兵庫県;三田(さんだ)市手話言語条例

 

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 2016年3月の市議会定例会で森哲男市長が一般質問に対し「手話言語条例制定に向けて進める」と回答したことを受け、三田(さんだ)は、手話を日常的に使うことができる環境を整備し、耳の不自由な人が安心して暮らせる地域を目指そうと、兵庫県の三田市は「手話言語条例」を制定する方針を決め、「三田市手話言語条例検討委員会」を市長の附属機関として設置。聴覚障害者団体、有識者等を交え、5回にわたり条例案について検討を重ね、「三田市みんなの手話言語条例(案)を策定し、2016年9月23日に委員会を代表して嘉田眞典(まさのり。三田聴覚障害者協会会長)委員長から森哲男市長に答申が行われた。

 

市長(左)に答申する嘉田委員長

 

 その後、2016年10月3日〜11月1日までパブリックコメントが行われ、原案のまま、三田市(議)会に提案され、2016年12月20日、市会は、全会一致で条例案を可決した。

 

手話言語条例の成立を記念し、記念撮影に収まる聴覚障害者たち=三田市役所(2016年12月21日配信『神戸新聞』)

 

施行は2017年4月1日。

 

耳の不自由な人たちへの理解を深め、手話を使いやすい環境づくりを目指す「三田市みんなの手話言語条例」は、さまざまな場面での手話通訳の導入や、市民への普及・啓発に取り組むなどして、手話を「言語」として活用できる社会づくりを進め、聴覚障害者が暮しやすいまちの構築することを目的とする。

 

手話条例の制定は、同日に成立した兵庫県西脇市手話言語条例近江八幡市みんなの心で手をつなぐ手話言語条例とともに全国で65番目。隣接の篠山市みんなの手話言語条例、神戸市みんなの手話言語条例。政令指定都市初)、加東市手話言語条例。兵庫県初)、三木市三木市共に生きる手話言語条例はすでに制定している。

 

そのほか、兵庫県内では明石市手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者のコミュニケーション手段を促進する条例)、淡路市淡路市手話言語条例)、丹波市丹波市丹(まごころ)の里手話言語条例)、宍粟市宍粟市みんなの心つなぐ手話言語条例、多可町多可町手話言語条例、小野市小野市手話、要約筆記、点字等意思疎通手段利用促進条例、加西市加西市手話言語条例、加古川市(加古川市手話言語及び障害者コミュニケーション促進条例などで制定されている。

 

 なお、三田市会では、2014年6月17日の6月定例会本会議の議場内に初めて手話通訳士が立った。この日、三田聴覚障害者協会からの手話を言語として普及させる「手話言語法(仮称)」制定に向け、国に意見書を提出するよう求める請願(要望)を、議会運営委員会が承認。一般質問で、手話の普及啓発に向けた取り組みなどについて尋ねた市議の質疑内容などを、傍聴に訪れた聴覚障害者らに伝えた。

 

 

三田市は、兵庫県の南東部に位置し、神戸市の市街地より六甲山系を越えて北へ約25km、大阪市より北西へ約35kmの圏域にあり、北は篠山(ささやま)市、東は宝塚市、猪名川町、南は神戸市、西は加東市、三木市に接している。

JR福知山線の複線電化や、阪神間のベッドタウンとして北摂ニュータウンが開発されたことにともない、1987年から1996年にかけて人口増加率日本一になるほど人口が急増した。また、1995年に関西学院大学神戸三田キャンパス開設された。

非核平和都市宣言、福祉都市宣言、三重県鳥羽市との友好都市宣言、三田ツーリズム宣言を行っている。

 

 人口は、113,742人(男;55,310/女;58,432)、45,342世帯数(2016年11月末現在)

 

 聴覚・平衡機能障害数(手帳交付数)は、234人(2000度末現在)

 

 

 

 

 

三田市みんなの手話言語条例

 

言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情等を使って視覚的に表現する言語です。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、必要な言語として手話を大切に育んできました。

しかし、ろう学校では手話の使用が禁止され、社会では手話を使うことで、誤解されたり、差別や偏見を持たれるなど、ろう者が手話を使うことには苦難の歴史がありました。また、ろう者は、手話を知らない多くの人とのコミュニケーションが困難なことから、必要な情報を得ることができず、多くの不便や不安を感じながら暮らしてきました。

こうした中、平成18年の国連総会で障害者の権利に関する条約が採択され、手話が言語であると明記されました。その後、平成23年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)において、手話は言語として位置付けられたところであり、手話を獲得、習得できる環境の整備等を行うことで、手話を言語として守り、育み、広く普及させ、市民の誰もが手話を学び、手話で学び育つことができ、手話を自由に使える社会となることが求められています。

三田市では、職域、地域、学校等において人権確立に向けた取組みにより、三田に「人権文化」を根づかせてきました。様々な施策の推進により、お互いを認め合い共感し、垣根を乗り越え、相互の理解を育み、心のバリアフリーをさらに進めます。

私たち三田市民は、手話が言語であることを認識し、手話や聴覚障害者への理解を広げ、すべての市民の意思疎通と情報取得を保障し、すべての市民が安全で安心して暮らすとともに、お互いを尊重し、分かり合い、共に生きる社会の実現をめざし、この条例を制定するものです。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解、普及及び環境の整備並びに聴覚障害者への理解について、その基本理念を定めて、市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が実施する施策の基本的事項を定めることにより、すべての市民が安心して暮らし、お互いの人格と個性を尊重する共生社会を実現することを目的とします。

 

(基本理念)

第2条 手話が言語であるとの認識に基づき、手話を使いやすい環境を構築し、すべての市民が、より豊かな生活や人間関係を築くことを基本理念とします。

すべての市民は、手話により意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されなければなりません。

 

(市の責務)

第3条 市は、市民の手話に対する理解及び普及を図り、手話を使いやすい環境を整備するために必要な施策を推進します。

市は、手話を使用することができる職員を増やすよう努めます。

 

(市民の役割)

第4条 市民は、手話への理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めます。

 

(事業者の役割)

第5条 事業者は、市が推進する施策に協力するとともに、手話を必要とする者が利用しやすいサービスを提供し、環境を整備するよう努めます。

事業者は、手話を必要とする者が働きやすい環境を整備するための合理的配慮を行うよう努めます。

 

(施策の推進方針)

第6条 市は、施策を推進するための方針(以下「施策の推進方針」といいます。)を策定します。

施策の推進方針は、市が別に定める障害者に関する計画と調和が保たれたものでなければなりません。

施策の推進方針には、次の事項を定めるものとします。

(1) 聴覚障害者の理解促進に関する事項

(2) 手話に対する理解及び普及に関する事項

(3) 手話による情報取得及び手話の使いやすい環境づくりに関する事項

(4) 手話通訳者の配置の拡充及び意思疎通支援に関する事項

(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項

施策の推進方針は、これを公表するものとします。

 

(協議会の設置)

第7条 市長は、施策の推進方針、実施状況及びそれらの見直しについて意見を聴くため、三田市手話施策推進協議会(以下「協議会」といいます。)を設置します。

協議会は、委員10人以内をもって組織します。

委員は、聴覚障害者、意思疎通支援者、学識経験者その他市長が適当と認める者のうちから市長が委嘱します。

委員の任期は、2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。ただし、再任を妨げません。

前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定めます。

 

(学校等における手話の普及)

第8条 市は、学校等において、幼児、児童、生徒等に対し、手話を学ぶ機会及び聴覚障害者への理解を促進する機会を提供します。

市は、学校教育における手話の理解促進及び普及啓発を行います。

 

(聴覚障害者の意思疎通支援)

第9条 市は、聴覚障害者の特性に応じた意思疎通の支援並びに円滑な情報の取得及び利用のための施策を推進します。

 

(財政上の措置)

第10条 市長は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じます。

(委任)

第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。

 

付則

この条例は、平成29年4月1日から施行します。

 

 

(仮称〉三田市手話言語条例(たたき台)の構成

 

条例の構成

前文

第1条(目的〉

第2条(基本理念〉

第3条(市の責務〉

第4条(市民の役割〉

第5条(事業者の役割〉

第6条(施策の策定及び推進〉

第7条(推進協議会〉

第8条(財政上での措置〉

第9条(委任〉

 

2.条例の内容 前文

手話とは

手話の歴史的背景

手話が言語として位置づけられたこと

今後三田市は、どのような市を目指すのか

 

第1条(目的〉

手話への理解と普及について

全ての市民が互いの人格と個性を尊重し、安心して暮らすことができる共生 社会の実現をめざす。

 

第2条(基本理念〉

手話による円滑な意思疎通と権利の尊重

 

第3条(市の責務〉

手話の理解促進、普及、使いやすい環境にするための施策の推進

 

第4条(市民の役割〉

手話への理解と市の施策への協力

 

第5条(事業者の役割〉

市の施策への協力

手話を必要とする市民が利用しやすいサービスの提供

 

第6条(施策の策定−推進〉

施策の推進方針の策定(手話への理解−普及、情報取得、意思疎通支援、その他〉

障害者に関する計画との調和、整合性

 

第7条(推進協議会の設置〉

策実施状況について意見を述べる協議会の設置

組織の運営等は規則で市長が定める。

 

第8条(財政上の措置〉

施策推進のための措置

 

第9条(委任〉

条例に定めのない必要事項の市長への委任

 

 

(仮称)三田市手話言語条例(たたき台)

 

 手話は、独自の文法を持ち、手指や体の動き、表情を使って豊かに表現する視覚的言語であり、音声言語である日本語とは異なる言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。

しかし、ろう学校では手話の使用が禁止され、社会では手話を使うことで、誤解され、差別や偏見を持たれるなど、手話を使うことには苦難の歴史があっ た。また、ろう者は、手話を知らない多くの人とのコミュニケーションが困難なことから、必要な情報を得ることができず、多くの不便や不安を感じながら暮らしてきた。

こうした中、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられた。

手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解を広げ、手話を使用しやすい環境づくりを推進することにより、ろう者をはじめ、中途失聴者、難聴者その他の手話を必要とする市民の意思疎通支援と情報取得を保障し、すべての市民が安全で安心して暮らすとともに、お互いを尊重し、わかり合い、とも 生きる三田市を目指し、この条例を制定するものである。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解及び普及に関し、その基本理念を定めて、市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が実施する施策の基本的事項を定めることにより、すべての市民がお互いを尊重し共生する地域社会を実現することを目的とする。

 

(基本理念)

第2条   手話に対する理解及び普及は、手話が言語であること及びろう者をはじめ、中途失聴者、難聴者その他の手話を必要とする市民が、より豊かな生活や人間関係を築くために手話により意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利が尊重されることを基本理念として行われなければならない。

 

(市の責務)

第3条   市は、市民の手話に対する理解及び普及を図り、手話を使いやすい環境にするための施策(以下「施策」という。)を推進するものとする。

 

(市民の役割)

第4条   市民は、手話の理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第5条   事業者は、市が推進する施策に協力するとともに、手話を必要とする者が利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。 

 

(施策の策定及び推進)

第6条   市は、施策を推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)

を策定するものとする。

2施策の推進方針は、市が別に定める障害者に関する計画と調和が保たれたものでなければならない。

3施策の推進方針には、次の事項を定めるものとする。

(1)手話の理解及び普及に関する事項

(2)手話による情報取得及び手話の使いやすい環境づくりに関する事項

(3)手話による意思疎通支援の拡充に関する事項

(4)前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項

 

 (推進協議会)

第7条   市長は、施策の実施について意見を聞くため、三田市手話施策推進協議会(以下「協議会」という。)を設置する。

2協議会は、委員10人以内をもって組織する。

3委員は、聴覚障害者、意思疎通支援者、学識経験者その他市長が適当と認める者のうちから市長が委嘱する。

4委員の任期は、2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。

5前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

 

(財政措置)

第8条   市長は、施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委任)

第9条この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

付則

この条例は、平成29年4月1日から施行する。

 

 

「耳の日のつどい」手話条例施行後初の開催 兵庫県三田(2018年3月5日配信『神戸新聞』)

 

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「耳の日のつどい」で手話を体験する参加者=三田市川除

 

 聴覚障害への理解を深める「第26回耳の日のつどい」が4日、兵庫県三田(さんだ)市川除の総合福祉保健センターであった。手話を言語として広める「みんなの手話言語条例」が昨年4月に施行された後では初開催。森哲男市長が市の取り組みを説明したほか、手話教室もあり、約140人が交流を深めた。
 3月3日の「耳の日」にちなみ、市身体障害者福祉協議会聴覚障害者部会などでつくる実行委員会が、毎年開いている。
 森市長は冒頭、条例施行後の経過を報告。すずかけ台小では上級生が1年生に手話を教え、校歌を歌う取り組みを進める。市の広報紙に手話のイラストを掲載したり、市役所の手話通訳者を増やしたりしたことも紹介し、「互いの人格と個性を尊重して成熟のまち、三田を目指す」と話した。
 講演では、大阪聴力障害者協会職員の久保沢寛さんが、全国でも珍しい乳幼児期の手話獲得支援事業「こめっこ」の活動を手話で解説。聴覚障害がある子供と健聴者の親とのコミュニケーションを深めてもらう取り組みを「少しでも長く続けたい」とした。
 実行委員会の嘉田真典さん(53)は「条例ができ、今後は聴覚障害がある子供と親のサポートなど、できることから取り組みたい」と手話で語った。

 

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議会報告会 手話通訳で意見交換 三田市で初(2017年4月23日配信『神戸新聞』)

 

 兵庫県の三田市議会は22日、さんだ市民センター(同市三田町)で議会報告会を開いた。市民に活動を知ってもらおうと、2013年から毎年開催。今月施行された手話言語条例を受け、初の試みとして手話通訳者を置いた。

 市の17年度予算がテーマで、23日にはフラワータウン市民センター、29日には有馬富士共生センターでも開く。議長を除く市議21人が7人ずつ出席する。

 この日は市民25人が参加し、うち7人が聴覚障害者だった。まず予算の大まかな内容や審議のポイントを市議が紹介。続いて市政に関して意見交換し、市議は議会の取り組みや市の対応を説明した。

 発言した市民7人のうち3人が手話を必要とする人で、ウッディタウンの女性は「こうした機会を得られてうれしい」と評価。一方で「まだ障害に対する行政の理解が足りない」との注文も出た。マイクを握った市議は「当事者の貴重な声を、今後の市当局との議論に生かしたい」と応じた。

 23、29日は午後2時から。手話通訳は行われない。

 

s-三田

初の手話通訳を交えて行われた三田市議会の議会報告会=さんだ市民センター

 

 

 

 

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