疎通手段についての選択の機会が確保され、意思疎通を円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならないこと。 (3)全ての人が相互に人格と個性を尊重し合うこと。 ●区の責務 基本理念に基づき、施策を推進する。 ●区民等の役割 基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努める。 ●事業者の役割 (1)基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努める。 (2)障害者が手話言語及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するための合理的配慮をしなければならない。 ●施策の推進 次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進する。 (1)手話言語及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段に対する理解を促進し、普及及び啓発を図るための施策。 (2)手話言語及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進するための施策。 (3)その他この条例の目的を達成するために必要な施策。 |
東京23区の中央からやや北東寄りの都心部の北部を占める区は、東側は隅田川に接し、対岸の墨田区との区境となっており、区南端で隅田川との合流点付近の神田川に接する。
上野と建立1400年の浅草寺の浅草があるわりには、区自体の知名度は東京23区のなかでも極めて低いが、江戸時代には、城外で最も栄えていた。
明治期からは美術館や博物館が建築され、東京芸術大学などアートの発信地ともなっている。また、1923年の関東大震災や1945年の東京大空襲にも焼け残った浅草橋界隈の問屋街などにはいまだ大正、昭和初期の街並みや風情が残っている。
区の中心駅である上野駅は古くから北関東・東北・信越地方からの玄関口として知られ、新幹線も停車する。区は全般的に商業地であるため、純粋な住宅地は一部で、供給量も少ない。戸建も一部地域を除くと少なく、ビルやマンションなど土地の高度利用が進んでいる。
公園や緑地地域が随所にあり、自然環境は良い。自然環境破壊も東京都内では比較的少ないほうである。区内の至る所に桜並木が植えられており、隅田川周辺以外にも住宅地・商業地などあらゆる場所に桜の木が植えられている。
2017年3月に、区は発足70周年を迎え、戦後の復興から今日までの足跡を振り返るとともに、台東区の将来を思い描くために、同年10月、浅草公会堂にて台東区発足70周年記念式典を挙行された。
区の人口は、202,886(男性;103,768/女性;99,118)人、121,931(2020年4月1日現在)。
区の身体障害者の状況は、以下の通り。
東京都台東区手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する条例
手話は、音声ではなく、手や指、体の動きなどを用いる意思疎通手段であると同時に、独自の語彙と文法体系を有する言語である。手話が言語であることは、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法において定められており、ろう者は手話により思考し、意思疎通をしている。
また、障害者基本法において、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られなければならない。」としている。
全ての障害者が、不便や不安を感じることなく日常生活を営んでいくためには、手話が言語であることの理解や意思疎通を阻んでいる様々な障壁を、社会全体で取り除いていかなければならない。
台東区は、手話に関する理解と普及を図るとともに、それぞれの障害の特性に応じた意思疎通や情報の取得、利用、発信ができる環境を整えることにより、多様性が尊重される共生社会の実現を目指し、この条例を制定する。
(目 的)
第1条 この条例は、手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進について、台東区(以下「区」という。)の基本理念を定め、区の責務並びに区民等及び事業者の役割を明らかにすることにより、多様性が尊重される共生社会を実現することを目的とする。
(定 義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 意思疎通手段 言語(手話を含む。)、筆談、点字、拡大文字、読み上げ、分かりやすい表現その他障害者が意思疎通を図るために必要とする手段をいう。
(3) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(4) 合理的な配慮 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、障害者の権利利益を侵害することとならないよう実施する必要かつ適当な変更及び調整であって、その実施に伴う負担が過重でないものをいう。
(5) 区民等 台東区内(以下「区内」という。)に住所若しくは勤務先を有する者若しくは区内の学校に在学する者又は区内に滞在する者若しくは区内を通過する者をいう。
(6) 事業者 区内で事業活動を行う法人その他の団体及び個人をいう。
(基本理念)
第3条 第1条に規定する社会の実現は、次に掲げる理念を基本として、推進するものとする。
(1) 手話は言語であることはもとより、独自の言語体系を有する文化的所産であるという認識のもと、その理解と普及を行わなければならないこと。
(2) 全て障害者は、可能な限り、意思疎通手段についての選択の機会が確保され、意思疎通を円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならないこと。
(3) 全ての人が相互に人格と個性を尊重し合うこと。
(区の責務)
第4条 区は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する施策を推進するものとする。
(区民等の役割)
第5条 区民等は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、障害者が手話言語及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するための合理的な配慮をしなければならない。
(施策の推進)
第7条 区は、第4条に規定する責務を果たすため、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1) 手話言語及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段に対する理解を促進し、並びにその普及及び啓発を図るための施策
(2) 手話言語及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進するための施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策
(意見の聴取)
第8条 東京都台東区長(以下「区長」という。)は、前条各号に掲げる施策を推進するため、必要があると認めるときは、障害者その他関係者から意見を聴取するものとする。
(委 任)
第9条 この条例の施行について必要な事項は、区長が別に定める。
付 則
この条例は、令和2年4月1日から施行する。